上顎半側欠損症例の顎義歯製作過程において, 顎間関係の記録や蠟義歯試適などの臨床操作を正確に行うためには, 良好な維持, 安定を示す咬合床を製作することが不可欠である。しかし, 作業模型上で常温重合レジンを用いて基礎床を製作する従来の方法では, 咬合床の傾斜や転覆が発生しやすく, 完成された顎義歯の咬合が不調和になり, 装着時の咬合調整に困難を伴うことが少なくない。
そこで, 咬合床のより正確な適合を目的として基礎床を加熱重合レジンにて重合, 完成する方法を試みた。この方法は, まず最終印象を採得後, 作業模型を製作する。この作業模型上で天蓋開放型栓塞部を有する基礎床のワックスアップを行い, 加熱重合レジンを塡入後, 60℃6時間, 100℃2時間の重合スケジュールにて重合を完了させる。この基礎床をボクシングし, 咬合器付着用の作業模型を製作する。咬合堤を付与したのちは, 通法に従い, 顎間関係の記録, 蠟義歯試適を行う。蠟義歯を基礎床と同じ重合スケジュールにて再重合し, 顎義歯を完成させる方法である。
本法を用いることにより, 従来の方法と比較して咬合床の傾斜, 転覆がおこらなくなり, 顎間関係の記録, 蠟義歯試適が正確に行えるなどの点で改善がみられるとともに, 臨床操作時間が短縮し, 装着後の周囲組織との調和が容易に得られるなどの特長が見いだされた。
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