てんかん研究
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2 巻, 2 号
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  • 複雑部分発作の臨床経過からみて
    扇谷 明, 清野 昌一, 和田 豊治
    1984 年 2 巻 2 号 p. 93-100
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    187例の複雑部分発作をもつ側頭葉てんかんを臨床経過からLennox, Canger, Janzらに従って次の3群に分類した: 1) 複雑部分発作のみをもったもの (pure群) 62例, 2) 複雑部分発作に続いて強直間代発作を合併したもの (primary群) 43例, 3) 強直間代 発作に続いて複雑部分発作を合併したもの (secondary群) 82例。結果としてpure群は他の2群, とりわけsecondary群に較べて, 既往で複合型熱性痙攣を多くみ, 精神障害を伴いにくく, 発作症状として前兆をもつものが多く, 脳波所見で基礎律動は良好であるが, 覚醒期より焦点性てんかん放電をみ, より1側性出現を多くみた。生理学的病因として, pure群はより限局性, secondary群はより速やかに全般性に進展する素因的機序が考えられた。
  • 特に年齢素因に関して
    木村 清次, 本多 一恵
    1984 年 2 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    5年以上経過観察しえた精神運動発達が正常な小児の大発作痙攣患者132例のてんかん波消失に関し検討し, 次の結果を得た。
    1) てんかん波の出現には年齢依存性があり, 6~10歳にてんかん波検出率のピークがあり, 以後減少し17歳時点では11.7%にみられるのみであった。
    2) てんかん波消失に関しては, 加齢に伴う脳の成熟が, 抗痙攣剤の効果, てんかん波内容よりも大きな影響を持つ可能性が示された。
    3) 無治療例が7例みられたが, 全例初診後5年以内にてんかん波は消失していた。
    4) 脳波内容では, 皮質焦点波と全汎性棘徐波結合の両者を示したものの予後が悪かったが, これらの多くは初診年齢の早いものが多く, 年齢素因を加味すると有意差はみられなかった。
    5) 抗痙攣剤内容, 血中濃度との脳波的予後に相関はみられなかった。
    以上の結果より, 精神運動発達が正常な小児のてんかん波は脳の成熟に伴って自然消失する可能性の高いことが示唆された。
  • 石田 純郎, 岡 〓次, 山磨 康子, 河野 親彦, 吉田 治美, 松田 都, 大田原 俊輔
    1984 年 2 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    岡山県における10歳未満の全小児289, 650名についての, 小児てんかんの神経疫学的研究を基に, 精神遅滞の合併を検討した。調査日は昭和50年12月31日とし, てんかんの症例は計2, 378例であった。
    結果:
    1) 精神遅滞を合併するてんかんは410症例で, 全小児てんかん患者2, 378例の17.2%を占めていた。有病率は1.4/1,000であった。
    2) 発作型別の精神遅滞合併頻度は, Lennox症候群90.6%, West症候群68.3%, ミオクロニー発作42.1%が高く, 一方, 純粋小発作0%, 自律神経発作5.1%であった。
    3) 生後6ヵ月未満で発症したてんかんに, 精神遅滞の合併が有意に高率であった。
  • 高尾 龍雄, 奥野 武彦, 伊藤 正利, 吉岡 三恵子, 三河 春樹
    1984 年 2 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    1961年から1977年の間に京都大学医学部小児科を受診し点頭てんかんと診断された者のうち, 3年以上の長期予後が調査できた100人について検討した。生存者88人のうち40人 (46%) で発作は消失しており, 9人が普通学級へ通学していた (そのうち7人が正常な知能を持っており, 2人が境界の知能であった)。知的予後は以下の群で良好な傾向があった。1) 初発が6ヵ月以降, 2) 発症前発達が正常, 3) 特発例。
    発作予後は次の群で良好な傾向があった。1) CT像, PEG像が正常, 2) 初発時の発作がシリーズ形成し, 典型的ヒプスアリスミアを示したもの。また良好な運動機能を持つ子どもほど他の子どもと接触する機会が増え, 社会的問題が親の訴えとして増えてきた。
  • 大塚 頌子
    1984 年 2 巻 2 号 p. 122-133
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    小児てんかんにおける断薬過程の系統的研究を行い治療終結に関する指針をうる目的で, 断薬後2年以上の285例を対象に臨床的, 脳波学的に検討した。これらの症例を脳波上てんかん波が消失して2年以上経過した後減量を開始し断薬した正規群 (190例) と, それ以外の非正規群 (95例) に分類して検討した結果, 断薬後の再発率は前者で, 2.1%, 後者で21.1%であり前者に有意に低率であった。
    臨床発作抑制期間 (T. R.) に関しては, 3年以上のT. R. で断薬した群の再発率は3年未満で断薬した群に比し有意に低率であったが, 治療終結に関してはT. R. 3年という規準よりてんかん波消失2年という規準の方がより信頼しうる客観的指標となりうることを明らかにした。
    なお, 正規群の中でも経過中発作型の変容を示す群, 初期治療効果の悪い群, 臨床発作存続期間が10年以上の群は有意に再発率が高率であった。
  • 脱力発作の発作-脳波同時記録による検討
    麻生 幸三郎, 山本 直樹, 猪熊 和代, 高江洲 悦子, 松本 昭子, 根来 民子, 渡辺 一功
    1984 年 2 巻 2 号 p. 141-146
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    シルビウス発作と脱力発作を合併した1例について報告した。症例は12歳女児で, 4歳時にシルビウス発作が始まり, これを繰り返す間に, 2回の脱力発作のエピソードがみられた。2回目のエピソードの時, 発作-脳波同時記録によって検討し, brief typeの脱力発作と結論した。発作時脳波では全般性鋭徐波が右側優位にみられたが, 10歳以降, 発作間欠期脳波は, 右中心部-中側頭部に限局した鋭波を示し, やがてこれも消失した。これと並行して臨床発作もみとめなくなった。全経過を通じて, 精神神経学的退行はあらわれなかった。本例の臨床像および脳波像は, Aicardiらのいうatypical benign Partial epilepsy of childhoodに類似していた。
  • 田中 司, 真田 敏, 大塚 頌子, 大田原 俊輔
    1984 年 2 巻 2 号 p. 147-154
    発行日: 1984/09/30
    公開日: 2011/01/25
    ジャーナル フリー
    急性脳症後, 高度の知能障害とてんかんを発現した3歳5ヵ月の男児に見られた極めて特異な反射てんかんの症例を報告した。はじめは自発性発作のみであったが, 経過中特定の言葉を聞くことにより同様の発作が誘発されるようになった。誘因となる言葉は初期は “テレビ” のみであったが, 次第に “テープ”, “テ”, さらに種々の “テ” のつく言葉でも誘発されるようになった。臨床発作型はすべて脱力発作で, 発作時脳波はdesynchronizationを示した。なお刺激からdesynchronizationの出現までの潜時は約500msec.で, 発作発現には脳幹のみならず大脳皮質も関与していることが示唆された。
    誘発性発作に対してはconditioning treatmentが有効であった。
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