ランドスケープ研究
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59 巻, 5 号
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  • 李 樹華
    1995 年 59 巻 5 号 p. 1-4
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    歴史, 文化および地理的環境などの影響を受けて, 中国庭園と盆景の主な構成材料である石に対して, 独特な鑑賞法が形成された。本文は, 唐宋時代及び唐時代以前の庭石と盆石に関する文献を分析して, その鑑賞法の成立と定着を検討したものである。結論は次のとおりである。秦漢時代には, 庭石が応用され始めた。唐時代には, 太湖石の鑑賞法が形成された。宋時代には, 庭石と盆石は, 近山形石, 遠山形石, 形象石及び紋様石の四種類に分けられ, その鑑賞法がそれぞれ異なる。近山形石の鑑賞法は, 宋時代の米希の石の相石法と一致している。遠山形石の鑑賞法は, 遠山の姿を表現する峰尾根, 崖, 谷及び麓などを重視する。
  • 丸山 宏
    1995 年 59 巻 5 号 p. 5-8
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    文政10年 (1827) に刊行された秋里籠島の『石組園生八重垣伝』には34種の垣根の図がある。 庭垣の版本としてはこの『石組園生八重垣伝』がその最初のものであるが, 写本としては文化7年 (1810) の奥書のある『藩籠譜』が現時点では最も古い垣根譜であろう。これは前者とは異なり, 庭師の垣根の雛形とでもいうべきものであった。
    楠田右平次という植木職人が300種にのぼる垣根図を自ら描き集成したものである。職人の内部資料であるこの藩籠譜には複数の写本が伝わっており, 当時においても貴重なものであったことが窺える。そこに描かれた茶庭垣をはじめ多種の垣根はまた江戸後期の庭園文化の展開の一端を実証するものとして重要な資料といえる。
  • 小野 佐和子
    1995 年 59 巻 5 号 p. 9-12
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    駿河原宿 (現沼津市原) の素封家植松氏の庭, 帯笑園について, 皆川淇園による「植松受花園記」と「帯笑園絵図面」を中心に, 江戸時代後期の庭のありさまを考察した。その結果, 帯笑園が盆栽とさまざまな園芸植物の収集展覧の場であったこと, 収集品に外来種が多数含まれること, 富士山の眺めと収集品を, 庭中の亭からあるいは庭をめぐって楽しむことができたこと, 旅行者の訪問が多いこと, 庭についての文章や扁額の存在があきらかとなり, 帯笑園が, 園芸の趣味, 亭での観賞と歓談書や文芸を通じた庭の楽しみ方が一体となった, 富裕層の庭のありかたを示す顕著な例であることを認めた。
  • 赤坂 信, 石川 忠治
    1995 年 59 巻 5 号 p. 13-16
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    脇水鐵五郎は, 明治の末期から昭和の初期まで地質学をもとに風景論を展開した。このとき脇水は, 風景の構成要素を明らかにし, 風景評価を行うという点で地質学の理論を風景の評価に持ち込んでいる。名勝地や国立公園のような大風景地の成因の大変わかりやすい地質学的解説という実績を残し, 海外の風景と比較して勝ると考えられる海岸風景美と渓谷美をその中心的テーマとした。また脇水の海岸風景の3要素という風景の類型化の展開が, 国立公園の実際の選定で取り入れられていった。やがて海岸風景地の国立公園指定に対する強い要望は戦況の深刻化とともに影をひそめ「時局」に沿った路線へ転換していった。
  • 西田 正憲
    1995 年 59 巻 5 号 p. 17-20
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    中世末から近世にかけて, 瀬戸内海は多彩な異人たちが航行し, 航海, 寄港地等について多くの記述を残した。16~17世紀のキリシタン宣教師, 17~18世紀の朝鮮通信使, 17~19世紀のオランダ商館員と, 瀬戸内海はこれら異人たちの布教や江戸入府の海の道となっていた。19世紀にわが国を訪れた近代の欧米人は瀬戸内海の風景を絶賛したが, これに先行するこれら異人たちは瀬戸内海の風景をどのように見ていたのであろうか。これら異人たちの瀬戸内海の風景とは何であったのか, 16世紀半ばから19世紀初めにかけての彼らの紀行文, 報告, 日記等の文献から, 瀬戸内海の風景の記述を分析することにより, 考察を行うものである。
  • 黄 永融
    1995 年 59 巻 5 号 p. 21-24
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東洋思想の一つであった風水思想は大地を生きたものとして扱っている。風水思想において大自然の山は, 単なる土と鉱物を混在するものでなく, 一個生命をもつ「龍」である。風水では, 石は山の骨であり, 土は山の肉であり, 川は山の血脈であり, 草木はその皮毛である。そして骨肉皮毛は血脈によって貫通したのである。こうした大地は疑似人体と見なされ, 人間は自然と一体にならなければならないという「天人合一」の思惟が定着した。また, 風水は一種の実用技術でもあり, 大自然の風景を読みとり, 自然の原則に従って造営物や空間をつくるという東洋の独特な自然景観論として位置づけられる。
  • 小野 良平
    1995 年 59 巻 5 号 p. 25-28
