岩手医科大学歯学雑誌
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11 巻, 3 号
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原著
  • 名和 橙黄雄, 小山田 勇樹, 船木 康博, 坂倉 康則, 飯田 就一, 原田 順男, 広田 萬貴子
    1986 年 11 巻 3 号 p. 169-174
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    マウス胎仔 (BALB/c一同腹) の頭蓋冠を培養して継代可能な細胞系MC840106を樹立した。 染色体のモードは68本で, 核型はアクロセントリックなマウス特有の染色体からなるが, 1本のみ大型のメタセントリックな染色体を所有している。しかしながら, いまのところ明瞭な石灰化能は認められない。

  • -脛骨の成長と抜歯創の修復過程について-
    遠藤 実
    1986 年 11 巻 3 号 p. 175-194
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    卵巣機能の低下が無歯顎々骨に及ぼす影響を検討する目的で, 卵巣摘出ラットを実験モデルとして用い, 脛骨と抜歯後の顎骨の骨動態を術後24週目まで形態学的に観察した。

    卵巣摘出群の血清Ca濃度は術後8週目において一過性に低下した。また, この時期に一致して卵巣摘出群の脛骨近位端部における骨梁数は減少し始め, 術後24週目には著明な骨梁数の減少と骨髄組織の脂肪化がみられた。術後12週目以降の卵巣摘出群の顎骨内部には骨髄腔の拡大がみられ, 術後24週目には骨髄組織の脂肪化も認められた。しかし, 血清無機P濃度, 初期の抜歯創の修復過程ならびに脛骨の骨幹部骨内膜面と顎骨の歯槽頂部における骨形成の程度に関しては, 卵巣摘出群と対照群との間に差異は認められなかった。

    以上の所見により, 卵巣機能は脛骨および無歯顎々骨では, 骨量を維持する重要な役割を担っていることが示唆された。

  • 陳 慶勲
    1986 年 11 巻 3 号 p. 195-201
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    マウスにおけるcarbacholの二相性唾液分泌増大作用の機序について検討した。唾液分泌量の測定はRichterの方法を改良して行った。 Carbachol(1.6mg/kg)による唾液分泌増大作用は投与後60分までをA相とし, 60~240分までをB相とした。Atropine(1mg/kg), phentolamine(10mg/kg), reserpine(4mg/kg)および副腎摘出の前処置によりA, B両相とも抑制された。その抑制の程度は, atropineにおいてはA, B両相とも大で, phentolamine, reserpineおよび副腎摘出においてはA相よりもB相の方が大であった。Propranolol(10mg/kg)の前処置ではB相は軽度抑制された。一方, hexamethonium(20mg/kg)の前処置では, A, B両相には影響はみられなかった。なお, nicotine(4mg/kg)はcarbacholと同様にマウスの二相性唾液分泌増大作用を引き起した。以上のことから, carbacholの二相性唾液分泌反応のA相は, 主にcarbacholのムスカリン様作用により発現し, B相は主にcarbacholのニコチン様作用により発現したものと考えられる。

  • -歯肉溝上皮および付着上皮の再生に関する実験的研究-
    山森 徹雄
    1986 年 11 巻 3 号 p. 202-228
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    歯肉溝上皮, 付着上皮の創傷治癒に及ぼす加齢の影響を検索するために, 5~51週齢のWistar系雄性ラットの臼歯部歯肉に対して歯肉切除術を施した場合(メス切除群)ならびに歯肉溝上皮と付着上皮をダイアモンド・ポイントで削除した場合(ポイント削除群)の歯肉の創傷治癒経過を光顕的, 電顕的に観察した。

    対照群とした無処置のものでは光顕的に加齢にともなう付着上皮の深部への増殖がみられ, また, 電顕的には歯肉溝上皮基底細胞と付着上皮細胞の小器官の発達程度に差異がみられた。実験群において, 光顕的にメス切除群, ポイント削除群とも上皮の再生, 炎症性変化の消退, 結合組織線維の再構築が高齢のものほど遅延していた。また, 電顕的には再生上皮が本来の付着上皮の構築に復する時期, 上皮付着や基底膜の形成, 歯肉溝上皮における角化層の形成などが高齢のものほど遅く, 再生上皮の機能の回復も遅延することが示唆された。また, メス切除群とポイント削除群との間での治癒過程にも差が認められた。

