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Soan Kim, Kichun Nam
セッションID: P3-04
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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A longitudinal case study investigated if Korean learners of English who passed their critical periods for L2 learning could successfully acquire grammatical knowledge implicitly through a repetitive study-test sequence. During the training session, four subjects were exposed to grammatical sentences embedded with target grammars. They read the sentences by self-paced reading, and took immediate grammaticality judgement task without any explicit feedbacks. After four consecutive days of training, they took delayed tests to examine their three types of knowledges: explicit knowledge, implicit knowledge, and lexical processing knowledge. The result showed that mere exposure to grammatical sentences without any explicit explanation, learners could acquire L2 grammar knowledge, and the knowledge had survived even after a month since the experiment finished.
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井田 佳祐, 日野 泰志
セッションID: P3-05
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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バイリンガルのL1とL2がどのように表象されているのかを検討するため,日英バイリンガルに対してマスク下プライミングを使用した2つの課題(再認課題,語彙判断課題)を課した。意味のみを共有する対訳語であるNoncognateを使用した場合,課題に関わらず日英バイリンガルのうち英語力の高い群においてのみ有意なL2-L1プライミング効果が観察された。一方,意味と音韻を共有する対訳語であるCognateを使用した場合,英語力に関わらず,いずれの課題においても有意なL2-L1プライミング効果が観察された。以上の結果は,英語力の高い群ではL2プライム提示時に意味活性化が生じるためNoncognateとCognateの双方で効果が出現するのに対し,英語力の低い群では意味活性化は生じないが音韻活性化が生じるためにCognateにおいてのみ効果が出現するものと解釈できる。
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大貫 祐大郎, 新垣 紀子, 本田 秀仁, 植田 一博
セッションID: P3-06
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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アンカリング効果とは、与えられた数値情報であるアンカーが、その後の数値推定に影響を与えることである。現在、アンカリング効果の発生原因は、アンカーによって異なる意味が活性化することだと考えられている。もし、異なる意味の活性化が原因であれば、アンカーとして数字を提示する必要はなく、異なる意味を活性化させるような刺激を提示すれば、アンカリング効果が観察されると予測される。本研究では、アンカーとして数字を提示する場合と、数字を提示せず、意味的情報のみを提示する場合とで、アンカリング効果の強さを比較した。その結果、数字を提示した場合に比べ、意味情報のみを提示した場合には、アンカリング効果の強さは微小であることが明らかになった。以上から、アンカリング効果において、数値情報が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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柴田 寛, 小川 健二
セッションID: P3-07
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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刺激(文章、写真)と人称(1人称、2人称)を操作した課題を実施した。脳活動の測定にはfMRI装置を用いた。文章条件では「わたしがりんごをつかむ」(1人称条件)、「あなたがみかんをさわる」(2人称条件)などの文章を提示した。写真条件では画面手前から手が出てりんご(みかん)をつかむ(さわる)写真(1人称条件)、もしくは画面奥から手が出て同様の動作を行う写真(2人称条件)を提示した。結果、人称要因の主効果が見られた。左運動前野では1人称条件で2人称条件よりも有意な活動上昇が認められた。この結果は、提示する刺激の種類にかかわらず、1人称視点で動作を認識する際は2人称視点の動作認識に比較して運動表象が強く関与する可能性を示す。
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Influence of Social Distance between Communicators
Donghoon Lee, Jarang Kwak, Hyeonbo Yang
セッションID: P3-08
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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This study aimed to investigate how extra-linguistic information affect online utterance comprehension using the Korean honorific system. Even in a single utterance processing, a listener expects a certain form of honorifics following a term of address based on its social status information. When deviation from the expected usage of honorific form is detected, the violation would elicit an N400 effect. However, in our results the N400 disappearred when the listener could infer a close social distance between the communicators from a term of address. Our findings suggested that the listener builds up expectance toward the upcoming honorific form based on the perceived social information reflected on the term of address.
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活動構築の方法との関係
池永 将和, 原田 悦子
セッションID: P3-09
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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本研究は,なぜ若年成人にとって高齢者とのコミュニケーションは難しいのかを明らかにするため,実際に生じる齟齬,あるいは会話や課題に対する評価の相違について探索的検討を行った.実験は実地調査から結果報告までの4回の活動で構成され,単一世代グループ(高齢者のみ/若年者のみ),混合世代グループ(高齢者と若年者)での協同作業の様子を観察・比較した.ここでは第3回「討議」活動を報告する.高齢者と若年者の間では,コミュニケーションや課題の評価に相違が見られた.また,実際の会話における齟齬の場面では,混合世代グループの若年者が話題を切り替えた際に,高齢者がその前の話題を持ち越す,あるいは緘黙する様子が観察された.こうした現象と,高齢者と若年者の活動の構築方法の違い(Ikenaga, Koyama, Tanaka, & Harada, 2017)との関係を検討し,コミュニケーションに障害が生じるプロセスを考察した.