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    博覧会は一つの都市的虚構ということができ, 博覧会の開催されたそれぞれの時代は, 建築物や工作物のデザインばかりでなく会場計画全体に敏感に反映されるものと考えることができる。本稿では, 明治期の急速な近代化の中で国家が主導的に進めた内国勧業博覧会の会場計画における空間デザインの面に着目し, わが国の近代化のなかでの外部空間デザイン思想の一つの様相を探ることを試みた。その中で近代の知覚の変革を啓蒙しようとする近代西欧的空間と博覧会の祝祭性を演出する伝統的空間とがともに計画者によって意識的に設定されていたこと等が明らかになった。
  • 野嶋 政和
    1995 年 59 巻 5 号 p. 29-32
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    明治末期の東京における小規模公園に関する二つの出来事は, わが国の都市公園の近代化プロセスにおいて重要な意義を有している。本稿では, 学校教育とりわけ学校体育と関連づけて, 都市公園の近代化プロセスを考察する。明治30年代以降, 学校体育の整備が進展する一方, 学校の運動場の整備は順調には進まなかった。また, 同時に社会教育の重要性が認識されるようになることもあいまって, 体育の空間を都市のオープンスペースに求める発想が生まれた。その結果, 公園も運動場として整備される必要が生じることになった。したがって, 明治末期の都市公園の近代化は, 体育の整備・展開プロセスに大きな影響を受けていた, との結論を得ることができる。
  • 西村 公宏
    1995 年 59 巻 5 号 p. 33-36
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    高等教育機関創設及拡張計画による大正後期新設の文部省直轄高等諸学校では, 実用重視の施設整備が奨励されたにもかかわらず, 全ての新設校で植栽が見られ, 中庭セットバック等, 様々な手法が用いられている。この背景には, 樹木に囲まれた落ち着いた環境は教育上好ましいとする認識があったことが推察され, 通常運営もしくは御大典等の記念事業等を通して, 各校の関係者が手弁当的に外構整備を進めている。「造 (庭) 園学」が講じられた鳥取高農, 神戸高工, 宇都宮高農等でも, 造園関連学科担当を含む関係者による外構整備がなされるが, 理論 (講義) よりも実践 (造成, 管理育成等) が先行している点に特色があると言えよう。
  • 宮城 俊作
    1995 年 59 巻 5 号 p. 37-40
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    ジェームズC.ローズは, アメリカ合衆国のランドスケープデザインにおけるモダニズムの展開に重要な役割をはたした人物である。1938年から39年にかけて, penoil points誌に掲載された7編の論説を主要な対象として, 彼の空間論を構成する要素とその構造を検討した。ボザール様式への反駁を契機として, キュビズム的な空間認識の論理を住宅庭園に適用する中から, 空間のヴォリュームとその分節による空間構成の手法が考究された。また, 空間を区分する要素として植物材料を重視し, その規格化を試みることによって建築デザインとの共通性が確保され, 屋外空間との統合による空間造形の論理が支えられていたことを指摘した。
  • 森本 幸裕, 内田 修, 曽根原 幹二, 徐 英大
    1995 年 59 巻 5 号 p. 41-44
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    切土のり面に厚層基材吹付けなどの手法で樹林化を図った場合の将来景観を自由な視点から予測して評価可能な画像を出力することを目的とし, 樹林の成長予測モデルを試作し, その結果に基づく景観予測手法を2通り試みた。その結果, 地形については立体視可能な2枚の航空写真をもとにDEMを自動生成する方法ののり面への適用上の課題が明らかとなり, 遠景に関してはテクスチャー・マッピングと液晶シャッターによるコンピュー夕画面上立 体視によってリアリティの高い画像が得られ, 近景については樹木のモデリングによる景観予測システムを用いることにより, 評価可能な現実感のある画像を得ることができた。
  • 坂 祥士郎, 輿水 肇
    1995 年 59 巻 5 号 p. 45-48
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    樹木の根に観賞価値を与えようと, 樹木噴霧耕を用いた最適な水供給システム構築のための基礎的研究として, アラカシ, アオキ, インドボダイジュ, イヌビワ苗木の根の乾燥過程での, 光合成・蒸散速度, 気孔コンダクタンス, 水ポテンシャルの変化を測定した。根の乾燥過程は (1) 水滴付着状態 (2) 水滴など重力水の流去 (3) 根系基部付近の太根表面の乾燥発生 (4) 太根周辺の小根への乾燥領域の拡大 (5) 根系先端部位の湿気残存と他の部位の水膜消失 (6) 完全乾燥 (7) 内部蒸発散・根の萎縮の乾 (1) ~ (7) に区分され, アラカシは乾 (4) の状態インドボダイジュは乾 (5) の状態で気孔閉鎖が確認され, 根の乾燥過程と水ストレスの発生時期は樹種ごとに関連性がみられた。
  • 岩田 彰隆, 木田 幸男, 甲野 毅, 苅住 昇
    1995 年 59 巻 5 号 p. 49-52
