大学入試研究ジャーナル
Online ISSN : 2187-6762
Print ISSN : 1348-2629
ISSN-L : 1348-2629
32 巻
選択された号の論文の45件中1~45を表示しています
  • 倉元 直樹, 宮本 友弘, 長濱 裕幸
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 1-8
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2021(令和3)年度入試は特別な年となった。高大接続改革の開始予定年度であったが急な方針転換の上に,突然,COVID-19の流行に見舞われ,その中で受験生も実施側も未経験の対応に追われたからである。本稿は東北大学が個別大学としてコロナ禍の下で万全な入試実施を模索するために,AO入試Ⅱ期,Ⅲ期及び一般選抜を対象にして行った高校調査の結果である。2020(令和2)年秋の時点では,筆記試験に対しては地方会場の設置,面接試験はオンラインの希望が多かった。コロナ禍の下で初の入学者選抜を終えた現在,貴重な経験を踏まえ,受験生保護の大原則に基づく「ウィズコロナ時代」の大学入試の検討が喫緊の課題となるだろう。

  • ――高校生の主体性向上を目指して――
    河西 奈保子, 磯 尚吾, 中永 早映, 近藤 伸彦, 松田 岳士
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 9-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    東京都立大学が行う高大連携活動が高校生に与える影響を評価する尺度の開発を行った。高大連携活動が,高校生の学習意欲・自尊感情・進路意識・学習習慣・好奇心・主体的な態度のそれぞれを向上させ得るとの仮説のもとで質問紙を作成した。その回答をもとに因子分析を行ったところ,プレ調査では4因子しか得られなかった。引き続いて行った本調査では質問項目を変更することで,高校生に与える影響を6つの因子,「学習方略の積極的な使用」,「好奇心・探究心」,「進路意識」,「教師との関係」,「自尊感情」,「報酬への期待」で表現できることがわかった。今後,本尺度を用いて,高大連携活動が高校生に与える影響の評価を目指す。

  • ――福井大学工学部の事例――
    大久保 貢, 中切 正人, 田中 幸治
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 17-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    主な入学年齢である18歳人口が減少するなか,志願者,入学者の確保に苦心している大学にとってこれまでとは異なった新しい入学層を確保することは喫緊の課題である。高大接続改革の下,これまでと異なる新しい入学層を獲得するには大学側が高校側に探究的な学びへの支援を行うことが大変重要である。大学における探究プロジェクトの実践と高校における課題研究への支援を通して地元高校生の入学者確保を図った。

  • ――入試のDXに向けて――
    西郡 大, 園田 泰正
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 23-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    分離分割方式で後期日程を実施する場合,高い欠席率によって多くの空席が生じる。そのため,必ずしも効率的とはいえない試験運用を長年にわたり実施してきた。この課題を解決するために,インターネット出願によって電子化された受験者情報を活用して,受付順配席方式による試験運営を実現した。その結果,試験室数は20室の削減(前年度比57.4%),座席総数は1,224席の削減(前年度比54.5%),試験監督者数は44名の削減(前年度比72.8%),試験運営をサポートする事務職員数は25名の削減(前年度比43.2%)となり,実施体制が大幅に効率化され,学内関係者からも高い評価が得られた。この取り組みは,ICTを活用して既存の試験運用に変革をもたらしたという点において,大学入試のDXとして捉えることができる。

  • 安野 史子
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 29-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    我々は,これまでにCBTの総合的研究として,CBTで測れる能力を明確にすることを目指し,デジタルの特性を活かした教科・科目ベースの問題を試作し,CBTシステムも併せて開発し,継続的に調査研究を行ってきている。その一環として,開発した数学の問題を使って,高校生を対象にモニター調査を実施してきている。そこで本稿では,モニター調査で得られた手書きストローク解答データの時系列ログを使って,解答変更回数,解答変更の正誤履歴,解答回数と総得点の関係性について,探索的に分析を行った結果を報告する。PBTでは解答の履歴が不明だが,CBTでのログを活用することにより,解答の過程等が明らかになり,得点に現れない新たな能力評価の測定につながる可能性や,CBTにおける制御の方向性が示唆される。