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河原 哲雄
セッションID: P3-10
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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靴の写真画像を題材に,閾下呈示による反復単純接触が商品評価におよぼす影響を検討する実験を行った。閾下単純接触は,数字の偶奇性判断課題においてマスク呈示の直前に靴の写真画像を16ミリ秒間呈示することで実施した。2015年に発表した実験では,「購入したい」および「好き」という商品評価の中心的な次元において,閾下呈示の頻度が多くなるほど評価が低下するという通常の単純接触効果とは逆の傾向が観察され,ディストラクタ評価低下効果に類する現象が生じた可能性が示唆された。今回発表する実験では,閾下呈示時の認知負荷を低減するべくキー押し反応を削除する条件で実験を実施した。その結果,閾下呈示の頻度が多くなるほど商品評価が低下する現象は再現されなかったが,通常の単純接触効果も見られなかった。
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田中 吉史
セッションID: P3-11
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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美術初心者は絵画鑑賞時に絵画に描かれた具体物の特定に固執する傾向(写実性制約)があることが指摘されている。先行研究では、具象絵画の鑑賞において、絵画の形式的要素に関する解説文を読みながら鑑賞する経験によって写実性制約が緩和され、逆に絵画に描かれた対象物についての解説文では制約が強められることが示唆されている。本研究では、抽象絵画の鑑賞時にも同様の傾向が見られるか検討した。一般大学生24ペアに2点の抽象絵画(カンディンスキーとモンドリアン)を鑑賞させ発話を分析した。その結果、前者では具体物の名称を挙げようとする傾向が強く見られたが、後者では具体物への言及は殆ど見られず、題名で言及された色を特定しようとする傾向が強くみられた。解説文の種類の効果は明確ではなかった。
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小島 隆次, 深田 智, 来田 宣幸, 萩原 広道
セッションID: P3-12
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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オノマトペは、感情や動作の態様といった感性情報を言語的に伝達する手段として用いられることから、感情と動作を伴うコミュニケーションに関した多様な利活用が期待される。本研究は、人の感情状態や動作を表現するオノマトペから感情や動作の様態・強度を推定するシステム構築に向け、感情・動作強度とオノマトペとの関連を調査した。調査では、6つの基本感情(喜び、怒り、悲しみ、恐れ、嫌悪、驚き)と6つの基本動作(あるく、とぶ、はしる、なげる、こぐ、わたす)のそれぞれについて、3段階(低中高)の強度を設定し、強度に応じた各種感情・動作を表現するオノマトペを収集するとともに、基本感情・動作の組み合わせ36種(感情・動作ともに強度は中程度で想定)のそれぞれを表現するオノマトペを収集し、分析・比較対照した。その結果、感情・動作及び強度の各種組み合わせと収集されたオノマトペとの間に特定の傾向を措定しうることが示唆された。
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茶谷 研吾
セッションID: P3-13
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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微表情 (micro expression) は持続時間が500ms以下で顔の変化が微細または部分的な表情である。嘘を見抜く手がかりになると考えられ効果的な検出方法が模索されてきたが,観察者の認知に及ぼす影響は解明されていない。本研究では微表情を後続の表情で隠蔽する状況を想定し,脅威関連微表情が人物の信頼性判断に及ぼす影響を検討した。実験では真顔から強度100%の表情 (怒り・恐怖・幸福・驚き) へ変化する11枚1組のモーフィング画像を,先行 (4枚目以前) と後続 (5枚目以降) の表情を組み合わせ参加者に連続呈示し,信頼性を判断させた。実験の結果後続表情が幸福の時先行表情間で信頼性評定値に差があり,先行表情の認識が比較的正確である場合に,先行表情が怒りの条件で評定値が低いことが明らかになった。これは脅威と関連する微表情による信頼性判断への影響を示唆するものである。
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田仲 祐登, 伊藤 友一, 柴田 みどり, 寺澤 悠理, 梅田 聡
セッションID: P3-14
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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嫌悪,恐怖,喜びといった情動の生起には,自律神経反応が伴っている。情動によって生じる自律神経反応は意識的に感じられることがあり,自律神経反応を含めた身体内部の状態の知覚は内受容感覚と呼ばれている。本研究では,内受容感覚の意識的な感じやすさが,情動の種類あるいは性格傾向の違いによって異なるのかを検討した。参加者は嫌悪,恐怖,喜びを喚起させる画像を見たときに,自身の身体に変化が生じたかを答えた。内受容感覚を知覚できた刺激の数は嫌悪の情動が最も多く,次いで恐怖,喜びの順番であった。また,アレキシサイミア傾向が高い人は,恐怖の情動に対して身体の変化を感じにくく,状態不安の高い人は,喜びの情動に対し,身体の変化を意識的に知覚しやすかった。これらの結果は,意識的な内受容感覚は情動の種類によって感じやすさが異なっていること,それは性格傾向の影響も受けていることを示唆している。
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小林 亮太, 笹岡 貴史, 水落 亮平, 難波 修史, 宮谷 真人, 中尾 敬, 山脇 成人
セッションID: P3-15
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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実際と異なる心拍などをフィードバックするfalse physiological feedback (FPFB) によって,画像の魅力度や表情刺激の強度が修飾されることが報告されている。しかし, FPFBが感情体験における感情価,覚醒度のいずれかのみに影響するのか,両者に影響するのかについては明らかになっていない。そこで,本研究では22名の大学生を対象に,実際の心拍と同じ,速い,あるいは遅いフィードバックを純音により行いながら,表情刺激提示時の自身の感情価と覚醒度について,それらを一度に評定可能なAffect Grid(Russell et al., 1989)を用いて回答させた。その結果,実際と同じ心拍の時と比較して,異なる心拍フィードバック時に覚醒度の低下が認められた。一方で,感情価については有意な差異は認められなかった。以上の結果は,FPFBが覚醒度にのみ影響することを示唆している。
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?事象関連電位を用いた検討-
黒原 玄弥, 小川 景子
セッションID: P3-16
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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色が持つ役割のひとつに,輪郭線の明確化がある (Codispoti et al., 2012). このことから, 画像が不鮮明な場合,モノクロ画像では画像の認識が困難になるのに対して,カラー画像では輪郭線がある程度保たれることが予想される.本研究では,画像の鮮明度を操作することで,色が画像の感情知覚に及ぼす影響を検討した.刺激にはカラー / モノクロ, 鮮明 / 不鮮明 (低周波帯域) の操作を行った感情画像を用い, 画像に対する感情価と覚醒度得点,刺激呈示時の事象関連電位 (LPP) を検討した.感情価に関して,画像の感情価および鮮明度に関わらずカラーの方が高い傾向を示した. LPP振幅は,全ての感情価において, 不鮮明画像よりも鮮明画像で増大した. 本研究では, 色が感情に及ぼす明確な影響はみられなかったが, 画像特性が感情生起の一因となることが示唆された.