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    明治神宮表参道の帯状植枡に植栽されたケヤキ大径木の街路樹167本について, その生長が歩道の与える影響を調査した。そのうち標本木5本について歩道に平行および直行する土壌断面においてトレンチ枠法で根系調査を行い, 根系分布と歩道との関係を追求した。その結果次のことがわかった。(1) 根株から50cmの範囲内にある縁石と歩道は根系生長による影響を受けやすい。(2) 胸高周囲が120cm以上の大径木になると歩道の縁石に乱れが著しく増加した。(3) トレンチ断面の根系分布数は大径木ほど表層に多く, 歩道はその間隙に侵入した根系の肥大生長によって盛り上がる。歩道下の砕石層は厚いほど根系による路面への影響が少ない。
  • 江崎 次夫
    1995 年 59 巻 5 号 p. 53-56
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    酸性雨の造園用樹木類に対する影響を調べるために, スギ, ヒノキ, ヤマザクラ, ケヤキ, ミズキ, ハチク, モウソウチクおよびマダケの樹幹流の量とpHを調査した。その結果, 針葉樹の樹幹流のpHは, 林外雨のpHよりも低い傾向を示し, 広葉樹の樹幹流のpHは, 林外雨のpHよりも高い傾向を示した。また, 樹幹流量と降雨量との間には, 高い相関関係が認められた。竹類のpHは, 針葉樹と同じような傾向を示した。これらの結果より, 今後, 針葉樹や竹類を植栽する場合には, 同時に広葉樹も植栽し, pHの低い降雨流出水が直接土壌に浸透するのを防止する必要があると考えられた。
  • 田中 安代, 平井 潤, 前中 久行
    1995 年 59 巻 5 号 p. 57-60
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    名古屋市の八事霊園では, 墓地区画の8割に植物が存在している。これらを調査して, 人々の墓地に寄せる思いの-端を明らかにしようと試みた。規模の類似した平和公園も調査対象とし, 墓地区画内に生育する植物と墓石, 燈籠などの設置物の種類数を調査した。墓地区画内に存在する植物は植栽・自生を含め, 全体で40種類の植物が出現した。おもに常緑低木の植物であるが, 強勢定に耐えるものであれば高木性植物も利用されている。目的により落葉性植物も導入されている。宗教習俗関連の植物の積極的植栽はなかった。区画内の植物や設置物の種類数を決定する主要因は区画面積であるが, 墓地区画内の植栽は多様であり, これは墓地関係者の意思を反映しているためと思われる。
  • 藤原 宣夫, 田畑 正敏, 井本 郁子, 三瀬 章裕
    1995 年 59 巻 5 号 p. 61-64
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では木曽川右岸15~22kmに設置された水制を対象に, 植生調査ならびに地形・水位変動などの環境条件調査を行い, 水制における植生の発達と環境条件の関係について解析するとともに, 時系列的な植生の発達について考察を加えた。その結果, 木曽川水制での植生の発達は, 水制基部へのミズガヤツリ等の抽水植物の侵入に始まり, 堆砂の進捗に伴いヨシ等の高茎草本群落の形成, ヤナギ類の侵入, ヤナギ林の形成・拡大, エノキ・ムクノキ等の侵入という経過を経てきたものと考えられた。また, 調査地は潮汐影響区間にあり, 潮の干満による冠水の程度により, 植生の発達が抑制されていることが判明した。
  • 山田 宏之
    1995 年 59 巻 5 号 p. 65-68
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    夏季緑陰の温熱環境を日照地, 四阿内部などと比較し, その避暑空間としての性能を評価する目的で解析を行った。温熱環境の評価は, Dl, WBGT, HSI, KHl, PMVなどの各種温熱環境指数を用いて行い, 樹林と単木の相違, 四阿, 日照地との比較などを行った。あわせて各指数の評価指標としての適性についても考察した。解析結果からは, 夏季晴天時の日照地の温熱環境は非常に過酷であり, HSLKHlなどの指標からは, 野外活動の環境としては危険レベルに達していること, 単木および樹林内の緑陰は, 快適とは言えないまでも危険なレベルには至らないこと, 四阿よりは緑陰の方がより冷涼な環境を形成することなどが把握された。
  • 大江 栄三, 勝野 武彦, 藤崎 健一郎, 高橋 理喜男, 葉山 嘉一
    1995 年 59 巻 5 号 p. 69-72
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    小規模な樹林による夏季の微気象調節機能の把握を目的とし, 幅約13m, 樹高約6mの樹林内および隣接する草地の地上高1.5mにおける温度, 湿度等の測定を行った。測定期間の平均値で, 樹林内の気温, 黒球温度, 絶対湿度は樹林外に比べてそれぞれ1.1℃, 11.8℃, 1.3g/m3低かった。樹林内の方が低湿だったのは, 当該樹林は低木, 草本が少なく, 蒸散の多くが上部の樹冠で行われていたためと考えられる。樹林内外の気温差は気温と相関が高く, 今回の測定範囲内 (28.0~35.2℃) において気温が1℃ 上昇することに, 気温差が0.26℃ 増加するという結果を得た。
  • 一ノ瀬 友博, 加藤 和弘
    1995 年 59 巻 5 号 p. 73-76
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    孤立樹林地内部の植生構造が鳥類の分布にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするために, 埼玉県所沢市の比較的面積の大きな孤立樹林地において鳥類の分布と植生構造の対応関係を調査した。樹林地を植生によっていくつかの林分に分け, それぞれの林分において点センサス法による鳥類群集調査を行った。既往の研究の多くは鳥類の繁殖期に調査を行っているが, 本研究では越冬期に調査を行った。植生構造は各階層の植物体量と胸高断面積によって把握した。その結果, 越冬期においても鳥類の種数は植物体量と有意な相関が見られた。鳥類の分布は, 全階層の植物体量と低木・草本層の植物体量枯れ木の胸高断面積と関係があることがわかった。
