日本地理学会発表要旨集
2007年度日本地理学会秋季学術大会
選択された号の論文の156件中151~156を表示しています
  • 1990年代後半以降の高知市を事例として
    藤塚 吉浩
    セッションID: S603
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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    I 研究目的
     1990年代後半以降、地方都市では中心市街地の空洞化に対処するための中心市街地活性化計画が策定されてきた。しかしながら、活性化計画のすべてが効果を発揮したとはいえない。本報告では、1990年代に中心市街地の空洞化が顕著になり、1999年に中心市街地活性化計画が策定された高知市を事例としてとりあげる。
     本発表では、まず、中心市街地の空洞化の状況を明らかにする。次に、中心市街地活性化のために実施された施策と、都市全体としてのまちづくりについて検討する。
    II 高知市中心市街地の空洞化
     高知市中心市街地が空洞化してきたのは、次の三つの要因である。第一は、中心市街地の人口の変化である。周辺市街地と県外への人口移動により、人口減少とともに高齢化が進行している。また、周辺部の池地区へ高知女子大学の新キャンパスと高知市立病院や県立中央病院の統合新病院が建設され、中心市街地の昼間人口も大きく減少した。
     第二は、周辺市街地における大規模なショッピングセンター開業の影響である。これは工場跡地に建設されたため、用途地域が工業地域であり、当初映画館の建設は認可されなかった。その後、用途地域が変更され、ショッピングセンター内に複合映画館が開設された。中心市街地には一般映画館が三館あったが、影響は大きく、すべて閉館した。
     第三に、中心商店街への来街者の減少である(図1)。1999年には歩行者通行量の増加したところもあったが、特に帯屋町商店街の通行量の減少が大きい。中心市街地では、全国系列の百貨店とスーパーマーケットが閉店し、地元資本の系列のスーパーマーケットが廃業したことも、来街者減少の要因である。中心市街地からは、食料品を扱う店舗が大きく減少した。中心市街地には高齢者が多く、自家用車を運転できる者は少なく、生鮮食料品の調達が困難になっている者も多い。
    III コンパクトなまちづくり
     高知市では、1990年代後半には中心市街地の空洞化が大きな問題となりつつあった。また、1998年9月には集中豪雨災害があり、広域に及ぶ浸水被害が生じた。特に、周辺市街地の農用地が宅地開発されたところでは、雨水道の整備が不十分であり、浸水被害が拡大した。これらから、無秩序な市街地開発を早急に防ぐ必要があり、コンパクトなまちづくりを目標とした都市計画マスタープランが2003年に策定された。
     目標のひとつは、中心市街地の再活性化をはかることである。循環バスの運行や、空き店舗活用によるチャレンジショップの開設などの様々な施策の実施とともに、低・未利用地の再利用促進についても検討されてきた。もうひとつの目標は、市街化区域を拡大しないことである。
     近年、中心市街地への高層共同住宅の建設があり、高知城の眺望確保のための景観問題が起こりつつある。また、早くに開発された周辺市街地の住宅団地では高齢化が進み、生活環境の維持が困難になりつつある。高知市のコンパクトなまちづくりにとって、課題は少なくない。
  • 九州諸都市を事例として
    山下 宗利
    セッションID: S604
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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    研究の背景
     2000年前後に整備されたまちづくり三法(改正都市計画法、中心市街地活性化法、大規模小売店鋪立地法)は十分な機能を果たせず、各地の中心市街地では空洞化が進行した。昨年まちづくり三法が改正され、それらが実行に移されようとしている。まちづくり三法の今回の見直しは、日本では環境への負荷の小さな都市構造への転換を含めてまちの郊外化を抑制し、小売機能をはじめとして住居機能、業務機能といった都市の諸機能を中心市街地に再集中させるコンパクトシティの考えに基づいたものとなっている。今回の見直しでは、都市計画法の改正による大規模集客施設等の強力な立地調整機能とともに、中心市街地活性化法の改正による中心市街地活性化に向けた新たな多様な支援策の導入が大きな柱である。
