-
宇多 高明, 三波 俊郎, 大木 康弘, 大谷 靖郎, 五十嵐 竜行
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_600-I_605
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
深浅測量データにより片貝漁港の北防波堤と防砂突堤に挟まれた区域での1994~2011年の堆砂量を求めたところ,総堆砂量は77万 m
3,平均堆砂速度は4.5万 m
3/yrであった.堆積速度は等深線変化モデルによる計算速度4.9万 m
3/yrとよく対応し,広域で汀線変化から推定された沿岸漂砂量と漁港周辺の深浅図から求められた漂砂量がよく一致することが分かった.また,片貝漁港では,南向きの沿岸漂砂が北防波堤を回り込んで流入しているが,北防波堤の南側隣接域に長さ650 mの防砂突堤が伸ばされたため,流入漂砂のトラップが起こりやすくなって北防波堤と防砂突堤に挟まれた区域で堆砂が助長されていることが分かった
抄録全体を表示
-
村田 昌樹, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_606-I_611
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
従来型突堤,低天端突堤,陸端に開口部を有する突堤,潜突堤,スリット式突堤など,突堤形式を変えた場合の沿岸漂砂の制御効果の違いをBGモデルを用いて調べた.陸端標高が0 m,すなわち突堤が沖から汀線までしかない条件では漂砂通過率は74%と大きく,大部分の漂砂は下手方向へ流出し,突堤としての機能が失われる.この条件は,実海岸では汀線が後退して突堤の付け根に開口部が形成された場合に相当する.また,スリットを設ける,あるいは突堤の一部が沈下して開口部(スリット)ができると,沿岸漂砂の通過率が高まり,スリット間隔/突堤が0.3の場合通過率は74%にまで高まることが分かった.
抄録全体を表示
-
宇多 高明, 山田 義仁, 村井 寛昌, 大谷 靖郎, 五十嵐 竜行, 大木 康弘
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_612-I_617
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
下新川海岸の入善町吉原から入善漁港に至る約5 km区間では,東部から入善漁港へと陸棚の幅が狭まり,海岸線近傍まで深く切れ込んだ海底谷が発達している.とくに黒部川河口の東隣に位置する入善漁港付近では,深い海底谷が海岸線ごく近傍にまで迫る.一方,当海岸では西向き沿岸漂砂が卓越しているために,汀線に沿って移動する土砂が海底谷を経て深海へと落ち込む可能性が高く,このことが養浜による砂浜復元の阻害要因となっている.ここではこのような海底谷への土砂損失の機構について,1965年以降の深浅データを基に等深線距離の長期的変化より詳しく調べた.その上でBGモデルにより西端部に位置する急深な海底谷への土砂落ち込み機構について考察し,落ち込み防止策を提示した.
抄録全体を表示
-
中山 恵介, 駒井 克昭, Robert W. ELNER, 桑江 朝比呂
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_618-I_623
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
Fraser Riverの河口に位置するRoberts Bankの河口干潟は,世界有数の渡り鳥(シギ・チドリ類)の飛来地として知られている.渡り鳥の飛来の主要因として,低塩分領域に生息するbiofilmが餌資源として豊富に存在している点が指摘されているが,干潟内の詳細な塩分が不明であり,物理環境による影響評価が十分に行われていない.そこで本研究では,干潟内における塩分環境に注目し,干潟の土中深さ0.2 mにおける塩分の測定を行った.さらに,2次元的な拡がりを検討するために,2次元平面における干潟内塩分推定モデルを提案し,現地観測結果との比較により良好な再現性を得ることができることが示された.
抄録全体を表示
-
小野 翔悟, 辻本 剛三, 田畑 健吾, 外村 隆臣, 高野 保英
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_624-I_629
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
熊本県白川河口域の干潟地形において潮下帯に形成される前置層斜面に着目した.2016年の熊本地震による斜面崩壊や洪水による土砂供給の影響で,前置層斜面が2014年から100m余り前進していることを現地調査で確認した.前置層斜面の発達に寄与する底泥の挙動を把握するために泥水の挙動を下層密度流として扱い室内実験を行った.泥水の供給量は一定とし濃度と斜面勾配を変化させ,流速と濃度を計測した.泥水濃度の増大に伴い流れが加速され,流れの逆流域の範囲も拡大するが,濃度は一様化されずに高濃度領域は底面近傍で見られた.底泥の沈降速度を泥水濃度と塩分濃度を変化させた実験を行い,泥水濃度が16000ppm程度で沈降速度が最大となり,既存の結果と算定式と同様な結果となった.
抄録全体を表示
-
大谷 壮介, 川崎 太輝, 遠藤 徹, 東 和之
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_630-I_635
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究では泥質河口干潟を対象に堆積物のCO
2吸収および排出速度を計測し,底質環境の変化との関係を明らかにすることを目的に調査を行った.底質環境について,粒度組成の経月変化は認められなかったが,Chl.
a量,AVS,ORPには季節変化が認められ,それぞれ異なる時期に最大値を示した.堆積物におけるCO
2吸収速度,CO
2排出速度はそれぞれ0.0675~6.63 mg CO
2/m
2/min,0.0380~2.82 mg CO
2/m
2/minで変動した.両速度は地温と正の相関関係が認められ,夏季に最大値を示した.また,Chl.
aあたりのCO
2吸収速度は地温と正の相関関係があり,CO
2吸収速度は底生微細藻類量より活性に依存していた.さらに,CO
2排出速度は泥質域に優占的に生息しているヤマトシジミの存在が寄与していることが示唆された.