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矢島 由理恵, 梅田 聡
セッションID: P3-17
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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本研究では、一般的なintentional bindingの手法を用い、自己主体感が他者との共同行為においてどう変化するか、また“we-mode”形成に他者との親密度がどう関係するかを検討した。参加者は知人あるいは初対面の人と2人1組で実験に参加した。参加者は2人のうちどちらかが自発的にキー押しをし、画面上の時計盤を見て、キーの押された時間、またはキー押し後に音の鳴った時間を回答し、自分と相手のどちらによってキーが押されたかを判断した。この結果、相手が誰か、また押したのが誰かに関わらずintentional bindingは発生し、その大きさに差は見られなかった。このことから、自分が行っていない行動に対しても、共同行為であればそこに自己主体感が生じる可能性があり、たとえ相手が初対面でも、共同行為をしていると知人相手と同じようなwe-modeを潜在的に形成しうる可能性があることが示唆された。
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―商品を触るイメージとエフェクタンス動機づけが支払意思額に及ぼす影響の検討―
井関 紗代, 北神 慎司
セッションID: P3-18
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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ただ商品を触るだけで,自分の物であるかのような感覚(所有感)が生じることがわかっている. 本研究では,商品を触るイメージをするだけで,所有感が高まり,その結果,商品に支払ってもよい金額(支払意思額)も高まるのか検討した. さらに,エフェクタンス動機づけが,触るイメージの効果に及ぼす影響についても検証した. エフェクタンス動機づけとは,環境をコントロールしたいと動機づけられることであり,所有感を抱くことは,そのコントロール欲求を満たすことにつながると考えられる.結果として,触るイメージをすると支払意思額が高まり,その効果は,商品に対する所有感を完全媒介していることが示された.さらに,エフェクタンス動機づけが高まると,所有感が高まり,支払意思額に影響を及ぼすことも確認された. よって,マーケティングにおいて,触るイメージの想起やエフェクタンス動機づけを高めることが有益であると考えられる.
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小川 佳純, 井藤 寛志, 北神 慎司
セッションID: P3-19
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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Guénguen (2014) は身体魅力の中でも特にハイヒールに着目して研究を行っており,女性がハイヒールを履くことが男性の援助行動に影響を及ぼすことを報告した最初の論文である。今回は日本においてGuéguen (2014)の実験3を追試し実際にフィールド実験を行うことで,この結果が通文化的な結果であるのかということを検討することを目的とした。場所は日本の愛知県豊橋市で行い,協力者の女性は0㎝5㎝9.5㎝の3種類の靴を履き,実験参加者の前で気づかないふりをしてわざとパスケースを落とし,拾ってもらう回数と援助までの時間がヒールの高さによって違いが生じるのかということを検証した。結果は援助率と援助までの時間においてヒールの高さで違いは見られなかった。このことから考えられることとして文化差の他に実験の状況の統制の要因が挙げられる。傍観者効果の影響や,実験参加者の年齢まで視野に入れる必要があった。
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-PTA調査の結果を沈黙の螺旋理論から考える-
下島 裕美, 有馬 明恵, 竹下 美穂
セッションID: P3-20
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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沈黙の螺旋理論によると,自分が少数派であると認知したとき,少数派は孤立への恐怖から意見表明を控える。これにより多数派の意見は更に強度を増し,少数派はより一層少数派になっていく。近年マスメディアではPTAに否定的な意見が多く,PTAに肯定的な保護者(少数派)は,選択式項目の調査には回答しても自由記述欄に肯定的な意見を書くことは控えると予想される。本研究では公立小学校の保護者にインターネット調査を実施し,今後のPTAのあり方(選択式)と自由記述欄の回答有無の関連を検討した。χ
2検定の結果,「わからない」を選択した無関心層と「このまま存続すべき」を選択した少数派(PTA肯定派)は,「進め方を検討すべき」を選択した多数派(PTA改革派)よりも自由記述率が有意に低かった。少数派の意見は自由記述では埋もれてしまう危険性があること,少数派の意見を拾うためには選択式の質問が効果的である可能性が示唆された。
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佐藤 浩一
セッションID: P4-01
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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ライフストーリーの語りにおいて聞き手の存在が及ぼす影響について検討した。語り手は「子ども時代」「仕事」の二つのテーマで、2人の聞き手に個別にライフストーリーを語った。さらに各テーマについて、聞き手がいない状況で一人で語った。面接、一人語りともに時間は1時間であった。語りは全て文字化され分析された。主な結果は以下の通りである。(1)一人語りに比べて面接の方が、発話量が多かった。(2)面接では一人語りに比べて、言葉や時代背景に関する解説、前に述べたことに言及する表現、現在と対比させたりつなげたりする説明が多かった。(3)面接では、聞き手の知識を確認する質問、聞き手の対場に配慮したり聞き手を楽しませたりする発話や話題選択が見られた。また想起したにもかかわらずそのことに言及しないケースも多く認められた。(4)聞き手からの反応が多い場合には、語り手もそれに同意したり抵抗する等の反応を示した。