  • 加藤 和弘
    1995 年 59 巻 5 号 p. 77-80
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    東京都文京区内の17ケ所の緑地で樹林地における越冬期の鳥類を調査し, 鳥類の種組成と植生の構造の関係を明らかにした。鳥の種類数は, 高木に覆われた面積よりは植生の階層構造, 特に低木層の発達の程度に依存しており, 各階層の植被率や種数が増加するに従って鳥類の種数も増加した。但し植被率も植物種数も, ある程度以上になると鳥類の種数の増加に寄与しなくなる可能性が示唆された。鳥の種類が少ない緑地では, 鳥類による低木層の利用が鳥の種類の多い緑地に比べて少なく, ウグイスなど低木層を好んで利用する種類は見られなくなる傾向があった。以上より, 鳥類群集保全のためには, 植生の下層部に配慮した緑地整備が必要であるといえる。
  • 松原 秀也, 丸田 頼一, 近江 慶光, 柳井 重人
    1995 年 59 巻 5 号 p. 81-84
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 小学校の校庭に残存する巨樹を取り上げ, 巨樹との接し方や巨樹とともに過ごす経験が, 小学生および卒業生に与える影響を把握することを目的とした。調査は東京都区部の小学校を対象とし, 小学生および卒業生にアンケートを行い, 調査対象とした巨樹に対する意識やかかわり合いについて調べた。その結果, 小学生については, 巨樹に対して接触頻度が高いほど木陰を好ましく思い, シンボル意識が認められ, 巨樹に対する保全意識も醸成されることが把握された。また, 卒業生については, 巨樹との接触の結果, 巨樹に対するシンボル意識や保全意識が認められるのみならず, 巨樹のそばを自然と接する貴重な場所として考えていることが推察された。
  • 四方 圭一郎
    1995 年 59 巻 5 号 p. 85-88
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    長野県伊那谷は, 天竜川上流域の河岸段丘崖や断層崖, 天竜川支流の開析谷谷壁が, 帯状に連続してみられ, その斜面に沿って多くの農村集落が分布している。集落は土地利用の中で, 斜面の大部分を樹林として利用してきた。本論では, 伊那市のこれら斜面に隣接する農村集落を対象とし, 集落内土地利用と土地所有形態および斜面樹林の林相の関係を分析し, 地域景観としての斜面樹林の保全の構造を考察した。その結果斜面樹林の形態には,(1) 屋敷林,(2) 社叢林,(3) 生産林の3つのタイプがみられ, 構造および斜面の所有の違いが斜面樹林の保全に影響を与えていることが明らかとなった。
  • 葉山 嘉一, 高橋 理喜男, 勝野 武彦
    1995 年 59 巻 5 号 p. 89-92
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    公園林や都市林における生態系保全のための植生計画や植生管理計画では, 人間の利用を前提に生物生息空間の質について検討することが重要である。本研究は, 都市公園の樹林地において異なる植生が鳥類の生態にどの様な影響を与えるか明らかにするため, 東京都立東大和公園を対象に植生調査および鳥類調査を行い, 林分構造と生息鳥類の質と量の違いを検討した。その結果, 鳥類の生息空間として落葉広葉樹林およびアカマツ優占の落葉広葉樹混交林が季節を問わず重要であること, 林床植生の繁茂が密なことや, 落葉広葉樹の萌芽再生林では高木の混在がそれぞれ鳥類の種多様性に重要であることが示唆された。
  • 倉本 宣, 井上 健
    1995 年 59 巻 5 号 p. 93-96
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    カワラノギクの保全手法についての基礎的なデータを得るため, カワラノギクの生育地の微地形と植被率とを調査した。単位個体群を含む幅1mのベルトトランセクトを設定して, 群落調査と水準測量を行い, そのなかの1×1mの方形区の優占種力ワラノギクの有無, 植被率および水面からの高さを記録した。微地形は, 低水地, 流路斜面, 中水地, 中水地凹地, 高水地斜面, 高水地, 高水地凹地, 堤防法面, 人工改変地に区分した。カワラノギクは中水地に対する特化度が高く, 植被率が比較的低い方形区に分布していた。カワラノギクを保全するためには, 生育場所が類似し, 競合する帰化優占種であるオニウシノケグサとニセアカシアの繁茂を制御する必要がある。
  • 大久保 悟, 加藤 和弘
    1995 年 59 巻 5 号 p. 97-100
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    埼玉県所沢市内のコナラニ次林内で木本種の分布を調べ, 二次林の空間的な構造とそれに関与する要因を考察し, 二次林の遷移管理のあり方を検討した。二次林内には個体サイズの大きいシラカシの実生・稚樹や低木が多く確認され, 管理が放棄された場合シラカシ林への遷移が進む可能性が高いことがわかった。一方アオハダ, イヌシデ, エゴノキは亜高木から低木, 稚樹の各層で多くの個体が確認され, 一時的にもこうした種が優占する林分が出現する可能性が示唆された。また多くの種で空間的な分布が不均一であることがわかった。二次林のこのようなパッチ状の構造は, 今後二次林の植生管理を考慮する際に注目すべきものと考えられる。