  • 金子 良司
    1986 年 11 巻 3 号 p. 229-245
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    細顆粒状のBioglass 45S5 を生活歯髄切断法に応用した場合の歯髄組織へ及ぼす影響について実験的に検討した。実験には純系beagle犬の前歯および前臼歯を用い, 通法の如く生活歯髄切断法を施した後, Bioglass, Bioglassと水酸化カルシウム, ならびに水酸化カルシウムにて覆髄し, 10日, 20日, 30日および60日目の組織所見を観察した。その結果, 水酸化カルシウム群の全例が良好ないしは概良の治癒成績を示した。これに対し, Bioglassと水酸化カルシウムの混合群ならびにBioglass群では治癒成績が不良なものもみられた。しかし, Bioglass群の治癒成績良好例では庇蓋象牙質の形成量が他の2群に比べ顕著であった。また, 歯髄組織内に混入したBioglass顆粒は組織球によって貪食されていたが, Bioglassの歯髄組織に対する為害性を示唆する所見はみられなかったので, 歯内療法におけるBioglass応用の有用性が考えられた。

  • 高橋 義和
    1986 年 11 巻 3 号 p. 246-258
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    義歯性口内炎患者の義歯床粘膜面 denture plaque から分離した Candida albicans (serotype A) T株の表層多糖体である菌体抽出画分 (粗多糖体, 粗マンナン, 中性マンナン, 酸性マンナン) を分離, 精製し, これらの菌体抽出画分を抗原として, C. albicans 死菌感作モルモットに対しての遅延型皮膚反応試験, マクロファージ遊走阻止試験を行った。また, 菌体抽出画分の起炎性を調べるため皮膚毛細血管透過性亢進試験を行った。さらに, ラットロ蓋粘膜に粗多糖体を塗布し, 口蓋床を装着し組織学的観察を行い, 以下の結果を得た。

    1. 遅延型皮膚反応試験では粗多糖体にのみ強い遅延型皮膚反応活性を示し, マクロファージ遊走阻止試験ではいずれの C. albicans T株菌体抽出画分にもマクロファージ遊走阻止活性を示した。これらのことから C. albicans T株抽出マンナンに遅延型アレルギー活性があることが認められた。

    2. 皮膚毛細血管透過性亢進試験ではいずれの C. albicans T株菌体抽出画分にも起炎性が認められた。

    3. ラットロ蓋粘膜に粗多糖体を塗布し, 口蓋床を装着したラットロ蓋粘膜における組織学的観察では, 慢性炎症性所見が認められた。

    以上の結果から, C. albicans 抽出マンナンは義歯性口内炎の病因の一つとして深く関与していることが示唆された。

  • 久米田 俊英, 武田 泰典
    1986 年 11 巻 3 号 p. 259-269
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    生検材料ならびに手術材料228症例から得られた耳下腺腺体外リンパ節における唾液腺上皮の出現状況を病理組織学的に検索した。その結果, 唾液腺上皮は22症例(9.7%)のリンパ節に認められ, その出現頻度は耳下腺腺体内リンパ節にくらべはるかに低かった。リンパ節における唾液腺上皮の出現と年齢あるいは性別との間には一定の傾向は見い出せなかった。また, 解剖学的部位別に比較すると耳下腺近傍に位置するリンパ節ほど唾液腺上皮の出現頻度が高かった。リンパ節内にみられた唾液腺上皮の大部分は小導管上皮と耳下腺腺房と同様の所見を呈する漿液性腺上皮であったが, 一部には粘液性の腺上皮が混在してみられた。また, リンパ節内唾液腺上皮の一部には扁平上皮化生やオンコサイト化とそれらの過形成, 小嚢胞の形成などをみたが, この様な所見を呈したものの多くは高齢者例であった。 唾液腺の腺リンパ腫や良性リンパ上皮性病変などの組織由来をリンパ節内唾液腺上皮に積極的に求め得る所見はなかった。