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坪井 寿子
セッションID: P4-02
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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お菓子の自伝的記憶について懐かしさや食育などの社会文化的側面に関する検討(坪井 2016)を踏まえ、幼児期及び児童期に経験したお菓子に関する最も印象に残るエピソードの想起について調べた。幼児期については大学生133名を対象とした結果、家族と一緒に食べたエピソードが比較的多く見られた。また、エピソードの各評定値の平均値は、鮮明度は4.0、重要度は3.9、頻度は3.5、当時の気持ちは4.9、現在の気持ちは4.7であった。一方、児童期についても大学生126名を対象に同様に調べた。その結果、友達と一緒に食べたエピソードが比較的多く見られた。同じく、エピソードの各評定値の平均値は、鮮明度は4.2、重要度は3.6、頻度は2.8、当時の気持ちは4.9、現在の気持ちは4.8であった。更に、お菓子の種類やエピソード時の感情状態なども検討し、お菓子の自伝的記憶に意義に関して幼児期と児童期との比較検討を行った。
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池田 和浩
セッションID: P4-03
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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本研究では、出来事の語り直しの3つの方略が自伝的記憶の意味づけに与える影響を調査し、記憶の再解釈と心的外傷後成長の成立の関連性を検証した。199名の参加者は、1つのネガティブな体験の記憶について、記憶の特徴に関する3つの指標に評定した:(1)Centrality of Event Scale, (2)主観的自伝的記憶評定, (3)Re-TALE。また、心的外傷後成長に関する尺度に評定を求めた:(1)ERRI, (2)Core Beliefs Inventory。分析の結果、ネガティブな自伝的記憶の語り直しには2つのステージが存在し、ネガティブ感情制御方略とポジティブ感情拡張方略に比べ、認知的転換方略が心的外傷後成長を促す促進因子となる可能性が示唆された。
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松本 昇, 望月 聡
セッションID: P4-04
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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自伝的記憶の具体性の減少(rAMS)は,特定の日時・場所で起こった具体的な記憶の検索が困難となり,その代わりに複数の出来事が集約された概括的な記憶を検索しやすくなることを指す。rAMSを説明しうる理論のひとつに自伝的記憶の検索誘導性忘却(RIF)がある。これまで,具体的な記憶間におけるRIFが認められてきたが,概括的な記憶と具体的な記憶との間でRIFが生じるかどうかは定かでない。本研究では,概括的な記憶の反復検索が具体的な記憶にRIFを生じさせるか検討した。研究1,2の結果から,概括的な記憶は,同一の意味的階層に含まれる具体的な記憶の検索を促進するが,異なる意味的階層に属する具体的な記憶にRIFを生じさせることが示唆された。これらの結果は,概括的な記憶の日常的な反復検索によってrAMSが生じる可能性を示している。
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兵藤 宗吉, 山城 大地
セッションID: P4-05
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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大学生を対象に「友人」、「中学校の友人」、「校則」、「中学校の校則」を手がかり語として与え、5分間で自伝的記憶の想起を求めた。自伝的記憶の想起は、文形式で書かせた。想起後に、想起した出来事の感情価(1:とても不快~5:とても快)を求めた。結果から、「友人」に関する想起数が「校則」のより有意に多かった。感情価については、快な出来事は、「友人」の方が「校則」より有意に多かった。不快、中立においては、差がなかった。
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―ブロック間で異なる活動画像シーケンスを使用した上での検討―
山城 大地, 兵藤 宗吉
セッションID: P4-06
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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先行研究では,ストーリーを有する一連の画像刺激を学習させた後にそれらの呈示順序に関する判断を行わせた際,順序判断の基準点よりも“時間的に前”を左側キー,“時間的に後”を右側キーで判断する条件の方がその逆のキー押し条件よりも反応が速くなることが示されている(空間-時間の刺激反応一致性効果)。しかし,先行研究ではキー押しに関する2つの条件で同一の画像刺激を用いていたため,2回目に行う条件では1度見た画像に対して再度判断を行うという手続き上の問題点があった。本研究では先行研究の問題点を修正した上で日本語話者における左右空間と時間的順序の関わりを検討した。その結果,空間-時間の刺激反応一致性効果は認められなかった。このことは,日本語話者において時間的順序と左右空間を関連付けているとは言えないものであったが,内観報告より順序判断課題中に注意をどこに向けているかが重要である可能性が示唆された。
