製品開発は,企業にとって最も重要なイノベーションである。そのため,各産業の製品開発にどのような特徴があるのかを理解することは,経営戦略上きわめて重要である。本研究は,IT産業において,他の産業とは異なり,新しいイノベーションパターンが起きていることを明らかにするものである。既存研究において,ハイテク産業の製品開発の特徴として,「不確実性」と「複雑性」が指摘されていたが,定量的分析によってこれらを実証した研究はほとんどない。不確実性は,マーケットシェアの変化とイノベーションサイクルの組み合わせによって決定づけられ,複雑性は,水平分業と垂直統合のような問題解決力のタイプの混合の度合いによって決定づけられると考えられる。そこで,本研究では,これらの要因を定量分析することによって,自動車産業に比べて,IT産業の製品開発の特徴として,不確実性及び複雑性が高いことを実証した。これらの発見は,IT関連産業におけるマネジメント手法に,新しい知見を提示するものである。
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