  • 深町 加津枝, 奥 敬一, 笹岡 達男, 横張 真
    1995 年 59 巻 5 号 p. 101-104
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近畿地方のブナ林は面積や分布が限定され孤立化が進行しているといわれるが, ブナ林の分布状況を包括的に把握した上での保全計画の実施にはいたっていない。本研究はメッシュデータ, 図面データ等を用い自然条件からみたブナ林の残存形態を, また, 報告書等を用いて保全ブナ林リストを作成し, 社会条件からみたブナ林の残存形態を明らかにした。以上の結果から, ブナ林の残存形態を, 保全対象ブナ林, 弱規制里山ブナ林, 未規制里山ブナ林, 弱規制奥山ブナ林, 未規制奥山ブナ林の5つに類型区分した0さらに, それぞれの類型区分について保全管理上の特徴と保全指針を明らかにし, 近畿地方のブナ林の保全計画に不可欠な情報を整備した。
  • 十代田 朗
    1995 年 59 巻 5 号 p. 105-108
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近代におけるわが国のリゾートの成立には, 西洋から輸入された「避暑」思想が深く関わっていた。そこで, 本研究は, 未だ解明されていない「避暑」がわが国で受容され普及し実践されていった過程を明らかにしている。
    主要な分析結果は, 以下の4点である。1) 外国人が気候風土の異なる地に「転地」してすごすという「避暑」を輸入し, 日本人がそれを模倣し, 浸透していった。2) 避暑地としては明治中期には, 既存温泉地が選ばれたが, その後, 外国人は高原を発見し避暑地とした。3) 明治後期から避暑地としての繁栄は海浜に移ったが, これは健康意識と深い関連があった。4) 避暑のための長期滞在を可能にする宿泊システムが存在していた。
  • 佐藤 治雄, 狩屋 桂子, 前中 久行
    1995 年 59 巻 5 号 p. 109-112
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    時代及び年齢成長にともなう身近な景観や生活の変化が住民にどのように認識評価されているのかを把握する目的で, 琵琶湖湖岸2集落 (滋賀県中主町野田, 能登川町乙女浜) でアンケート調査を実施した。生活体験の変化パターンは調査項目により様々であったが, 牛の飼育など2, 3の項目を除き, 両調査地間に大差はなかった。また, 五右衛門風呂に入った, 自家用車があるなど多くの項目で高度成長期を境に急激な変化があった。過去の大規模事業として圃場整備, 内湖の干拓, 河川改修などをあげる人は若年齢層より高齢層の方が多かった。調査結果には生活体験, 景観の変化が大規模事業の進捗など社会情勢の変化と密接に関連しつつ現れている。
  • 長沢 真也, 蓑茂 寿太郎
    1995 年 59 巻 5 号 p. 113-116
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    この研究は風致地区指定下にある住宅地系の市街地の現状とそこが抱えている今日的課題を踏まえ, 幾つか見られる良好な状況の風致地区に注目して綿密な調査と分析を試みた研究である。良好な風致地区に直接する風致構成要素として, 「風致資源」と「風致宅地」をとらえ, 風致の保有状況を明らかにした。その結果, 風致宅地は必ずしも緑被率に表れるものではないという特性を持ち, 緑被率10%という条件下でも存在し得ることから, 今後の風致地区の計画手法に結びつく重要な知見を得た。
  • 近藤 隆二郎, 日下 正基
    1995 年 59 巻 5 号 p. 117-120
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    「写し霊場」設置によってつながるものは「体験結合」と「空間結合」に分けられる。奈良県大和郡山市番条町にある「番条八十八ヶ所」は, 通常は各家内にある大師像が毎年4月21日だけ家の前に飾られ, 一日だけの巡礼路が出現する。かつて伝染病や災害が襲いかかった時に, ちょうど村に88戸あったために大師の利益を願って設置されたという。大師像を持ったまま村境を越えようとすると荷車が動かなくなる等の伝説があり, 88体の像が現存されている。3年間の現地調査を実施し, 大師番号と村落出入世帯, 社会集団との関連, 巡拝圏, 人口動態等について分析し, 88という全体性の保持が世帯数の安定性を担保すると共に平等的参加という点で各イエを結合していたことを明示した。
  • 金 玄, 下村 彰男, 熊谷 洋一, 小野 良平
    1995 年 59 巻 5 号 p. 121-124
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    近年, 韓国において急速に進められている温泉地の開発状況, 及び開発制度の仕組みに関する調査・分析を行った。そして, 日本との相違点の検討を通して, 今後の韓国の温泉地開発のあり方に関して考察を加えた。その結果, 両国における温泉や温泉地に対する考え方の相違が両国の温泉開発の制度や進め方に大きく反映していることが明らかになった。即ち, 韓国は温泉を「空間」として捉え, 都市計画的なリゾート都市型の開発がされている。韓国の温泉開発の特徴は (1) 温泉地制度が明確であること (2) 都市周辺のレクリエーション空間として位置づけられることが言える。
  • 王 秀琴, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡
    1995 年 59 巻 5 号 p. 125-128