  • ――探究学習の成果を測定するための指標づくりを目指して――
    池田 文人, 岩間 徳兼, 成田 秀夫
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 35-42
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2022年度から施行される高等学校学習指導要領では「探究」の名が付く科目が7つ新設される。大学における研究力を高めるためにも,高校での探究学習の成果を大学入試において適切に評価することは重要な課題である。探究学習を通じて知識・技能を論理的思考により活用することが目指されるが,研究にとって真に重要なことは,リサーチ・クエスチョンとして科学的にものを問う能力である。しかし問うこと(質問)を評価する手法は見当たらない。そこで本研究では論理的思考を問う力を測定するQQTest を開発し,探究活動に取り組む約200名の高校1,2年生に試行した。本テストが各高校の特徴を識別する能力を有し,一般の学力テストとは異なる能力を測定しうることが示唆された。しかし質問数が少ないことが課題であり,質問の仕方の学習支援から取り組む必要がある。

  • 林 篤裕
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 43-48
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    大学入試の合否判定における1点の重みの意味合いは,特にボーダーライン近傍で予てより議論があった。1点かそれ未満の差異によって合否が分かれるため,その微小な違いに疑念を持たれてきた。この問題は2014年12月に発表された中教審答申でも取り上げられ試験成績の段階表示が提案され,これを受けて大学入学共通テストでは従来の素点に加えて段階表示の成績も提供されるようになった。そこで,共通試験と個別試験を合わせて合否を判定する形態を採っている入試(主には国立大学)において,評価資料として素点に代えて段階表示を導入する際の利活用の方法を模索することにした。素点と段階表示の得点の散らばり具合に注目し,その標準偏差の違いが合否判定に及ぼす影響を検討した。

  • ――卒業生調査からの検討――
    遠藤 健
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 49-55
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本論は,早稲田大学で実施された卒業生を対象とした調査の分析を通して,入試区分別に在学時の学びとアウトプットの関係を検証する。近年,入試選抜方法が多様化するなかで,一般入試以外への批判言説がみられる。本論では卒業生調査から在学時の学びとアウトプット間の関係を検証した。I-EOモデルを基にした分析から,在学時の学びはアウトプットに繋がっている。特に,ほぼ全ての入試区分において積極的な学習行動は,能力獲得に寄与している。分析全体を通して,一般入試以外の入学者の在学時の学びの熱心さや学習成果は一般入試と比較して決して低いものではなく,むしろ高いものもあることが示された。ただし,調査の回収率は低く,回答者の偏在に留意も必要である。

  • ――卒業年度の学生・教員双方の追跡調査の分析――
    井ノ上 憲司, 山下 仁司, 大友 弘子, 川嶋 太津夫
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 56-61
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    大阪大学では2017年度入学者選抜より後期日程の募集を停止し,全学的なAO・推薦入試(現総合型選抜・学校推薦型選抜)を開始した。本研究は,この変更から第1 期目の入学者が2020年度4年次になったことから,AO・推薦入試入学者(悉皆)と一般入試の入学者(抽出)に対し追跡調査を行い,その結果から多面的・総合的評価による入試の効果の検証を行ったものである。今回新たに行った指導教員による評価に加え,GPA,入学時アンケートを統合的に扱い,特に本学の教員の強い関心事である研究者の素養(研究への主体性や学問意欲)に着目し分析した。その結果,一般入試の入学者に比べ,AO・推薦入試の入学者の方が研究志向の項目で高いことがわかった。また,教員の評価と学生の評価を比較したところ,能力についての質問では総じて,学生のほうが厳しい(低い)評価を行っていることがわかった。

  • ――食農学類に関する対面型広報の実践報告――
    新藤 洋一
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 62-68
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    志願者数や倍率の確保を目的とした「入試広報」が機能しなくなりつつある現在では,求める人材像,学びの必然性,教育研究の特徴および育成する人材像等をステークホルダーに対して広報(パブリックリレーションズ)することが求められている。本稿は,被災地域の復興を担う人材育成を掲げて設置された食農学類の新設広報に関する効果検証を報告したものである。従来の「入試広報」だけでなく「広報(パブリックリレーションズ)」を機能させ,主に対面型広報の手段を活用し展開した活動について,「入試結果」「入学者への調査結果」「志願実績のある高等学校教員へのインタビュー結果」から分析を行い,「広報」の有効性についての確認や成果と課題などを整理している。一定の成果は確認できたものの,「入試制度」「学力問題」「県外への対応」など課題も明らかとなっている。

