てんかん研究
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26 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 栗田 紹子, 武田 洋司, 岩田 愛雄, 櫻井 高太郎, 本間 次郎, 小山 司
    2008 年 26 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    てんかん患者において、バルプロ酸(VPA)による体重増加が報告されている。今回、VPA服用中のてんかん患者32名を対象に、VPA服用前と服用1年後のbody mass index(BMI:単位kg/m2)を後方視的に分析したので報告する。BMIは服薬開始時の平均22.4に対し、服薬1年後には平均BMIは23.3と+0.9(+4.0%)増加していた。服薬前にBMI>25であった者が4名に対し、1年後にはこの4名を含めた8名に増加していた。BMIの増加傾向は性別、診断類型、発作頻度、罹病期間、1年後のVPA服用量およびVPA血中濃度のいずれとも相関しなかったが、服薬開始年齢が低い方が1年後のBMIが増加する傾向にあった。また、多剤併用群よりも単剤群の方が1年後のBMIが有意に増加していた。
  • 山崎 佐和子, 泉 理恵, 真柄 慎一, 山谷 美和, 松井 俊晴, 小西 徹
    2008 年 26 巻 1 号 p. 9-15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    Benign childhood epilepsy with centrotemporal spikes(BECT)は国際分類では特発性てんかんとして位置づけられている。今回、障害児にRolandic Discharge(RD)に類似した脳波所見を認めた11例を経験した。基礎疾患の内訳は、精神遅滞6例、自閉症1例、周産期障害による精神遅滞+痙性四肢麻痺2例、皮質形成異常による精神遅滞+片麻痺1例、片麻痺1例であった。9例に無熱性痙攣を認めた。9例の発作型は、GTC 2例、hemiconvulsion 3例、CPS 2例、シルビウス発作1例、CPSから二次性全般化1例であった。11例のRD類似の突発波は、中心部∼側頭部を中心とし、多相性棘波または棘徐波複合で、出現部位、形態ともに年齢依存性の高い機能性発作波形とされるRDの特徴を有していた。horizontal di-polarityは3例、睡眠による賦活は4例に認められたのみであり、RDの特性として合致しない部分であった。障害児のもつRD様発作波の詳細な報告は少なく今後さらなる臨床的脳波学的検討が必要と思われる。
  • 菅野 秀宣, 中島 円, 荻野 郁子, 新井 一
    2008 年 26 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    目的: 海馬歯状回において神経細胞新生が継続していることは動物実験のみならずヒトでの研究でも報告されている。今回、われわれはヒト側頭葉てんかん患者における神経細胞新生と成熟について免疫染色による検討を行った。方法: 海馬での神経細胞新生はNeuro D、PSA-NCAM、NeuNの免疫染色により確認した。手術時年齢、海馬硬化の有無、発症から手術までの罹患期間、発作頻度が、新生神経細胞数におよぼす影響を統計学的に解析した。神経細胞の成熟度の指標としてNKCC1、KCC2の免疫染色を追加した。結果: 新生神経細胞は、海馬硬化群で有意に少なかった(p=0.0003)。非海馬硬化群での新生細胞の74.0%はNKCC1が陽性であり、36.0%がKCC2に陽性であった。一方、海馬硬化群では各々67.6%と6.3%の陽性率であり、海馬硬化群において有意にKCC2の発現が少なかった(p=0.003)。結論: ヒトてんかん海馬においても神経細胞の新生が継続していることが確かめられた。硬化海馬では非硬化例に比べその数は有意に少なく、かつ未成熟であるといえる。
症例報告
  • 中田 千尋, 伊藤 ますみ, 岡崎 光俊
    2008 年 26 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    われわれは、思春期に達してはじめて自閉症類似の高次脳機能障害を呈したてんかん症例を経験した。症例は20歳男性で、幼児期の発育は正常であったが、14歳頃より、知的機能低下、認知機能障害、言語障害などが出現し進行性に経過した。これらの精神および行動症状は重篤であり長期間の入院を余儀なくされた。一方、発作は、8歳時全般性強直間代発作(GTC)を起こし、その後欠神様発作や運動発作が頻回に出現した。しかし15歳以降発作はほとんど消失し、その頃から上記精神症状が悪化した。脳波では両側前頭部を中心に全般化を伴う棘徐波複合を頻回に認め、発作型からも前頭葉てんかん(FLE)が疑われた。本症例における精神症状は、持続する発作放電が高次脳機能に大きな影響を及ぼした結果と考えられた。
  • 原 實, 松田 一巳, 原 恵子, 三原 忠紘, 八木 和一, 鳥取 孝安, 大沼 悌一, 桑名 信匡, 青木 恭規, 大沢 武志
