土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
72 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 大竹 雄, 本城 勇介
    2016 年 72 巻 4 号 p. 310-326
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     著者らは,構造工学分野で発展してきた信頼性解析理論を地盤工学に即するものに改変するとともに,実用的な地盤構造物の信頼性解析体系の構築に向けて個々の要素研究を進めてきた.この信頼性解析体系をGRASPと呼称している.本論文では,開発してきた信頼性解析法GRASPを連続高架橋の杭基礎の設計例題に適用し,実地盤調査データに基づいて一連の具体的な解析手順を示した.対象例題は,地盤調査が2橋脚に1箇所実施されており,地盤調査地点の影響が設計に与える影響に主眼を置き考察した.さらに,これまで著者らが実施してきた直接基礎,杭基礎,軟弱地盤上の盛土などの典型的な地盤構造物設計への適用研究を含め,現行設計法を支配する不確実性要因について包括的に考察し,設計を改善するために地盤工学がなすべき課題を提示した.
  • 磯部 公一, 澤村 康生, 杉山 裕樹, 篠原 聖二, 曽我 恭匡, 小林 寛, 木村 亮
    2016 年 72 巻 4 号 p. 327-338
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     損傷制御設計を適用した新しい橋脚形式の鋼管集成橋脚に対し,基礎を合理化した杭基礎一体型鋼管集成橋脚を提案し,従来のフーチング形式と地震時挙動を比較することで構造成立性を検討している.本稿では,杭基礎一体型の利点である橋脚と基礎の剛性差の解消による柱基部のひずみの緩和,フーチングの省略による杭基礎の負担重量の軽減,ならびに地中梁の設置による杭体の応答ひずみや杭頭変位の抑制効果を実験的に確認するために,1/20サイズで作製した模型に対し振動台実験を実施した.その結果,上述の利点に加え,杭基礎一体型鋼管集成橋脚はせん断パネルの塑性変形に伴うエネルギー吸収機能がより長く有効に働き,せん断パネル降伏後も主部材に大きな残存耐力を保持したことから,優れた変形性能を有していることを確認した.
  • 田中 幸久, 渡邊 保貴
    2016 年 72 巻 4 号 p. 339-353
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     放射性廃棄物処分では,ベントナイト系材料を人工バリアなど施設の重要な構成要素の一つとして用いられることが検討されている.ベントナイト系材料は,廃棄体を支える機能や隙間発生時の膨潤による自己修復性も必要とされることから,その力学的特性の評価が重要である.特にNa型ベントナイトでは,その特長である飽和時の顕著な膨潤性を考慮した評価が必要となる.本論文では,飽和したNa型ベントナイトの膨潤圧に及ぼす間隙水の水質の影響に関する実験結果と電子顕微鏡による観察結果を説明し得るモンモリロナイトの微視的な構造とその変化の条件を示すとともに,膨潤圧との関係を説明し得るメカニズムを提案した.さらにその条件とメカニズムを導入した弾塑性モデルにより,一次元除荷・再載荷時の挙動をほぼ再現できることを明らかにした.
  • 伊藤 真一, 小田 和広, 小泉 圭吾, 臼木 陽平
    2016 年 72 巻 4 号 p. 354-367
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/11/20
    ジャーナル フリー
     豪雨時の雨水浸透過程を解析的に再現するためには,土壌水分特性の把握が重要である.現地斜面における土壌水分特性を同定するための手法として,現地計測結果を利用した逆解析手法が期待されている.本研究では,体積含水率の現地計測結果に基づく土壌水分特性パラメータ同定に対する粒子フィルタの適用性を検証した.具体的には,室内試験とLevenberg-Marquardt法,粒子フィルタの3種類の手法を用いてパラメータをそれぞれ同定し,各手法により同定されたパラメータを用いた再現解析を実施した.その結果,粒子フィルタにより同定されたパラメータを用いると,より強い未経験降雨時の現地計測結果も高精度に再現することができ,土壌水分特性パラメータを同定するための逆解析手法として粒子フィルタが有効であることが明らかになった.
  • 久田 裕史, 中田 幸男
    2016 年 72 巻 4 号 p. 368-376
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,降雨によるまさ土斜面の崩壊挙動に与える細粒分含有率の影響を実験的に検討した.ここでは,小型模型斜面に対する降雨による崩壊実験を実施し,細粒分含有率によって変化する崩壊形態や崩壊規模,発生する間隙水圧に着目して考察を加えた.その結果,崩壊に至るまでの変形挙動や間隙水圧の増加挙動によって,“浸透崩壊”と“すべり崩壊”の2つのタイプに区別できた.崩壊は,細粒分含有率が高いほど,すべり崩壊を示しやすく,崩壊規模が大きくなることがわかった.さらに,透水係数と降雨強度から求められる指標によって,斜面の崩壊形態や崩壊規模を評価可能であることがわかった.
  • 小野 文也, 山本 浩一, 明石 卓也, 神野 有生, 関根 雅彦
    2016 年 72 巻 4 号 p. 377-384
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    ジャーナル フリー
     ペーパーディスク型地下水流向流速計は現地において測定後すぐに結果が分からないといった問題点があった.そこで現地において迅速な測定が可能な手法を新たに開発した.目視でテーリングを読み取り流向流速に変換する定規を作成し,官能試験を行い測定精度の評価を行った.その結果,地下水流速0.3~1.5 cm/minの範囲で計測時間5分で流速は±33%の精度,流向は±10°の精度で推定が可能となった.既存の装置に比べると流速の測定精度は劣るが,流向は同程度の推定が可能であり,現場において迅速に測定可能な地下水流向流速測定手法を確立した.
和文報告
  • 野澤 伸一郎, 藤原 寅士良
    2016 年 72 巻 4 号 p. 300-309
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     木杭は,明治以来,鉄道においても高架橋や駅設備の基礎杭として利用されてきた.木杭は,地下水位以深に位置する,または地下水位変動があったとしても粘性土に覆われていれば,著しい腐朽をすることなく耐久性を有する点,木杭の耐久性や強度は樹種や産地によって異なることが知られている.本点を確認するため,東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事で撤去された松杭の状況と地質,地下水位を調べた.その結果,杭頭部から約500mmの範囲を除いて,長期間,木杭が地下水位以浅にあっても,地表部に粘性土層があり,一定の含水比を有する砂質土に打設されていれば著しい腐朽が発生しなかった点が確認された.また,東京駅丸の内駅舎に使用された木杭の樹種,産地について,当時の建設記録や考察から「甲地松」である可能性が高いことをつきとめた.
和文ノート
  • 原 弘行, 末次 大輔, 松田 博, 亀井 健史
    2016 年 72 巻 4 号 p. 294-299
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/10/20
    ジャーナル フリー
     石灰やセメントを混合した地盤の強度発現には種々の要因が関係しており,とくに粘土鉱物の種類や間隙水の性質によっては著しく強度発現が阻害される場合がある.本研究では,マグネシウム塩を含む粘性土試料を母材とした石灰・セメント処理土の強度特性を調べるため,マグネシウム塩の濃度を変化させた処理土に対して一軸圧縮試験を実施した.つぎに,同様の処理土に対して海水環境を想定した劣化促進実験を行い,力学的劣化の進行に及ぼすマグネシウム塩の影響を考察した.その結果,処理土内のマグネシウム塩は強度発現を阻害するとともに,劣化の進行を促進させることを示した.また,固化処理土に含まれる酸化カルシウム量とそのマグネシウム塩との比率に着目し,固化材の種類に依存しない劣化速度の評価指標を提案した.
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