土木学会論文集B3(海洋開発)
Online ISSN : 2185-4688
ISSN-L : 2185-4688
73 巻, 2 号
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海洋開発論文集 Vol.33
  • 平尾 隆行, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 喜古 真次, 片岸 鴻太, 並木 翔平, 松村 聡, 竹本 誠
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_300-I_305
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     管理型海面廃棄物処分場の跡地は,これまで低いレベルでの利用に留まっている.そこで,大規模な構造物を用いた高度な利用を考える際,処分場の底面遮水層(粘性土層)を貫通して基礎杭を打設する必要があると考えられる.しかし,実際の施工においては,杭の打設に伴い,遮水層内への廃棄物の連込みや外部への拡散が懸念されている.そこで本研究では,杭の先端形状の工夫や,杭周面への膨潤性遮水材の塗布により,廃棄物の連込み低減効果を期待し,これを模型杭による貫入実験とX線CT解析により検討した.実験の結果,先端形状を尖鋭化することが廃棄物の連込み防止に効果があることが示唆された.また,先端補強バンドを有する杭のように杭周面に張り出し部を持つ杭は,膨潤性遮水材の塗布により連込み量が改善されることが判明した.
  • 仙頭 紀明, 海野 寿康, 中村 晋
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_306-I_311
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     海底斜面の地震時安定性評価手法の適用性を検証するために,水深を45mと70mにした90G場の遠心載荷実験を実施した.斜面は模擬粘土を用いて作製したが,模擬粘土の強度分布は日本近海の海底粘土の平均的な強度分布に近いものであった.遠心実験では傾斜台を用いて静的な震度を斜面に作用させて,崩壊が生じる震度とすべり面形状を調べた.
     その結果,斜面先破壊に近い崩壊形態を示し,解析で求めた臨界円よりも浅い位置にすべりが発生した.また水深が深いほど滑動を開始する震度が若干ではあるが大きくなった.得られたすべり面形状と定体積一面せん断試験より求めた強度定数を用いてスライス法による斜面安定解析を実施した.その結果,修正フェレニウス法により実験結果を概ね評価できることがわかった.
  • 松村 聡, 松原 宗伸, 森川 嘉之, 水谷 崇亮, 成田 圭介, 佐藤 真
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_312-I_317
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     矢板式係船岸の控え組杭の横抵抗増加に資する有効な改良方法を明らかにすることを目的として,組杭の杭間地盤をセメント固化改良する方法を検討した.本研究では,遠心模型実験,重力場での大型模型実験およびX線CT装置を用いた模型実験を行い,杭間地盤を改良した組杭の横抵抗特性に加えて改良体の配置や改良体の強度・剛性の影響を調べた.
  • Tarhata Pantao Kalim, Takashi Tsuchida, Yi Xin Tang, Gyeongo-o. Kan ...
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_318-I_323
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     Dredged clay stabilized by cement has been widely utilized as a geomaterial. Intensive research has been conducted to understand its strength behavior. However, the influence of sand content on the mechanical behavior of cement-treated dredged clay has given less emphasis. The sand content of dredged clay is varied depending on the source. This study examined the correlation of various sand and cement content to the liquid limit and the strength behavior of dredged clay at a different curing period. It was found that to know the liquid limit after mixing with cement is useful to evaluate the liquidity or flow characteristics of cement treated clay. The liquid limit of cement-treated clay increased gradually up to 10% cement content and decreased at increasing cement content. The cement-water ratio can be used as a parameter to estimate the strength of cement-treated clay composed with different sand content. Even though various amount of sand was added to cement-treated clay, the strength seems to be not correlated with the sand content which is not more than 70 %.
  • 姜 庚吾, 土田 孝, 湯 怡新
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_324-I_329
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     海洋浚渫土は固化処理により埋め立てや裏込めに用いられている.しかし,浚渫度に含まれる有機分が固化に影響を及ぼす場合がある.本研究では,フミン酸の混合がセメント固化に及ぼす影響を調べた.その結果,セメント固化処理土の強度損失はセメント添加率とフミン酸添加率の差(c*-H)の関係から3種類に分類でき,フミン酸添加による強度の損失は,セメントの含有率とフミン酸の含有率に依存することがわかった. 強度の損失は,セメント添加率とフミン酸添加率の差(c*-H)の値が増加するほど減少した.
  • 谷口 修, 加藤 弘義, 志澤 三明, 渡邊 宗幸, 野口 孝俊
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_330-I_335
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     港湾構造物などコンクリート構造物の水中部におけるひび割れや角欠けなどの損傷が発生した箇所への簡易な水中補修方法の適用性を検討するために,水中部にコンクリート試験体を設置して,ひび割れと角欠けへグラウトの充填試験を行った.
     水中部のひび割れ補修は,ゴムシートの設置と可塑性グラウトの注入による簡易的な施工方法を採用し,コア採取により注入状況を評価した.角欠け部の補修は,高流動水中不分離性グラウトを損傷部に流し入れることで充填されていることを目視確認した.本稿は実物大の試験体と実際の海洋条件による試験により,コンクリート構造物に対する水中部での亀裂の補修への適用や角欠け補修などに使用可能であることを報告する.