    2008 年 26 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    39歳の男性。既往歴に1歳時の髄膜炎と、5歳、6歳時各1回の単純型熱性けいれん。10歳時に複雑部分発作(CPS)で発病した。二種類の精神障害がCPS後にみられ、一種類は18歳8カ月から7回みられた不機嫌症で、意識障害がない。他の一種類は20歳2カ月から4回みられ、CPS後に意識清明期を経て現れる意識障害·反復叫喚·自己破壊的行動·攻撃性で、意識清明時に妄想、感情障害が認められた。頭蓋内脳波/ビデオ記録で左海馬と左眼窩前頭部に独立性2発作起始域が記録され、18歳7カ月からみられた左方眼球間代/偏倚·頭部回旋は、左眼窩前頭部の発作症状であった。難治性で、22歳時に左前側頭葉切除術がおこなわれた。術後17年、抗てんかん薬断薬後9年経過し、発作再発せず精神障害もみられない。精神障害の一種は左海馬起始の発作発射拡延による左眼窩前頭部の発作後機能障害、他の一種は左海馬と左眼窩前頭部が関与する発作後精神病と考えられた。
  • 日野 慶子, 田中 晋, 宮島 美穂, 原 恵子, 高橋 晶, 岡崎 光俊, 渡辺 雅子, 渡辺 裕貴, 加藤 昌明, 大沼 悌一
    2008 年 26 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    強直間代発作重積後に急速に認知障害が進行し、4カ月間にわたるもうろう状態の診断で、転院してきた症例を経験した。P3、O1、T5に頻発する鋭波、左posterior quadrant中心のPLEDs、またF3、C3を起始とする発作波などの多彩なてんかん性異常波が記録され、部分発作が頻回に出現していたことから、このもうろう状態は非けいれん性てんかん重積状態(NCSE)と診断した。MRI検査では左半球後部の広い範囲にFLAIR画像で高信号の領域を認め、またSPECTでは同部位の血流増加が見られたが、これらの部位はPLEDsの出現部位とほぼ一致していた。抗てんかん薬の調整により非けいれん性てんかん重積状態は消失し、脳波所見、MRI、SPECT所見も改善が認められた。本症例の可逆性のFLAIRの高信号は、てんかん発作が遷延したことによって焦点近傍の皮質に浮腫が生じた結果、出現していたと推測した。NCSEの診断と経過観察におけるMRIのFLAIR法とSPECTの有用性と限界について考察した。
  • 伊藤 進, 小国 弘量, 石垣 景子, 砂原 眞理子, 今井 薫, 大澤 真木子
    2008 年 26 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル 認証あり
    小児のてんかん発作においても恐怖感を伴うことは稀ではないが、恐怖感のみを主徴とする場合にはてんかんと診断することは困難となる。我々は、「怖い」と叫ぶことが発症当初には唯一の症状であり、発作間欠期脳波で異常を認めないことから心因発作と診断され、5年を経て徐々に群発状態に至った8歳女児例を経験した。当科初診時には強直姿勢及び複雑幻視を伴う恐怖発作が約10分毎に出現しており、発作時脳波で右中心頭頂部にてんかん発射を認めた。発作はジアゼパム、フェニトイン及びミダゾラム等の静注では抑制できず、抱水クロラールの注腸が奏功した。頭部CTでは異常は指摘できず、頭部MRIで右中心回に限局性皮質形成異常を認め、発作時脳血流SPECTで同部位に血流増加を認めた。感情表出が前景に立ち、発作間欠期脳波や頭部CTで異常を認めない場合においても、発作性の単一症状の反復に対しては発作時脳波や頭部MRIも検討すべきである。
特集
  • 木下 真幸子, 池田 昭夫
    2008 年 26 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    目的:2001年国際てんかん診断大要案と2006年提言の有用性を明らかにする。対象と方法:外来通院加療中(群1)および長時間ビデオ脳波モニターを施行した(群2)成人てんかん患者各100例。群1には2001年大要案(軸1-4)と2006年提言、群2には軸1を適用して特徴と問題点を抽出した。結果:2001年大要案:軸1(発作現象):群1では184項目、群2では333項目が挙げられ、特に術前評価に有用と思われたが、項目の重複や下位分類の不足などがあった。軸2(発作型):1981年分類における複雑部分発作のうち32発作は焦点性運動発作あるいは焦点性感覚発作の詳細が示せたが、意識減損のみを呈した10発作は分類不能となった。軸3(症候群):全体の92%が分類でき、家族性側頭葉てんかんが新たに分けられたが、1989年分類の症候性全般てんかんに相当する項目がなくなり、新皮質てんかんは詳細を示せなくなった。軸4(病因):患者の現状と予後を表すことができたが、一部の項目が不十分であった。2006年提言:発作型と発作現象との対応が不明瞭でてんかん焦点の状態や意識減損の評価が困難だった。症候群では全体の70%が分類されたが、新たに分類不能となったもの・詳細を示せなくなったものがあった。結論:成人てんかんにおいて上記診断案を適用する場合、軸内・軸間での整合性と妥当性の今後の改良が期待される。
  • 地引 逸亀
    2008 年 26 巻 1 号 p. 63-66
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    2001年にILAEから提唱されたてんかん発作とてんかんの診断大要案によるてんかんの国際分類案の妥当性を検証する目的で、自施設における成人てんかんの自験例34例を対象として同分類に準じててんかんの診断を試み、これまでの1981年のてんかん発作、1989年のてんかんおよびてんかん症候群の国際分類と比較検討した。新大要案は軸1の発作現象の具体的記述や軸3の辺縁系てんかんの特定、軸4の病因や軸5の機能障害の多軸診断など、新規的で長所と思われる面も多い。反面、軸2の焦点性発作の分類や軸3の新皮質てんかんの分類などは従来に比べて使いづらい感がある。特に単純および複雑部分発作のごとき意識減損の有無に基づいた焦点性発作の従来の二分法的分類は、それが便宜的かつ有用であったために、その廃棄はかなり抵抗感がある。この理由で、当分は両分類が並立した混乱した状態が続くであろう。