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漁田 武雄, 山本 葵, 久保田 貴之, 漁田 俊子
セッションID: P4-07
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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本研究は,同じ背景写真を連続して提示した場合,背景写真文脈依存再認が生じるか否かを調べた。中島・漁田・漁田 (2015) は,ビデオ文脈依存再認を,手がかり負荷 1,6,18 条件について調べた。同一文脈を連続提示した場合,手がかり負荷6では再認弁別で文脈依存効果が生じたが,手がかり負荷18では生じなかった。手がかり負荷 18 条件で,学習時間を1/3にしたところ,再認弁別で文脈依存効果が生じた(久保田・中島・漁田・漁田,2016)。本研究は,中島ら (2015) のビデオの静止画を背景写真として,手がかり負荷 1,6での実験を行った。その結果,手がかり負荷1では文脈依存再認弁別が生じたが,手がかり負荷6では消失した。そこで,手がかり負荷6での学習時間を1/3にしたが,文脈依存再認は生じなかった。この結果は,背景写真を連続提示すると,文脈として機能しなくなることを示唆している。
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久保田 貴之, 小西 昂輔, 漁田 俊子, 漁田 武雄
セッションID: P4-08
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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久保田・張・漁田・漁田(2015)は,手がかり負荷(1と12)を操作し,手がかり負荷が大きい場合にのみ環境音文脈依存効果が生じることを示した。この結果が生じた理由として,久保田ら(2015)は環境音文脈がグローバル文脈として機能した可能性を指摘したが,その実験手続きには,手がかり負荷が大きい条件のもとで局所的文脈を実現する条件が含まれておらず,環境音文脈が局所的文脈としても機能するかは明らかにされていなかった。そこで本研究は,環境音文脈が局所的文脈として機能するか否かを検証することを目的とし,実験を行った。実験では,環境音文脈の提示順序をランダムとブロックの2条件で操作し,それぞれにおいて環境音文脈依存再生が生じるかを調べた。実験の結果,いずれの条件においても文脈依存効果が生起した。この結果は,環境音文脈が局所的文脈としても機能することを示唆している。
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―喚起された感情価と自己関連付け処理との比較―
藤田 哲也, 加藤 みずき
セッションID: P4-09
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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本研究では,藤田・加藤(2016,認知心)と同様に,情動喚起刺激が元々持っている属性としての感情価・覚醒度だけでなく,感情価や覚醒度の評定行動自体が符号化としての効果を持つか否かをさらに検討した。情動喚起する画像が提示されたとき,刺激によって参加者が喚起された感情価と,その刺激に対する自己関連の程度の評定を求め,その後の再生成績を比較した。その結果,感情価評定は,全体として自己関連付け処理と同程度の符号化の効果を持つことが明らかとなった。
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―喚起された感情価と物理的処理との比較―
加藤 みずき, 藤田 哲也
セッションID: P4-10
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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本研究では,藤田・加藤(2017,認知心; 前件発表)で得られた感情価評定の符号化の優位性の程度を確認するために,情動喚起する画像の物理的特徴として明るさ(brightness)の評定を求め,その後の再生成績を比較した。その結果,感情価評定は,全体として明るさ評定より良い再生成績をもたらすことが示された。ただし,2種類の評定の実施順によって感情価評定の優位性が異なり,感情価評定が先行する場合には,この優位性が消失した。
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情報セキュリティへの認知心理学からの貢献を目指して
上田 卓司, 高橋 優
セッションID: P4-11
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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現代社会においては,種々のコンピュータ・ネットワークサービスを利用するためのIDやパスワードが多く必要とされ,またそれらの適切な管理運用も求められている.管理運用についての規範は多いが,それらは人間の記憶をはじめとした認知特性とはかけ離れている.本研究ではパスワード様のランダム文字列を複数生成・記憶する課題を通じ,パスワードの生成運用方略を検討することを目的とした.実験において参加者は,実験結果開示用のものを含む架空のサイト/サービス用パスワードを8つ生成し,それらランダム文字列の性質について評定することが求められた.開始前の段階では記憶課題が含まれることは参加者に告げられていなかった.実験の結果,半数以上の参加者において使い回し等,適切とされるパスワード管理運用規範からの解離が認められた.これらの結果について認知特性及び情報セキュリティの観点から論じられた.