  • ――新入学者アンケートから――
    宮本 友弘, 久保 沙織, 倉元 直樹, 長濱 裕幸
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 69-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,東北大学志望を促進する要因を明らかにするために,令和2年度入学者全員に実施された「新入学者アンケート」を新たな視点から分析した。受験理由の自由記述に対するテキストマイニングからは,「研究」と「自分」が重要なキーワードであること,性別,出身地域,学部の文理別,選抜の種類によって重視する要素が異なることが示唆された。また,受験に際して重視する相談相手を分析した結果,母親と進路指導の先生が重要な役割を果たしていることが明らかになった。以上に基づき,どのような情報を誰に訴求するかを中心に今後の広報活動のあり方を考察した。

  • ――志願者と入学者の回答傾向の違いを踏まえた出願時アンケートの意義――
    平井 佑樹, 一之瀬 博
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 77-83
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    信州大学では,2019(平成31)年度入試より,本学入試広報活動の成果を検証することや志願者動向を調査することを目的として,インターネット出願時アンケートを実施している。本アンケート結果を用いた分析として,これまで「出願大学決定における高校教員の影響」に注目してきた。本研究では,より俯瞰的な分析として志願者(未入学者+入学者)と入学者間の回答の差異について調査し,本アンケート導入の効果を検証する。結果として,多くの項目で両者に大きな違いは見られなかったものの,「本学の情報を得るために利用したもの」という点で違いが見られたことから,本アンケートの導入に一定の効果があることを確認した。

  • ――地域と進学実績を説明要因として――
    末永 仁, 倉元 直樹
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 84-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2016年度入試より私立大学定員管理の厳格化が始まった。受験生の志願動向に与えた影響について,本格的な検討はこれからである。本研究では,志願者が多く難易度も高い東京都内の大学への合格者を指標として,定員管理厳格化前後における東日本(北海道,東北,関東)の公立高校の志願動向を分析した。2016年度入試以前6年間と以後5年間の平均値を比較した結果,北関東と東北の中核都市,首都圏・東京の郊外の高校にダメージが見られたが,逆に首都圏・東京の都市部の高校は相対的に大きく実績を伸ばしていた。高校の進学実績や国公立大学への進学動向も加味すると,首都圏・東京23区にある主な高等学校と北関東・東北・北海道にある主な高等学校の間に顕著な格差拡大傾向が看取された。

  • 石井 志昂, 吉村 宰
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 92-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    ペーパー・インタビュー(面接に代わる筆記試験)の評価基準のよりよい作成方法を探るため,高校生を対象とした試行試験で得られた答案を,2通りの評価基準で採点し結果の一貫性を検討した。評価基準はいずれも5段階で,1,3,5 の各段階に該当する答案の特徴が書かれている。大学院生5名に採点を依頼し,終了後,評価基準に関する意見を聴取した。得られた意見を参考に評価基準を修正し,同様に別の大学院生5名に採点の依頼,及び意見を聴取した。その結果,各評価段階(1~5)に該当する答案の特徴が具体的すぎると採点が困難となること,採点前に採点者同士で評価合わせを行うことで,得点のばらつきが抑えられることが明らかとなった。

  • ――作題支援システムの構築を目指して――
    久保 沙織
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 98-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,良質な問題の効率的かつ継続的作成に資する作題支援システムの構築を目指すために,個別試験の作題関連業務に従事する大学教員への面接調査のデータから,業務を規定する要因を探索的に抽出し,その背後に仮定される認知プロセスに関する仮説を生成することである。作題関連業務はその手順によって,①作問,②配点・採点基準の設定と採点,③試験実施後の評価,の3つのフェーズに分類でき,各フェーズを規定すると考えられる複数のカテゴリが抽出された。認知プロセスの仮説モデルにおいては,学問分野による違いに加えて,個人のパーソナリティや経験に依拠する信念も一定の影響力を持つ要因であることが示唆され,作題支援の具体的方策についても明確になった。

  • ――九州工業大学における総合型選抜Ⅰの事例をもとに――
    大野 真理子, 花堂 奈緒子, 播磨 良輔
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 106-113
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    九州工業大学では,新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況を鑑み,令和3年度総合型選抜Ⅰにおいてオンライン入試を実施した。本研究では,受験者がオンライン入試をどのように捉えたかを分析することを通じて,その意義と課題を明らかにするため,総合型選抜Ⅰの合格者に対し質問紙調査を行った。結果,自宅や学校等で受験できたことを前向きに捉える受験者が大半を占めた。また,オンライン接続テストの実施は,端末の操作方法等の試験当日までに想定可能な受験者の不安の軽減に一定の効果があったことが示された。一方で,試験当日の予期せぬトラブルや不正行為をする受験者への懸念等,事前に対処できない事象への不安が一部の受験者に残ったことも示された。