抄録全体を表示
-
梁 順普, 佐々 真志, 梶原 直人, 渡辺 啓太
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_636-I_641
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
砂浜では,空気侵入サクションを境に実質飽和域(干出時に飽和度
Sr ≅ 100%の領域)と不飽和域の地盤環境特性が急激に変化する.そして,自然干潟は,実質飽和域及びその近傍域である一方,人工造成干潟では不飽和域を含みうる.地形の安定性と豊かな生態系保全の観点から,砂浜及び干潟の実質飽和域の同定は重要である.しかし,当該場の正確な評価の為には土砂のサンプリングや室内物理実験等,時間や労力など手間を要する.本研究では,真空採血を応用した土壌水分採取器に着目し,室内性能評価と現地調査を通じて現場で実質飽和近傍域を簡易に検定・評価しうる新たな手法を構築・提案すると共に,その実用性と有効性を実証した.今後,この新たな簡易検定・評価手法が現場で有効に活用されることが期待できる.
抄録全体を表示
-
日比野 忠史, 中本 健二, 宮田 康人, 三戸 勇吾
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_642-I_647
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
下水起源の有機物の流入により底生生物が生息できなくなった内港において生態系の再生実験,および造成干潟での生物調査を行った.下水汚泥(有機泥)が堆積する場での生態系の再生実験では,干潟を模擬した礫材基盤を作成した.礫材基盤では還元状態が回避され易く,底生生物の生息が早期に再生すること,生態系が再生していく過程において水質汚濁に対する耐性の強さによって生育する動植物の種類が変化していく過程が確認できた.これらの結果,電子受容体の溶出,吸着能力の小さい礫では層内の還元状態を抑制する能力が小さいため,水質汚濁の強い場での生態系の再生・創造には石炭灰,鉄鋼スラグ等のアルカリ剤の利用が有効であることが明らかにされた.
抄録全体を表示
-
村上 嘉謙, 志方 建仁, 殿最 浩司
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_648-I_653
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
海底地すべりに伴う津波評価に当たっては,いくつかの計算モデルが提案されており,実務的に適用事例もあるものの,標準的な評価体系として確立していないため,合理的な評価手法を構築することが課題となっている.
本研究では,若狭湾周辺の海底地すべりに起因する津波の評価について,文献調査や海上音波探査記録の再解析の結果から海底地すべり規模を詳細に設定し,複数の手法で津波水位評価を実施した事例を示した.各手法による水位評価の比較の結果,Wattsらによる予測式から求まる海底地すべり速度の最大値をパラメータとして用いた運動学的地すべりモデルを適用した場合には,実験結果や他の手法と比べて安全側の(大きめの)水位評価結果が得られることが分かった.
抄録全体を表示
-
村上 嘉謙, 志方 建仁, 殿最 浩司
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_654-I_659
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
陸上の斜面崩壊や山体崩壊(陸上地すべり)に伴う津波評価については,既往津波の再現計算事例が示されているものの,将来起こりうる陸上地すべりによる津波の影響の評価を念頭においた標準的な評価体系は確立しておらず,合理的な評価手法を構築することが課題となっている.
本研究では,小浜湾(福井県)周辺の陸上地すべりに起因する津波の評価について,文献調査や現地踏査を踏まえて評価対象の陸上地すべりを抽出,設定し,複数の手法で津波水位評価を実施した事例を示した.また,津波の初期水位波形の算定手法として,運動学的な手法のほか,実験に基づく波源振幅予測式を用いた方法を提案した.
抄録全体を表示
-
小田 圭祐, 前田 勇司, 西浦 泰介, 野村 瞬, 泉 典洋, 西畑 剛, 阪口 秀
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_660-I_665
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
津波が来襲したとき,その大きな掃流力や乱れによって大量の海底土砂が輸送される.これまでに津波による海底土砂輸送量に関する研究や地形変化に関する研究は数多くなされているが,河床変化や波による海底地形変化のような微視的な地形変化に関する研究や,津波フロントや後続波といったイベントごとの地形変化に着目した例は少ない.そこで,本研究では津波到達時から後続波による砂漣形成初期までの地形変化の形態を把握し,津波外力規模と砂漣の形成,消失との関係を明らかにすることを目的とし,移動床水理模型実験を行った.その結果,比較的流速の小さい後続波によって砂漣が形成されること,津波後続波による地形形態は河川の地形変化特性で用いられる指標と概ね一致すること,砂漣の峰には粗粒砂が多く堆積し,谷には細粒砂が堆積することなどがわかった.
抄録全体を表示
-
有光 剛, 川崎 浩司
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_666-I_671
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究では,狭窄部を有する海域を対象に津波作用時の砂移動・地形変化特性の把握と,津波移動床モデルの再現性検証用データの取得を目的として,水理模型実験を行った.実験では,まず固定床条件で水位と流速を計測することで,狭窄部への津波流入出に伴う流動場を把握した.次いで,移動床実験を実施し,津波流入時の浮遊砂濃度時系列および津波作用前後の地形変化の計測を行った.
実験の結果,津波の流出入に伴って流速が増大するために,狭窄部で顕著な侵食が生じた.また,巻き上げられた砂が輸送され,沈降することで,沖側領域および岸側領域に堆積域が形成された.同じ津波が来襲した場合でも,水際境界の条件によって流動特性の差異が認められた.その結果,顕著な地形変化が生じる領域に差異が現れるなど,砂移動・地形変化は大きな影響を受けることが分かった.また,粒径によって砂の輸送距離が異なるため,堆積の位置や形状は粒径の影響を受けることが確認された.