  • 柳橋 寛一, 田中 裕一, 堤 彩人, 松村 聡, 水谷 崇亮, 森川 嘉之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_336-I_341
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     短繊維・製鋼スラグ混合土の材料特性を明らかにするために,様々な配合条件で一軸圧縮試験を実施し,配合条件が変形挙動に及ぼす影響を検討した.短繊維・製鋼スラグ混合土の変形挙動はポストピーク領域において短繊維の影響を強く受け,破壊モードが変化することがわかった.これらの破壊モードは「I.脆性破壊型」「II.安定破壊型」「III.延性破壊型」「IV.ひずみ硬化型」の4つに分類され,各実験ケースに照らし合わせることで,短繊維と製鋼スラグの混合体積比に対する変形特性の模式図が得られた.この模式図は,配合条件から混合土の変形特性を制御する際の指標となり,求められる材料特性に応じた配合設計をする際の重要な手がかりになる.
  • 遠藤 秀祐, 土田 孝, 武田 知子
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_342-I_347
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     浚渫時に発生する大量の浚渫土を処分するための土砂処分場を新設するには,多大なコストがかかる.従って,既存及び新設の土砂処分場により多くの浚渫土を処分することが求められる.本研究の目的は,土砂処分場投入前に「投入前処理」を行い,投入時含水比を低下させることによって処分場投入可能土量を増加させることである.脱水処理工法として乾燥による脱水を採用し,その体積減容効果について評価するため,乾燥収縮試験を実施した.代表的土質定数の変化から浚渫土の乾燥特性をとらえ,攪乱操作による乾燥遅延効果と加熱による乾燥速度の著しい向上,及び天日乾燥を再現した実験による天日乾燥適用の可能性を確認した.また,広い範囲の含水比に対し浚渫土は直線的に減少することを示した.
  • 兵動 太一, Yang WU, 兵動 正幸, 菊池 喜昭, 塚本 良道
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_348-I_353
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     設計において,土は砂か粘土かいずれかに区分され,異なる方法により評価される.しかし,実際には中間土と呼ばれる土も存在し,その取り扱いに苦慮している現状にある.自然土中には粒径や性質が異なる土粒子が様々に混在しているため,土を砂か粘土に2分して取り扱うことが問題である.したがって前述の様々な種類の土が混在している混合土の統一的評価を行うことが望まれる.本研究は,設計において重要な要素のひとつである剛性に着目し,自然粘土と珪砂を様々な割合で混合し,所定のエネルギーで突固める方法により,砂分が構造骨格を作る状態の供試体を作製し,BE試験を行い,砂・粘土混合土(粘土混じり砂)のせん断弾性係数と細粒分の評価を試みた.
  • 小林 孝彰, 佐々 真志, 鈴木 高二朗, 渡辺 啓太, 具志 良太, 前里 尚, 平野 年洋
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_354-I_359
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本検討では,那覇空港増設滑走路の誘導路部の吸い出し防止対策を念頭に,裏込石と裏埋砂の間に両者の中間的な粒度を有するフィルター層を設ける方法に着目し,フィルター層に求められる(1)裏埋砂の目詰まり機能,(2)裏込石に対する安定性,(3)防砂シートの損傷リスク低減効果を評価するための各種試験を行った.吸い出し防止の観点から,フィルター層と裏埋砂の中央粒径比(DF50/DS50)は20以下が望ましい一方で,裏込石に対して安定なフィルター層を形成するには,ある程度以上の粒径が必要であることが分かった.またフィルター層の介在により,航空機の移動荷重,及び地震荷重に対して,防砂シートの損傷リスクが大幅に低減されることが明らかとなった.
  • 鈴木 高二朗, 竺原 宗吾, 佐々 真志, 具志 良太, 前里 尚, 平野 年洋
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_360-I_365
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     那覇空港増設滑走路の誘導路下部では海水交換を目的とした大型の管路の建設が予定されている.この管路は延長が280mあり,複数のボックスカルバート(以下BoxCと記述)で構成される.BoxCは捨石マウンドの上に設置され,その周囲に裏込石と埋立砂が設置される.この際,埋立砂が吸い出されないように,裏込石と埋立砂の間には防砂シートが敷設されるほか,それぞれのBoxCの接続部(目地部)には防砂板が設置される.これらの防砂シートと防砂板の設計にあたっては,作用する波圧を求める必要がある.しかし,波浪が静水面下にある延長の長い管路や裏込石内部を伝播する現象は特殊であり,また設計有義波も2.8mと大きいため,水理模型実験と数値計算により,管路および裏込石を伝搬する波圧,流速の特性を明らかにすることとした.
  • 小林 貴瑠, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 柿原 結香, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴, 渡辺 健治, 工藤 敦弘
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_366-I_371
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震では海岸防潮堤よりも高い津波が襲来し越流したことにより盛土形式の防潮堤が多く崩壊した.それ以降,津波災害に対して粘り強く抵抗する防潮堤の構造が求められている.津波に対して粘り強い構造機能を有する防潮堤として,ジオシンセティックス補強土を用いた強化防潮堤が提案されてきた.防潮堤の内部構造を変えることやジオグリッド補強材の敷設により耐侵食性を向上させることができることが分かったが,補強材がどのようにしてその効果を発揮し,耐侵食性を向上させたかについては不明な点が多い.本研究では,ジオグリッド補強材を地盤の表面に敷設し,表面に流水を流すことで,流水に対する地盤材料の流出特性がどう変化するか検討した.その結果,ジオグリッドを表面に敷設することで地盤材料の流出が抑えられることが明らかとなった.
