土木学会論文集C(地圏工学)
Online ISSN : 2185-6516
ISSN-L : 2185-6516
78 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 山野辺 純一, 遠藤 宗仁, 小宮 一仁
    2022 年 78 巻 2 号 p. 60-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
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     本研究では,セメント改良土を常温で28日養生した後の一軸圧縮強度を,セメント改良土を高温で養生することにより短時間で推定することを目的として室内実験と野外実験を行った.室内実験では,大規模な装置を用いることなく室内や現場において80℃以上の高温養生が行えるように,改造した市販の圧力鍋を用いた簡便な方法を提案し,また,100℃の高温下で24時間養生したセメント改良土の一軸圧縮強度を常温で28日間中養生した改良土の一軸圧縮強度で除した強度比は,各配合条件において最大値と最小値の差が最大0.18であることを明らかにした.更に,セメント改良土の28日養生した強度を,2日間程度で推定する方法を提案し,実際の砂地盤及び火山灰質粘性土地盤にて野外実験を行い,提案した推定方法の精度を検証した.

  • 藤江 佑大, 原 弘行
    2022 年 78 巻 2 号 p. 72-82
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/20
    ジャーナル フリー

     海水と接触するセメント処理土表面には,耐海水性機能を有する白色の水酸化マグネシウム層が析出されることがある.本研究では未だ不明瞭である当該物質の析出条件の解明を目指し,海水中のマグネシウム濃度とセメント処理土のpHの2種の生成要因について幾つかの室内試験から検討した.その結果,接触する水溶液のマグネシウム濃度が1,000mg/Lの場合,改良対象土の土質によらず,セメント処理土のpHが概ね12.5以上のときに水酸化マグネシウム層が生成されることが示された.また,接触する水溶液のマグネシウム濃度によって水酸化マグネシウム層が析出される処理土のpHが変動することが明らかになった.得られた実験結果から,処理土のpHと接触する海水中のマグネシウム濃度によって水酸化マグネシウム層の析出を判定できる領域を示した.

  • 高畑 修, 原田 拓也, 宮口 新治, 桑原 充, 門間 聖子, 保高 徹生, 小峯 秀雄
    2022 年 78 巻 2 号 p. 83-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
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     福島県浜通り南部では,一般に重金属等が含まれていることが多い新第三紀層の堆積岩が広く分布している.2010年4月の土壌汚染対策法の改正等により,これら岩石や土壌を掘削して盛土へ利用する際,室内試験等で重金属等が確認された場合には,漏出防止等の適切な対応が求められている.しかしながら,当該地域では,黄鉄鉱の酸化等により重金属等の溶出の可能性がある岩石を用いた道路盛土であっても,深刻な問題に発展した事例は少ない.そこで本研究では,道路盛土構造の覆土や締固めに着目し,新第三紀層の急速に酸性化が進行する砂岩で構築した実大サイズの試験盛土を用いて,概ね4ヶ月間の曝露試験を行った結果から,岩石の酸性化に伴う重金属等の溶出対策として覆土や締固めが有効である可能性を示した.

  • 常川 善弘, 酒井 俊典, 宮武 裕昭, 近藤 益央
    2022 年 78 巻 2 号 p. 96-115
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/20
    ジャーナル フリー

     グラウンドアンカー(以下,アンカー)は,地すべり等による想定以上の外力に対して,アンカーの緊張力を増加させながら抑止効果を発揮する一方で,アンカーの引張り部は,抑止杭と同様にすべり面で変形し,曲げやせん断方向の外力を受ける可能性が考えられる.しかし,不可視な地中部のアンカーの変形状況の確認は困難であることから,地すべり変位によるアンカーの変形や変形による抑止機能への影響について,これまで十分な調査や評価は行われていなかった.本論では,アンカー破断が確認された地すべり地において,アンカーの残存緊張力観測やファイバースコープを用いた調査を行い,地すべり変位によるアンカーの破断状況や変形状況を明らかにするとともに,アンカーの変形によるアンカー性能への影響について検討を行った.