  • -特にプロタミンとヘパリンの影響について-
    瀬川 清
    1986 年 11 巻 3 号 p. 270-290
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    プロタミン(以下Pと略)とヘパリン(以下Hと略)が腫瘍血管の新生と構築におよぼす影響を形態学的に検討した。48匹のゴールデンハムスターにDMBA誘発舌腫瘍を形成後, 60mg/kg のP, H, 生食を2週間で12回皮下注射した。血管内に硫酸バリウム, 墨汁, Mercoxを注入し, microangiography, 光顕, 走査電顕などで観察した。舌扁平上皮癌が高率に発生し, 隆起型, 混合性発育型, 高分化型が多かった。P群では腫瘍血管壁からの墨汁粒子の漏出が少なく, H群では多かった。 腫瘍の血管面積率は, P群がH群と生食群に比べて有意に低値を示した。血管造影では多血管像はH群の腫瘍部にみられたが, P群と生食群にはみられなかった。新生血管芽数はP群で減少し, H群で増加した。癌胞巣周囲の血管は三層構造のドーム状を呈し, その表面を覆う毛細血管のくびれは, P群に認められた。肥満細胞は3群とも腫瘍組織内間質にはほとんどなく, 腫瘍境界部の結合組織中に比較的多くみられた。これらの結果から, 腫瘍間質における血管新生はPで阻害され, Hで促進されることが示唆された。

  • -特に単純遊離骨と血管柄付骨の比較-
    入江 雅之
    1986 年 11 巻 3 号 p. 291-315
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    下顎骨の単純遊離骨と血管柄付骨再植後における血管再構築と骨改造の様相を形態学的に比較検討した。39匹の雑種成犬の下顎骨下縁部に無または有下歯槽血管付骨片を再植した。再植後, 経時的に屠殺し, 墨汁注入透明, H.E., 血管鋳型の各標本の作製ならびに血管面積率を計測した。単純遊離骨群の海綿骨部では母床から再植片に向かって新生血管が侵入, 増殖し, その後に微小血管網を形成しつつ骨梁に沿って新生骨を形成した。しかし, 緻密骨部では骨髄側とフォルクマン管, ついで接合部からの血管新生に続いて骨新生が行われ, その後は両骨部とも漸次, 血管再構築, 骨改造および骨性癒合への過程が進行した。一方, 血管柄付骨群では母床と再植片の既存血管が利用され, より早期に上記の過程が進行した。血管面積率は単純遊離骨群では7または14日目までは著しい低値を示したが, 血管柄付骨群では1または7日目においても一定の値が保たれ, 以後は正常下顎骨の値に近づいた。血管再構築と骨改造への過程は緻密骨部に比べ海綿骨部が, また単純遊離骨群に比べ血管柄付骨群が時間的に早く, 量的に多い傾向にあった。

症例報告
  • 武田 泰典, 工藤 啓吾
    1986 年 11 巻 3 号 p. 316-319
    発行日: 1986/11/30
    公開日: 2017/11/18
    ジャーナル フリー

    口腔領域に単発性に生じた若年性黄色肉芽腫の1症例を報告する。患者は7歳の女児で,下顎骨原発のEwing腫瘍のために化学療法後に下顎骨の区域切除がなされた。この手術材料の口底部に相当する軟組織中に境界明瞭な小指頭大の黄褐色を呈する腫瘤がみられた。この腫瘤は組織学的に胞体に脂質を有する組織球の増生からなり, Touton型巨細胞も散見された。また, 小血管, 小円形細胞, 疎な線維性結合組織も混在してみられた。以上の組織所見より若年性黄色肉芽腫と診断した。文献的に口腔領域に単発性に生じた若年性黄色肉芽腫はこれまでに2例の報告をみるにすぎないが, 既報告例と自験例とでは腫瘤の大きさに著しい差がみられた。

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