  • 塩崎 禎郎, 大矢 陽介, 小濱 英司, 川端 雄一郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_372-I_377
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     鋼管杭式桟橋のレベル2地震動に対する耐震性能照査では,全塑性モーメントを折れ点とするバイリニア型のM-φ関係が用いられ,全塑性モーメントへの到達の有無を照査することが多い.ところが,近年の経済設計で多用されるようになった大径厚比の鋼管杭は,軸力作用下では全塑性モーメントに到達する前に局部座屈が発生して耐力低下が起こるため,危険な設計となっている懸念がある.一方,小径厚比の鋼管杭は,降伏後にも緩やかな耐力上昇が続き,変形に対して粘り強さがあるが,上述のM-φ関係ではこの効果を評価することができない.そこで,軸力作用下における,径厚比の違いを考慮した鋼管杭の耐力・変形特性を,シェル要素を用いた三次元FEM解析で定式化を試みた.
  • 近藤 明彦, 小濱 英司, 遠藤 敏雄, 髙橋 康弘, 渡辺 健二, 国生 隼人, 吉原 到, 原田 典佳
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_378-I_383
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     直杭式横桟橋の経済的な耐震改良を行う一つの方法として,既存構造の利用が挙げられる.本研究では,既設杭間に新たに上部工に接続する杭を新設し,既設杭と新設杭を水平材で接続する構造に着目して,模型実験と数値解析により基礎的な変形特性とその改良効果の検討を行った.模型振動台実験では,L2地震動に対して耐力を持つ一般的な桟橋構造と比較を行い,同等程度の耐震性を確認した.既存構造を利用した桟橋模型では水平材を介して既設杭に力が分担され,新設杭に発生する最大曲げモーメントを低減する改良効果がみられた.動的有限要素法解析では,実験結果を再現できることを確認した上で,水平材の諸元の感度解析を行った.剛性を適切に選定することで,既設構造への効果的な力の分担によって補強効果が得られることを示した.
  • 大矢 陽介, 川端 雄一郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_384-I_389
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     近年,港湾分野では経済設計のため大径厚比の鋼管杭が採用されることが多い.大径厚比の鋼管杭においては,設計で用いられている断面計算から求められる全塑性モーメントを発揮できない可能性があるため,鋼管を対象とした水平載荷実験や数値シミュレーションを実施し,鋼管杭の径厚比に応じた降伏以降の変形性能を反映させたM-φモデルの開発が進められている.本研究では,直杭式桟橋の被災事例を対象とした地震応答解析において,提案したM-φモデルを適用することを念頭に許容ひずみ算定式を改良し,M-φモデルの違いが桟橋の地震時挙動や杭の損傷に与える影響を確認した.
  • 神戸 泉慧, 菊池 喜昭, 兵動 太一, 大久保 政則, 小野澤 健作
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_390-I_395
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     港湾の杭基礎を用いた構造物では,施設の大型化や構造形式の変化に伴い,杭に大きな支持力が期待され,杭の長尺・大径化が進んでいる.ところが,開端杭の閉塞の問題と深度に依存する杭の支持力評価の問題が複雑に絡み合っているため,長尺・大径化した開端杭の支持力評価方法には課題が残っている.そこで,本研究では開端杭の閉塞メカニズムを検討するために杭先端部の肉厚とその部分の長さを変えた模型杭を相対密度の違う地盤に貫入する実験を行った.実験結果から,杭内部の土圧係数Khと杭内土の杭内壁面との摩擦係数μの積μKhを推定し,杭内土の鉛直土圧分布を推定した結果,地盤の密度によらず,内周面摩擦力は杭先端付近ほど大きく,杭軸上方にいくほど急激に小さくなることが分かった.
  • 大竹 雄, 兵頭 武志, 本城 勇介, 北澤 周作
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_396-I_401
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     桟橋RC構造物の維持管理を合理的に計画するためには,構造物の劣化過程を適切に予測することが重要である.本研究では,桟橋上部工の実事例を対象とし,各種不確実性を考慮した確率的劣化予測の有効性を検討する.考慮する不確実性は,コンクリート表面の塩化物イオン濃度,みかけの拡散係数,鋼材の腐食発生限界,かぶりの施工誤差である.特に,空間的相関性を有すると考えられる塩化物イオン濃度,みかけの拡散係数については,確率場としてその空間変動特性を考慮した劣化予測モデルを提案する.最後に,不確実性が劣化予測に与える影響(寄与度)を分析することにより,本手法の有効性,発展性を議論している.
  • 陸 盼盼, 長尾 毅
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_402-I_407
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     桟橋のレベル1地震動に対する耐震設計は信頼性設計法が用いられているが,標準的な設計法は地震動のばらつきを考慮した手法とはなっていない.本研究では,地震動のばらつきを考慮した桟橋の耐震信頼性を簡易に評価する手法について検討した.検討対象項目は残留変形量と最大曲げモーメントとし,地震動のばらつきを考慮した多数回の2次元地震応答解析によって得られるこれら指標の確率分布を,3ケースの代表的な地震動による地震応答解析によって評価する方法を示した.
  • 宇野 州彦, 千々和 伸浩, 岩波 光保, 三好 俊康, 小笠原 哲也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_408-I_413
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     高度経済成長期に建設した数多くの社会基盤施設が供用期間50年を超え,適切な維持管理は重要となってきている.桟橋は塩害に対して厳しい環境に置かれており,より適切な維持管理を行っていかなければならないが,劣化した桟橋の残存耐力や耐震性能に関する研究は少ない.本研究では,健全および劣化した桟橋の部材および全体系に関して載荷実験とその再現解析を行い,桟橋の各部位(梁および梁と鋼管杭との接合部)の鉄筋腐食が桟橋全体の残存耐力に与える影響について検討を行った.結果から,梁部材が劣化した場合には耐力が低下し解析においても再現できた.接合部については,ハンチ部鉄筋が劣化した場合でも主鉄筋による荷重分担により弾性範囲内であれば耐力低下は見られなかった.全体系においては,載荷実験により劣化による耐力低下が見られたが,解析のモデル化手法に課題があることが示された.