  • 珠玖 隆行, 山本 真哉
    2022 年 78 巻 2 号 p. 116-127
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,地盤工学における最適設計問題を統一的に解くための方法として量子アニーリング(quantum annealing,QA)に着目し,その適用性について検証している.本論文では,量子アニーリングの実装に必要なquadratic unconstrained binary optimization(QUBO)による最適化問題の具体的な定式化方法を示すとともに,杭の最適配置を対象とした数値実験を通して,既存の方法と比較した量子アニーリングの優位性,および最適化ソルバーとしての特性を明らかにした.さらに,数値実験で明らかとなった量子アニーリングの特性に基づき,量子アニーリングを利用したモンテカルロ法を地盤構造物の最適設計に応用することを提案し,地盤パラメータのばらつきを考慮した杭の最適設計問題への適用例を示した.

  • 原崎 智, 小峯 秀雄, 後藤 茂, 王 海龍, 伊藤 大知, 氏家 伸介, 成島 誠一
    2022 年 78 巻 2 号 p. 128-139
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     福島第一原子力発電所の廃止措置において,土質系材料「超重泥水」の活用が検討されている.燃料デブリ取り出しの補助材料として使用した超重泥水は,使用過程で放射性物質と接触するため,放射性廃棄物として処分する必要がある.我が国の放射性廃棄物処分の現状より,放射性廃棄物の減容化が望ましい.本研究では,分級技術の一つである遠心分離に着目し,遠心加速度や分離時間と超重泥水中の固相の分離・回収量の関係を検討した.遠心分離した超重泥水について含有粘土鉱物および構成材料の鉛直方向分布を調査した結果,分離・回収量を評価する上で,遠心加速度と分離時間の積が重要な要素であることを明らかにした.また,構成材料のバライト粉末について,遠心分離による分離・回収が有効であることを示し,超重泥水の処理システムを提案した.

  • 大橋 亮太, 西村 伸一, 金重 稔, 柴田 俊文, 珠玖 隆行
    2022 年 78 巻 2 号 p. 140-152
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

     現在,UAVによる計測技術が発展してきており,土構造物の三次元形状の再現が容易になりつつあるが,設計には取り入れられていない.そこで本研究では,これらの技術を設計に貢献させる目的で,ドローンによる三次元計測を行い,ため池堤体の三次元有限要素モデルを構築する.三次元解析の有効性を高めるためには,地中内部も三次元化する必要がある.ここでは,対象地で行ったサウンディング試験結果に基づいて,堤体内の剛性を三次元補間する.サウンディング手法として,スクリューウェイト貫入試験と電気式コーン貫入試験を使用し,補間法として,地質統計学手法である三次元クリギングを利用している.これらの結果に基づいて三次元地震応答解析を実施した結果,堤体内の加速度およびせん断力の集中箇所を三次元的に同定することができた.

  • 小林 薫, 松元 和伸, 小谷野 陽平, 松浦 慶弥, 森井 俊広
    2022 年 78 巻 2 号 p. 153-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/06/20
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     キャピラリーバリア(以下,CBと記す)地盤の設計では,CBの限界長の予測や長期的な土中の不飽和浸透挙動を数値解析で検討する必要がある.しかし,数値解析時に必要なパラメータの内,不飽和透水係数の設定時に重要な間隙結合パラメータ,特に粗粒な土の間隙結合パラメータについてはほとんど明らかにされていない.本論文では,鉛直一次元円筒装置を用いて,細粒な土層と破砕貝殻層で構築したCB地盤内の水分移動を土壌水分センサで計測し,その経時的な計測データを基にHYDRUSを用いて逆解析を行ない,破砕貝殻の間隙結合パラメータを同定した.その上で,破砕貝殻を用いたCB地盤の水分上昇遮断実験の水分移動計測結果と同定した間隙結合パラメータを用いた再現解析の結果を比較検討し,同定した間隙結合パラメータの妥当性を確認した.

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