近年, 欧州連合国の幾つかの大学や研究機関では研究資金配分に「引用法」や「インパクト・ファクター」といった科学活動を測る科学技術指標が機械的に導入され, 政府の資金配分にまで利用される傾向が強まっている。しかし, 一方では, このような科学技術活動を表す指標を使った評価による弊害も多く, ScienceやNatureなどの学術雑誌には定期的に被害者の苦情が掲載され, 問題の深さを表している。日本でも, 2000年4月に大学評価・学位授与機構が発足するなど, 評価に関する問題が話題を集めているが, 研究機関や研究者の評価が具体化すれば, 1国の科学技術活動状況や研究機関の業績などを表すための指標が, 個人の実績評価や研究者雇用基準にも使われることが予想される。そうなると, 引用法を正しく使うことは益々必要となり, 評価をする側はもちろんのこと, 評価をされる側も引用法を用いた指標について正しい理解を深めることが重要となる。本論文では, 「引用法」やそれを基に構築された, ジャーナル・インパクト・ファクター(ある学術雑誌に最近載った論文がどれくらい引用されたかを示し学術雑誌の与えたインパクトを測る指標)の使用に際し, 特に注意を要する事項を上げ, なぜこれらの指標が個人の研究実績の評価に使われると危険なのかを考察し, 引用法の理解に役立てたい。
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