  • 小田 隼也, 長尾 毅
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_414-I_419
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     耐震強化桟橋のレベル2地震動に対する設計では2次元地震応答解析を行う必要があるが,照査用断面はレベル1地震動の照査結果による断面を初期断面とするため,レベル2地震動に対する性能を満足する最終的な断面との間に乖離があり,最適断面が得られるまで2次元地震応答解析を繰り返す必要がある.本研究では,設計実務における計算負荷の低減を目的とし,2次元地震応答解析の結果を計算負荷の低い骨組解析で再現する方法について検討した.
  • 竹信 正寛, 宮田 正史, 勝俣 優, 村上 和康, 本城 勇介, 大竹 雄
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_420-I_425
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     平成19年版の港湾の施設の技術上の基準・同解説において,船舶接岸時に関する桟橋杭の応力照査に用いる部分係数が導入された.当該部分係数は,設計水深に依らず一定の値である.しかし,船舶接岸速度の統計的性質は,対象船舶の船種やその大小に依存することから,桟橋杭の応力に関する破壊確率は,設計水深の影響を受けると考えられる.
     本論文の目的は,直杭式横桟橋の船舶接岸時の杭応力照査を対象に,船舶接岸速度の実測値を基に設定した統計的性質を反映した適切な部分係数を提案することである.また,上記の破壊モードに対する信頼性解析の実施にあたり,防舷材のモデル化,応答曲面法およびモンテカルロシミュレーション(以下,MCS)を適用した解析手法を提案した.
  • 高野 向後, 宮田 正史, 藤井 敦, 井山 繁, 加藤 絵万, 山路 徹, 岩波 光保, 横田 弘
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_426-I_431
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     近年,港湾では既存施設を対象とした改良事業が増加しているが,改良設計を進める上での技術的課題とその解決方法を明確化したものはない.そこで,本研究では,全国の改良設計事例を収集し,改良の目的や方法に着目し分析することにより,既存港湾施設の改良設計の現状と課題について取りまとめた.現状については,船舶大型化に対応した係留施設の増深など,社会情勢の変化に応じた要請への早急な対応が既存港湾施設の改良事業の特徴であることを明らかにした.また,改良設計上の課題は,長期の供用期間中における設計法等の変更や,点検診断が困難なことによる既存部材の評価方法などであることを示した.その上で,改良設計の枠組の構築に向けて,改良設計の基本事項と課題への対応の方向性を示した.
  • 水野 剣一, 酒井 貴洋, 小笠原 哲也, 杉本 英樹, 本山 昇
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_432-I_437
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     桟橋上部工下面の点検・調査作業は,作業に従事する労働力不足,狭い箇所では調査できないことや劣化度判定には人によるばらつきがあるという問題がある.このため,著者らは人が直接桟橋下部に立ち入らずに点検・調査が可能で効率的な技術として,カメラを搭載した無線操作式の小型ボート(ラジコンボート)を用いた点検方法と劣化度を自動判定する診断方法の開発を行った.本研究では,開発した撮影方法によって海面上で撮影した画像からひび割れ幅等の抽出精度について検証し,さらに開発した点検・診断方法を建設から45年経過した桟橋に適用し検証した.その結果,開発した方法の調査効率は人員目視の約2.5倍であることや劣化度の自動判定結果と人員目視で判定した結果は概ね一致することを確認した.
  • 直町 聡子, 加藤 佳孝, 橋本 永手, 加藤 絵万
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_438-I_443
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     桟橋鉄筋コンクリート(RC)上部工は,点検結果に基づき鉄筋位置の塩化物イオン(Cl-)濃度が2.0kg/m3となる時期を予測し,対策実施時期を設定しているが,腐食理論に基づけば,環境や材料・配合等に応じて鉄筋腐食の発生条件は種々変化するはずである.本研究では,塩害劣化予測の高精度化に向けた基礎検討として,海水中に含まれるイオンが鉄筋腐食速度,およびCl-の浸透性状と細孔溶液のpHに及ぼす影響を実験的に検討した.その結果,健全なRC構造物中のpHでは,鉄筋表面のCl-濃度が3%になっても腐食電流密度は極めて小さいが,pHが低下し海水中の多種イオンが存在すると低Cl-濃度でも腐食電流密度が大きくなった.また,海水中の多種イオンの影響によりCl-の拡散と移流は抑制されることが明らかとなった.
  • 森木 美沙樹, 大谷 俊介, 若林 徹, 岩波 光保
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_444-I_449
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     海水中の鋼材の腐食速度は,鋼材表面への酸素の供給速度に左右されることから,鋼材表面が石積みや海底土で覆われている場合,それらが酸素供給の障壁となり鋼材の腐食が抑制されると言われている.しかし,鋼材前面の環境条件と腐食速度との関係は厳密には明らかにされておらず,鋼材が石積みや海底土で覆われている場合の腐食速度は正確に評価されていないのが現状である.そこで本研究では,電気化学的な手法により鋼材前面の溶液や材料中の溶存酸素拡散係数を求めることで,鋼材表面への酸素供給速度を評価し,鋼材の腐食特性との関係性を検討した.その結果,鋼材表面を覆う材料の粒径や間隙比が溶存酸素拡散係数の大小を左右すること,また,鋼材前面の溶存酸素拡散係数と腐食速度には高い相関があることがわかった.