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 観光資源の多様性, 交通の利便性, 観光客の収容性, 観光開発のための未利用地の存在量の4つの指標から淡路島における観光開発の動向と現状の観光開発ポテンシャル評価を試みた。その結果, これまでの観光開発の動向から捉えた観光開発ポテンシャルは, 洲本市が最も高く, 北淡町と西淡町がこれに続く。一方, 三原町はポテンシャルが最も低いことが明らかとなった。以上の手法を用いで現状の観光開発ポテンシャルを評価することは, これまでの発展軸上での観光開発の可能性と限界性を評価できるものであり, 今後の観光開発のあり方を探る上で重要な視点と考えられる。
  • 東海林 克彦
    1995 年 59 巻 5 号 p. 129-132
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然環境アセスメントは, 要綱や条例等に基づき, 全国各地で実施されている。しかし, 自然環境アセスメントの実施状況の把握・分析や自然環境アセスメントが抱える問題点や課題の抽出・整理は, 自然環境アセスメントの実施方法等に関して種々の改善すべき点の存在を指摘する意見があるにもかかわらず, 十分に行われているとは言い難い状況にある。本論はこのような状況を踏まえ, 自然環境アセスメントの今後のあり方を考える-助とするため, 主に技術的側面から自然環境アセスメントの実施状況を, 可能な限り定量的なデータ等に基づいて客観的・総合的に調査・分析し, 問題点や課題を明らかにしたものである。
  • 小林 昭裕
    1995 年 59 巻 5 号 p. 133-136
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    利用体験に期待した内容をもとに利用者を分類し, 分類した利用者間で, 行動形態や利用に伴うインパクトに対処する管理への考え方, 他の利用者との出会いに対する許容限界に, どのような違いがあるのかを, 大雪山国立公園における登山者の登山体験を事例として検討した。その結果, 利用者はクラスター分析によって5つの集団に分類され, 集団間で, 行動形態や目的地に違いがみられた。インパクトに対処する管理への考え方に集団間で大きな違いはないものの, 集団毎に回答傾向が異なった。登山道での出会いに対する許容限界値に集団間の差はないが, 野営地の利用人数に対する許容限界値に集団間で差がみられた。
  • 後藤 知朝子, 下村 彰男, 熊谷 洋一, 小野 良平
    1995 年 59 巻 5 号 p. 137-140
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市化の進展により子供が戸外遊びを行う空間は公園に限定されてきている。その公園において, 従来自然地で行われてきた多様な自然遊びはどのように残されているだろうか。本研究では都内の林試の森と小石川植物園において現地調査を行い, その結果をもとにまず遊びの実態を明らかにし分類した。更に公園内の空間特性を整理し, 区分された遊びの多様性との関係を分析, 考察した。調査分析の結果, 97種の遊びは6類型に区分でき, そのうちの自然遊びは37種観測され, 極めて多様であること, また自然遊びと他の遊びではその多様性を誘引する空間特性が異なることが明らかとなった。
  • 海津 ゆりえ, 石光 希代子, 下村 彰男
    1995 年 59 巻 5 号 p. 141-144
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然観察において人が動植物を認識する構造を考察するため, 小学校から高校生までを対象に行われた自然観察路コンクールの入選作品を分析した。観察者が動植物を認識する要因として, 動植物自体が有する物理的な特徴, 距離的・心理的親しみやすさ, 教育等によって観察者にあらかじめ与えられている情報, 動植物の分布状況がもたらす出会いやすさ, の4つの要素が介在しており, 年齢とともに各要素に対する認識の仕方は変化することが明らかとなった。年齢が低いほど五感への刺激が強い動物や親和性の高い動植物を多く認識し, 年齢が高いほど刺激や親しみやすさと観察の相関は薄れていく。
  • 杉田 早苗, 堀 繁
    1995 年 59 巻 5 号 p. 145-148
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    都市公園設計におけるデザイン目標とデザイン手法の基礎的知見を得るために, 日比谷公園を対象に内部空間の分節状況と分節装置の形態の現状を調査した。その結果, 以下のことがわかった。1) 空間は9タイプ, 27ケ所に整理でき, 休養空間が数も多く面積も大きい。2) 分節装置の素材は植物が中心だが, 石積みや柵も場所によっては使われていた。3) 分節装置の効果は, 独立性, 借景性, 誘引性, 印象緩和性, 景観資源性の5つが確認された。4) 分節装置のデザイン目標とデザイン手法の関係を明らかにし, 13のデザインの型を抽出した。
  • 永松 義博, 日高 英二, 中野 功二
    1995 年 59 巻 5 号 p. 149-152
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    視覚障害者の友人関係について調査した。盲学校での校内友人数は4~6人の割合が高い。弱視者, 寄宿舎生の友人数は多くなる傾向にある。盲女子は友人数が少ないといった男女差がみられた。同学級, 同寮であること等, 接触の機会が友人関係成立の大きな要因となる。また同性であること, 同級生, 同程度の視力者によって友人構成がなされている。健常者の友人をもつものは弱視者, 準盲者の男子に多くみられた。その数は1人もしくは2人である。成人の健常者を友人にもつ機会は男女共にサークル活動の場を通じてが最も多いため健常者との交流の機会や場所の提供が今後の重要課題になる。
