岩手医科大学歯学雑誌
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14 巻, 1 号
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原著
  • Kosei Taira
    1989 年 14 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    大脳皮質内ニューロン活動を記録する微小電極の位置を, 高精度でかつ3次元的に遠隔操作できる装置を製作した。装置は油圧制御による3次元微小駆動部分と, 脳表面の拍動を抑えるための金属チャンバ部分から構成された。微小電極の移動および位置設定範囲は, X-Y平面内, 10mm×10mm, 深さZ方向, 10mmであり, その駆動精度はX-Y平面で約20μm, 深さZ方向で約5μmであった。脳表面の拍動は, チャンバ内をパラフィンオイルで満して密封することにより50μm以下に抑えられた。本装置を用いて, ネコの大脳皮質口腔領域へ微小電極を刺入した結果, 脳内標的位置における単一ニューロン活動を2-3時間にわたって安定に記録できることが確認された。

  • 宮野 敦志
    1989 年 14 巻 1 号 p. 6-16
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    近交系WHT/Htマウス可移植性扁平上皮癌の腫瘍抗原に対する in vivo 免疫反応について検討を行った。同腫瘍細胞の可溶化抗原, 放射線不活化腫瘍細胞及び腫瘍生細胞を抗原として同系マウスに接種しその免疫原性をImmunoprotection testで検索した。可溶化抗原では腫瘍の増殖抑制は認められなかったが, 放射線不活化腫瘍細胞と, 腫瘍生細胞を移植し後に, 腫瘍を切除した免疫マウスで腫瘍の増殖抑制が認められ, 腫瘍抵抗性が得られた。また。腫瘍切除による免疫マウスでは平均30%のマウスが腫瘍を拒絶した。さらに腫瘍切除によって得られた免疫マウスの脾細胞の抗腫瘍活性をWinn assayにて検討した。その結果, 免疫マウスの脾細胞は腫瘍の増殖を抑制し抗腫瘍活性がみられた。この脾細胞をanti-Thy 1.1.+C, anti-Lyt 1.2.+Cおよびanti-Lyt 2.2.+Cで処理すると抗腫瘍活性は消失した。一方, 担癌マウスの脾細胞を用いてWinn assayを行った結果, 担癌初期から後期にかけて腫瘍の増殖を促進する傾向がみられた。

    以上により腫瘍抗原により正の免疫応答が誘導され, 抗腫瘍免疫能を示す細胞はT cellで, そのsubsetはLyt-1+2+3+であることが示唆された。しかし担癌マウスでは担癌初期から後期にかけて徐々に負の免疫応答が優位になると考えられた。

  • 佐々木 実, 金子 克
    1989 年 14 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    Staphylococcus epidermidis slime中のproteaseはbrain herat infusion agarを用いた dialysis membrane techniqueで培養後, 得た粗画分をDEAE-SephacelおよびHydroxylapatite column chromatographyを用い, NaClのstepwiseで溶出を行い単一に精製した。このprotease の分子量は25,000, 等電点は5.9, 至適pHは8.5であり, thiol protease阻害剤およびCu2+, Zn2+により活性が低下したが, serine protease阻害剤, carboxyl protease阻害剤およびEDTAでは活性に影響は認められなかった。さらにこのproteaseはazocasein, gelatin, IgGおよびIgAを分解したが, elastin, collagen, albuminに対する分解は認められなかった。

  • 本田 寿子, 金子 克
    1989 年 14 巻 1 号 p. 26-35
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    臨床材料から分離した Staphylococcus aureus 206株とATCC 29213を被検菌として, triphenyltetrazolium chloride (TTC)の還元を利用したmethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)の迅速検出法を検討した。わが国で現在, 広く用いられている日本化学療法学会標準法(化療法)とNCCLS標準法(NCCLS法)によるMIC(化療MIC, NCCLS MIC)を比較検討したところ, MRSAの基準を化療MIC 12.5μg/ml以上と対応させて考えてよいと言う結果を得た。

    つぎに化療MIC 12.5μg/ml以上の S. aureus 分離株をMRSAとして迅速に検出する条件を検討して次の結果を得た。1. 感受性測定用ブイヨンに最終濃度2%にNaClを加えた培地を用いる。2. Methicillinの添加量は20μg/ml。3.被検菌の接種菌量は3×108CFU/ml, 35℃, 4時間振盪培養した後, 2%TTCを0.1ml添加して30分間振盪後に判定する。以上の条件でMRSAの検出を試みたところ, 臨床材料より分離した S. aureus 206株からMRSA25株(12.1%)を検出できた。

症例報告
  • 橋爪 正一, 青木 一, 柴田 由香里, 熊谷 英人, 松村 猛, 阿部 桂, 高橋 美香子, 広瀬 清憲, 清野 和夫, 石橋 寛二
    1989 年 14 巻 1 号 p. 36-42
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    上顎半側欠損症例の顎義歯製作過程において, 顎間関係の記録や蠟義歯試適などの臨床操作を正確に行うためには, 良好な維持, 安定を示す咬合床を製作することが不可欠である。しかし, 作業模型上で常温重合レジンを用いて基礎床を製作する従来の方法では, 咬合床の傾斜や転覆が発生しやすく, 完成された顎義歯の咬合が不調和になり, 装着時の咬合調整に困難を伴うことが少なくない。