抄録全体を表示
-
宮本 順司, 鶴ヶ崎 和博, 角田 紘子, 野村 瞬, 阪口 秀
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_672-I_677
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究では,海底地盤の不安定化や崩壊等によって発生する土砂の長距離輸送や乱泥流の流況を観察する目的で,遠心力場で水中土砂流動実験を行った.高密度な土砂輸送現象に着目し,粘土の含水比を80から140%に変化させて流動距離の変化を調べた.実験の結果,粘土の含水比の違いにより2種類の特徴的な流況があることを見出した.1) 粘土の一様な流動と 2) 粘土と水が混濁した流動である.前者は含水比の増加に伴い流動距離は増加するが,流動中に外部流体を撹拌するため流動距離は後者に比べて短い.後者の流動は,含水比が液性限界の1.2倍以上の時に発生し,流動中に渦が発達せずエネルギー損失が少ないために,速度が維持され流動距離が長くなる結果が得られた.この流動形態は乱泥流の長距離輸送発現条件の一つであると考えられる.
抄録全体を表示
-
橋本 佳樹, 小林 昭男, 宇多 高明, 野志 保仁
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_678-I_683
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
石炭灰から造られた人工礫を粗粒材養浜の材料として用いる可能性について検討するために,波の作用下での同一粒径の礫と人工礫の挙動を二次元移動床模型実験により調べた.実験結果によると,最終安定状態においては,汀線を境に陸側では前浜勾配と空気中の湿潤状態での安息勾配がよく対応する一方,水面下では前浜基部の勾配が水中での安息勾配と密接に関わることが分かった.また,前浜基部の海底勾配は前浜前面の水深を支配しているので,その勾配が小さい人工礫では波の打ち上げ高が低くなり,結果としてバーム高の低下が起きたことが分かった.また,ロサンゼルス試験により礫材の摩耗について調べた結果,人工礫は礫と比べ磨耗しやすいことが分かった.
抄録全体を表示
-
宇多 高明, 梶原 幸治, 尾池 宣佳, 大木 康弘, 榊原 秀作, 西ヶ谷 圭祐
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_684-I_689
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
遠州灘に面し,浜名湖今切口の西側に隣接する新居海岸では,2002年に海岸線に沿って走る浜名バイパスの前面海浜が著しく侵食され,道路護岸が広範囲にわたって露出し,のり面の陥没の危険性が高まった.このため緊急対策工事として道路護岸ののり面の基礎補強のために袋詰め玉石工(袋体)が敷設された.本研究では,対策実施から14年が経過した2016年に袋体周辺の状況調査を行い,袋体の劣化状況を調べた.
抄録全体を表示
-
土橋 和敬, 佐藤 慎司, 村瀬 博俊, 古屋 友次郎, 菅 友里, 小林 昭規, 小林 喬
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_690-I_695
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
新潟県四ツ郷屋浜海岸において,サンドパック工法で施工された突堤工の施工方法とその効果を検討した.サンドパック工法は,高強度ポリエステル製織布に人工芝を一体化させた基布を用いた袋材に,現地砂や養浜砂を充填した砂袋詰め工法である.漂砂による表面の摩耗に配慮した起毛布を採用するとともに,基礎砂面の洗掘対策に帆布とアンカーチューブを用いることにより,波浪に曝される汀線付近において,安定性の高い構造とすることができた.突堤工周辺の海岸状況は,監視カメラにより連続観測され,施工後1年5か月における突堤工の効果検証を行った.
抄録全体を表示
-
赤星 怜, 趙 容桓, 中村 友昭, 水谷 法美
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_696-I_701
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
干潟保全の重要な因子とされる細粒分の動的特性解明の一環として,粘土の抜け出し現象に着目した水理模型実験を実施し,波浪条件と粘土含有率による混合土砂からの粘土の抜け出し挙動と,抜け出し現象が混合土砂の漂砂特性に与える影響を検討した.その結果,粘土の抜け出し速度は,粘土含有率と入射波の波高および周期に依存することが判明した.また,混合土砂の地形変化は,粘土の抜け出しが一定量に達してから発生する傾向があり,粘土の抜け出しが混合土砂の移動限界に影響を与えることが明らかとなった.粘土の抜け出し形態は,表層から抜け出す形態と地盤内流路を通じて生じる形態に分類でき,その境界は
pf = 0.10 - 0.20の間に存在することが示唆された.以上より,細粒分が含まれている底質の安定性を評価する際に粘土の抜け出し現象を考慮する必要性が判明した.
抄録全体を表示
-
白水 元, 佐々 真志, 宮武 誠
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_702-I_706
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
砂浜模型実験での底質サンプル分析から波の遡上に伴った底質内部のサクション動態が間隙変化を誘起することが確認されている.しかし,底質のサンプリングは,破壊を伴い,高頻度で行うことができるものではない.そこで,本研究では,新たに波作用下の砂浜を対象とした比抵抗計測による底質間隙の時間連続的なモニタリング手法を開発する.砂浜模型を用いた底質間隙モニタリング実験から,提案する計測手法の妥当性を検討し,また,遡上斜面の地下水分布による間隙変化特性について考察した.
抄録全体を表示
-
中村 友昭, 山本 勘太, 趙 容桓, 水谷 法美, 小竹 康夫
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_707-I_712
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
据付時に浮遊状態にある上部斜面堤ケーソンの3次元的な動揺特性を数値解析により考究した.その結果,計算負荷の軽減のためにバラスト水を剛体として取り扱ったとしても,本研究の条件の範囲では,新設函の動揺の振幅に与える影響は小さいことが判明した.この取り扱いの下で水理実験との比較を行い,数値解析で得られた新設函の動揺の振幅は係留時のYawを除いて水理実験結果と概ね一致しており,数値解析の再現性を確認した.Rollが極小値をとった直後にPitchやHeaveが負となることで新設函の底面の沖側かつ既設函側の隅角部が沈み込み,マウンドとの接触可能性が生じることを確認し,Pitchの評価が行える3次元解析の重要性を示した.新設函の動揺の全振幅が比較的大きい相対堤体幅が小さい条件では,係留索の設置により全振幅を低減させられることが判明した.