  • 知花 弘吉
    1995 年 59 巻 5 号 p. 153-156
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本論は, 登山道の中に設置されているスロープにおいて, 上りや下りと車椅子移動や通常歩行の違いが注視の傾向に影響するか否かについて検討する。平均注視時間や回数は上りや下りあるいは車椅子移動や通常歩行の違いによる差は少ない。一方, 注視対象に関しては, 車椅子移動者が上り下りするときは地面や手すりが主であり, ほかの注視対象は少ない。また, 注視の方向は正面方向が主である。通常歩行の場合は地面や手すりはもとより, 樹木, 山, 街の風景などに注視対象は広がる。注視の方向は正面方向が主であるが, 左右方向への分散も認められる。左右方向の場合, 注視方向は空間の開放された方向へと向かうことなどが明らかになった。
  • 高野 歩
    1995 年 59 巻 5 号 p. 157-160
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 景観体験を重視する上で, 囲続感に注目し, 従来の水平方向前方のみを計測する緑視率に加えて, 頭上垂直方向を計測する樹冠率を用い, 両者を合成することにより, 囲続感を重視した緑量感が計測できると考えた。この環境体験を踏まえた緑に対する視知覚環境情報を「緑視状況」と定義した。世田谷区内における代表住専街路を調査対象地とした, 冬期・夏期の実験を通じて, 主体 (街路歩行者) と, 街路樹を指標とした街路景観構成要素との相関を明らかにし, 街路樹が醸し出すイメ-ジと主体の周辺にある “もの” の空間分布を考察, 住居地域における「緑視状況」の有用性を立証した。また, その把握モデルも併せて提案する。
  • 多田 充, 金 恩一, 藤井 英二郎
    1995 年 59 巻 5 号 p. 161-164
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    森林が人間にもたらす生理・心理的効果を, ブナおよびヒノキ林を対象に, 実物とスライドで比較した。被験者の好ましさについての評価と感情状態, 脳波, 脈拍, 血圧を測定したところ, 実物ではスライドに比べより好ましく評価され, ポジティブな感情をもち, 脈拍数が減少してストレス状態の緩和が示された。また, 提示方法の違いは脳の側頭葉の活動に影響を与えており, ブナ林とヒノキ林では左右差が異なった。このように生理・心理的効果がスライドと実物で異なるのは, 空間特性や環境情報に差があるためと考えられる。対象間の生理・心理的効果の差は実物ではスライドに比べて顕著であり, 実物はより環境情報が豊富で, 鮮明な感覚特性をもっていると推測された。
  • 沼本 健司, 裴 重南, 古谷 勝則, 油井 正昭
    1995 年 59 巻 5 号 p. 165-168
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    天候や景観体験の差が景観評価に与える影響を明らかにするために, 富士見峠展望台において, イメージ調査と好ましさ調査を行った。(1) 天候が異なると, イメージ評価の差が顕著に見られた。また, 晴れでは, 景観体験による差が見られたが, 曇リではほとんど見られなかった。(2) 好ましさの判断基準は, 天候や景観体験に関係なく, 「雄大さ」や「美しさ」が基準となった。また, 天候や景観体験の違いにより, 特徴的な評価基準が抽出できた。(3) 好ましい景観調査では, 天候の変化に伴い景観の構図が変化し, その結果, 興味対象が変化した。(4) 景観観賞の阻害要因として, 電波塔, 道路, 電柱, 法面, 車, ゴミ, 展望地に近接する低木などがあげられた。
  • 愛甲 哲也, 浅川 昭一郎
    1995 年 59 巻 5 号 p. 169-172
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    自然公園等における利用者の行動や混雑度等に関する情報は, その管理および計画に欠かせない。本研究では, 大雪山国立公園の自然探勝路を事例として, 利用グループの行動を確率的に割り当てるシミュレーションモデルを応用し, モデルの適合性の検討と混雑度の解析を行った。実際の利用状況との適合性が示されたモデルから, 利用の多い歩道区間と展望台では, 他のグループと出会う頻度, 視覚的な干渉を受ける頻度がより多く, 入り込み数の増加により, 歩道区間での混雑度が急激に高まることが示された。
  • 下村 泰彦, 増田 昇, 山本 聡, 安部 大就, 酒井 毅
    1995 年 59 巻 5 号 p. 173-176
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究では, 都市河川空間をシークエンシャルな景観として捉えるために, CGによるアニメーションモデル画像を橋上, 水上, 水際の3視点場について作成した。これらの画像を刺激媒体とした心理実験を通じて, 今後のスーパー堤防化を想定した空間整備に関する課題と方向性を探ることを目的とした。その結果視点場の違いにより景観性の評価は異なり, 橋上景観ではマクロな, 水上景観ではシークエンシャルな, 水際景観ではミクロな景観構造が重要であること。都市の魅力や活気性といった観点からは階段護岸形態が望ましいこと。安らぎや潤い性といった観点からは緩傾斜護岸形態に低木等の自然要素の導入が望ましいこと等が明らかとなった。
  • 車 文韜, 安部 大就, 増田 昇, 下村 泰彦, 山本 聡
