日本助産学会誌
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31 巻, 1 号
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巻頭言
総説
  • 椿 真紀子, 我部山 キヨ子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 3-11
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究では,妊婦の精神的ストレスのバイオマーカーを生理的評価指標に,尺度を用いた質問紙調査によるものを心理社会的評価指標に位置づけ,両指標の関連性について検討することを目的とした。

    方 法

    医学中央雑誌Web版,PubMed,CiNii,The Cochrane libraryをデータベースとし,「妊娠期」「ストレス」「Pregnancy」「women」「Stress」「Hormones」をキーワードに検索した。妊婦の精神的ストレスに関して生理的・心理社会的評価指標の両指標を用いた文献を抽出し,国内文献10編,海外文献32編をレビュー対象文献とした。

    結 果

    活用頻度の高いストレスのバイオマーカーはCortisolである。国外の先行研究では,バイオマーカーを複数組み合わせた調査が国内より多くあった。妊婦の精神的ストレスに関する生理的・心理社会的評価指標間には,関連性・相関性は必ずしもあるわけではなく,一部に認められる,あるいは関連性・相関性がないことが明らかになった。

    結 論

    1) 生理的評価指標を用いる場合,研究目的とバイオマーカーの特徴に応じた選定が重要である。
    2) 生理的評価指標と心理社会的評価指標は必ずしも関連性・相関性があるとは限らない。
    3) 妊婦の精神的ストレスの評価指標には,社会統計学的因子や調査時期等が影響を及ぼす可能性がある。
    4) 複数の生理的・心理社会的評価指標の組み合わせ及びインタビュー法・前向き研究等,多側面からの評価が必要である。

原著
  • 麓 杏奈, 堀内 成子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 12-22
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    喜ばしい体験と同時に不測の急変に直面することのある助産師の心的外傷体験の実態を明らかにし,その心的外傷体験後の心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)発症リスクやレジリエンス,外傷後成長(Posttraumatic Growth:PTG)との関連を探索することである。

    対象と方法

    全国の周産期関連施設と教育機関から,層別化無作為割り付け法で抽出した308施設1,198名の就業助産師に質問紙を郵送した。有効回答者681名(56.8%)のデータから混合研究法を用いて,量的データは統計学的分析を,質的データは自由記載の内容分析を行い,得られたカテゴリと各変数との関連を検討した。

    結 果

    心的外傷体験を記述した者は575名(84.4%)で,その内容は【分娩に関連した母子の不測な状態】【助産師の辛労を引き起こした状況】【対象者の悲しみとその光景】【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】の4つに分類された。【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】という直接外傷体験をした助産師の,日本語版改訂出来事インパクト尺度(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)平均値が最も高く,またPTG平均値が最も低かった。さらに86名(15.0%)がその心的外傷体験を機に退職を検討していた。また,PTSDと就業継続意思(r=−.229),サポートと就業継続意思(r=−.181),PTSDとサポート得点(r=−.143),PTGとサポート(r=.148),PTGとレジリエンス(r=.314)は有意な関連を認めた(p<.001)。

    結 論

    直接外傷体験をした就業助産師はPTSD発症リスクが高かった。心的外傷体験をした助産師が職場内のサポートを得ることは,PTSD発症のリスクの低減,離職予防,さらにその助産師を成長させるポジティブな要素として働くことが示唆された。

  • 丸山 菜穂子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 23-33
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    妊婦の孤独感の程度と背景,社会的関係性から関連要因を探索することおよび,孤独感の母性役割の同一化,マイナートラブルへの影響を探索することを目的とした。孤独感は「社会的関係性における願望が量的,質的に満たされないときに生起する主観的な不快感情」と定義した。

    対象と方法

    2015年7月から10月に都内近郊の5周産期医療施設にて,妊娠34週以降の妊婦1,675名を対象に,改訂版UCLA孤独感尺度(得点範囲は20点から80点で高いほど孤独感が高い),ソーシャルサポートの量と満足度,女性に対する暴力スクリーニング尺度(DVスコア),母性役割の同一化,マイナートラブルを含む質問紙調査を行った。有効回答1,310部(78.2%)を統計的に分析した。

    結 果

    1. 孤独感得点の平均は33.1点であり,高い妊婦は平均42.3点の先天性胎児異常を指摘されている妊婦,平均38.8点のシングルマザー,平均37.0点の中卒の妊婦であった。

    2. 重回帰分析の結果,サポートの満足度が低いほど(β=−.331),サポート量が少ないほど(β=−.161),世帯収入600万円以上を基準として300万円以上600万円未満(β=.104),300万円未満(β=.141)と低いほど,精神疾患の既往があり(β=.111),DVスコアが高いほど(β=.069)孤独感は高かった(調整済R2=.21)。