     中心市街地の現状を振り返ると、まちづくり三法の改正の背景には三つの影響が横たわっている。第1に、人口減少社会の到来と高齢化の加速である。これは日本全体に共通して及ぶ影響であり、従来のまちの郊外化に歯止めをかけ、確実に迎える高齢社会への対応がきわめて大きな課題となっている。第2に、持続的な自治体運営の継続性の問題である。中心市街地は自治体にとって安定した税収を得る重要な場所である。佐賀市では市域面積の約2%に当たる中心市街地から約20%の固定資産税を得ているため、中心市街地の衰退は軽視できない。中心市街地の衰退は地方自治体の大きな不安定要因であり、中心市街地を活性化させ、地価の保持が深刻化している。第3に、コミュニティの維持の重要性である。今後のコンパクトシティの実現に向けて高度にインフラが集積した中心市街地は重要な居住地として機能することが期待されている。また中心市街地には歴史や文化が蓄積し「まちの顔」であるとされる。
     中心市街地活性化法の改正により、基本計画の認定制度の創設や支援措置の拡充、選択と集中の強化、国・市町村・事業者及び地域住民の連携強化などの内容が盛り込まれた。2007年2月8日に富山市と青森市の中心市街地活性化基本計画が最初の認定を受け、5月28日現在では全国で計13の基本計画が認定されている。九州地方では熊本市、八代市、豊後高田市、宮崎市の4つを数える。九州地方においては福岡市への一極集中が進展する一方で、この認定計画にみられるように県庁所在都市クラスの中核都市においても中心市街地の活性化が課題となっている。本報告では、佐賀市をはじめ佐世保市、熊本市などを事例として取り上げ、中心市街地の個性と活性化策に焦点を絞り、都市の持続可能性について述べたい。

    都市の個性と持続可能性
     佐賀市は早くから中心市街地の活性化に取り組んできた。長崎街道沿いに展開した旧来の中心商店街では空き店舗が目立ち衰退が進み、市街地再開発事業によって大型商業施設「エスプラッツ」を建設して活性化を図ろうとした。しかし、まちづくり会社は倒産し、2003年2月に閉店に追い込まれた。その一方で、市街地を取り巻く幹線道路沿いには各種の量販店・大型店が連担し、郊外型のショッピングモールも市街化調整区域や準工業地域に相次いで開店した。その後、佐賀市では「中心市街地活性化基本計画」を2005年1月19日に再提出したが、この間にも中心市街地の衰退はなおも続いた。佐賀市は商業床を購入し、2007年にはスーパーマーケット以外に、カルチャーセンターや市の子育て支援センター、市民活動支援センターといった公共公益的施設の開設を計画中である。エスプラッツを中心市街地活性化の基点施設と位置づけ、「住む人」「来る人」のための施設として活用を図ろうとしている。従前のエスプラッツと異なる点は、商業施設利用よりもむしろ街づくりの核施設として市民の交流を図るサービス機能が多く入居することである。佐賀市の活性化策は中心市街地と郊外の強力な大型店との対立構図から距離を置き、中心市街地の基点を市民の活動拠点として、また子どもや高齢者向けの施設として活用を図ろうとしている点を鑑みれば、都市機能の集積の弱い佐賀市に相応しい活性化策として評価できるものであると考える。
     シンポジウム当日は九州諸都市の中心市街地活性化策とその現状について述べたい。
  • 千葉 昭彦
    セッションID: S605
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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     シンポジウム「転換期を迎える都市圏の動向と都市整備の新展開」の中の報告の一つとして、青森市での取組みを報告し、その意義と限界を検討する。
  • 松原 光也
    セッションID: S606
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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    1.はじめに
     日本初の本格的LRTといわれる富山ライトレールが開業した富山市においてコンパクトシティを理念とするまちづくりが進められつつある。本稿では人口、従業者、駅勢圏に着目した交通地域区分を用いて、地方都市のコンパクトシティ度を算出し、富山市の都市構造の特性と公共交通との関連を明らかにする。そのうえで富山ライトレールを先行事業とした富山市のコンパクトシティ政策の現況について述べる。

    2.ライトレールの経緯
