過去大会でドッグフードにおける原材料に表記のない小麦の混入について報告した。今回、原材料に小麦の表記がないドッグフードにどれだけの小麦が含有しているかを調査するため、定量試験[ELISA(=enzyme-linked immunesorbent assay)法]である食物アレルギー検査を、定量上限を上回ったものは試料を希釈することで、定量可能な数値まで検査を重ねた。その結果、食物アレルギー用療法食3製品において小麦タンパク質は不検出であったが、小麦グルテンフリーと記載のある総合栄養食から小麦790ppm(=parts per million、1mg/kg)、小麦グリアジン2900ppmが検出され、グレインフリーと記載のある総合栄養食から小麦 51.2ppm、小麦グリアジン57.7ppmが検出された。ヒトの食品ではアレルギー表示義務が生じる基準値である10ppmを大きく上回る濃度の小麦タンパク質が検出された。したがって、除去食試験の実施に際しては、原材料に表記のないアレルゲンの混入を考慮するだけではなく、飼い主に対する周知徹底も必要であると言えた。イヌのアレルギーにおける除去食試験の重要性が増すなかで、ドッグフードにもヒトの食品同様のアレルギー表示に関する基準が早期に設定されることが望まれる。
抄録全体を表示