抄録全体を表示
-
𠮷藤 尚生, 水谷 法美, 中村 友昭
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_713-I_718
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
浮体構造物の波浪応答解析は従来から重要な研究課題で,その数値解法が数多く開発され,実務面でも利用されてきている.しかし,係留浮体の波浪応答については従来広く用いられてきた方法では,事前に係留鎖の状態を仮定する必要があるなど課題が残されていた.そこで著者らは,従来の手法に比べてより物理的な現象を直接的にモデル化することで,係留鎖のたわみや着底を含めた挙動についても,統一的に再現可能な新しい手法を開発した.
本研究では,その新しく開発した手法を,実問題への応用の前段階として,既知の張力理論や1点係留ブイおよび浮体式防波堤の実験と比較・検証を実施した.その結果,いずれにおいても良好な結果が得られ,本手法の有効性を確認することができた.
抄録全体を表示
-
道廣 飛鳥, 大嶽 敦郎, 大久保 寛, 鈴木 英之, 徳田 英司
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_719-I_724
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
浮体式風車の係留設計を対象に数値解析を用いてラインダイナミックスの影響と準静的解析の適用範囲を検討した.係留ラインの上端に係留点の動揺を模擬した正弦波形の変位を与えて,その周期,振幅を変化させて発生張力やラインの各点の動きの変化を観察し,動的変動張力の発生原因となる抗力,慣性力,復原力の各成分を簡易に算定することによって傾向を分析した. その結果, 準静的解析で得られた結果を用いて変動張力の周期, 振幅依存性を考慮し, その影響の度合を簡易に把握する指標と手法を提案した.
抄録全体を表示
-
惠藤 浩朗, 佐藤 千昭, 増田 光一, 居駒 知樹, 久保田 充, 岸田 智之, 敷田 曜
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_725-I_730
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究では大型石炭貯蔵浮体(LFTS)を提案し,その石炭積載状況に応じた静的安定性および振動特性について述べる.LFTSは石炭貯蔵・積み出し浮体であり,沖合に設置することでインドネシアの石炭輸送効率を向上させることが期待されている.本研究で提案するLFTSは石炭の総積載量50万 t,平面規模は590 m×160 mと設定した.LFTSは平面的に広がりを有し,弾性挙動が支配的な構造物となる.そこで本研究では,あらゆる石炭の積載状態を満足するような構造断面を検討しLFTSの構造断面を検討するとともに,LFTSは大規模であり浅海域に設置されるため付加質量の影響が大きく,LFTSの上部には大量の石炭も積載されることから,その固有振動数は低周波数帯に存在すると考えられ,波との共振も予想され石炭の積載状態がLFTSの振動特性に与える影響の把握に努めた.
抄録全体を表示
-
上宇都 瑞季, 山城 徹, 齋田 倫範, 浅野 敏之, 城本 一義
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_731-I_736
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
甑島,枕崎で発生する振幅の大きい副振動の発生予測に向けて,2012年2月10日~3月27日に女島,2016年2月1日~3月31日に宇治島で水位測定を実施した.甑島では周期12分と周期24分,枕崎では周期17分で大きな副振動が発生していた.これらの副振動を発生させる危険度の高い長周期波の接近を予測するには,女島,宇治島において周期8~32分の水位変動をモニターすることが有効であることを示唆した.2012年の場合,女島で周期8~32分の水位変動のパワーが大きくなってから,甑島では平均すると2.3時間後に最大全振幅120cm以上,枕崎では1.3時間後に最大全振幅80cm以上の副振動が発生していた.
抄録全体を表示
-
仲井 圭二, 橋本 典明, 額田 恭史
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_737-I_742
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
前報では,全国沿岸の副振動は,北海道や沖縄,内海の一部の地点を除いて,共通の季節変動を示すことを明らかにした.しかし,年変動についてはそれほど単純ではなく,近傍の2地点でも,経年変化傾向に大きな違いがある場合がある.本研究では,個々の副振動の出現特性を示す確率密度関数と,季節変動に関する地点間相関に基づく類似度を導入することにより,全地点を3種類に分類した.それにより,季節変動の類似性は確率密度関数の形(最大値)と非常に関係していることが分かった.また,年毎の変動が大きな地点は,近傍の地点同士であっても,経年変化傾向が他地点と一致しないことも明らかになった.本研究では副振動の出現回数を,累年の平均値以上のものの回数としたが,地点によっては平均値が安定した代表値とはならないことが示唆された.
抄録全体を表示
-
川口 浩二, 櫻庭 敏, 永井 紀彦, 仲井 圭二, 額田 恭史, 村瀬 博一
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_743-I_748
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本稿は,全国港湾海洋波浪情報網(ナウファス)が捉えた 1994年北海道東方沖地震,1994年三陸はるか沖地震,2003年十勝沖地震,2006年と2007年の千島沖地震,2010年チリ地震および2011年東北地方太平洋沖地震などに続く一連の波形観測の報告として,2016年11月22日5:59(JST)に福島県沖深さ約30 kmで発生したマグニチュード7.4 の地震に伴う長周期海面変動記録を整理し,東北地方太平洋沿岸における長周期波動の沖合から沿岸にかけての伝播・変形特性を検討したものである.本事例は過去事例と比べて,長周期海面変動のエネルギーレベルや周波数スペクトル特性は異なるものの,港外から港内への増幅応答特性はいずれの港湾海域でもほぼ同様であることが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
嶋田 宏, 中野 晋
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_749-I_754
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
ミャンマーのエーヤワディ地域は,2008年のサイクロン・ナルギスにより,約14万人の犠牲者を出した.これを受け沿岸部の高潮被害を軽減するため,独)国際協力機構によるミャンマー自然災害早期警報システム構築プロジェクトが実施された.このプロジェクトの一つとして,パテイン川河口部に衛星を利用したリアルタイム潮位観測システムを導入し,別途実施されている高潮予測システムとを併せて精度の高い高潮予測を可能としている.しかしながら,広範囲に入り組んだデルタ地帯の沿岸各地での高潮警報を住民に伝えるためには,更なる潮位計の設置により水位の変動を把握することが必要である.そのため筆者らは安価な簡易潮位計を設置し,短期間観測での調和分析に加え,観測潮位と月別降水量等との相関が高いことを検証することにより,乾季と雨季の水位変動を考慮した潮位推算を可能とした.
