知識社会への移行とともに,ICT製品の高機能化,製品ライフサイクルの短縮化が進んでいる。これは,製品を提供する企業にとって開発投資負担の劇的な増大をもたらす。そのため,企業の枠を超えたコラボレーションによる技術仕様の標準化と,それによるイノベーションの重要性が高まっている。現代社会におけるイノベーションのインフラとしてデジュリ標準は非常に重要な役割をしているにもかかわらず,標準化に時間を要するなど問題もある。特に互換性が重要であるものの,技術革新の速いICT分野においては,デジュリ標準と企業の要求とのギャップが生じている。このような状況のもと,標準化の問題点を解決すべくコンソーシアムによる「自主的でオープンな標準化」が最近増加しつつある。自主的でオープンな標準化を行うコンソーシアムは,協業を組織化して,標準を開発し,標準を市場に普及させていく必要がある。そこで,本研究ではコンソーシアムによる標準化のマネジメントを調査,分析し,効果的なマネジメントを提案する。企業向けの基盤ソフトウェアメーカーを調査対象業界としてとりあげ,コンソーシアムによる標準化の現状を調査した。その過程において,まず先行研究より,標準化において,「標準化のライフサイクル」が存在することを見出し,それを「萌芽期」,「開発期」,「普及期」の3つのライフステージに分類した。次に,コンソーシアムのマネジメントの実態を調査し,結果を標準化のライフサイクルの観点からまとめた。そして,自主的でオープンな標準化を行うためのコンソーシアムを設計・運営するために求められる,効果的で,影響力を持つためのマネジメント要因を分析し抽出した。
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