日本看護科学会誌
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30 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • 島村 珠枝, 田口 敦子, 小林 小百合, 永田 智子, 櫛原 良枝, 永田 容子, 小林 典子, 村嶋 幸代
    原稿種別: 原著
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_3-2_12
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:多剤耐性結核の治療のため隔離入院中の患者が病気をどのように受けとめ,どのようなことを感じながら入院生活を送っているかを明らかにする.
    方法:入院中の多剤耐性結核患者5名に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析した.
    結果:病気について,全員が『治りにくい病気に罹った』と捉えた上で,『治るだろう』と受けとめている者,『治らないだろう』と考える者の両者が存在した.ほとんどの協力者が『先が見えない』と感じており,長期入院と隔離に大きなストレスを感じていた.入院生活について,全員が『楽しいことはほとんどない』と感じていた.『人に会えないのが寂しい』と閉塞感を訴え,『外とのやり取りで気が紛れる』と入院生活の辛さを紛らわせていた.『看護師との日常的な会話が楽しみ』と話す者もいた.
    結論:看護師は日常的に患者と関わる中で患者と外との接点になり得るため,日常的なコミュニケーション場面での配慮が求められている.
  • 森本 美智子
    原稿種別: 原著
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_13-2_22
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:COPD患者のストレス認知が精神的健康に及ぼす影響過程に対して,対処方略(“積極的対応”“自己コントロール”“病気の再解釈”)が調整要因として機能するのかどうかを検討することである.
    方法:COPD患者95名を分析対象として,精神的健康を従属変数とする階層的重回帰分析を用い検討した.さらに結果が有意であったものについては,交互作用効果について下位検定を行った.
    結果:“病気の再解釈”に精神的健康への調整効果(β=−.439, p<0.01)が認められた.下位検定では,“病気の再解釈”が低い場合には,ストレス認知が精神的な健康を悪化させるが,“病気の再解釈”が高い場合には,ストレス認知度の高低で精神的健康に及ぼす影響には違いが認められなかった.
    結論:ストレス認知の程度が高くても対処方略として病気の再解釈を用いる頻度が高ければ精神的な健康が維持されることが示された.COPD患者の精神的な健康の維持を図るうえで,肯定的な意味づけができるように看護介入していくことの必要性が示唆された.
研究報告
  • 吉田 久美子, 神田 清子
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_23-2_31
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:がん治療が外来へと移行している動きに伴い,がん患者には治療や進行に伴い変化する心身の状態を調整する能力が求められている.本研究の目的は,がん患者のセルフケアの構成概念を導くことである.
    方法:分析方法はRodgersのアプローチを用い,概念分析を行った.これまでの看護実践をもとにしたがん患者のセルフケアに焦点をあてるために医中誌とPubMedから文献を検索,収集し,質的に分析した.
    結果:対象となった76文献の中では,がん患者のセルフケアについての明確な定義づけはされていなかった.分析により,がん患者のセルフケアの概念は,4つの先行要件,4つの属性,2つの帰結,2つの関連概念が抽出された.
    結論:がん患者のセルフケアの定義は,『がんに関する情報の探索と活用により,生活を保持するための意思決定を行うことである.そしてがん治療に伴う副作用や状態の変化へ対処し,がんの進行を抑えるための保健行動の実行から構成される』と定義づけられた.
  • 奥 裕美, 井部 俊子, 柳井 晴夫, 石崎 民子, 上田 文, 太田 加世, 小山田 恭子, 北浦 暁子, 高畠 有理子
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_32-2_43
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:看護管理者のための実践的指標である「看護管理者のための自己評価指標―日本版看護管理ミニマムデータセット第1版(NMMDS-j ver.1)」を開発し,その信頼性・妥当性を検証することを目的とした.
    方法:データ収集は2006年7~10月に行い,全国579病院の看護管理者から得られた1762通の回答をもとに分析を行った(有効回答率43.3%).6つの大項目に含まれる各7項目について主成分分析を行い,さらに各大項目のα信頼性係数を求めた.妥当性についてはMessickの概念を採用し,内容的側面,構造的側面,外的側面からの証拠を収集した.
    結果:大項目間の相関係数は0.39~0.71であり,各大項目のα信頼性係数は0.37~0.82であった.成分負荷量の低い質問項目を削除したところ,α信頼性係数は0.4~0.82へ上昇した.妥当性は,上記の3側面から複数の証拠が確保された.