抄録全体を表示
-
堀田 正資, 山城 徹, 加古 真一郎, 城本 一義
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_755-I_760
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
潮流発電に関連して現地観測と数値計算を行い,鹿児島県長島周辺海域における潮流パワーポテンシャルを算定した.その結果,長島海峡では潮流パワーが2.2 kW/m
2,黒之瀬戸では6.0 kW/m
2の地点が存在することを明らかにした.さらに,潮流発電装置を20機設置した場合の数値実験を行うと,1日あたりの抽出可能エネルギーが長島海峡では447 MW,黒之瀬戸では540 MWあること,発電装置の設置によって長島海峡では6 cm/s,黒之瀬戸では11cm/sの流速減少が発生することが示唆された.
抄録全体を表示
-
吉岡 健, 志水 伸二, 川口 浩二, 永井 紀彦, 仲井 圭二
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_761-I_766
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
北九州市沖海域では本年3月まで,洋上風力発電設備及び観測システムの共同実証研究が実施された.本稿では,洋上風車支持構造物の耐波・耐風設計に重要となる極値波浪及び極値風条件について,国際規格や我が国の港湾基準との整合を図りつつ,合理的な設定方法を検討する.特に既往擾乱を対象とした気象・波浪シミュレーションにより,両作用の同時生起性を評価した.その結果,相関係数は高くなく,設計作用として50年再現期待値どうしを組合せることは十分保守側であることがわかった.
抄録全体を表示
-
吉岡 健, 志水 伸二, 川口 浩二, 小野 信幸, 仲井 圭二, 永井 紀彦
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_767-I_772
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
北九州市沖海域では,洋上風力発電設備の合理的な計画・設計に資することを目的とした実証研究が進められている.同海域の洋上風況観測塔においては,風況,波浪,流況の連続観測が2012年より実施され,様々な海象条件でのデータが蓄積されてきた.対象海域周辺は小島や浅瀬が点在する複雑な地形条件にあり,高波浪時には強風による吹送流や波による海浜流,関門海峡へ出入りする強い潮流等が合成した複雑な流れが形成されている.本研究では,複数要因が混在した流れ場の全体像を把握するため,強風・高波浪時の流況の再現計算モデルを構築し,外力要因をそれぞれゼロとした場合の数値実験から,潮流・波浪流と吹送流成分の寄与について検討した.
抄録全体を表示
-
石垣 衛, 三好 順也
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_773-I_778
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
再生可能エネルギーを用いた発電技術の需要が高まる中,海洋エネルギー発電技術の実現が望まれている.特に,瀬戸内海は周期的で予測可能な潮流が卓越しており,既存の橋脚を活用した潮流発電が可能となれば発電施設等の建設コストの削減が期待できる.そこで,橋脚利用式潮流発電技術の開発を目的に,橋脚近傍における潮流観測を実施し,発電施設仕様を想定することで取得可能なエネルギー量の算定を行った.本研究では,大畠瀬戸に架かる大島大橋第4橋脚を対象とした観測の結果,最大発電出力は約120.0kWの値を示し,1日の最大発電量は約330.0kWh/日の値を得た.この値は当初見込みの約5分の1であり,その主な要因として,下げ潮時に上流側の橋脚で発生する後流の影響により,発電装置設置場所における発電量が小さくなることが示唆された.この結果より,橋脚利用式潮流発電では,橋脚の後流の影響を回避できる発電装置の最適設置位置を選定し,発電効率上げることが課題として示された.
抄録全体を表示
-
浅田 潤一郎, 平山 隆幸, 河村 裕之, 山本 浩喜, 中村 孝幸
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_779-I_784
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究では,振動水柱(OWC)型波力発電装置を想定し,透過性構造を有する直立消波工背後に付加された遊水室内の波高増幅特性と消波効果について,実験と理論の両面から検討した.直立消波工背後に付加した遊水室は,反射波の低減や遊水室内での波高増幅に効果的であり,特にOWC型の波力発電にも利用可能であることが判明した.反射波の低減と遊水室での波高増幅の両方を支配する無次元パラメータについても検討し,それが全堤体幅と波長との比であることが明らかになった.
抄録全体を表示
-
野中 浩一, 山口 正隆, 畑田 佳男, 井内 国光, 宇都宮 好博, 日野 幹雄
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_785-I_790
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
気象庁MSM(Meso Scale Model)風資料と高地形解像度対応の1点浅海モデルを組み合わせた長期波浪推算システムを東シナ海沿岸と太平洋岸の24波浪観測地点における12年間の波浪推算に適用し,波浪の長期特性(波候)に関する観測結果との比較から次の成果を得た.1)本システムは対象地点の波候に対してかなり良好な再現性を示す.しかし,多様な気象条件のもとでの波浪を対象とするため,波高に関して相関係数の平均値は0.85であり,日本海沿岸の場合と比べて約0.1小さい.2)本システムの精度は東シナ海沿岸地点,ついで太平洋岸西側や北側の地点で高く,中部と東側の地点でやや低い.3)本システムはECMWFなどによる風解析値を入力条件とする従来のシステムと比べ,波高に関して0.05大きい相関係数を与えるが,周期では0.01上まわる程度である.
