日本食品工学会誌
Online ISSN : 1884-5924
Print ISSN : 1345-7942
18 巻 , 1 号
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解説
  • 熊谷 仁
    2017 年 18 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    ジャーナル フリー

    食品の物性と水に関するいくつかのテーマに関して概説した.液状食品の凍結乾燥速度は,試料温度が凍結物中のCAS(濃厚非晶質溶液)部のガラス転移温度であるTg'以下の温度の場合には,修正URIF(昇華面均一後退)モデルで記述できる.凍結乾燥中に試料温度がTg'以上になると,CASがラバー状態になる.ラバー状態のCASはコラプス(collapse)を起こして試料中の水蒸気の通過経路をふさぎ,試料からの乾燥がしにくくなる.水分収着等温線は,食品中の水と固体成分の相互作用に関する情報を与える.水分収着等温線を溶液熱力学を用いて解析することにより,水と固体両方の熱力学的パラメータが求められる.積算ギブス自由エネルギー変化ΔGsは熱力学的観点から,固体と水との相互作用の程度評価するのに適するパラメータである.水分収着等温線の熱力学的解析によって得られるパラメータと水分収着に伴うガラス転移温度(Tg)の低下には関係がみられる.水分収着等温線から得られる熱力学的パラメータΔGasTgの低下の程度 ΔTg (≡TgTg0; Tg0 は乾燥試料のTg)と高い相関を示した.言い換えれば,水のガラス状食品に対する可塑剤としての効果がΔGasにより評価しうることになる.誘電緩和法から求められる緩和時間τも,ガラス状食品に対する水の可塑化効果を評価するのに有用と考えられる.パーコレーションモデルは,ゾル-ゲル転移点近傍における力学物性の挙動を高分子の分散構造を考慮しつつ理解するうえで有用である.超音波パルスドプラー法から求められるヒトの咽頭部最大流速Vmaxは,嚥下困難者にとっての誤嚥のリスクのよい指標と考えられる.ゲル化剤のVmaxは,濃度の増加に伴って減少したが,その減少はゾル-ゲル転移点以上の濃度領域でゆるやかであった.

原著論文
  • 神山 伸, 櫛原 詩野, 本間 千裕, 萩原 真, 曽根 英行
    2017 年 18 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー
    雪室貯蔵は雪を冷却源として食品の保存に用いる貯蔵方法であり,豪雪地域を中心に古くから行われてきた.近年では二酸化炭素を排出しない冷却方法として見直されつつあり,またその優れた品質保持効果と食味向上効果が注目されている.本研究では,製粉直後の小麦粉(強力粉と全粒粉)を夏季の3ヶ月間常温,冷蔵室,雪室に貯蔵した場合の品質の状態と製パン性を比較検討した.その結果,常温貯蔵に比べて冷蔵室貯蔵と雪室貯蔵でデンプンの分解,遊離脂肪酸の生成,脂質の過酸化が抑えられており,グルテン形成能と製パン性が向上していた。強力粉と全粒粉で作成した食パンの食味については,常温貯蔵の小麦粉で作成した食パンに比べ,雪室貯蔵のパンが有意に好まれていた。 これらの結果から,低温・低湿度で保存することが推奨されていた小麦の貯蔵においても,雪室貯蔵が有効である可能性が示された。
  • NGUYEN QUANG Thinh, 岩村 幸治, SHRESTHA Rajesh, 杉村 延広
    2017 年 18 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/08
    ジャーナル フリー

    野菜などの農産物は,収穫後も呼吸などの生命活動が続いているため糖度やタンパク質が消費される.このような農産物の長期保存を実現するためには,収穫直後に適切な冷蔵設備および保存条件を利用することが重要である.野菜などの生鮮食品のロスは,収穫,貯蔵,加工,包装,輸送,販売,消費までを含む全体プロセスで,生産量の25~30%であると推計されている.このロスを削減するには,長期保存システムの確立が求められる.

    大阪府立大学の植物工場は毎日5,000株のレタスを出荷することができるが,通常の冷蔵庫を利用しているため,1週間程度しか保存できない.このため,需要の動向に柔軟に対応するには収穫された野菜を長期的に保存できるシステムが求められている.

    過冷却現象(Supercooling)は,物質の相変化が生じる温度以下でもその状態が変化しない現象である.過冷却は,Supercooled,Undercooling,Subcooledあるいは氷温とよばれている.これまでの研究では,露地栽培野菜を含む複数の食品の保存期間を延ばすことができることを示している.

    本研究では,安定した条件で栽培される植物工場のレタスについて,過冷却保存で重要となる凝固温度および過冷却温度領域を実験的に求めた.

    過冷却保存では,冷却速度および冷気の流れによりレタスが凍結することがあるため,適切な冷却速度および包装方法が必要となる.そのため,植物工場のレタスを3つの包装方法(包装なし,1重包装,2重包装)で冷却実験を行い,冷却速度およびそのレタスの凍結状況の観点から,2重包装が有効であることを示した.