     北陸新幹線開業の際に富山駅が高架化されるのに伴い、利用客の少ないJR富山港線の取り扱いについて、廃止してバスに代替、高架化して存続、路面電車化して富山駅北口に接続の3案が検討された結果、路面電車化(ライトレール化)することが決定された。設立にあたっては国の支援制度を活用して路線基盤費用を富山市が負担し、会社は運営だけを行う方式がとられ、経営負担が軽減されることとなった。ライトレールはコンパクトシティを理念とするまちづくりを進めるための先行事業として位置付けられようになり、北陸線高架化後には市内に現存する富山地方鉄道市内線との接続などが考慮されている。
     2006年4月29日に開業した富山ライトレールは100%低床車の導入、日中15分毎の運行、均一運賃200円(日中と土日祝日は100円)など、サービス水準が改善された。開業前には1日平均乗降客数が3400人(JR時代は1710人)で、年間の支出超過約2~3千万円と想定されていたが、予想を大きく上回る4901人の乗降客数となった。これに加えて関連グッズの売上も好調であり、富山ライトレールは、予想に反して約4500万円の収入超過となった。

    3.都市構造の特性
     富山市はDID人口密度が4117.1人/km2と低く、分散した都市形態となっている。そのため、全トリップに占める自動車利用者の割合は72.2%と高い(平成11年PT調査)。しかしながら、中心部を運行する富山地方鉄道市内線の利用者も一定の水準を保ち(平成16年度の一日平均乗降客数は10066人)、経営的にも健闘している。その要因をコンパクトシティ度でみると、富山市における駅勢圏内人口比率は21.0%に達し、鉄道通勤利用確率は7.6%に達する。全国の地方中心都市をクラスター分析によって抽出した15都市と比較した場合、富山市は高知市の14.6%には及ばないものの、長崎市や函館市と同水準である。すなわち、富山市は住宅地や就業地、学校、病院、商業地が駅周辺に多く分布しており、公共交通を利用しやすい都市構造であるといえる。

    4.コンパクトシティ政策
     富山市では当初からコンパクトシティ政策を進めていたわけではないが、富山港線の路面電車化を契機に、国土交通省から鉄道事業、道路事業の両面で支援を受け、中心市街地活性化基本計画が策定された。まちづくり三法の改正に伴う国のまちづくり重点支援地域として青森市とともに第1号認定を受けた。そこには、公共交通の利便性の向上(富山港線のLRT化と岩瀬浜のまちなみ整備、高山本線の増発、市内電車環状化等)、中心市街地活性化(総曲輪地区再開発と大型小売店の立地規制等)、まちなか居住の推進(住宅支援制度、高齢者住宅住み替え支援制度等)という3つの計画、27事業が盛り込まれることとなった。こうした一連の計画、事業に合わせる形で、コンパクトシティを理念とする都市計画マスタープランの策定が進められてきている。
     青森市ではDID人口密度が6355.6人/km2と高く、インナー、ミッド、アウターと同心円型のコンパクトシティが目標とされている。一方、富山市では中心部でも高密ではないため、駅周辺に都市機能が比較的多いという特性を活かし、クラスター型のコンパクトシティが目標に掲げられている。その効果として、車を使用できない人の交通手段の確保、市街地拡散の防止による行政費用の低減、中心部の魅力を高めることによる都市全体の活力向上が挙げられている。
     富山ライトレールの開業は市民に政策の意義を提示する先行事業となった。その一方、広域合併した市域全てで公共交通を整備することは困難を極める。例えば、高山本線の増発実験に伴いフィーダーバスやデマンドバスが運行されたが、1便あたりの利用者が1人にも満たない路線もみられた。すなわち、効果的な交通体系の構築のためには、交通需要に応じた施策を組み合わせる必要があり、また、一定の自家用車規制も伴わなければ効果を上げることが難しい。コンパクトシティの構築にあたっては公共交通網と土地利用の連携化を図り、公共交通に対する市民意識の変革を図る取り組みが必要となろう。
  • ノッティンガム市の事例
    根田 克彦
    セッションID: S607
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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     イングランドでは,基本的に開発を個別に審査するが,開発許可を決定する主体は日本の市町村に相当する地方自治体である.開発許可の判断基準として客観的根拠を与えるものは,開発計画である(中井・村木 1998,pp.35-36).イングランドにおける開発計画は,地方自治体レベルと,より広域的範囲である地域レベルで策定される.地方自治体が策定する開発計画は,当該自治体が属する地域レベルで策定される開発計画の方針と一致する必要があり,また,国が承認する必要がある.