  • 長尾 毅, 箱田 貴大, 伊藤 佳洋, 山田 雅行, 西端 薫, 津田 章
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_450-I_455
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究では,建設後年数を経た岸壁の舗装直下に生じた空洞を常時微動を用いて検出する方法について検討した.観測対象は空洞の発生が確認されている堺泉北港であり,観測方法として単点観測とアレイ観測を用いた.アレイ観測のピッチは,観測・解析負荷を考慮すると,あまり短くすることは現実ではないと考えられることから,1.8m~5.4m程度とした.アレイ観測では位相速度から,単点観測ではH/Vスペクトルなどの健全部と空洞発生部の違いから空洞を検出できるかについて検討した.
  • 池野 勝哉, 田中 智宏, 三好 俊康, 森川 嘉之, 水谷 崇亮, 高橋 英紀
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_456-I_461
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     補強土壁工法は優れた耐震性を有するため,擁壁等の陸上工事において広く用いられているものの,港湾工事においては未だ適用されていない.本研究は,補強材の効果を港湾の矢板式係船岸に適用することで,従来の控え式矢板と比較して安価で優れた耐震性能を有する岸壁構造の開発を目指したものである.本稿では,50G 場の遠心載荷模型実験を実施し,矢板背後の補強材に関する敷設長や敷設高および設置段数を変化させ,地震時の変位抑制効果や補強材に作用する引張力,矢板の曲げモーメントについて考察している.その結果,補強材を適切に敷設することによって地震時の安定性が向上するとともに,矢板の曲げモーメントを抑えて低剛性の鋼材を選択できるため,従来の控え矢板式よりも安価で優れた護岸・岸壁構造を構築できる可能性を示した.
  • 宇野 宏司
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_462-I_467
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     和歌山県の漁港は全国有数の規模を誇り,またここを拠点に活動する漁業協同組合は当該地域の産業の担い手のひとつとなっているが,南海トラフ地震による津波被害が懸念される.本研究では,漁協関係者に対するアンケート調査によって津波防災・減災対策の現状と課題を明らかにするとともに,内閣府の試算結果を各漁港スケールで詳細に整理・解析し,和歌山県沿岸に点在する漁港・漁協に到達する津波の被害予想,漁船の沖出しの妥当性についての検討を行った.その結果,当該地域における南海トラフ地震・津波に対する防災・減災対策や意識の地域差,漁協単位での訓練・研修や他機関等との連携の停滞,過去の災害教訓の風化といった課題が明らかにされた.また,漁船の沖出しについては,港内停泊漁船は時間的に制約があることを示し,事前の運用ルールづくりが必要性が指摘された.
  • 二階堂 竜司, 五十嵐 雄介, 福田 晃正, 中園 大介, 神保 正暢
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_468-I_473
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     本研究は,岩手県上閉伊郡大槌町の大槌漁港海岸および吉里吉里漁港海岸を対象に,現地データから2011年東北地方太平洋沖地震津波による船舶の漂着実態を把握・分析するものである.加えて,この現地データを用いて船舶漂流の再現計算を行うとともに,その漂流結果から当海岸における船舶漂流実態や漂流物のリスクを検討するものである.船舶漂着位置の実態分析から,船舶漂着位置は海岸線からの距離と船舶の全長に関連があることがわかった.船舶漂着位置の再現計算では,船舶の全長と海岸線からの漂着距離の関係より,検証計算の妥当性を評価する方法を提案するとともに,実態と計算で類似の傾向であることを確認した.また,漂流物解析では,浸水範囲内の広い範囲で漂流物によるリスクがあるものの,道路盛土背後では漂流物のリスクが軽減することを確認した.
  • 伊藤 政博, 馬場 愼一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_474-I_479
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震津波が浸水した宮城県南部の海岸林樹木62本を対象に,津波による樹木の立木・倒木,津波浸水深,樹高,樹径,および年輪などを現地調査した.この結果を基に津波に対して立木として生育していた樹木の倒伏限界をこれまでの研究で明らかにした.本研究では,この倒伏限界と宮城県林業振興協会が184本の黒松について調査した結果との比較を行い,両者の傾向はよく一致することを示した.さらに,力学的に求めた樹木の傾倒限界式に基づいて樹木生育地盤の土質(砂系,砂礫系)が及ぼす影響を検討した.その結果,樹木の生育地盤の土質が樹木の傾倒限界に及ぼす影響が明らかになった.
  • 飯村 耕介, 野崎 樹, 髙橋 勇貴, 池田 裕一
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_480-I_485
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     巨大津波の対策を考えるうえで,複数の構造物を組み合わせて配置し,減勢を図ることが非常に重要となる.本研究では,防潮堤と海岸林による多重防護に着目し,2つの位置関係が構造物周辺の流況や海岸林の抵抗力に与える影響について定常流下における水理模型実験により検討した.実験では水位,対策構造物周辺の流速,海岸林への作用力をそれぞれ測定した.
     海岸林を防潮堤よりも下流側に配置することで,海岸林に作用する力が大きくなり,流れに対する抵抗として期待できる一方,海岸林と防潮堤が隣接する場合,防潮堤越流直後の非常に速い流れにより,海岸林の前面部で海岸林への作用モーメントが大きくなり,樹木破壊の危険性があること,また適切に防潮堤と海岸林を離すことで樹木破壊の危険性が低下する.
