日本看護科学会誌
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27 巻, 1 号
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原著
  • ――第1報:看護介入の試作と介入後の親の取組み
    小野 智美
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1_3-1_13
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,日帰り手術に向けての幼児の自律性を支援するために,親と看護師が協働する看護介入プログラムを開発することである.第1報では,日帰り手術についての物語を子どもに読み聞かせるケアと,子どもの気持ちや言動に合わせた援助法を記述した絵本を看護師が作成して,親に子どもの個性や過去の経験を土台に活用を促す看護介入を試作し,外来診察で日帰り手術が計画された25名の幼児(3~6歳)の親に実施した.介入後の半構造的面接調査から,介入後の親の取組みは4つの型:〈擁護型〉〈共有型〉〈模索型〉〈同調型〉に分類され,親は日帰り手術に向けて,子どもに〔親の相互主体的ケア〕を提供し,【親子の相互主体】を形作っていた.〔親の相互主体的ケア〕は,5つのケア要素:《子どもへの姿勢と接近》,《子どもなりの理解への気づき》,《子どもの気持ちを読むこと》,《子どもの要求に沿っていくこと》,《親の要求や意図を子どもにわかるように伝えること》で構成されていた.【親子の相互主体】は,子どもの医療体験に向けて,親と子どもが自身の個性や能力,可能性を実現できるように,お互いの個性や能力,可能性に働きかけ合うことであった.
  • ――発症から6週間の期間に焦点を当てて
    山内 典子
    原稿種別: 原著
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1_14-1_22
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,片麻痺を伴う脳血管障害からの回復過程における患者の身体経験とその意味を,発症から6週間の期間に焦点を当て,日常の看護を通して明らかにすることを目的とした.本研究は,Heideggerの存在論とMerleau-Pontyの身体論を前提的立場とし,テーマ分析は,Bennerの解釈的現象学に基づいて行った.結果,患者は,《よそ者の身体》,《目覚める身体》,《向き合う身体》,《自分自身の身体》という4つの段階を踏んで回復していくことが明らかとなった.なかでも,《目覚める身体》は,《よそ者の身体》の中で,表立たずに芽生えはじめ,《向き合う身体》への架け橋となっていると捉えられた.これらの過程は,“心身分離状態からの解放”を表しており,そしてこの意味は,世界から閉ざされた身体が過去と現在を統合させながら,動作や道具を獲得し,それを習慣化させていくという仕方で,親密性をもって再び世界に開かれるようになることであると解釈された.
研究報告
  • ――要介護高齢者の日常生活動作の維持向上に焦点を当てて
    呉 小玉
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1_23-1_33
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,博士研究で開発した日本版「中国における主介護者のエンパワーメント」93項目尺度案を中国でプレテストや本調査を行うために,3段階で内容妥当性と翻訳妥当性を検証することであった.検討した結果は,第1段階では,専門家3人により93項目から64項目に精錬された.第2段階では,エキスパート4人により64項目と概念要素を合致率とIndex関連指数で検討した.結果は,合致率が平均74.2%であり,関連指数が平均85.8%と高かった.その後22項目を修正して,64項目日本版となった.そして第3段階は,64項目を中国語に翻訳し,在日中国人2名により反訳し,翻訳の再現性が検証された.さらに10人より日本版と中国版を1週間あけてそれぞれ答えてもらったデータを量的な手法で検証した.結果は,Paired Samples Testで日本版対中国版の間有意差が見られず,相関係数が0.92と高かったため,翻訳の妥当性が検証された.
    したがって,「主介護者エンパワーメント尺度」中国版は内容妥当性と翻訳妥当性が支持されたといえる.
  • 西田 志穗, 江本 リナ, 筒井 真優美, 飯村 直子, 草柳 浩子
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1_34-1_43
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    研究目的:本研究は,小児看護における卓越した技を探求し,看護師のエキスパートネスをモデル化することを目的に行った.
    研究方法:Flickのエピソードインタビューの方法を参考に行った.小児看護領域で5年以上の臨床看護師経験をもち,修士修了または修士在学中の計12名に対し,研究の趣旨を説明し,同意を得たうえで面接を行った.データ収集期間は,2003年6~10月であった.
    結果および考察:参加者の語った15例を分析した結果,5つのモデルと一連の看護実践の流れおよびその要素を抽出した.5つのモデルは,(1)子どもとのつながりが見えにくい家族に対し,子どもの力を引き出すことができる糸口を見つけて示すモデル,(2)残された時間が少ない家族にとって大事なことを見つけ出し,周りを巻き込みながらケアするモデル,(3)いつもと様子の違う子どもや家族にとって今大事なことをタイミング良く見つけ,その場の判断で道筋をつけて後押しするモデル,(4)子どもが満足できない状況が繰り返され,通常のケアが適用できない時に,周囲と共有しやり方を変えるモデル,(5)子どもや家族の気持ちと状況とのズレを確認し,モデルを示しながら関わり,ケアを共有していくモデル,であった.
    各モデルを構成する一連の看護実践には,(1)気になる,(2)臨床判断,(3)ケア,(4)方向性の確認,(5)システムへの働きかけ,(6)効果とその確認の6つの要素があった.このプロセスで看護師は,気になった場面を解釈し,子どもと家族の示す行動の意味を見出して状況を捉え直し,ケアの方向性を決定していた.そして看護師は,子どもの満足や子どもと家族が納得する状態を具体的なゴールに定め,それらが子どもと家族にとって最善の利益となるようにケアを展開していた.さらに,直接的なケアやその場の関わりだけでは解決が困難な場合には,システムに働きかけてケアを展開し,効果を出していた.
    本研究のモデルは,判断やケア,関わりを,「どのように」行ったのかを看護師が見極めながら実践を進めていくことができるものである.
  • ――領域別WHOQOL短縮版への影響
    國方 弘子, 渡邉 久美
    原稿種別: 研究報告
    2007 年 27 巻 1 号 p. 1_44-1_53
    発行日: 2007/03/20
    公開日: 2011/09/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,デイケアに通所中(在宅生活)の69名の統合失調症患者を対象に,変数をグループ化した(人口学的要因,臨床特性,症状の重症さ,能力,自尊感情)概念枠組みを作成し,Quality of lifeを予測するものを2年間の追跡調査を用いて明らかにすることを目的とした.その際,交絡要因としての抗精神病薬1日服用量をコントロールした.結果,1年後と2年後の追跡調査において,自尊感情はQuality of lifeの4領域すべての予測因子であった.Quality of lifeの身体的領域と心理的領域に対する自尊感情の寄与率は,時間が長くなるほど大きくなった.社会的関係と環境領域に対する自尊感情の寄与率は,1年後と2年後の値がほぼ同程度であり,自尊感情のQuality of lifeへの影響は安定していた.
第26回日本看護科学学会学術集会
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