    1995 年 59 巻 5 号 p. 177-180
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    地域の適性な土地利用を実現するためには土地利用現況とその空間パターンを的確に把握することが重要となる。このような課題に対して, 技術革新が著しい地理情報システムの応用が数多く試みられているが, ベクタデータを用いた地域スケールの研究事例が日本国内では少ない現状にある。本研究では, 大阪府南部地域をケーススタディとして, GISの代表的なソフトウェアであるARC/INFOを用いて, 1973年と1990年の3万分の1の土地利用現況図をデジタイザでベクタデータとして入力し, 両年次の土地利用特性の比較を通じて土地利用変化の概略変化パターンと空間分布特性を把握するとともに今後の当該地域の土地利用計画に関する課題を明らかにした。
  • 谷脇 憲, 大塚 彰, 堀川 彰, 雨宮 悠
    1995 年 59 巻 5 号 p. 181-184
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    農村景観の修景は対象の範囲が広く, 修景の手法の確立には, データの入力を簡便に行うことが必要とされている。この問題の解決のために, 筆者らは, まず簡易なカイトプレーンによる空中写真撮影を試み, これを飛行安定装置によって安定させることにより, 目標地点の空中写真を撮影した。つぎにこの空中写真を, パソコンにとり込み, 幾何補正, 教師付分類等の画像解析を行って, 森や林, 畑や草地, そして施設や家屋等に分類した。さらに, この解析結果を3次元の情報をもったワークステーション上のGISに重畳し, 標高, 傾斜視野等の区分をプロットし, 修景計画に向けての農場各地点の基本的な特徴を分類することができた。
  • 小椋 純一
    1995 年 59 巻 5 号 p. 185-188
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 明治中期における相模川流域の植生景観を, 主に横浜水道工事関係写真から検討したものである。そのために, 詳しい地形図をもとにして作成した地形モデル上に指標となる3種類の樹木モデルを適宜配置したシミュレーションモデルを作成し, それと写真とを比較することにより, 写真に写された植生の高さなどを詳しく検討した。その結果, 横浜水道の水源に近い相模川流域の山地には, 当時, 高さが1mにも満たない植生地や3~4m程度までの高さの低木林が広く見られ, 高木の樹木がまとまって見られるところは少なかったこと, 一方, 官林や山の稜線付近などの一部には, 10mを超える高さの樹木や森林も見られたことなどが明らかになった。
  • 市原 恒一, 豊川 勝生, 田中 利美, 澤口 勇雄
    1995 年 59 巻 5 号 p. 189-192
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    森林公園や国立公園の選択に用いることができる風景の探査システムをニューラルネットワークにより構築した。はじめに, 12枚の秋の森林風景写真について10対の形容詞対による景観評価試験を行った。つぎに, この結果を入力として, 評価画像を教師データとした教師付き学習方式を遺伝的アルゴリズムにより構築した。また, 教師データを風景の構成要素としたシステムも構築した。遺伝的アルゴリズムを用いた場合, 探査に各種の制約条件を付けることができること, およびネットワークの構造も同時に決定することができるため, 正解率が72%以上となリ, 正解率が高いシステムを構築することができた。
  • 豊川 勝生, 市原 恒一, 澤口 勇雄
    1995 年 59 巻 5 号 p. 193-196
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    音の残響時間の違いによる不快感をファジィAHP法を使い, 残響時間の異なる5つの軽量床衝撃音で分析した。先ず, 残響時間の異なる大きさが同じの5つの軽量床衝撃音を組合せて10組録音した。次に, これらの残響音に対する不快感が形容詞対で説明できると仮定して, SD法で得られた10対の形容詞対により, 音の不快感の比較評価を音の大きさを被験者耳元で75dB (A) として, 16名の男性で行った。この比較評価結果をファジィAHP法で分析した結果, 以下のことが分析された。
    1) 残響が極端に長い音, 短い音で不快感が増した。
    2) 不快感が増す要因として, 音の感情的な因子, 規則的な因子があげられた。
  • 坂口 次郎, 鈴木 雅和
    1995 年 59 巻 5 号 p. 197-200
    発行日: 1996/03/29
    公開日: 2011/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 大規模都市公園における空間構成を客観的に記述し比較検討するため, グラフ理論に基づいたグラフの計測示数により, 空間構成を解析することにある。日本における15ヶ所の国営公園を対象とし, ゾーニングされた空間をグラフの頂点, それらを連結する主要な動線を辺としてグラフ化を試みた。またグラフの規模, 連結度, 分散度, 関連数などのグラフ示数を計測し比較することにより, 大規模都市公園における空間構成を類型化することができた。大規模都市公園におけるゾーニングは1段階だけの単純な構造ではなく, 空間を複数回分割する階層的な構造があるなど, 空間構成上の特徴が把握でき, 本解析法の有効性が確認できた。
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