    3. 孤独感が高い妊婦は母性役割の同一化が低かった(β=−.428, p=.000)が,孤独感とマイナートラブルの発症頻度との関連は認められなかった。

    結 論

    孤独感の高い妊婦は胎児異常を指摘されている妊婦と社会的脆弱性をもつ妊婦であった。早期発見のために精神状況とともにサポート・経済状況,DVについて情報収集する必要がある。孤独感の高い妊婦の母親になる過程を支えるために,助産師の継続的個別的支援が必要である。

  • 吉本 明子, 兒玉 慎平, 中尾 優子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 34-43
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,帝王切開における出産体験のとらえ方の構成項目を検討し,尺度の作成を行うことを目的とした。

    対象と方法

    無記名自記式調査票を4施設にて平成27年3月13日から8月31日までの期間,緊急または予定帝王切開後の褥婦に実施した。調査は留置式調査を用いた。

    調査で使用するため,先行研究に基づき26項目から構成される尺度の原案を作成した。尺度原案の項目分析後,主因子法・プロマックス回転による探索的因子分析を行い,因子構造を確認した。本尺度の信頼性の検討として,Cronbachのα係数とIT相関を確認した。また,妥当性の検討として,既知集団妥当性と内容妥当性を確認した。

    調査は,鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の承認を得た(受付番号:第327号)。

    結 果

    調査の結果,134名の有効回答を得た。

    尺度原案における項目分析により,3項目を削除した。23項目を使用した因子分析の結果,3因子15項目が抽出された。因子は,第1因子<出産の充足感>,第2因子<手術への適応>,第3因子<産み方への受容>と命名された。第1因子は7項目,第2因子は5項目,第3因子は3項目で構成された。

    尺度の信頼性の検討として,Cronbachのα係数は,全体で0.823,各因子で0.636~0.840となった。IT相関では,全ての項目と尺度合計得点との間に有意な相関が示された(p<0.01)。これより,本尺度は十分な信頼性を持つことが確認された。

    妥当性において,緊急帝王切開の平均得点が予定帝王切開より有意に低く(p<0.01),先行研究と同様の結果であったことから既知集団妥当性が確認された。また,助産学の専門家による調査票の自由記述の見解と,抽出された因子がほぼ一致(93%)したことから,内容妥当性が確認された。

    結 論

    本研究で新たに作成された帝王切開における出産体験のとらえ方尺度は,3つの因子から構成され,信頼性と妥当性が確認された。本尺度は,帝王切開の褥婦の出産体験に対する認識を明らかにすることができるといえる。今後,帝王切開の褥婦へのケアの改善に役立てるため,活用されることが期待できる。

資料
  • 安田 李香, 賎川 葉子, 荒川 靖子, 新小田 春美
    2017 年 31 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    妊娠期の体重増加と妊婦の腰痛発症時期との関連や腰痛への対処法及びその効果の有無の実態を明らかにする。

    対象と方法

    三重県内の某クリニックで出産された妊産婦を対象に質問紙調査を行った(117名に配布,有効回答率99.1%)。対象者を,厚生労働省(2006)による妊娠全期間をとおしての推奨体重増加量を参考に,妊娠中の体重増加量が,この目安未満であれば「不足群」,目安の範囲内であれば「適正群」,目安以上であれば「過剰群」と3群に分類した。質問紙の内容は,基本的属性,腰痛に関する項目とした。統計処理はSPSS(version21)を使用し,分類した3群と腰痛との関連についてはχ2検定を用い,「非妊時BMI」,「体重増加量」,「Breslow得点」などについてはそれぞれ一元配置分散分析を行った。

    結 果

    ①腰痛発症率は70.7%で,そのうち,約7割の妊婦が妊娠末期までに腰痛を発症していた。過剰群ほど,腰痛発症時期は早い傾向にあった。
    ②腰痛が最も辛かった時期は,3群とも妊娠末期が70%以上であった。
    ③3群において,日常生活動作や姿勢への支障の程度が大きかったものは,「中腰姿勢または立位の保持」,「重量物の挙上または保持」,「寝返り」,「長時間の座位」であった。
    ④腰痛への対処法は,「枕やクッションの利用」,「コルセットやさらし(骨盤ベルト)の着用」,「マッサージ」の実施者が多く,「マタニティスイミング」や「湿布や鎮痛剤などの薬の使用」については実施者が少なかった。対処法の効果については,どの時期においてもすべての項目で,実施者の過半数に効果があった。