     都市計画に関する政府の方針を示す文書として重要なものは,計画政策指針(PPS)であり,これは都市計画のさまざまな対象ごとに作成されておる.小売業の開発に関わるものは,計画政策指針6(PPS6):「タウンセンターのための開発」である(Office of the Deputy Prime Minister,2005).PPSの内容はそれぞれごとに異なるが,基本的原理は共通している.それは,イングランドの都市計画全体で目標となっている,サスティナブルな開発の原理に従うことである.
     PPS6で対象とするタウンセンターとは,中心市街地ばかりではなく,それらと周辺商業地を含む,ある一定規模以上の小売商業地を指す.それら小売商業地は,シティセンターもしくはタウンセンターを頂点として,その下位階層としてディストリクトセンター,ローカルセンターに区分される.PPS6では,中心市街地ばかりではなく小売商業地全体が保護され,それら以外の場所での小売開発が抑制される.また,小売商業地の階層構造も維持されることが必要であり,そのため,上位階層センターに開発が集中しないよう配慮する一方,下位階層には過剰に大きい開発がなされないよう,既存の小売商業地の階層構造全体のバランスを保つことが必要とされる(根田,2006). なお,階層の変更は,開発計画をとおしてなされる.
     既存の小売商業地に小売開発を誘導し,それ以外の場所で開発を抑制する理由は,それがサスティナブルな開発原理に従うからである.サスティナブルな開発では,万人の必要性を斟酌した社会進歩,環境の効果的保護,資源の慎重な利用,高く安定的な経済成長と雇用レベルの維持が目標とされる.既存の小売商業地は一般に公共交通機関の焦点であるか,市街地の住宅地から徒歩でアクセスが可能な位置にある.それらを維持・強化することは,徒歩と公共交通機関の利用を促進することにより自家用車の利用を抑制し,既存の都市インフラストラクチャを有効利用することにより市街地の拡大を防ぎ,交通弱者に配慮した買物機会の配置を実現することになる.それらのことによりサスティナブルな開発目標を実現できるのである.
     ノッティンガム市はイースト・ミッドランズ地域の主要都市である.ノッティンガム市の人口は266,988人(2001年センサス)であり,1991年から4.9%減少している.
     ノッティンガム市の開発計画は,2005年に刊行されたローカルプランである(City of Nottingham 2005).ローカルプランでは,ノッティンガム市の中心市街地であるシティセンター,4地区のタウンセンター(PPS6におけるディストリクトセンターに相当),ローカルセンターからなる3階層が設定されている.
     ローカルプランでは,ノッティンガム市の中心市街地が,経済・観光の重要拠点として位置づけられ,その役割を維持・強化することが示されている.一方,タウンセンターは,サスティナブルなコミュニティの核として位置づけられ,周辺住民の日常生活を支える拠点としての役割を維持・強化することが示されている.このように,ローカルプランでは,中心市街地とタウンセンターの機能を明瞭に区別し,その商圏規模に応じた開発が望まれるとしている.