    過冷却プロセスの有効性を検証するために,2重包装で一般の冷蔵保存および過冷却保存を3週間で実施し,1週間ごとにレタスの重量および糖度を測定した.また,保存前と3週間後の生菌数を測定した.その結果,過冷却状態で保存されたレタスは重量減少率が低く,糖度がほぼ減少していないことを示した.

    また,一般の冷蔵保存で保存されたレタスは,生菌数が103.4[CFU/g]から106.2[CFU/g] に増加し,英国の食品安全基準を超えたのに対し,過冷却保存で保存されたレタスの生菌数の増加は,105.1[CFU/g]にとどまった.これにより,過冷却保存は,レタスの生命活動および生菌の増殖を抑制することで,植物工場で生産された高品質なレタスを長期的に保存することができることを示した.

  • ムエン ティ バアン アン, 吉井 英文
    2017 年 18 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    揮発性硫黄化合物は,食品の香を考える上で非常に重要である.にんにく中のアリルスルフィドを代表とする揮発性の硫黄化合物は,食品のおいしさに関連して多くの研究者によって検討されており,多くの官能検査を伴った数多くの報告がなされている.アリルスルフィドは,非常に不安定なフレーバーであり,その加工食品への応用は難しいのが現状である.そこで,アリルスルフィドの粉末化について,環状多糖シクロデキストリン(CD)を用いる方法について検討した.具体的には,中鎖脂肪酸オイル(MCTオイル)中に溶解させた数千ppmのアリルスルフィドとα-, β-,およびγ-CD溶液を室温で8時間混合攪拌後,噴霧乾燥することにより,アリルスルフィド包接CD粉末を作製した.このときの噴霧条件がアリルスルフィド包接CD粉末の特質に及ぼす影響について検討した.

    噴霧乾燥入口空気温度200℃で作製したα-CD,β-CDおよびγ-CD粉末には,0.78,0.17および0.63,0.78 mg/g-powderのアリルスルフィドを含有する粉末が得られた.粉末中のアリルスルフィド含量は,供給溶液中のアリルスルフィド濃度にほぼ比例して増加した.また,粉末中のMCT油量の増加によるアリルスルフィド含有量が増加した.これは,MCTオイル中のアリルスルフィドが選択的に包接されていることを示唆している.噴霧乾燥入口空気温度はCD粉末中のアリルスルフィド量に影響を与えなかった. CD粉末中のアリルスルフィド量は,CDの空孔径とCDの溶解度から考えられる被膜効果に依存すると考えられた.

  • 宮脇 長人, 表 千晶, 小栁 喬, 笹木 哲也, 武 春美, 松田 章, 田所 佳奈, 三輪 章志, 北野 滋
    2017 年 18 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/08
    ジャーナル フリー
    循環流壁面冷却型界面前進凍結濃縮装置を用いてブルーベリー果汁の凍結濃縮を行い、糖度を11.2Brixから27.2Brixに濃縮し、有機酸分布、香気成分分布について、濃縮前後の分布プロフィールにほとんど変化のない高品質濃縮が可能であることがわかった。凍結濃縮果汁を発酵させてブルーベリーワインを試作した結果、アルコール濃度は11.1vol-%となり、補糖を必要とせず、十分に高いアルコール濃度が得られることがわかった。ブルーベリーワインの有機酸分布は、発酵により一部の有機酸が増加、香気成分分析においては、発酵により原果汁香気成分のいくつかは消失し、これに代って、発酵生産物が大きく増大したものの、全体としてはブルーベリー香気成分を十分保持しており、本方法によりこれまでに無い、高成分濃度で香気豊富な新しいタイプのブルーベリーワイン製造への可能性が示された。
  • 高重 至成, ヘルマワン アリアント, 四日 洋和, 安達 修二, 吉井 英文
    2017 年 18 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/06
    ジャーナル フリー

    フレーバーは食品のおいしさに深くかかわっているため,近年,種々の粉末香料が用いられている.噴霧乾燥による粉末香料の作製において,噴霧乾燥時のフレーバーおよび,粉末回収率に加え,粉末貯蔵時のフレーバーの酸化安定性や粉末からのフレーバー徐放性などが重要となる.フレーバーの徐放挙動は,保存環境の温度,湿度に大きく依存することがわかっている.また,粉末の賦形剤によっても異なると考えられているが詳細な研究は行われていない.よって,本研究では乳化d-リモネン噴霧乾燥粉末中のd-リモネンの徐放挙動に及ぼす賦形剤の影響を明らかにすることを目的として,ショ糖(Suc),α-ラクトース(Lac),マルトデキストリン(MD,Dextrose Equivalent(DE)=25,19)を賦形剤として用いて乳化d-リモネン噴霧乾燥粉末を作製し,d-リモネンの徐放挙動を恒温恒湿条件下で検討した.

