原子力バックエンド研究
Online ISSN : 2186-7135
Print ISSN : 1884-7579
ISSN-L : 1343-4446
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研究論文
  • ‐各層からの定常放出フラックスの一括導出‐
    大江 俊昭, 稲井 隆将, 矢込 吉則, 若杉 圭一郎
    2023 年 30 巻 2 号 p. 32-42
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

     設計プロセスに核種移行解析の結果をフィードバックしやすくすることを目的に,多層構造の人工バリアが持つ核種移行遅延機能を簡易に評価するために,各層からの定常放出フラックスを導出する手順を整備した.本手順は,人工バリアを構成する個々の領域に対して両端のフラックスを未知数として形式的に与えて定常解を導出し,連立一次方程式を解いて各領域界面における未定フラックスを直接かつ同時に決定するものであり,入口が定フラックスで,出口が自然境界,ゼロ濃度,ミキシングセルの3条件に対する定式化を行ない,仮想的な多層人工バリアに対する評価を行った.また,本法は層の追加が容易であり,劣化層などを層間に挿入することで,バリアの一部が状態を変化させた場合にも,迅速かつ確実に解が得られることを示した.

  • 新橋 美里, 横山 信吾, 渡邊 保貴, 吉川 絵麻, 湊 大輔
    2023 年 30 巻 2 号 p. 43-57
    発行日: 2023/12/15
    公開日: 2024/01/10
    ジャーナル フリー

     放射性廃棄物処分施設では,セメント系材料由来のアルカリ環境でベントナイトが変質することが懸念されている.本研究では,アルカリ環境における二次生成物の沈殿反応を理解するためのインダストリアルアナログ研究として,吹付コンクリートと軽石凝灰岩に関する約15年間の相互作用を調べた.その結果,吹付コンクリートと接する数 mmもしくは数 cmの範囲の岩盤では,火山ガラス等の非晶質な初期物質の溶解に伴い,Ca/Si比が0.7程度,もしくはそれよりCaやAlに若干富む非晶質なC-(A-)S-Hが生成していることがわかった.岩石の間隙水のアルカリ影響領域は少なくとも界面から9 cmに及ぶものの,間隙率や透水性は界面から数 mm以深では変化していなかった.このようなアルカリ影響領域は,地下水や溶存イオンの移流・拡散を含む複合的な要因によって決まっていることが推察された.本研究や既往の知見より,ベントナイト系材料のアルカリ変質反応ではC-(A-)S-Hからトバモライト等への変遷を想定することが必要なものの,本調査地のような低温条件であれば,その変遷は少なくとも十数年以降に生じると示唆された.

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