    結論:本指標を看護管理実践の指標として利用するため,結果をもとにスケールの見直しを行うとともに,今後も継続的にデータを収集して検討を重ね,より精度を高めていく.
  • 西田 みゆき
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_44-2_53
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:子どもの養育には,直接関わる母親自身が療養生活を前向きに捉えられることで,子どもへのケアの質の向上,養育や育児への参加意欲の向上が見込まれると考える.本研究では,養育上の困難を抱える母親のempowermentの概念分析を行い,慢性疾患や障害を抱える子どもの母親への支援として,実践や研究における有用性を検討することである.
    方法:1983~2005年の看護学,心理学の領域から47文献を便宜的に抽出し,分析対象とした.Rodgersの分析方法を参考にして概念分析を行った.
    結果:「養育上の困難を抱える母親のempowerment」の属性として【知識の獲得】【パートナーシップの構築】【気づき】【ポジティブな感覚】【問題解決能力の取得】【主体的な行動】の6つのカテゴリーが抽出された.先行要因として【母親の属性】【親役割の脆弱性】【子どもの状態】が抽出された.帰結として【親役割の成熟】【精神的な安定】【自己成長】【子どものwell-beingの促進】が抽出された.
    結論:「養育上の困難を抱える母親のempowerment」という概念は,慢性疾患や障害を抱える子どもの母親への支援として,実践や研究において有用であると考えられた.
  • ─初発者と再発者の比較を通して─
    吉野 賀寿美, 八木 こずえ
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_54-2_63
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,精神病院退院後看護面接を実施した統合失調症初発者2名,再発者2名の生活体験の特徴を比較検討し,対象者の視点から生活体験を描き出し,質的にその意味を検討した.両者の生活体験は,変化するものと一貫して変化しないものに分類できた.初発者では,【病気である自分に対する思い】が,再発者では,【病気に対する特有の理解】と【対処策を自ら考える】が時間とともに変化していた.また一貫して変化しない生活体験として,初発者では,【不確かな自己】と【将来への不安】が,再発者では,【深まりにくい自己洞察】【幅広い不安】や【固定化された行動の方向性】【こだわり】【理性と感情の乖離】という特徴が抽出された.両者の特徴の比較から,再発を繰り返す過程で,理性と感情の乖離,行動の方向性,こだわりが固定化される可能性について言及した.また,自我境界の成立に伴う不安や社会参加のレベルが病気の理解とつきあいを変えていくという特徴を,彼らの自己領域から社会領域への出立の視点から考察した.
  • 横山 さつき
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_64-2_73
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    目的:消防職員の心理的ストレス反応の特徴と,その心理的ストレス反応に影響を与えている職場ストレッサーやストレス関連要因を明らかにする.
    方法:某市消防本部に所属する443名の消防職員を対象に,2006年9月に無記名自記式質問紙調査を実施した.
    結果:消防職員は高い心理的ストレス反応を示し,中でも,日勤事務職員の心理的ストレス反応が高かった.消防職員の精神健康度には,「自尊心」「仕事外の活動」「同僚からの支援」など,ストレッサーとストレス反応の関連を強めたり弱めたりするストレス関連要因が大きく影響していた.
    結論:消防職員の精神健康度向上のためには,消防職員自身の自己対処能力を高めるためのストレスマネジメント教育や,ソーシャルサポート体制の強化を図ることが求められる.また,職務の特殊性に応じた方略を講じなければならない.
  • 服部 容子, 多留 ちえみ, 宮脇 郁子
    原稿種別: 研究報告
    2010 年 30 巻 2 号 p. 2_74-2_82
    発行日: 2010/06/21
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    【目的】心不全患者が自分自身の体調変化を把握し,増悪の兆候を早期発見するための支援において,セルフモニタリングは重要な概念であるが,統一した見解はない.そこで,心不全患者への支援に資するためにセルフモニタリングの概念を明らかにした.
    【方法】Rodgersら(2000)の概念分析法を参考に概念を特定した.
    【結果】31件の文献を分析した結果,心不全患者のセルフモニタリングは,身体症状の変化,身体活動の変化,体調管理の状況をとらえることであり,概念の属性は「自覚」「測定」「解釈」という3つの側面で構成されていた.概念の先行要因には「知識」「技術」「関心」が存在し,帰結として「適切なセルフマネージメント」と「QOLの改善」が認められた.
    【結論】今回抽出された新しい概念は,心不全患者のセルフモニタリングを強化する看護支援の基盤として活用できることが示唆された.
第29回日本看護科学学会学術集会
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