抄録全体を表示
-
小泉 勝彦, 山下 学, 大村 厚夫, 窪田 和彦
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_791-I_796
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
太平洋に面した高知港三里地区の長周期波対策として,四国地方整備局は2010年度より「高知港長周期波予測システム」を運用している.本システムは長周期波高が有義波高と有義波周期の積に比例するという統計的な関係式を用いて長周期波高を予測しているため,長周期波のみが発達するような状況では予測することができないという問題が指摘されている.一方,本システムの運用開始とほぼ同時期に,三里地区の護岸に超音波式の波高計が設置された.本システムを構築した当時は波高計が港外にしかなく,港内の予測結果を観測値と比較検証することができなかったが,現在はそれが可能となっている.そこで,この観測データも使用して予測の妥当性を検証するとともに,その結果に基づいて本システムの改良を行った.
抄録全体を表示
-
小泉 勝彦, 杉浦 悠介, 菊地 洋二, 土田 真二, 大竹 祐一郎, 山口 将人, 米山 治男, 平石 哲也
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_797-I_802
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
高知港三里地区岸壁(-12m)は,防波堤整備の完了前に供用開始した施設であり,船舶係留中に長周期波によるものと思われる荷役障害が発生している.このため,防波堤完成までの暫定的な対策として,船舶の係留系とは別に,陸上側に岸壁に高強度の係留索(テトロンダイニーマ索)を擁したウィンチを装備する「長周期動揺低減システム」(以下,「本システム」という)を設置し,実証試験を行った.本システムは,係留系の固有周期を長周期波の卓越周期からずらして共振を抑制するものである.本論文は,平成26~27年度にかけて5回にわたり現地岸壁に係留荷役中の船舶に対して行った実証試験の結果を報告するとともに,その結果から本システムの効果を推定することを目的としたものである.
抄録全体を表示
-
米山 治男, 峯村 浩治, 森谷 拓実
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_803-I_808
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
港湾内に係留される船舶の荷役限界波高の算定では,通常は係留船舶の動揺6成分に対する荷役許容動揺量として港内長周期波影響評価マニュアルによる提案値を採用している.しかし,海洋上の離島港湾のように海象条件が厳しく一般的な係留方法や荷役方式を採用していない係留施設では,荷役限界波高の算定において,現地での荷役作業時の判断基準を参考にして荷役許容動揺量を設定するとともに,船舶の動揺量に加えて係留索の張力等も考慮する必要があると考えられる.そこで,本研究では,沖縄本島の東方に位置する南北大東島の港湾を対象として,係留船舶の動揺計算手法を用いて,外洋波浪の影響を直接受ける係留施設における荷役係留時の船舶の荷役限界波高の算定方法について検討した.
抄録全体を表示
-
井山 繁, 西岡 悟史, 宮田 正史, 米山 治男, 辰巳 大介, 木原 弘一
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_809-I_814
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
船舶が係留施設へ接岸または離岸する際の繋離船作業(船舶と陸上作業員の間で係留ロープを受け渡す作業)は港湾利用を支える基礎的な活動であるが,何らかの要因により係留ロープの切断事故が発生すると,繋離船作業等に重大な危険を及ぼす懸念がある.また,繋離船作業のうち陸上作業員が係留ロープを係船柱に掛け外しする作業では,それらの作業が安全かつ効率的に行われるように改善を図っていくことは重要な課題である.本研究は,繋離船作業の安全性の向上を図ることを目的として,過去の繋離船作業における係留ロープの破断事故の整理・分析を行うとともに,陸上作業員からのヒアリング等を踏まえて,繋離船作業の安全性に影響の大きい係留施設の附帯設備(係船柱,防舷材,車止め等)の設計の際,配慮すべき事項について検討したものである.
抄録全体を表示
-
加藤 慎吾, 有田 守
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_815-I_820
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
アマモ場は豊かな生態系を形成する機能を有しており多種多様な生物が生息する.このアマモ場は高度経済成長期に行われた埋め立て工事により数を減らし,現在はNPO法人や地方自治体,企業により造成活動が行われている.アマモ場は藻場面積や株密度から造成事業を評価するのが一般的であるがアマモ場の機能を考慮した場合,生物群集の多様性から健全度を評価ことが必要ではないかと考えられる.よって,本研究では造成したアマモ場に対して,生物多様性の観点から評価することを最終目的とし,本稿では自生するアマモ場に対して行われた葉上生物とベントスの生物調査の結果を既存の様々な生物多様性を評価する手法を適応し,それらの指数による傾向の違いを検証することを目的とする.
抄録全体を表示
-
中山 恵介, 中西 佑太郎, 中川 康之, 茂木 博匡, 田多 一史, 桑江 朝比呂
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_821-I_826
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
アマモ場ではアマモの成長に伴いCO
2が吸収されつつ,同時に地上部や地下部のアマモ生物体の更新により,生物体の一部が海底に炭素ストックとして貯留される.そのため,CO
2の吸収源となり得るアマモ場等のブルーカーボン生態系が注目されるようになってきた.しかしながら,アマモ場内において流れの影響を考慮しつつCO
2の移流拡散を高精度に検討することは困難であった.そこで本研究では,流れ場との連成に注目し,アマモの移動速度を未知数としたアマモモデルを提案し,その再現性の検討を行った.その結果,一様流を与えた室内実験との比較により,抗力係数やヤング係数を決定することができ,その値を利用して振動流場における再現を行い,良好な再現結果を得ることが出来た.