  • ――2021年度私費外国人留学生選抜(4月入学)を中心に――
    翁 文静, 立脇 洋介
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 114-121
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    私費外国人留学生選抜(4月入学)は基礎学力や語学力に加え,対面での面接や学力試験が課され,「出願と受験のハードル」が高いと言われている。このような状況の下,2019年に発生した新型コロナウイルス感染症により,基礎学力や語学力を測る試験が中止,変更され,また国境を超えた移動も制限された。本稿では,国立大学の私費外国人留学生選抜(4月入学)におけるCOVID-19への対応実態を明らかにし,「出願と受験のハードル」の変化の有無について考察した。その結果,多くの国立大学が2020年度と同じように2021年度の私費外国人留学生選抜を実施していたことがわかった。志願者・受験者から見て,事実上,「出願と受験のハードル」が上がったことが推察される。

  • ――国語・英語リーディング・英語リスニングを共変量に用いた場合――
    荘島 宏二郎, 橋本 貴充, 宮澤 芳光, 石岡 恒憲, 前川 眞一
    原稿種別: 原著
    2022 年 32 巻 p. 122-129
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    令和3(2021) 年1月に実施された第1 回大学入学共通テストでは,公民3科目(現代社会,倫理,政治・経済)において得点調整が実施された。3科目の最大平均点差が20点以上つき,かつ,その差が試験の難易差に基づくと判断されたためである。しかし,公民3科目の受験者集団はそれぞれ別集団であり,3科目の平均差には受験者集団の学力差も反映している。本研究では,傾向スコアを用いて集団間の学力差を事後的に調整した上での科目間平均差(分布差)について報告した。分析の結果,18.7点あった科目間平均差が14.8点まで縮小した。したがって,令和3年度公民科目の難易差は大きく不揃いでなかったと言える。しかし,分析のときに採用した各種の仮定や条件を鑑みたとき,難易差が15点であると断定することはできず,現実に20点以上の平均差がついている状況下で,得点調整を行ったという判断は適切であったと思われる。

  • ――進学中堅校の調査結果から見られる特徴――
    竹内 正興
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 131-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究は,進学中堅校に在籍する高校生の志望学部系統選択の特徴について,アンケート調査から検討することを目的とする。調査の結果,学部系統の志望度(志望の強さ)については,医・歯・薬学,保健学,教育学といった資格取得が就職に直結する学部系統のスコアが高い結果となった。一方,志望理由については,「学びたい学部系統だから」が学部系統に関わらず高い傾向が女子を中心に見られた。また,保健学系統を中心に,生徒本人の意見と家族の意見の双方が重視される傾向が窺えた。先行研究では,高校階層によって進路意識が分化し,進学中堅校の生徒の進学意識の変動が大きいことが指摘されているが,本調査においては,大学入学後の学びや就職,資格取得を意識して学部系統を志望する傾向が見られた。

  • ――令和2度入試~令和3年度入試を対象に――
    山田 美都雄
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 137-142
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,国立の教員養成系大学において,高大接続改革期の入学者選抜方法にどのような変更が生じているのか(あるいは生じていないのか)を主題として取り上げる。これは,国主導の入試改革に対する影響性を評価することに加え,実体的に国立教員養成系大学の入試の在り方がどのような変化を遂げようとしているのかを観察する試みでもある。分析の結果,国立の教員養成系大学においては,令和2年度入試から令和3年度入試にかけて,一部の大学における一般選抜後期日程試験の廃止と総合型選抜の新規実施といった現象が確認された。また,一般選抜において,面接や文書系等資料を用いた「主体性等評価シフト」への強まりが明らかとなった。

  • ――「オンライン個別相談会」を中心に――
    吉田 章人, 並川 努, 坂本 信
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 143-149
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2019年度末から続く新型コロナウイルスの感染拡大によって,2020年度は従来の入試広報活動の多くが中止を余儀なくされた。そうしたなかで,新潟大学(以下,本学)では入試広報活動の多くを非対面型に切り替えて実施してきた。本稿はこうした本学が実施した非対面型の入試広報活動を概観した上で,そのなかでも本学が2020年5月から9月まで開設していた「オンライン個別相談会」について検討した。相談者は決して多いとは言えず,集客の面では課題を残したものの,高校3年生の相談者が多く,また県外からの相談者も比較的多かった。さらに,相談者の8割以上が実際に本学に出願しており,少人数ではあるが,本学への受験を前向きに考える相談者が多かったことがうかがえる結果であった。