  • 池末 俊一, 串岡 清則, 平井 孝昌, 三代川 栄一, 皆川 祐輔, 仲村 岳, 奥田 幸彦, 戸井田 隆行
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_486-I_491
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     漂流物の衝突力を評価するためには,被衝突物に対する漂流物の衝突速度を評価する必要がある.ただし,漂流物の運動は被衝突物周りの流場の影響を受けるため,より実態に近い衝突速度を評価するためには,被衝突物周りの流場特性を考慮する必要がある.また,漂流物の運動を推定するうえでは漂流物の慣性力を評価する必要がある.この慣性力の評価には,漂流物自身の空中質量に加えて漂流物が海水を連行しながら運動する効果を付加質量として考慮する必要がある.
     本研究では,漂流物の衝突速度を評価するための運動モデルと,被衝突物周りの流場特性および漂流物の付加質量のモデル化について検討した.また,漂流物の衝突速度に関するケーススタディを行い,被衝突物周りの流場特性や漂流物の付加質量の影響を検討した.
  • 壱岐 信二, 廣澤 一, 赤羽 俊亮, 磯田 真紀, 村田 眞司, 松永 義徳, 塚本 吉雄
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_492-I_497
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     わが国の砂浜・泥浜海岸約7,600kmを対象に,1970年代と2000年代の変化量を,従来の一般的な解析手法であった「海岸線」ではなく,汀線及び後背地の土地被覆である砂浜・砂丘植生・海岸林・海岸構造物・その他(宅地・農地等)を「面」として総合的に解析した.その結果,2000年代では砂浜や砂丘植生が減少し,海岸構造物とその他が大きく増加していることが把握できた.また,海浜の変形は汀線とともに,後背地の土地被覆が複雑に変化していることが定量的に把握でき,その事象は同じ漂砂系で細分化した地区海岸約6,500箇所で作成した土地被覆図上で詳細に示された.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 大谷 靖郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_498-I_503
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     周防灘に面した苅田市沖の干潟には孤立砂州が発達している.この砂州は,波の作用下で干潟面上に孤立した砂の塊をなし,ほぼ半円形を保ちつつ変形が進んできている.2014年10月17日,この孤立砂州北端が陸岸に接近したため,陸岸との間に残された狭い開口部には入退潮流によるflood/ebb tidal deltaが形成された.その後,2016年9月17日における第二回目現地踏査によれば,孤立砂州の接岸直前に陸岸での著しい侵食が起きた後,最終的に砂州が陸岸と融合して大規模な海浜地形変化が起きた.
  • 宇多 高明, 宮原 志帆, 橋本 佳樹
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_504-I_509
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     猪苗代湖に流入する長瀬川河口の南側の湖浜では,当地で卓越する西風による風波が湖岸線とほぼ同じ方向から入射するため,典型的なHigh-wave-angle instabilityによる砂州の発達が見られる.本研究では,この湖浜で起きている砂州の不安定的発達について,既往衛星画像の解析と現地実測により詳しく調べた.この結果,砂州上には3個の砂嘴が発達し,それらの砂嘴の平均移動速度が66 m/yrであることが見出された.また,この移動速度は衛星画像の解析により求めた2010~2015年での砂州の平均移動速度68 m/yrとほぼ一致した.
  • 藤野 由基, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_510-I_515
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     房総半島先端部に位置するポケットビーチである守谷海岸には小規模な河川が流入しているが,この小河川の河口部流路はポケットビーチ中央部にある岩礁背後でほぼ固定されている.その理由として,岩礁の持つ消波効果が砂州高を下げているためと見られた.そこでこの小河川の河口部を研究対象として現地調査を行うとともに,岩礁による波の遮蔽効果を方向分散法により算定した.この結果,岩礁背後では波高低下に伴い砂州高が低下することが河口部流路が安定している理由であることが分かった.
  • 田中 仁, Dinh Van DUY, 三戸部 佑太, Nguyen Trung VIET
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_516-I_521
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     近年,各地の河口部において深刻な侵食現象が見られる.このような河口デルタの発達と汀線後退を論ずる際,線形近似された拡散方程式型のワンラインモデルの解析解を使用することがある.ただし,通常使用される解析解は無限長の砂浜に注ぐ河川を対象としている.このため,実際に存在する岬などの砂浜端部の影響を加味することが出来ない.そこで,有限長さの砂浜に発達する河口デルタに関する理論的検討を行った.その結果,無次元時刻t*が0.3よりも短い時間の間では境界の影響が現れず,既往の解が適用できることが分かった.また,無次元時刻がこの限界時間より大きい時には放物線形状の汀線が平行移動する単純なデルタ発達過程を示しており,この時,河口から境界にかけて漂砂量は直線的に減少する.実験値を用いてこの理論の検証を行った.
  • 田中 仁, Tran Minh THANH, Le Thanh BINH, 三戸部 佑太, Nguyen Trung VIET
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_522-I_527
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     ベトナム・ニャチャン海岸においては,近年,汀線の後退が顕在化している.しかし,侵食の機構・対策を論ずるための現地資料が乏しい.そこで,2013年5月から2016年8年までビデオカメラによるモニタリングを行い,ニャチャン海岸における海浜変形の特性に関する検討を行った.その結果,同海岸北端部においては,波浪の季節的な変動が著しく,北東モンスーン波浪が卓越する冬季に汀線が後退し,その後,汀線の回復が見られるという季節変動が支配的であることが明らかになった.そこで,経験的固有関数展開(EOF)を用いて実測汀線の展開を行ったところ,93.8%を占める第一成分がこのような季節変動に対応することが分かった.また,空間関数および時間関数の近似により,実測値の周期的な特性を良好に近似することが明らかになった.