    結 論

    過剰群ほど腰痛発症時期は早い傾向にあり,日常生活動作への困難感を早期から抱いていると推測されたため,早期からの体重コントロールや腰痛への対処法に関する保健指導が重要である。効果があるにもかかわらず実施者が少ない対処法もあり,幅広く対処法について情報提供し,各々にあった対処法を妊娠生活の中に取り入れていけるように指導する必要性が示唆された。

  • 礒山 あけみ, 渋谷 えみ, 加司山 良子, 市毛 啓子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    助産師教育修了後1年の助産実践を行った新人助産師の臨床での体験を明らかにする。

    対象と方法

    助産師教育修了後,総合病院に勤務し1年間の助産実践を行った助産師5名を対象にフォーカスグループインタビュー実施し,新人助産師の語りから臨床での体験を探索する質的帰納的研究デザインを用いた。

    結 果

    助産師教育修了後,1年の助産実践を行った新人助産師の臨床での体験として【助産師としての経験を積んでいくための環境に恵まれている】【助産師の仕事にやりがいを感じる】【妊産褥婦の助産ケアにじっくり関われない】【学生時代の体験と現場の実践にギャップを感じる】【体験を共有する仲間がいない辛さがある】【現場で求められる能力と自分の持っている能力のギャップに悩む】【助産師として働き続ける選択をする】の7つのカテゴリが抽出された。

    結 論

    新人助産師のキャリア形成には,分娩介助経験件数の機会の配慮と分娩介助1例ごとの振り返り,個々の新人助産師の個性や到達段階を捉えた先輩助産師の精神的・教育的なかかわり,助産師教育で学んだことと現場の実践のギャップを埋めるような途切れのない教育の検討の必要性が示唆された。

  • 佐藤 珠美, エレーラ C. ルルデス R., 中河 亜希, 榊原 愛, 大橋 一友
    2017 年 31 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    産後女性の手や手首の痛みの有症率,痛みの出現時期,痛みの部位と手や手首の痛みの関連要因を明らかにする。

    対象と方法

    産後1年未満の女性876名に無記名自記式質問紙調査を行った。分析対象は産後1か月から8か月の有効回答514部(58.7%)である。調査内容は手や手首の自発痛の有無とその部位,痛みが発症した時期とその後の経過,痛みに影響を与える要因,属性とした。

    結 果

    35.2%の女性が産後に手や手首の痛みを保有していた。痛みの出現時期は妊娠期から産後7か月までと長期にわたっているが,産後1か月から2か月に出現した人が多かった。痛みの訴えは両側性が多く,左右の割合の差は少なかった。疼痛部位は橈骨茎状突起,橈骨手根関節,尺骨茎状突起,母指中手指節関節,母指手根中手関節の順に多くみられた。年齢,初産婦,手と手首の痛みの既往が痛みに関連しており,有意差を認めた。一方,母乳育児,産後の月経の再開,モバイル機器の使用時間との関連はなかった。

    結 論

    産後女性の3人に1人は手や手首の痛みを経験し,痛みの多くは産後1か月から2か月に出現していた。年齢が高く,初産婦で,手や手首の痛みの既往がある産後の女性では,手や手首の痛みに注意する必要がある。

  • ―超音波画像を用いて―
    手島 美聡, 大石 和代, 永橋 美幸, 中尾 優子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    近年,乳房ケアに超音波画像診断が取り入れられてきている。本研究では産後の乳房状態をより正確に評価していくために,超音波画像を用い,直接授乳前後の乳腺組織の厚さの変化について明らかにした。さらに,その厚さの変化と授乳量との関連性について検討した。

    方 法

    2013年1月~9月,A大学病院産科で出産し,母児同室で直接授乳をしている褥婦51名。撮影時期は産褥4~7日。撮影は1回の直接授乳前後に実施し,超音波画像にて乳腺の厚さを計測した。また,その時の児の授乳量を測定した。

    結 果

    分析対象者は初産婦15名,経産婦33名の計48名,乳房数91であった。乳腺組織の厚さは,授乳前が平均値33.6±8.86mm,授乳後が平均値32.0±8.47mmであり,授乳前後で有意に減少した(p<0.01)。乳腺組織の厚さの差と授乳量で,弱い相関があった(r=0.27,p<0.01)。さらに初産婦では有意な相関を示したが(r=0.40),経産婦では相関がなかった(r=0.17)。

    結 論

    今回の超音波画像を用いた産褥早期における乳腺組織の調査において,直接授乳前後の乳腺組織の厚さの変化は,授乳前に比べ授乳後は乳腺組織の厚さが有意に減少した。また,授乳前後の乳腺組織の厚さの差と授乳量の関連については,初産婦では有意な相関があり,経産婦は相関がなかった。産褥早期に,超音波による乳腺の厚さを測定する時には,授乳の前後で厚さが変化することを知る必要がある。