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押尾 恵吾
セッションID: P4-12
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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2つの語を同時に学習する対連合学習についての研究は多くみられる(e.g., Reese,1970;Rohwer, 1973)。また,単語を読み上げるより自ら生成したほうが,記憶成績が良いことを示した研究も多くみられる(e.g., Slamecka & Graf,1978;Graf,1980)。しかし,上記の2つを統合した,自己生成を踏まえた対連合学習について検討を行った研究はみられない。そこで本研究では,架空の外国語(手がかり語1,ex. セントヤブル)と,その和訳として実験上で付した和訳語(手がかり語2,ex. シャツ)の学習をする際,和訳語とカテゴリ的に関連性の高い関連語(ターゲット語,ex. ズボン)を呈示した場合より,学習者に関連語を自己生成させた場合に,外国語と和訳語の連合が強まるか検討した。テストとして架空語と和訳語のマッチングテストを使用した結果,呈示条件と生成条件の差はみられなかった。
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林 拓弥, 日根 恭子
セッションID: P4-13
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
フリー
対象を記憶する際,聴覚情報のみの記銘より,視聴覚のように二つのモダリティを用いて記銘した方が,記憶成績が良いことが知られている(福田・四日市,1992)しかし視覚情報が表す対象が一意ではない場合,記憶にどのような影響が生じるかは不明な点が多い.本研究では,表す対象が一意とならない視覚情報として形式ジェスチャに着目し, ジェスチャの有無が記憶成績へ影響を与えるか検討した.実験では会話中に,6つの固有名詞が聴覚提示され,3つの固有名詞は,その形状を表した形式ジェスチャも視覚提示された.その後,固有名詞およびジェスチャの記憶課題を行った.その結果,ジェスチャを伴った方が伴わなかった場合に比べて,固有名詞の記憶成績は高かったが,固有名詞の想起の有無によるジェスチャの記憶成績には差は見られなかった.これより,ジェスチャは,それ自体の想起の有無に関わらず,固有名詞の記憶成績を促進する事が示唆された.
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向居 暁
セッションID: P4-14
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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本研究の目的は、県の形と県名の対連合学習において,奇異性・新奇性の高いと考えられる県の形のイラストの有効性を検討することであった。その結果,県の形と県名の対連合学習において、奇異性・新奇性の高い県の形のイラストは、県名の学習に効果的であるとはいえないどころか、逆効果であることがわかった。この結果は,都道府県の形のイラスト化によって県名の記憶の促進効果を見いだせなかった向居(2016,教心発表)と一致したものであった。
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安 珠喜, 南 基春
セッションID: P4-15
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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効果的学習に関しての研究は、いろいろな分野で数多く行われてきたのである。効果的学習というのは時間と努力を最小限にし、長期記憶に残らせる学習を意味するのである。この論文では、既存の研究で判明された仮設の中、テストを通じた学習(Learning by Testing)と時間の間隔を置いて学習する方法(Spaced Learning)を用いて学習実験を行った。これまではそれぞれの学習方法で実験参加者に学習させ、その結果を比較した研究は多かったのだが、二つの学習方法を一人の実験参加者に適用した研究は少ないのである。二つの学習方法で情報がより短時間で長期記憶に残るのではないかというのを見るのが目的である。実験の結果、学習方法ペアによって違いがあることが判明された。
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中村 紘子, 川口 潤
セッションID: P4-16
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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擬人化とは人以外の対象に人特有の性質を知覚することである。孤独感は擬人化の促進要因の一つであり,社会的つながりの欠如は人とのつながりを希求させ,人らしさを知覚させやすくする (Epley et al., 2007) 。ノスタルジックな記憶はこうした孤独感と関連する自伝的記憶であり,社会的つながりに関する内容を含みやすく,孤独感を低減させることが示唆されている (Wildshut et al., 2010)。よって,(1)ノスタルジックな記憶の想起は孤独感を低減させ対象の擬人化を抑制し,一方,(2)ある対象についてのノスタルジックな記憶の想起は対象との社会的なつながりを知覚させ,その対象の擬人化を促進することが考えられる。実験1ではノスタルジックな記憶の想起はガジェットに対する擬人化を抑制することを示し,実験2では対象についてのノスタルジックな記憶の想起は対象の擬人化を促進する傾向があることを示した。
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長 大介
セッションID: P4-17
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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記銘した情報を検索(テスト)することは記銘した情報を繰り返し学習することよりも長期的な保持を生み出す。さらにこの保持への促進効果は学習とテストの組み合わせ方によって異なる(Karpicke & Roediger, 2007)。本研究ではテスト後に行う学習がフィードバックとして機能することを考慮した学学習/テストスケジュールの長期的な保持に対する影響を検討した。実験参加者は割り振られた学習/テストスケジュールにしたがって異なる順番で学習とテストをそれぞれ2回ずつ取り組んだ。その後,保持期間ごとに最終テストとして自由再生テストを実施した。実験の結果,学習/テストフェイズのテストでは学習/テストスケジュールの違いが見られたが,最終テストではこの違いは見られなかった。この結果は学習中に行うテストが長期的な保持を促進するか否かは,学習中に行うテストの成績によって決まる可能性が示唆している。
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―検索する情報量の影響―
田中 紗枝子, 宮谷 真人
セッションID: P4-18