  • 大槻 泰介, 高橋 章夫, 開道 貴信, 金子 裕, 須貝 研司, 渡辺 雅子
    2008 年 26 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル 認証あり
    2001年のてんかん発作とてんかんの診断大要案は、5軸分類である事とともに、1)部分発作を単純と複雑に区別しない、2)てんかん原性(てんかん症候群)を部分性か全般性かに二分しないという2点に特長がある。今回、当科の2006年1年間における初回入院患者50症例に新分類を適応したところ、軸3での分類困難例は4例(8%)で、1989年のてんかん症候群分類での分類困難例13例(26%)に比べむしろ少ない結果となった。我々の症例はてんかん外科の術前評価例で小児が44%を占めたが、乳幼児は発作時に意識減損の有無を問う事が難しく、また局在関連てんかんでありながら、発作症状、脳波とも全般性異常を示す例が少なくないことから、新分類の利点が勝ったものと考えられた。
  • 坂内 優子, 小国 弘量, 平野 嘉子, 大澤 真木子
    2008 年 26 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル 認証あり
    2001年にILAEより提唱されたてんかん診断大要案の便宜性、問題点などを検討するため、小児科外来を初診したてんかん患者の診断と分類を2年度に亘り検討した。2005年度102例、2006年度136例のてんかん患者を対象に、5軸に基づく診断を試みた。発作型(軸2)ではほぼ従来通り分類可能であったが病型(軸3)の診断率は52%と十分な診断率は得られなかった。5軸により表現することは個々の症例を詳細に理解するには有用であったが、病型分類としては従来分類の代案になるものではなく、てんかん診療における共通言語として臨床活用されるまでには多くの問題点があった。
  • Kim Seong Hyun, Kim Heung Dong
    2008 年 26 巻 1 号 p. 76-83
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
    ジャーナル 認証あり
    Recent classification of epilepsy proposed by ILAE in 2001 contains diverse scientific observations to guide better approaches to epilepsy than prior one in 1989. But in clinical practice, there are significant discrepancies between etiologies (genetic defect, location of epileptic zone, etc) and clinical phenotypes (epilepsy types, AED responsiveness). There are still limitations for the classification to obtain essential diagnostic information from diagnostic modalities such as EEG and MRI, and many unknown determining factors influencing the onset of epileptic condition, clinical progress and evolution and prognosis.
    This review is to provide current proposal and the direction of classification for better practical guide to epileptic patients.
  • 畠山 和男, 青柳 閣郎, 反頭 智子, 相原 正男
    2008 年 26 巻 1 号 p. 84-86
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/07/10
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    重症心身障害児・者(以下、重障者)に対し、2001年に提案された「てんかん発作とてんかんの診断大要案」(以下、大要案)に基づいた分類を試みた。対象は、当センター入所中の重障者44名のうちでてんかんを合併する25名である。軸2の発作分類については、大要案では、運動徴候を示したり自動症を示したりする8例のうち7例が、意識の有無にかかわらず焦点性運動発作に分類された。一方、意識減損のみの4例は分類枠がなかった。軸3の症候群分類については、従来分類で局在部位まで同定した局在関連性症候性てんかんは9名であり、大要案では、辺縁系てんかん1名、新皮質てんかん8名に分類された。軸4の関連疾患については、16名に該当疾患が同定された。重障者では、意識状態および感覚・運動徴候の把握が困難なため、暫定的に分類する枠を設定するなどの改良の余地はあるものの、この大要案は重障者にも有用と考えられる。
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