    そこで, 咬合床のより正確な適合を目的として基礎床を加熱重合レジンにて重合, 完成する方法を試みた。この方法は, まず最終印象を採得後, 作業模型を製作する。この作業模型上で天蓋開放型栓塞部を有する基礎床のワックスアップを行い, 加熱重合レジンを塡入後, 60℃6時間, 100℃2時間の重合スケジュールにて重合を完了させる。この基礎床をボクシングし, 咬合器付着用の作業模型を製作する。咬合堤を付与したのちは, 通法に従い, 顎間関係の記録, 蠟義歯試適を行う。蠟義歯を基礎床と同じ重合スケジュールにて再重合し, 顎義歯を完成させる方法である。

    本法を用いることにより, 従来の方法と比較して咬合床の傾斜, 転覆がおこらなくなり, 顎間関係の記録, 蠟義歯試適が正確に行えるなどの点で改善がみられるとともに, 臨床操作時間が短縮し, 装着後の周囲組織との調和が容易に得られるなどの特長が見いだされた。

  • 板垣 光信, 武田 泰典, 鈴木 鍾美
    1989 年 14 巻 1 号 p. 43-46
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    82歳の女性の口底部に生じた血管腫の1例を報告した。臨床的には境界明瞭で, 可動性の弾性硬の腫瘤であり, 被覆粘膜は正常色を呈していたことから, 唾液腺由来の良性腫瘍あるいは皮様嚢胞との鑑別は困難であった。組織学的には, 海綿状血管腫であり, 周囲は硝子化を呈する厚い線維性結合組織層で囲まれており, さらに腫瘍周縁には線維化傾向を呈する肉芽組織の増生が種々の程度にみられた。したがって, 本例は非常に長期の経過を経たものと推測された。

  • 菊地 賢, 石川 成美, 藤澤 政紀, 高瀬 真二, 石橋 寛二
    1989 年 14 巻 1 号 p. 47-54
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    11歯の乳歯晩期残存と18歯の永久歯先天欠如, ならびに低位咬合を伴った非常に稀な症例に対し, 補綴処置により形態的, 機能的回復をはかった。

    患者は42歳の男性で, 咀嚼機能障害, 審美障害, 発音障害を訴えて来院した。治療に際しては, 可能な限り残存歯を保存し, 乳歯も支台歯として利用すること, および適正な咬合位を設定し咀嚼機能と審美性の改善をはかることを指針とした。テンポラリー・レストレーションで3カ月間経過観察し, 支台歯および顎機能の再評価を行い, 試着性レジンセメントを応用した固定性橋義歯による補綴処置を行った。顔貌の形態的観察, X線写真, および下顎運動記録による術前と術後の状態を比較検討したところ, 改善が認められ, 良好な経過を得ている。

  • 福田 容子, 戸塚 盛雄, 武田 泰典
    1989 年 14 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    著しい歯根の吸収をきたした永久歯の4症例を経験した。症例の内訳は男性2例, 女性2例で, 年齢は20歳代と30歳代であった。歯種別では上顎側切歯が2例, 上顎中切歯と下顎小臼歯がそれぞれ1例であった。これらのうち, 2例はX線検査により偶然発見されたものであり, 他の2例は歯痛を主訴として来院した。臨床所見およびX線所見より, 3例は外部吸収によるものと推察されたが, 残る1例については内部吸収か外部吸収かは判断できなかった。著しい歯根の吸収をきたした原因としては, 外傷, 慢性炎症などが疑われたが, うち2例の原因は推定できなかった。

  • 奈良 栄介, 横田 光正, 東海林 克, 工藤 啓吾, 藤岡 幸雄, 佐藤 方信
    1989 年 14 巻 1 号 p. 60-64
    発行日: 1989/04/30
    公開日: 2017/11/19
    ジャーナル フリー

    14歳女性の上顎洞部に発生した病変が, オルソパントモX線写真では含歯性嚢胞が疑われたので, 生検を兼ねた開窓療法を行った。その後, 嚢胞は縮小したが, 埋伏歯の移動が少ないため, 初診時の後頭前頭X線造影写真を再検討したところ, 同歯は嚢胞の上外側壁に接するように存在していた。本例は摘出物の肉眼的および病理学的所見から, 埋伏歯が原始性嚢胞によって上顎洞の上外方に圧排されたものと考えられた。上顎洞部に発生する原始性嚢胞と含歯生嚢胞は, 臨床的には類似した所見を呈することがあるが, その際には多方向からの造影X線写真が鑑別診断に有用である。

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岩手医科大学歯学会第14回総会抄録
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