抄録全体を表示
-
澤井 泰基
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_827-I_832
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
造成したアマモ場をモニタリングにより事業評価し,その結果を後々の造成活動に反映していくことは重要である.アマモ場のモニタリング手法は,コドラード法による調査手法が用いられるが広大な群落をモニタリングするには労力が大きい.これに対して,衛星リモートセンシング,航空機,バルーンやドローンによる空撮画像から藻場を分類する研究が取り組まれている.RGB画像からアマモ場を判別する際には教師付分類による閾値法が用いられるが,計測者の経験に依存する部分が大きく,藻場抽出に時間的な労力を要する.本研究ではドローンによる空撮画像からのアマモ場抽出について従来の手法で問題となっていた解析時間と人為的な誤差を,領域ベースのSnake法を用いることで短時間かつ人為的誤差の少ない高精度な解析手法を検討することを目的とする.
抄録全体を表示
-
武村 武, 落合 麻希子, 内田 裕貴
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_833-I_838
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
衛星データによるアオサの繁茂状況把握を目的に,谷津干潟にてUAVと衛星画像を用いて検討を行った.2016年10月27日と11月4日にUAVにより撮影された画像より,アオサの被度を算出した.その結果,両日ともアオサの被度は80%程度であった.また,アオサの分光反射特性を検討した結果,525nm,725nm付近に特徴が見られた.そこで,衛星データから算出したNDVIを検討した結果,10月27日では,すべての算出地点でプラス値を示したが,11月4日では90%以上の範囲でマイナス値を示す事となった.これらの差異は,水深との相関が高い事が確認され,その影響を考慮する事により衛星データによるアオサ被度の把握が可能であることが示唆された.
抄録全体を表示
-
上月 康則, 平川 倫, 竹山 佳奈, 松重 摩耶, 西上 広貴, 岩見 和樹, 山中 亮一, 宮本 一之
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_839-I_844
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
富栄養化した汽水域では,底層水の貧酸素化が顕著であり,そのため底生魚が表層に生息している様子が観察される.特に直立護岸で形成された都市近傍の運河域では,表層に移動した底生魚が身を隠す場所に乏しく,底生魚の生存可能性が低い条件となっている.生物共生護岸は,このような問題の解決方法の一つであるが,その設計のためには対象種の水質応答特性を十分に把握しておく必要がある.そこで本研究では,代表種としてチチブを選択し,鉛直方向に水質調整が可能な水槽を用いて実験を行い,チチブの水質応答として特に溶存酸素に着目して解析を行った.その結果,チチブは他の魚種と比較して,貧酸素耐性の高い魚種であることがわかった.また,忌避行動実験の結果から,チチブはDO1.0mg/L以下で表層付近に忌避する行動を示した.
抄録全体を表示
-
竹山 佳奈, 山中 亮一, 河野 博, 岩本 裕之, 宮本 一之, 平川 倫, 上月 康則
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_845-I_850
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
都市部運河域は直立護岸に囲まれた半閉鎖性水域で,底層が貧酸素となる水域が多い.一方で,運河域は静穏な汽水域環境として,魚類にとって重要な稚魚の成育場や再生産の場として機能する可能性がある.そこで,運河における魚類を対象とした生物共生護岸の効果を明らかにするために,尼崎運河で試験を実施した.直立護岸前面の表層と底層に簡易的な魚類の生息場を設置し,魚類の出現状況を毎月調査した.その結果,底層が貧酸素となる期間は,表層に海水魚の幼魚や底生魚も含めた魚類が出現し,底層は無生物状態だった.貧酸素が解消されると,底層で多くの魚類が出現した.魚類を対象とした生物共生護岸は,夏季の貧酸素時の避難場所として機能し,簡易的な構造でも海水魚や河口魚の生息場として機能することが明らかとなった.
抄録全体を表示
-
渡辺 雅子, 上月 康則, 岡田 直也, 玉井 勇佑, 松島 輝将, 山中 亮一
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_851-I_856
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究は,希少種ルイスハンミョウの生息環境を代償するため造成された沖洲人工海浜において,生息地創出条件を明らかにすることを目的としている.そこで,徳島県を含む4県において幼虫の生息標高の調査と,徳島県吉野川河口干潟の成虫個体数と幼虫にとって好適である「地盤高が安定している場所」の面積との関係を調査した.その結果,幼虫が生息する標高は地域によって異なるが,その制限要因として冠水時間が関係していると考えられた.また,「幼虫にとって好適な場」の面積が大きい年に,成虫が多く確認されることが分かった.以上のことから,ルイスハンミョウの生息地の創出条件として,幼虫にとって好適な場所を広く確保することを提案する.
抄録全体を表示
-
東 和之, 大田 直友, 橋本 温, 大谷 壮介, 上月 康則
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_857-I_862
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
徳島市沖洲地区にある人工海浜は,埋め立てられる既存海浜の代償措置として造成されたが,模倣した既存海浜と比較して底生生物量が極端に少ない状況が続いている.筆者らはその原因として「沈み込み現象」を提案し,その発生原因がニホンスナモグリの生物撹拌によることを明らかにした.本研究ではニホンスナモグリが海浜生態系に与える影響を明らかにするために野外調査および実験を行った.その結果ニホンスナモグリはその生物撹拌によって,干潟表面を凹凸化し底質粒度を粗粒化することで底質環境を改変すること,それに伴い底生微細藻類量が減少することを示した.ニホンスナモグリを排除すると底生生物相が貧弱になるが,ニホンスナモグリが優占する場ではトリウミアカイソモドキなどニホンスナモグリの巣穴を利用する特定の種が数多く確認された.