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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ある学習内容について,事前にその内容を検索しようとすると,たとえ検索に失敗しても後の学習が促進されることが知られており,failed retrievalと呼ばれる。Failed retrievalの生起メカニズムについては明らかにされてないが,事前に検索することで関連した情報が活性化されるためであるとされている。また単語対を用いた場合,検索した直後に正答フィードバックを行わなければ学習促進が生じず,これは活性化される情報が少ないためだといわれている。本研究では学習前に検索する情報の量と正答フィードバックまでの遅延時間を操作し,学習促進に及ぼす影響を検討した。その結果,情報量を増やしても,従来の手続きに比べて学習は促進されず,また正答フィードバックとの交互作用もなかった。このことから,failed retrievalは検索時に意味的な活性化が生じることが原因ではない可能性が示唆された。
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三浦 大志
セッションID: P4-19
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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リベレーション効果は、アナグラムなどの認知的課題を行った直後に再認判断を求めると「old (学習フェイズで見た)」と判断されやすいという効果である。本効果は再認判断基準のシフトにより生起すると考えられているが、判断基準の個人差がリベレーション効果の生起に及ぼす影響は明らかにされていない。そこで本研究では、リベレーション効果の生起を確認する通常の記憶テストに加え、old項目がnew項目より多く提示され寛大な判断基準が求められるテストを行った。これにより、判断基準のシフトの個人差を測定した。その結果、判断基準のシフトが比較的小さかった群ではリベレーション効果が見られなかったが、シフトが大きかった群では効果が見られた。リベレーション効果の生起不生起には個人差が存在し、その個人差は課題要求に応じて判断基準を調整するというメタ認知的コントロール機能の有無によって生じている可能性が示された。
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西山 めぐみ
セッションID: P4-20
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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境界拡張(boundary extension)とは,写真の記憶を想起する際に,記銘したオリジナルの写真の境界線を越えた領域までも想起してしまう現象である(Intraub & Richardson, 1989)。西山(2013)は学習―テスト間に想起を伴う課題を行い,保持段階における記憶表象の変容が境界拡張に影響を及ぼす可能性を示した。そこで本研究は,学習―テスト間に写真の再認判断および好意度評定を求め,これらが境界拡張に及ぼす影響について検討を行った。その結果,再認による影響はみられなかったが,好意度評定条件において統制条件よりも有意に大きな境界拡張が生じることが示された。単純接触効果からも示唆されるように,好意度評定には保持されている記憶が意識的・無意識的に利用されると考えられる。したがって,本研究により保持段階における記憶表象の変容が境界拡張の一因となっている可能性が示されたといえる。
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転移不適切処理シフト説の検討
村島 楓, 箱田 裕司
セッションID: P4-21
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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言語隠蔽効果の原因として有力な説が転移不適切処理シフト説である。実際,Macrae & Lewis,(2002)の顔再認の実験で言語化の代わりにNavon文字を用いた結果,再認課題に適した形態的(全体的)処理を誘導するGlobal処理群はControl群より後の再認成績が向上し,言語化同様に特徴的(分析的)処理を誘導するLocal処理群はControl群より再認成績が低下すると示されている。嗅覚刺激でも言語隠蔽効果が実証されているため(村島・箱田・松浦, 2015),これも転移不適切処理シフト説で説明できると期待される。実験はNavon課題の処理時間を3分・5分・10分と設定し,それぞれでNavon文字の処理モード間に再認成績の差が見られるか検証した。その結果,処理時間が3分と5分の場合のみ,処理条件間に有意な差が見られ, Global処理群がLocal処理群とControl群より成績が向上した。
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島根 大輔, 伊東 裕司
セッションID: P4-22
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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これまで,DRMパラダイムを用いた虚記憶研究では,連想活性化による虚記憶生起の原拠の一つとして,リスト提示によるルアーの連想確率である逆方向連想強度(BAS)が測定され,生起確率との連関が検討されてきた。しかし,画像のDRMリストを用いてBASを測定した研究は無く,測定方法も確立されていない。記憶の二重符号化理論によれば,言語的情報と非言語的情報は別個のネットワークを形成しているため,連想活性化過程におけるネットワークの相違を検討する必要がある。そこで本研究では,同じ項目からなる単語と画像のDRMリストを用い,BASを測定,比較することで,各刺激属性におけるネットワークの相違を検証した。画像のBASの測定において,描画による反応を求め,非言語的なネットワークの活性化を促す方法を採用した。検証の結果,単語と画像のBASが異なることが示され,ネットワーク及びその連想活性化過程の違いを考察した。
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ー処理資源を統制した実験事態による検討ー
山根 嵩史, 徳岡 大, 大隅 尚広, 中條 和光
セッションID: P4-23
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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Murayama & Elliot (2011) は達成目標が学習方略選択に影響を与えるという仮説を提唱し,記憶課題において,遂行目標では維持リハーサルが,習得目標では関連性処理が促進されることを示した。DRMリストを用いてこれを追試したTokuoka, Yamane, and Osumi (2016) では,遂行よりも習得目標下で虚記憶が多く生起し,仮説が支持された。しかし,再度の追試を行った山根・徳岡・中條 (2016) では結果は再現されなかった。両者の手続きは集団実験と個別実験の違いがあり,個別実験を用いた山根ら(2016)で参加者の心的努力が高まった可能性がある。そこで,項目数を半分にした2つのDRMリストを合わせたものを記銘リストとしてCLに集まる処理資源を減少させたところ,個別実験でも,特性としての達成目標に関してMurayama & Elliot (2011) の仮説を支持することが示された。
