研究 技術 計画
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21 巻, 3_4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 山口 佳和
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 228-242
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,産総研の技術的研究支援について分析し,そのあり方を検討する。技術的研究支援に対するニーズは,支援項目について分散化して研究分野による違いが拡大し,支援項目としてはより高度なものの必要性が高まりつつある。支援の調達方法としては,(a)研究ユニット内支援者雇用,(b)アウトソーシング,(c)産総研内支援事業の3つがいずれも重要である。(a)は,研究分野別,研究ユニット形態別に違いがあるものの,全体としてはテクニカルスタッフの大幅な増加などで不足を補ってきており,問題点としては処遇不十分,情報不足が指摘できる。(b)は,直接研究費の増加を背景に増加している可能性があり,少なくとも動物飼育と機械工作が増加していることが分かるとともに,問題点としては情報不足,知的財産保護,メリットとしては専門の知識,技術や経験が豊富なことが指摘できる。(c)は,共通経費負担か研究ユニット負担か,負担に見合うかを見極めつつ実施する必要があり,メリットとしては産総研内にあるので気軽に相談できること,知的財産漏洩の心配がないことが指摘できる。従って,ニーズの変化を踏まえつつ,3つの調達方法をそれぞれのメリットを活かして使い分けること,アウトソーシング先や研究支援者の情報収集提供を中心とした支援全体を把握し推進する機能を設けることが必要である。さらに,研究支援調達ベストミックスと研究支援ハブ機能を中心とした体制整備を提案する。本研究の分析結果や提案は,産総研に限らず,規模が大きく広い研究領域を持つ大学や公的研究機関にも適用できると考える。
  • 八代 英美, 小林 俊哉
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 243-251
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本論文では,海外の基礎研究の成果をどう開発段階へ持っていくか,知識移転の事例としてロシアの研究機関と日本企業の例を取り上げる。ロシアの基礎研究の成果は航空宇宙や原子力の分野で知られているが,バイオやナノテクなどの分野でも研究・技術人材が多数存在する。しかし,ソ連崩壊後,研究機関の予算が大幅に削減されたロシアでは,研究機関の急速な解体が進んでおり,多くの研究者が困窮している。一方,日本では基礎研究費用が削減されており,多くの企業で中央研究所が縮小され民間による基礎研究の成果も減少している。このような環境下で,ロシアが得意としてきた真理追究を目的とした基礎研究と,日本が得意とする物づくりの連携が可能であるならば,両国にとって有益な発展が望めるのではないだろうか?本論文ではバイオ,ナノテク,環境の3つの分野において,ロシアの研究機関で永年蓄積された基礎研究の成果を用いて日本企業が製品開発した事例を取り上げ,日本とロシアの共創による研究開発成果のすみやかな市場化の可能性を検討する。ロシアの基礎研究と日本の物づくりを組み合わせて製品開発すれば,既存市場を革新する突破口ともなりうる。さらに,ロシアの軍事技術が日本で民生利用されるなどの社会的なスピルオーバーも期待できる。
  • 宮崎 正也
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 252-268
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    この論文では,クリステンセンの「破壊的イノベーション」の概念を「価値転換」および「製品コンセプトの変革」という観点から再解釈する。そのうえで,「新製品の開発・市場導入をめざす企業」が取り組むべき課題を,(1)自らの考える価値の主観的な提示=「製品コンセプトの形成」および「事業環境の設定」と(2)他者(競合企業・顧客等)の考える価値との融合=「業界価値の構築」に整理して提示する。新製品の開発・市場導入プロセスには「二重の不確実性」がつきまとうが,不確実であるがゆえに企業が自らにとって好ましい事業環境を構築できる余地が残されている。そのような世界において「価値転換のイノベーション」を推進するためには,新しい製品コンセプトを提案する革新者によるプロパガンダ活動が重要である。
  • 村上 由紀子
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 269-283