  • 大中 晋, 市川 真吾, 泉 正寿, 宇多 高明, 平野 潤一, 澤田 秀貴
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_528-I_533
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     南大洋州の小島嶼国であるツバル国で顕在化しつつある海岸侵食や高波浸水被害に対し,礫と砂を用いた礫養浜を実証事業として実施するとともに,工事完了から1年以上にわたり,形成された浜での継続的な海岸モニタリングを実施した.また,同時期に隣接海岸にて実施された埋立て事業としての大規模砂投入後の海岸モニタリングも合わせて実施し,両者の海浜挙動の比較より南大洋州の小島嶼国での本工法の適用性,有効性を検討した.その結果,適度な砂止め用突堤の配置と自然海浜に近い断面形状で養浜断面を仕上げることにより,養浜後の海浜は高い安定性を確保することが現地で確認された.
  • 小林 昭男, 宇多 高明, 伊達 文美, 三上 康光, 野志 保仁
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_534-I_539
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     VietnamのNha Trangの北部に流入するCai Riverの河口部では,近年侵食が著しく進み,河口両岸にあった砂浜が消失した.この原因を調べるために,2015, 2016年の10月に現地調査を行うとともに,2002~2015年に取得された衛星画像や2008年11月の台風時高波浪による災害状況を調べ,さらに河口部を管理する地方機関の代表者との協議を行った.この結果,河口左岸における公園造成に必要な土砂の調達のために右岸砂州の掘削を行ったこと,また,河口左岸に沿って上流方向へ砂が逆流したことが侵食原因に深く関与することが明らかになった.その上でNha Trangの南77 kmに位置するPhan RangにあるDam Nai Bayの湾口に造られた導流堤の例を基に,河口の安定化のためには導流堤の設置が有効なことを示した.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 鷺島 英之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_540-I_545
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     涸沼の広浦砂州では,風波と大地震時の0.2 mの地盤沈降により侵食が進んだことから,対策として2013年1月に久慈川の河床堆積土砂2,000 m3による養浜が行われた.この間,養浜前の2012年1月12日と養浜後の2014年9月30日に広浦砂州の現地踏査を行い,養浜による砂浜回復状況を調べた.その後,2016年の8月には台風5, 7, 9, 10号の襲来に伴い湖水位の著しい上昇とともに高波浪が作用したため湖浜は再び著しく侵食された.本研究では,この時の侵食状況を実態データを基に調べ,高水位と強風に伴う波浪の作用により著しく侵食が進んだことを明らかにした.
  • 澁谷 容子, 藤原 伸泰, 森 信人, 黒岩 正光, 志村 智也
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_546-I_551
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     気候変動に伴う沿岸外力の変化が予測されている中,それらの影響評価がさかんに行われている.特に,我が国は四方を海に囲まれていることから,国土保全の観点からも砂浜の保全も重要な課題である.これまで,気候変動に伴う汀線後退の評価はBruun則を用いていくつかの研究が行われているが,海面上昇の影響のみに限定されているものがほとんどである.しかし,将来,波浪特性の変化が予測されていることから,波浪の力学的変化が汀線後退に影響を与える量について検討する必要がある.本研究では,鳥取県に位置する鳥取砂丘海岸を対象に,将来の波浪予測結果を用いて,海面上昇および波浪(波高および周期)の変化を考慮し,汀線後退量を算出した.その結果,海面上昇量と汀線後退量は,ほぼ比例の関係にあり,波浪特性の変化により,海面上昇量に対する汀線後退量の約16%程度,影響を受けることがわかった.
  • 三戸部 佑太, 田中 仁, 鈴木 彰容, 梅田 信, 小森 大輔, 峠 嘉哉
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_552-I_557
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     平成28年台風10号による高潮・高波の実態調査およびその海浜地形変化への影響を調べるため仙台海岸において台風通過当日から翌日にかけて現地調査を実施した.その結果最大でT.P. 4m程度まで波浪が遡上したことがわかった.また,仙台新港周辺の海岸沿いの盛り土法先に大きな侵食が生じていた.蒲生干潟の前の砂丘部では越波が生じ,これにより干潟内に砂が輸送されたことがわかった.
     空中写真による汀線変化の調査を行い,平均的に20~30m程度の汀線後退が生じたことがわかった.岸沖漂砂により概ね1~2か月で台風来襲以前の汀線位置まで回復したが,砂丘部に越波が生じた蒲生干潟や井戸浦周辺においては汀線の回復が遅い.河口や離岸堤に加えて2011年津波により海岸線に露出された構造物による沿岸漂砂の捕捉効果によりその漂砂上手側で汀線の回復傾向が大きい.
  • 宇多 高明, 大木 康弘, 大谷 靖郎
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_558-I_563
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     2012年,行橋市の沓尾海岸では祓川河口左岸側に突堤が伸ばされるとともに養浜が行われた.その後,この突堤が祓川河口へと向かう沿岸漂砂を阻止したため,突堤の下手側に位置する砂州では著しい侵食が起きた.一方,祓川河口右岸にある沓尾漁港では河川流により干潟面へと運ばれた砂の回帰が続き,沓尾漁港の泊地を埋めて堆積するなど,沓尾海岸では著しい地形変化が生じている.本研究では,祓川河口部を対象として既往衛星画像の解析とともに現地調査により祓川河口部の地形変化を詳しく調べた.また,筆者らによる既往移動床模型実験結果と実測データとの比較により,沓尾漁港内での堆積機構が既往模型実験の結果によりうまく説明できることを明らかにした.