  • 一之瀬 博, 木村 建, 海尻 賢二, 平井 佑樹
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 150-156
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    18歳人口減少の影響が顕著に現れ始めている中,各大学では学生募集に係る入試広報活動が活発に行われている。しかし,2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響により,これまでの実績と経験によって培われてきた多くの入試広報活動が実行不能状態となった。この未曽有の事態に対し,各大学はオンラインを中心とした活動にシフトせざるを得ない状況になった。本稿では,2020年度に信州大学アドミッションセンターが取り組んだ入試広報活動について報告する。その後,新たに実施したWeb進学相談会の参加者の約半数が本学に出願している結果が見られたことなど,一定の効果があったことを示す。

  • 田中 光, 山田 恭子, 浦崎 直光
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 157-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    琉球大学では志願者の獲得と高大接続・高大連携の一環として,沖縄県内の高校を対象に訪問型の大学説明会を行っている。しかし,令和2年度は新型コロナウイルスの感染拡大を受け対面での実施を中止し,Zoomを利用した双方向型のオンライン大学説明会を実施した。大学説明会には,沖縄県内41の高校が参加し,アンケートでは1084人分の回答が得られた。アンケート結果からは9割以上の参加者が大学説明会に満足しており,参加により志願意欲も高い状態となっていることが示された。 オンライン大学説明会はインターネット環境の制限があるものの,距離等の制限が少ない利点がある。 今後は訪問型と並行して,利点を活かしたオンライン大学説明会を開催することが考えられる。

  • 三好 登
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 165-172
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    大学が学生募集・入試広報に取り組むことが,18歳人口の減少に伴い,ますます重要な課題となっている。大学の学生募集・入試広報とし,オープンキャンパス,大学説明会や,模擬授業があるが,COVID-19が発生し,現在ではオンラインで実施している。

    本研究では,H大学を事例としてCOVID-19禍における高校生の進学希望の変化に,オンラインオープンキャンパスを通じて,「全学関連情報」「学部関連情報」がいかに影響を及ぼしているのか,検証する。分析結果から,COVID-19 前は学部関連情報を十分に享受し得たときに高校生の進学希望が変化していた一方で,COVID-19 禍ではこれに全学関連情報も影響を与えていることがわかった。

  • 深谷 和義, 小杉 裕子
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 173-179
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    小学校教員養成を主体としている私立大学教育学部において,入学後の希望により,中高音楽免許を取得する学生の特徴を,入試区分と教員就職状況を中心に調査・分析する。その結果,音楽実技を含む入試区分を入れたことで,音楽免許取得の希望者が増えた可能性があること,前期入試での入学者に小学校教員になる学生が多いこと,音楽実技入試で入学した学生や大学でのGPAが高い学生が小中学校音楽教員に多く合格していること等がわかった。また,小学校免許に加えて音楽免許を取得したことに対して,卒業生の多くが多様な観点でよかったことを感じていることがわかった。

  • 関 陽介, 植野 美彦
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 180-185
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    徳島大学アドミッション部門では,A学部を対象として入試分析と追跡調査の結果に基づく入試改善を実施している。2021年度以降はこの取り組みを全学展開する計画であるが,学部内で円滑な調査・分析作業を支援する環境を構築することで,入試さらには教育への関心が高まり意欲的な改善に繋げられる可能性がある。そこで,学部内での利用を想定して,入試改善に向けた入試分析と追跡調査の支援システムを開発した。具体的には,入試・教務データを対象にした平均や共分散比等の統計的な分析,区分別の配点比較や学期単位のGPA遷移等のデータの一覧化・定量的な比較・時系列変化に対応した可視化を実現した。そして,開発したシステムを本学に導入することで,分析結果に基づくB学部の入試改善が行われた。

  • ――子どもの性別により関与度等は異なるのか――
    喜村 仁詞, 羽藤 雅彦
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 186-191
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    これまで,受験産業等の調査により,家庭内において主に子どもの教育を担う役割を持つとされてきた母親の子どもの大学選択への関与の強さが明らかにされてきた。しかし一方で,その実態については入試広報の現場においてあまり議論されてこなかったといえよう。そこで本稿では,母親が子どもの大学選択に関して重視する項目および子どもの大学選択行動段階における関与度について,子どもの性別に着目し,男子の母親と女子の母親との差異についての考察を行なった。その結果,子どもの性別により大学を評価する視点が異なること,そして男子の母親が女子の母親よりも子どもの大学選択への関与度が高いことを明らかにした。