  • 高岡 智子, 近藤 好枝, 小林 康江, 谷口 珠実
    2017 年 31 巻 1 号 p. 78-87
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    産後4~9か月の女性において,下部尿路症状(尿失禁と過活動膀胱)の有症率を明らかにすること,および下部尿路症状の有無とQOLとの関連を明らかにすることである。

    対象と方法

    研究対象者は,生児を得た産後4~9か月の女性で日本語の質問紙への回答が可能な女性である。乳児健診や育児相談に来所した際に質問紙を手渡し,回収箱に入れるか,郵送にて2週間以内に返信するように依頼した。QOLの測定にはSF-12ver.2スタンダード版を用い,症状は過活動膀胱症状スコア(OABSS)により把握し,腹圧性尿失禁の有無と程度等についても情報を得た。

    結 果

    質問紙は989部配布し,有効回答数は544部であった。平均産後日数は211日で,83.6%が経膣分娩後であった。何等かの尿失禁を有する女性は188名と34.6%であった。腹圧性尿失禁は141名が有し,そのうち頻度は週に1回より少ないが72.3%と最多で,82.0%の女性は妊娠や出産後に症状が出現もしくは悪化したと自覚していた。OABSSにより過活動膀胱が疑われる女性は8.5%であった。

    尿失禁および過活動膀胱の有症者は非有症者に比べ,「日常役割機能(身体)」,「日常役割機能(精神)」のスコアが低く,これらの寄与するサマリースコア「役割/社会的健康度」は有意に低値であった。特に過活動膀胱の有症者では,これらのスコアに加え,「社会生活機能」のスコアも低いため,「役割/社会的健康度」の低下は著しかった。また,尿失禁の有症者における「精神的健康度」のスコアは非有症者に比べ,有意に低値であった。

    結 論

    産後4~9か月の女性において尿失禁は高率に生じており,大半の女性は妊娠や出産が症状の契機となっていることを自覚していた。尿失禁,過活動膀胱ともに症状は軽度であるが,様々な側面でQOLに影響を来していた。有症者では「役割/社会的健康度」が低く,身体的・心理的理由により仕事や普段の活動に集中しにくい実態があった。また尿失禁の有症者では精神的健康度の低下が確認され,症状により憂鬱な気分を覚え,落ち込みを感じたり,エネルギーの低下を経験していると考えられた。

  • ―望ましいケアに対する助産師の認識と関連要因―
    山﨑 由美子, 加藤 良子
    2017 年 31 巻 1 号 p. 88-97
    発行日: 2017/06/30
    公開日: 2017/06/30
    ジャーナル フリー

    目 的

    出産にかかわる医療過誤により児を喪失した女性(以下,児を喪失した女性とする)の心理やニーズに対する助産師の認識,施設での支援の現状と課題を明らかにし,児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師の認識に関連する要因を検討する。

    対象と方法

    分娩を取り扱っている全国の施設から145施設を無作為抽出し,調査協力の依頼をした。承諾が得られた18施設に勤務する助産師全員(251人)に,自記式質問紙調査を実施した。調査内容は,児を喪失した女性に対する知識,経験,理解度および認識などの支援に関するものとした。本研究は量的記述研究デザイン,関係探索型横断研究であり,Spearmanの順位相関係数,共分散構造分析を用い分析した。

    結 果

    139人(回収率55.4%)から回答が得られた。児を喪失した女性に対する知識や経験は少なく,次子出産ケア経験のある助産師は7人(5.0%)であった。児を喪失した女性の次子出産に必要な支援の理解は,全員が肯定的な認識をもつ項目がある一方,「医療過誤や喪失した児のことをよく知っている医師,助産師が立ち会う」という項目は,68人(51.5%)が否定的な認識をもっていた。児を喪失した女性への望ましいケアに対する助産師の認識に関連する要因については,「ネガティブな心情」よりも「必要な支援の理解」で「望ましいケアに対する認識」の標準化係数(各々−0.12,0.67)が高かった。

    結 論

    児を喪失した女性の心理やニーズに対しては,「医療過誤や喪失した児のことをよく知っている医師,助産師が立ち会う」という項目において,過半数以上の助産師が否定的な認識をもっていた。このような認識に至る助産師の心理について要因を含め検討する必要がある。児を喪失した女性の次子出産に対する助産師の知識や経験は少ないという現状が明らかとなり,今後はその少ない知識や経験を最大限に活かし,対象理解に努めていくことが課題である。児を喪失した女性の次子出産に「必要な支援の理解」の向上が児を喪失した女性への「望ましいケアに対する認識」につながることが示唆された。

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