  • 百瀬 尚至, 鈴木 知陽, 佐藤 雅史, 山本 庸介, 宇多 高明, 石川 仁憲, 芹沢 真澄, 宮原 志帆
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_564-I_569
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     清水海岸北端部の三保松原では,景観改善を行いつつ侵食対策を進めるために,従来の消波ブロック式消波堤に代わってL型突堤を設置する計画が採用された.このL型突堤は,横堤として有脚式離岸堤を用いているが,清水海岸にL型突堤を設置するにあたってその漂砂制御効果を明らかにすることが求められた.本研究では,L型突堤の建設と同時に清水海岸北端の飛行場付近からのサンドリサイクルを行った場合の地形変化を等深線変化モデルを用いて予測し,L型突堤の漂砂制御効果を明らかにした.
  • 宇多 高明, 石川 仁憲, 三波 俊郎, 細川 順一, 蛸 哲之
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_570-I_575
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     相模湾に面した七里ヶ浜の海浜変形原因について,空中写真の比較や汀線変化解析,Narrow Multi-Beam測量データにより調べた.この結果,七里ヶ浜の侵食は,稲村ケ崎を越える東向きの沿岸漂砂量と行合川などからの供給土砂量との不均衡に起因すると推定された.また,当海岸では最近国道134号線の改修工事が行われた際,後浜の土砂が前浜まで敷き均され,仮設道路を造るために土砂が投入された(海浜置砂)が,その一部が波によって削られ砂浜拡幅に役立った事実を現地踏査によって調べ,侵食対策として養浜が有効であることを明らかにした.
  • 百瀬 尚至, 鈴木 知陽, 佐藤 雅史, 宇多 高明, 佐藤 愼司, 片山 裕之, 前田 勇司, 石川 仁憲
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_576-I_581
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     縮率1/50の移動床模型実験によりL型突堤の機能を調べた.また,コスト縮減策として,縦堤上手側の被覆ブロックの数量を減らすこと,縦堤の接続提(沖側1函)の除去,縦堤の陸端部を既設堤防に連結せず波浪作用により地形変化が起こると想定される地点までとする等のコスト縮減策検討の基礎資料を収集した.実験結果より,接続堤の1函の除去が可能なことが分かった.また,高波浪が作用した場合でも既設堤防前面で縦堤の陸端部は露出せず,その対策も不要なことが分かった.
  • 宮田 隆平, 小林 昭男, 野志 保仁, 宇多 高明
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_582-I_587
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     緩傾斜護岸はその構造上のり先が砂礫で埋まっておれば安定であるが,侵食などによりのり先が露出するとのり先から裏込め土砂の吸出しが起き,それがもとでのり面や背後地での陥没が起こることが多い.また緩傾斜護岸ののり先が直接波に曝されると,のり先が生物付着のため滑りやすくなって転倒の危険性が増すなどの障害も起こり得る.本研究では,このような状況が見られる東京湾湾奥にある検見川浜を対象として,これらの障害を取り除く一つの方法として,護岸前面での礫養浜と突堤により砂浜を回復し親水機能を高める方策についてBGモデルを用いて検討した.
  • 菊 雅美, 中村 友昭, 水谷 法美
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_588-I_593
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     礫浜海岸である七里御浜では,侵食が深刻な問題となっており,現地海岸の漂砂機構の解明と有効な侵食対策の実施が求められている.漂砂機構の解明には,礫粒径の特性を把握する必要があり,UAVによる空撮画像から礫粒径を算定可能になれば,広範囲における礫粒径の時空間分布を把握でき,現地海岸の漂砂特性の解明に有用と考えられる.本研究では,画像解析ソフトBASEGRAINを用いてUAVにより撮影した七里御浜海岸の空撮画像から礫の粒径を算出し,ふるい分け試験との比較からその精度を検証するとともに,SfMによって作成したオルソモザイク画像から礫粒径を算定し,中央粒径の時空間分布の特性について考究した.その結果,UAVによる空撮画像から礫粒径を算定する方法としてBASEGRAINが有用であること,礫粒径の空間分布は場所により特性があることを示した.
  • 鈴木 崇之, 川越 あすみ, 柳嶋 慎一, 比嘉 紘士
    2017 年 73 巻 2 号 p. I_594-I_599
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/22
    ジャーナル フリー
     遡上帯から砕波帯内外にかけての一帯を対象とし,高頻度の表層底質採取により短期的な底質の岸沖方向移動動態の解明を目的とした現地観測を行った.波崎海洋研究施設にて岸沖方向の約50 m毎に異なる5色の蛍光砂を投入し,投入後1時間後から144時間後までに計7回,岸沖方向10 m毎にグリースを付着させた木片を桟橋より海底面まで降下させ表層底質の採取を行った.解析の結果,砕波帯内の底質は,1時間以内に汀線よりやや沖側からバー岸側端まで拡散することがわかった.また,この領域にて確認された蛍光砂分布重心の移動は,概ね砕波点位置の変動と一致した.一方,バーよりも沖側の領域での蛍光砂分布重心の移動は,沖波エネルギーフラックスと相関が見られ,低波浪時ではあまり拡散せず,やや高い波浪時に岸向きに移動することがわかった.
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