  • ――東京に所在する私立大学におけるトリクルダウン現象の現在地――
    福島 真司, 日下田 岳史, 和田 浩行
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 192-197
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2016年度から始まった私立大学における「定員管理の厳格化」は,「トリクルダウン現象」とも言える状況を生み出した。本稿は,定員管理の厳格化が始まる前の年度から2021年度までの東京に所在する私立大学の入試倍率・偏差値・志願者動向を分析することで,トリクルダウン現象に関連する志願者数の増加は,偏差値帯の下位に位置する大学の方が上位に位置する大学よりも大きな影響を受けること,また,私立大学の入試倍率と偏差値との関係が,定員管理の厳格化の影響を受け変容していることを明らかにした。

  • 井上 敏憲, 中村 裕行, 関 陽介, 青葉 暢子, 岡本 崇宅, 大塚 智子
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 198-203
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    四国の5国立大学は文部科学省の国立大学改革強化推進補助金事業(平成24年度採択)を機に,四国地区国立大学連合アドミッションセンターを設置している。入学者選抜において「主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度」の評価が求められる中で,本センターは「活動報告書」の様式を考案し,ウェブ入力が可能なものとして,出願サイトに組み込んだ。また,必要に応じて,「活動報告書」のベースとして活用できるように,高校在学中の様々な活動をオンラインで記録・蓄積できる「今ログ」の運用も行っている。本稿では本センターの活動をまとめて報告するとともに,関係大学の入学者選抜における「活動報告書」の活動状況や今後の在り方について述べる。

  • ――第1次選抜における英語を主とした学力の評価を中心として――
    吉田 健三, 西山 覚, 髙橋 真, 進藤 明彦, 杉山 浩一
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 204-211
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    神戸大学が入試改革の一環として開発してきた「志」特別選抜において,英語力評価を主要なねらいとした総合問題(第1次選抜)の出題の際に想定した難易度を軸に,出題内容および結果を分析した。出題では,英語の語彙や文構造,内容の理解力,英語や日本語による表現力を主な評価観点とした難易度を各設問で想定した。基礎学力の担保および学力の個人差の識別を実現することを目的としたが,想定した結果にならない設問があった。単に語彙・構文・文法の理解力を考慮するだけでは測れない「英語力」評価の難しさが課題として示された。本稿での分析や考察は,他大学における入学者選抜試験の出題検討にも資することをねらいとしている。

  • ――国立大学へのアンケート結果から――
    永野 拓矢, 橘 春菜, 寺嶌 裕登, 石井 秀宗
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 212-219
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2020年初めから世界規模で拡大した新型コロナウイルス感染症により,我が国の大学でもオープンキャンパスや進学相談会等の入試広報関連の行事が軒並み中止となった。その代替として活用されたのがオンラインを用いたオンデマンドおよび双方向タイプの企画であり,新たな手段として存在感が増している。本稿では生徒や保護者等を対象とした,オンライン形式に切り替えた進学相談会等について概観し,企画や運営について大学にアンケート調査を行い,成果と課題について考察した。その結果,参加者のニーズに適した実施がなされていることが確認出来た一方で,改善すべき課題も散見された。

  • ―― 一般社団法人 大学アドミッション専門職協会の設立背景を中心に――
    木村 拓也, 山本 以和子, 西郡 大, 立脇 洋介, 植野 美彦, 池田 輝政
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 220-227
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    文部科学省教育関係共同利用拠点で行なった九州大学アドミッションオフィサー養成講座の5年間の実績をもとに,「大学アドミッション」の職能の高次の次元として,「新たな入試戦略の立案と入試設計」と定め,そこを最終目標に「大学アドミッション」専門知を構造・体系化した。そうした構造・体系化のもとで「大学アドミッション」の関係者の社会的地位向上と資格や表彰による業務の可視化の必要性から,我が国においても,「大学アドミッション」に関する専門職団体の機能が期待される。

  • 賈 立男
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 228-235
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2020年に中国の大学入学者選抜改革において導入された新しい制度である「強基計画」に着目し,その制度が導入された背景,目的,内容,初年度の実施状況を調査した。その結果,「強基計画」はこれまでの一部の「自主学生募集」における評価の妥当性や信頼性の低下,不正行為の多発,入学後の教育との接続が希薄さという課題の改善を背景とし,将来的に国家戦略の実現に貢献しうる特定の学問分野における高度な人材を選抜・育成するという目的を有し,大学入学者選抜と入学後教育との接続を実現する選抜性の高い制度であることが判明した。

