本研究の目的は, 保健婦のエンパワーメントの構造とその規定要因を探ることであり, 保健婦を対象として質問紙調査を実施し, 191名 (40.6%) の回答から以下の結果を得た.
1) 因子分析により, 保健婦のエンパワーメントを構成する家族への励まし, 主体性, コミュニティへの影響, 仕事への肯定的感情の4因子が抽出された.
2) 各因子ごとに主成分分析を行い, 家族への励まし, 主体性, コミュニティへの影響の3下位尺度がエンパワーメント尺度として成立した.
3) 家族への励ましを高める要因は, 関連職者へよく相談する, 自己充実的達成動機が高いことであった.
4) 主体性は管轄人口が少ない, 保健婦経験年数が長い, 関連職者へよく相談する, 働きがい度・自己充実的達成動機が高いことによって高められていた.
5)コミュニティへの影響を高める要因は, 年齢・自己充実的達成動機が高いことであった.
以上の結果より, 保健婦のエンパワーメントは年齢や経験年数を重ねることで高められる一方, 働きがい度や自己充実的達成動機が高いという保健婦のパーソナリティによって, さらに関連職者によく相談するという保健婦自身の姿勢によっても高められていた. 保健婦のエンパワーメントを高めるためには, 関連職者に相談しやすい職場環境を整備する必要があることが示唆された.
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