  • 山下 博樹
    セッションID: S608
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/11/16
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    1.はじめに
     報告者は,これまで「持続可能な住みよい都市」のあり方としてのLivable Cityに注目し,その評価が高いカナダ・バンクーバーとオーストラリア・メルボルンの都市圏整備の特徴や郊外市街地などの現状などについて報告してきた(Yamashita et al. 2006,山下2007など)。本報告では,バンクーバー都市圏において1970年代より実施されてきた成長管理政策の特徴と,その取り組みによる成果と今後の課題について述べたい。

    2.GVRDと“Livable Region Strategic Plan”
     バンクーバーの住み良いまちづくりの取り組みは,バンクーバー市を中心とした都市圏全体で行われている。それを推進するバンクーバー都市圏の広域行政体である“Greater Vancouver Regional District”(以下,GVRD)の基本的な役割は,都市圏全体の地域計画,水,下水,排水,住宅,交通,大気環境の保全,公園などに関する資源とサービスの管理である。GVRDの組織としての特徴や課題については生田(1999)が詳細に論じている。ここでは,今日のバンクーバーの都市圏形成に重要な役割を果たしている,GVRDが1996年に策定した“Livable Region Strategic Plan”の特徴を整理したい。ここで取り上げる“Livable Region Strategic Plan”は,バンクーバー都市圏を構成する21の自治体とブリティッシュ・コロンビア大学保有地などの任意地区の総合計画として位置づけられ,各自治体の個々の地区開発の際のマスタープランとなっている。この計画の主要な目標は,1).緑地帯の保全,2).完結したコミュニティの形成,3).コンパクトな都市圏形成,および4).交通手段選択肢の増加である。これはモータリゼーションの進展によって深刻化した大気汚染と郊外でのスプロールに対する対策として,多機能で利便性の高い都心と郊外タウンセンターを中心としたコンパクトな都市圏を形成し,さらにそれらの中心地を公共交通によって有機的に結ぶことにより,自動車移動の機会減少と移動距離の縮小およびスプロールの抑制を図っている。

    3.成長管理政策の成果と課題
     バンクーバー都市圏は,フレーザー渓谷のメインランド低地の一部に広がるが,北部は急峻な山地に連なる傾斜地,南東部はフレーザー川の河口部に位置し軟弱な地盤となっているため,市街地開発には不適な地域となっている。GVRDは,こうした地域を除き,公共交通で結ぶことが可能な9つの自治体にまたがる地域を,成長集中地区に指定し成長管理を進めている。都市圏の公共交通の中核として機能しているのが,1986年のバンクーバー万国博覧会のために整備されたスカイトレインである。スカイトレインは,都市圏の都心と郊外各地を結ぶ公共交通の骨格をなし,現在では平日で平均約22万人の利用がある。そのスカイトレインの各駅は,バスの運行距離の短縮化を意図して,周辺住宅地と結ぶバス・ルートの結節点としても機能している。
     こうしたスカイトレインなどの郊外の交通結節地には,都心に準ずる郊外核として8ヵ所の広域型郊外タウンセンターと13ヵ所のコミュニティ型郊外タウンセンターが整備され,とりわけ前者はゾーニングにより日常生活に必要な多様な機能と中高層住宅が集積し,コンパクトで利便性の高い空間が形成されている。
     以上のような取り組みの成果として,都心や広域型郊外タウンセンターの多くは,活力のある中心地として機能し,それらを公共交通網がネットワークする都市圏構造が完成しつつある。
     他方、最近ではこうした利便性の高い都心や広域型郊外タウンセンターの形成,香港返還以後の富裕層の増加やオリンピック関連の好況などの要因により,都心をはじめとした地域では,地価や不動産物件の高騰が生じ,居住人口の再郊外化とそれに伴う交通渋滞の深刻化が報告され始め,新たな課題となりつつあり、地域の開発を限定的に行う成長管理政策の反作用とも言えよう。

    *本研究をおこなうにあたり,平成18~20年度科学研究費補助金(基盤研究(C))「我が国におけるリバブル・シティ形成のための市街地再整備に関する地理学的研究」(研究代表者 山下博樹)の一部も使用した。

    参考文献
    生田真人 カナダにおける大都市圏政府の形成について-バンクーバー の事例から-,立命館地理学11, pp.1~13,1999年
    山下博樹 バンクーバー都市圏における郊外タウンセンターの開発-リバブルな市街地再整備の成果とし て-,立命館地理学19,2007年(印刷中)
    Yamashita H. et al. The development of diverse suburban activity centres in Melbourne, Australia. Applied GIS 2(2), 2006, pp.9.1~9.26. DOI:10.2104/ag060009 http://publications.epress.monash.edu/toc/ag/2006/2/2
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