  • 並川 努
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 236-243
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    国立大学の広報において,ソーシャルメディアの利用は増加しており,今後も重要なツールの1つとなっていくと考えられる。そこで,本研究では,国立大学に焦点をあて,ソーシャルメディアの利用状況を整理した。対象とした82校のうち,Twitterは63校(76.8%),Facebookは64校(78.0%),Instagramは33校(40.2%),YouTubeは73校(89.0%)が利用していた。また,それぞれのメディアの数値的な指標を集計し,現状について整理を行った。2011年頃から利用を開始した大学が多いことや,活用状況は大学の規模によっても異なってくること,大学によって活用状況にはばらつきがあることが示唆された。

  • ――高大接続ラウンドテーブルから始める高大接続入試――
    中野 正俊, 井上 咲希, 田中 千晶, 和田 啓吾
    原稿種別: 資料
    2022 年 32 巻 p. 244-250
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    知識基盤社会への学びの転換が進み,大学教育においても,アクティブラーニングの導入が進んでいる。2018年度に新しい学習指導要領が発表され,様々な探究科目の導入が進んでいる。それぞれの段階で能動的学習へと教育改革が進む中,それらをどう接続するかという教育接続改革についての議論が盛んに行われている。高大接続改革が進む中,大学入試改革においては,探究学習を評価し,入試へとつなげることは重要な課題である。金沢大学では,入試改革の中に位置付けられる高大接続ラウンドテーブルを実施し,様々な高大接続プログラムと同様のレポートにて評価を行なっている。この評価を分析することで,知識伝搬型の講義形式のプログラムと,探求活動型のラウンドテーブルとを同じ指標のもとで評価可能であることを明らかにした。

  • ――静岡大学全学入試センターの実践――
    雨森 聡
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 251-257
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿は,新型コロナウイルス感染症の流行を受け,変更を余儀なくされた2020年度の入試広報が,どのように変わったか,どのような工夫をしたかについて,記録を残すこと,失敗談を共有すること,知見を提供することを目的としている。言及する入試広報は,オープンキャンパス,進学相談会・説明会,静岡県国公立4大学の取り組みである。2020年度の経験より,オンラインによる入試広報においては,予約システム,マニュアルや注意喚起の文書,適切な方法の選択,大学外から見て意味のある大学間連携が重要であると筆者は考えている。

  • 山田 恭子, 田中 光, 浦崎 直光
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 258-264
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿では,オンライン型大学説明会と従来の対面型大学説明会をアンケートの回答に基づき比較した。比較の結果,対面型の方が満足度は高いことがわかった。オンライン型は関心度の高まりに寄与していた。また,オンライン型の参加者は,参加前・後ともに志願意欲が高かった。自由記述部分からは,オンライン型においても必要な情報は提供できることや参加の気軽さ,ツールとしての有効性がメリットとして挙げられた。その一方で,詳細がわからない,生の情報が伝わりにくいといったことがデメリットであることが明らかになった。今後はこの結果を踏まえ,より効果的な説明会のやり方を検討していく。

  • ――広島大学を事例に――
    永田 純一, 三好 登, 杉原 敏彦, 竹内 正興
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 265-270
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    対面で行ってきた入試広報活動は,ほぼすべてオンラインによる実施への変更を求められたのが2020年度に実施した入試広報活動であった。そこで,2021年度以降に実施する広報活動にとって有益な知見を得るため,実施内容の振り返りと参加者アンケートの分析を行った。その結果,広島大学で実施したオンライン入試広報活動については,多くの参加者が肯定的な受け止め方をしていることが分かった。また,本学と参加者の居住地との物理的な距離の違いによって,コロナ禍といった状況に特有のオンライン入試広報への思いの違いがあることが示された。

  • ――パフォーマンス課題「2040年の未来の看護」――
    中切 正人, 四谷 淳子, 大久保 貢
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 271-277
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究は看護学士課程志願者対象のパフォーマンス課題と評価を開発し,看護学士課程志願者の汎用的な選抜・評価方法の確立を目指す実証的研究である。福井大学医学部看護学科の教員の指導と協力を得て,福井県内の高校生を対象とする高大連携探究プロジェクトを開発し実施した。受講者はパフォーマンス課題「2040年の未来の看護」について作業課題とグループワークに取り組み,その活動は評価者により「思考力」「コミュニケーション力」(各5つの構成要素)としてルーブリックで評価された。3月実施の第1回プロジェクトと,改良版の7月実施の第2回プロジェクトについて報告する。