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柏原 志保, 金山 範明, 西本 美花, 宮城 円, 楊 ??, 宮谷 真人, 中尾 敬
セッションID: P4-24
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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本研究の目的は,他者行為の観察により生じる自身の行為遂行に関する虚記憶 (observation inflation: OI) の生起に対して,観察時の他者行為の予測しやすさが及ぼす影響を検討することであった。実験は,行為文を実演又は音読する記銘段階,他者の行為をビデオを通して観察する観察段階,2週間後に記銘段階の項目に関するソース判断を行う再認段階の3段階で構成した。観察段階で用いる観察ビデオの構成に関して,(1) 行為動画前に行為推測の手がかりになる静止画を呈示し他者行為の予測を促進する条件,(2) 行為動画前に動画の行為の予測には結びつかない静止画を呈示し他者行為の予測を阻害する条件,(3) 行為動画を先に呈示し動画視聴前に行為の予測が生じない条件の3条件を設定した。その結果,他者行為の予測と結果が一致しないとOI自体が生起せず,その生起の程度は予測のしやすさによらないことが示された。
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指示忘却の潜在記憶テストへの影響
多賀 禎, 川口 潤
セッションID: P4-25
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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指示忘却とは,学習内容の忘却を求めるとその後の記憶成績が低下する現象である。代表的な忘却パラダイムのthink/no-thinkを用いた研究では,忘却が視覚の知覚表象の活性化レベルに影響を与えることが示されている。そこで,本研究では他の代表的な忘却パラダイムである指示忘却課題(項目法)を用いて,忘却教示の潜在記憶テスト成績への影響を検討した。まず学習段階では,学習画像(顔画像)を単独呈示した直後にそれが学習項目か忘却項目かを示す教示を与えた。学習教示では直前に呈示した顔画像を覚えること,忘却教示では忘れることを求めた。干渉課題の後,潜在記憶テストとして顔画像の正立倒立判断課題,顕在記憶テストとして再認課題を行った。実験の結果,指示忘却効果は顔画像再認ではみられたが,正立倒立判断ではみられなかった。これらのことから,指示忘却は視覚の知覚表象の活性化レベルには影響を与えない可能性が示唆された。
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小林 正法, 大竹 恵子
セッションID: P4-26
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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科学技術の発展により様々な情報を外部記憶装置に容易かつ迅速に保存することが可能となった(例. スマートフォンによる写真撮影)。このような外部記憶装置の利用はヒトの記憶にも影響を与える。Henkel (2014)は,写真撮影によって長期記憶として保持される必要がなくなった情報は,忘却されることを示した。これは外部記憶装置への保存による認知的負荷の低減を示唆している。これに関連して,本研究では,ニュートラル語に比べて,記憶成績が高いとされる感情語(e.g., Kensinger, 2004)に対し,写真撮影による忘却が生じるかを検討した。指示忘却手続き(Bjork, 1970)を参考とした実験を実施した結果,写真撮影をした単語の再生成績が低下し,その程度に感情価の影響は少なかった。本研究により,感情語という記憶されやすい情報に対しても写真撮影による忘却が適用されることが示唆された。
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-実験室場面での再生予測とリバーミード行動記憶検査の成績との関係-
清水 寛之
セッションID: P4-27
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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実験室場面と日常記憶場面でのメタ記憶の機能的役割を明らかにするために、大学生92名を対象に、実験室場面として自由再生課題での再生成績と再生予想のズレの多少をもとに、リバーミード行動記憶検査の成績に反映される日常場面での記憶能力の個人差を評価した。
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Type1・Type2信号検出理論を用いた生理心理学的検討
佐藤 安里紗, 柴田 みどり, 伊藤 友一, 寺澤 悠理, 辻 幸樹, 田仲 祐登, 梅田 聡
セッションID: P4-28
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
会議録・要旨集
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自身の能力についての知識であるメタ認知に関する研究において、確信度の正確性の観点からType2信号検出理論が近年注目されている。本研究では脳波を用い、知覚・記憶の二課題に対しType2信号検出理論を用いた検討を行った。実験では、知覚課題については、2つの刺激のうちより明るく見える方の位置を同定する課題を行い、記憶課題については、50単語をリストで一挙に提示したのち、再認を行った。それぞれ刺激提示時の事象関連電位とその刺激に対する確信度の関連性について検討した。結果、両課題で確信度が高いほど400ms以降特徴的な脳波成分が見られた。また記憶課題において、確信度が正確な人ほど400ms前後に特徴的な陰性成分が見られた。従って、刺激提示の段階において知覚判断に対しても記憶判断と同様の時間帯に確信度に関する処理が行なわれていること、その時間帯の処理の深さが正確性に影響していることが示唆された。
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Ryo Ishibashi, Taiji Ueno, Satoru Saito, Tatsuya Mima, Matthew A Lambo ...
セッションID: P4-29
発行日: 2017年
公開日: 2017/10/16
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事物の意味を認知することは人間の持つ高次認知機能のうちでも特に中心的な機能の一つである。本研究では経頭蓋直流電流刺激(tDCS)を用いて、近年意味認知の中枢と考えられている大脳皮質左前側頭葉(ATL)の活動を促進したときに日本語単語意味認知能力の向上が見られるかどうかを検討した。結果としてtDCSによる類義語の判断成績向上が認められ、この効果は事前調査で難易度が高いとされた試行群において得に顕著であった。本知見はATL領域と意味認知との関係についてその因果的関係をさらに強力に立証すると同時に、意味認知障害の臨床においてtDCSが意味認知能力の維持・向上の補助手段として用いられる可能性について示唆するものである。
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