抄録全体を表示
-
畠 俊郎, 水谷 崇亮, 渡部 要一
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_863-I_868
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
チュニジア国唯一の世界自然遺産であるイシュケウル湖では,流入河川上流域に建設された貯水池(ダム)により,淡水および濁質の湖内への流入が抑制され,結果として湖底浸食や湖水の塩分濃度上昇などの環境悪化が進行する状態となった.これにより,渡り鳥の営巣地としての機能が低下して危機遺産リストへ登録された.その後の対策でリストからは削除されたものの,更なる環境修復が課題とされている.本論文では,この環境悪化要因の一つと考えられる湖底浸食を抑制する技術として微生物固化技術に着目し,微生物機能を活用することで湖底表層を底生生物の生育に悪影響を与えない範囲で固化し,風波などによる浸食抑制を通じて渡り鳥の営巣地としての機能回復を図る新しい環境復元技術の適用性を室内試験により検討した結果を報告する.
抄録全体を表示
-
梶原 瑠美子, 菅 夏海, 小森田 智大, 柴沼 成一郎, 山田 俊郎, 大橋 正臣, 門谷 茂
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_869-I_874
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
本研究は,持続可能な沿岸浅海域利用のために,様々な環境因子とともに炭素・窒素安定同位体比を用い,人的影響が限られた淡水影響強度(河川流入の有無)が異なり,富栄養状態にはない2つの汽水湖を比較することにより,河川流入が沿岸浅海域の低次生物生産過程に与える影響を評価することを目的とした.調査の結果,両湖とも湖内での基礎生産が重要であり,淡水影響が弱い火散布沼では間隙水中栄養塩,淡水影響が強い厚岸湖では間隙水と水柱の栄養塩を利用する底生基礎生産者が卓越することが示された.また,カキやアサリは双方の湖沼で卓越した底生微細藻類を摂餌していた.そのため,淡水の影響度の強弱に応じて,底生生態系の中でも異なる栄養塩源を有する低次生物生産過程が発達することが示唆された.
抄録全体を表示
-
山木 克則, 新保 裕美, 田中 昌宏
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_875-I_880
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
那覇港港内側でのサンゴ群集の創生を目的に,波や流れなどの物理環境が異なる2地点に格子状構造の人工基盤「コーラルネット」を設置した.コーラルネットおよびコンクリート製ブロック上で成育するサンゴ群集の生残および被度について5年間の長期モニタリングを実施し,環境要因との関係について分析した.コーラルネットに着生したサンゴ群集は,ミドリイシ属,ハナヤサイサンゴ属が優占すると共に被度は最大45%となった。また,ブロック上ではマット状に生育する藻類に細粒分が堆積した影響によりサンゴ幼生の着生阻害が認められた.
抄録全体を表示
-
村上 智一, 河野 裕美, 中村 雅子, 玉村 直也, 水谷 晃, 下川 信也
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_881-I_886
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
2016年西表島網取湾の礁縁から水深40 mに至る礁斜面においてサンゴの白化の状況を調査した.また,白化に関わる水温などの物理環境の観測も実施した.これらによって得られた主要な結果は以下である.
(1) 全サンゴの白化率は,水深20 m以浅において50%以上と高く,特に水深15 mでは最大となる87%を記録した.(2) 卓状サンゴの白化率は,極めて高く91%であった.(3) 枝状サンゴの白化率は,深部の水深30 mでも49%を示した.(4) 2016年7月24日以降に白化現象が生じた.(5) 2016年は,7月および8月に網取湾に接近した大きな台風が無かった.そのため,8月9日~8月29日の間に30℃を超える高水温が継続して発生し,これがサンゴの白化を進行させた.
抄録全体を表示
-
村上 和仁, 吾妻 咲季, 小浜 暁子
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_887-I_892
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
好汚濁性種であるアカムシユスリカ幼虫(
Propsilocerus akamusi)を用いて地域未利用資源としての貝殻散布に伴う生態系影響を評価し,最適散布量および底質改善材としての貝殻の有効性について検討を行った.アカムシユスリカの生存率は,未焼成の貝殻散布では徐々に減少するのものの生存率は50%以上であったが,焼成系では100g/m
2以上散布系から生存率が50%以下になった.LC
50(半数致死濃度)は,未焼成系;199g/m
2,焼成系;97g/m
2となり,焼成処理系は未焼成系の0.5倍の散布量で同等の効果を示すことが示された.生態系保全と水質改善の両立が可能である地域未利用資源としての貝殻の最適散布量は,焼成処理100g/m
2散布系と評価された.
抄録全体を表示
-
高木 秀蔵, 近藤 正美, 林 浩志, 藤澤 真也, 加村 聡
2017 年 73 巻 2 号 p.
I_893-I_898
発行日: 2017年
公開日: 2017/08/22
ジャーナル
フリー
備讃瀬戸西部の閉鎖性が高く底質のシルト化が進んだ港湾域に全形のカキ殻を敷設し,敷設区における生物相の変化を調べた.敷設2ヶ月後から敷設区の生物は増加しはじめ,1年半後の生物の種類数は117種類,個体数は4,700 inds/m
2,湿重量は487.3 g/m
2となり,それぞれ対照区の2.2倍,2.3倍,13.2倍となった.敷設区全体で,生物によって無機化される炭素量は114.2 kgC/year/1,000 m
2であった.敷設区のカキ殻は,敷設後2年を経過しても埋没することなく,表面が露出していた.カキ殻の敷設により,生物の多様性と現存量が増加するとともに,これらの生物によって流入してくる有機物が無機化され,敷設場所が維持されている可能性が示された.
抄録全体を表示