  • 平 知宏
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 278-285
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究では、学生の学習経験に起因すると考えられる学習経験要因、学生自身の特性や学びの心的傾向性といった学生内要因と、入学後の学業成績(GPA)の関係性について調査データをもとに検討した。相関分析の結果から、学習経験要因と学生内要因の一定の独立性と、1-2年時の成績推移において、専門知識を習得しようとする傾向性が正の影響を示す一方で、大学でのアウトプット中心の学習や、学生の特性といった他の要因が負の影響をしめしうることがわかった。また潜在成長曲線モデルに基づく分析により、特に高校までの総合的学習経験が、入学後の学業成績の上昇に関与しうることが示された。

  • ――学力試験では測れない能力や態度を一般選抜で評価することをめざして――
    植野 美彦, 関 陽介, 寺田 賢治, 山中 英生
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 286-291
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    徳島大学理工学部では,学力試験では測れない能力や態度を一般選抜で評価することをめざすため,志望理由を試験当日に記入させる「志望調書」を2023年度一般選抜(後期)より導入する。「志望調書」の導入にあたり,その背景・目的を紹介する。また,事前検証を行ったところ,多くの志願者の評価にも対応可能なことなどのメリットがある反面,評価や採点体制などに課題があることが明らかとなった。その課題解決に向けた本学の取り組みを報告し,今後の大学入学者選抜改革を考察する。

  • 進藤 明彦, 西山 覚, 髙橋 真, 吉田 健三, 杉山 浩一
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 292-296
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    2018年度より実施してきた,学力の3要素を多面的・総合的に評価する「志」特別入試(大学入学共通テストを課さない総合型選抜)の3年間の志願者(工学部を除く理系)の活動実績(志願者が提出した「活動報告書」に記載されている主に高校時代の主体的活動)を7種類に分類し,その動向を分析した。その結果,理数系活動が21.8%と最も多く,次に部活動が19.6%であった。理数系活動に従事していた者のうち36.5%が課題研究に取り組んでいた。また,COVID-19の感染拡大防止により参加予定の活動が中止等の影響を受けたものは,ごく一部にとどまったが,中止のため参加できず記載されなかった活動もあると考えられ,実際には影響はより大きいと推測される。

  • ――Google TrendsおよびTwitterに着目した検討――
    寺嶌 裕登, 永野 拓矢, 橘 春菜, 石井 秀宗
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 297-304
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本稿では,オンラインでの入試関連情報の探索行動やTwitter上の大学に関する情報について調査を行った。また,Twitterの大学アカウントによる情報伝達の有効性について検討した。その結果,大学や受験に関して,Twitter上で情報伝達されていることが明らかとなった。一方,内容面では雑談が中心で,受験への影響は大きくないと考えられることが示唆された。また,入試広報でのTwitterの利用は低コストだが,利用していない大学が多いことが明らかとなった。高校生,受験生がTwitter等を利用していることを踏まえ,ウェブに蓄積されたデータの入試広報や研究への応用可能性を論じた。

  • 中村 恵佑
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 305-311
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    本研究では,国立大学協会による共通第1次学力試験の政策形成過程で,2次試験のあり方に関していかなる検討が行われたかを,国大協の『会報』を基に分析した。結果,2次試験の内容が統一されることを危惧する大学への配慮から,国大協は,妥協案として2次試験の抽象的なガイドライン等を通して教科・科目数の削減や多様な入試方法を促したが,2次試験のあり方や内容に関する国大協内の合意形成や具体的検討が不十分なまま共通1 次の実施に至ったことやその背景が明らかとなった。

  • ――アドミッション・ポリシーの認知と高校時代の学習態度に着目して――
    小林 元気
    原稿種別: ノート
    2022 年 32 巻 p. 312-317
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/08/21
    ジャーナル フリー

    オープンキャンパスに代表されるような,大学教職員や学生が受験生と対人形式でリアルタイムにコミュニケーションを取るタイプの入試広報を「対人型入試広報」と定義し,そのような広報活動が受験生に及ぼす効果と,広報活動に参加しない受験生の特徴について,国立大学の入学者アンケートの個票データを用いて検討した。分析の結果,①「対人型入試広報」への参加が受験時の志望度を高めること,②「対人型入試広報」への参加が入学者のアドミッション・ポリシーの認知度を高めること,③「対人型入試広報」不参加要因として,出身地の遠さや性別,入試区分,所属学部といった属性が存在する一方で,受験生個人の学習態度は影響しないことが示唆された。

feedback
Top