    蒸留水に賦形剤としてSuc,Lac,MD(DE=25),MD(DE=19),乳化剤として乳蛋白質加水分解物(エマルアップ,森永乳業),抗酸化剤としてアスコルビン酸ナトリウムを加えて溶解した後,d-リモネンと中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(アクターM-2,理研ビタミン)を添加し,乳化溶液を攪拌作製した.乳化液を,噴霧乾燥機(L-8型,大川原化工機製)を用いて乾燥し,d-リモネン噴霧乾燥粉末を調製した.作製した粉末は,目開き篩径106 μmと150μmで粉末を集め,徐放試験に供した.ガラス製試料瓶に噴霧乾燥粉末を約0.1 g入れ,各種飽和塩によって50℃の相対湿度(RH)44,58,68,75,83%に調整したデシケータ内に静置した.所定時間毎に試料を採取し,粉末中のd-リモネン量をガスクロマトグラフィ(GC-2014,島津製作所)で測定した.

    粉末からのd-リモネンの徐放機構が拡散挙動であるとしてAvrami式の形状係数n=0.56の値を用いて徐放速度を相関した。賦形剤にMD(DE=25,19)を用いた場合,湿度が大きくなるにつれて徐放速度も大きくなり,湿度の増大と徐放速度には相関がみられた.賦形剤にLacを用いた場合,44% RHと83% RHでは急激に徐放し,8日後では8割の徐放が観察されたのに対し,58,68,75% RHではおよそ半分の徐放にとどまり,湿度と徐放速度には相関がみられなかった.同様に,賦形剤にSucを用いた場合も,湿度と徐放速度の相関がみられなかった.これらd-リモネンの徐放速度は賦形剤の種類に大きく依存した.

  • 鈴木 真澄, 岩瀬 瞬, 小池 由隆, 佐伯 暢人
    2017 年 18 巻 1 号 p. 61-69
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    ジャーナル フリー
    乾燥食材に混入した髪の毛やプラスチック片などの小さな異物を除去することを目的として,新たな静電選別装置を開発した.選別装置はコロナ電極を有する投入部と傾斜して設置された回転ドラムから構成されている.ドラム内には電界が形成されており,投入部で帯電した選別対象にはドラム内面に付着しようとする静電気力が働く.髪の毛やプラスチック片は乾燥食材に比べて軽いため,ドラム内に付着し,集塵機によって除去される.一方,乾燥食材は重いため,ドラムからすべり落ち,回収される仕組みである.本装置の大きな特徴は乾燥食材と異物が回転するドラム内で選別されるため,異物と乾燥食材の位置関係に関わらず,異物の除去が可能となる点にある.実験では選別対象として,食材に乾燥レタスを用い,異物にはプラスチック片や髪の毛を用いた.選別装置の各操作変数が選別性能に与える影響について詳細に検討した結果,乾燥レタスから髪の毛やプラスチック片を確実に除去できることが確認された.
技術論文
  • 堀江 祐範, 杉野 紗貴子, 藤本 博雄, 山辺 啓三
    2017 年 18 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    [早期公開] 公開日: 2017/03/08
    ジャーナル フリー
    腸内環境の改善には,乳酸菌をはじめとしたプロバイオティクスの摂取が効果的である.一般に整腸作用や有害菌の増殖抑制には,摂取した菌が生存率を保った状態で腸内に到達することが重要であるが,乳酸菌が必ずしも胃での生残性が高いとは限らず,せっかくよい効果があっても,胃で死滅しては意味がなくなってしまう.一方,こんにゃくは多糖類の繊維からなる難消化性の食品で,強アルカリ性の食品であることから,乳酸菌をこんにゃくに付着させ,一緒に摂取することで生残性を向上させることができないかと考えた.製造時に発泡させることで表面積を大きくした球状のこんにゃくに,Lactobacillus crispatusおよびL.plantarumを取り込み,pH 1.2の人工胃液中で保持した.こんにゃくがない場合には,これらの乳酸菌は30分で死滅したが,こんにゃくと一緒に保持することで,60分及び120分後まで生存が認められた.本技術により,乳酸菌をこんにゃくと一緒に摂取することで,生存率を保ったまま腸管に届けられる可能性が示された.
ノート
  • 柴田(石渡) 奈緒美, 渡邊 桃子, 福岡 美香, 酒井 昇
    2017 年 18 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2017/03/29
    ジャーナル フリー

    This study focused on the processed food products, using raw okara (a food product developed to mitigate problems associated with mass disposal of soy waste). To examine the heating condition effectively, we simulated food qualities during heating. Color change was treated as a first-order reaction, and kinetic parameters (Ea = 61.6 kJ/mol,Z = 4.93×105 1/s) were calculated by Golden section method. Moisture content was calculated via mass transfer analysis, based on Fick’s laws of diffusion. Our simulation predicted values for color, moisture content, water activity, and texture that were in good agreement with experimental values. We determined that, to achieve an equivalent to a commercial product, it was suggested that about 1/2 could shorten heating time by changing surface temperature from 80℃ to 120℃. Thus, this simulation technique can contribute to the shortening of heating times for processed food products.

 
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