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    日本政府が専門的技術的分野の外国人を積極的に受け入れるという方針を示している中で,本研究では外国人研究者・技術者に対する需要がどの程度あるのか,また,どのような特徴を持った組織がどのような理由で彼らを需要し,その組織の中で彼らはどのような役割を果たしているのか,また,現在彼らを雇用していない組織はどのような理由で雇用していないのかについて,非営利の研究機関,R&D重視の民間企業,情報サービス産業の民間企業を対象に,独自に収集したデータを用いて分析を行った。外国人研究者・技術者を雇用する一番の理由は,国籍にかかわらず有能な人材を確保するためである。しかし,これは世界的なスーパースターを雇用するという意味ではなく,雇用されている外国人研究者・技術者は日本人でもできる仕事を行い,日本人と同じ様な業績をあげている場合がほとんどである。言い換えれば,日本人と外国人はかなりの程度代替的である。また,別の興味深い発見は,海外の組織に研究・開発・設計を委託している組織と,海外の企業,研究機関,大学と共同研究・開発を行っている組織の方が,そうでない組織よりも外国人研究者・技術者を雇用する傾向があるということである。この場合は,外国人の持つ外国語能力,外国の市場,法,商慣習や海外の技術に関する知識の活用を副次的な目的として,外国人研究者・技術者が雇用されている。
  • 馬渕 浩一, 堀越 哲美
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 284-293
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,富士写真フイルム株式会社(以下,「富士写真フイルム」と称する。)における医療デジタルX線画像診断システムの開発を取り上げ,サイエンス型産業における研究開発をイノベーションの視点から考察し,公知の科学的知見と社内蓄積技術の相互作用を明らかにすることにある。富士写真フイルムは,1975年から医療X線画像のデジタル化に取り組み,1981年に実験機を公開,1983年にFCR-101を発表した。これによって,高画質のX線画像をフイルムに出力することが可能になった。この研究開発過程において最大の課題となったのは,X線強度を記録しさらに電気信号に変換可能なイメージングプレートの開発であり,その基本原理は19世紀に発見された輝尽発光現象にあった。蛍光物質にX線を照射し蛍光発光させ画像記録するX線写真の基本原理の領域内に輝尽発光現象というイノベーションの解が存在した。しかし,これは必要条件にすぎない。このイノベーションには,関連する科学的知見の再探索によって得た解と同社のアナログX線フイルム製造等に関する様々な社内蓄積技術との相互作用が不可欠であることが分かった。そして,企業間競争の優位性を確立する上で,この相互作用が重要であるとの推論を試みた。
  • 金井 明子, 松原 宏, 丹羽 清
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 294-306
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    「地域」が新しい知識や技術を生み出す場として,近年注目を集めている。本研究は,地域が競争力を生み出す仕組みに学習という概念を適用した「学習地域(learning region)論」に注目し地域的な枠組みの発展を,「テーマの共有」という要素を加えることでさらに大きくできる可能性を提示する。まず,日本でも有数の産業集積地域である東大阪地域の製造業企業へのアンケート調査を通して「テーマ共有」が,従来研究が明らかにしてきた学習地域の4つの要素と同等に影響力を持つことを明らかにした。次いで同地域における人工衛星プロジェクトのケーススタディにおいて,インタビュー調査を行った結果,テーマの共有が「役割分担の明確化」「参加機会の確保と参加者の淘汰」「モチベーションの向上」という3点で実際の仕事を進める上で有効であることが分かった。さらに共通テーマを掲げたこのプロジェクトによる「地域の知名度の向上」「地域への信頼性の向上」という2つの効果が示唆された。本研究は,従来の学習地域にはない「テーマ共有」という要素を備えた新たな学習地域の一形態の重要性を示した。
  • 宗 海剛
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 307-321
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は,地域におけるイノベーションに焦点を当てて,これまでのクラスターに関する理論グループを整理・検討し,さらには,その整理・検討を踏まえた上で,特に21世紀のボーダレース化,知識化,多様化などを特徴とした,パラダイムチェンジの中で,クラスター推進活動における地域知識創造マネジメントフレームワークを提示することである。これまで,なぜ地域イノベーションが特定の地域に集中するかを直接的かつ間接的に解明しようとする理論グループは主に五つあるといえる。その中の四つがすでに確立された理論グループであり,残りの一つはまだ確立されていないが,最近かなり注目されているものである。前者は(1)伝統的産業集積論;(2)ネットワーク型生産システム論言;(3)競争と貿易論;そして(4)知識経済論であり,後者は地域知識創造論である。本論文の目標は主に三つある。まず一つ目は,地域イノベーションに関する四つの先行研究を再びレビューし,これらの理論的問題点を指摘し,重要なファクターを抽出することである。二つ目は今日確立されつつある地域知識創造理論を検討することである。そして三つ目は新しいクラスター推進活動をマネジメントするための認識フレームワークを提示することである。このフレームワークでは地域知識創造論と地域イノベーション理論の綜合を図り,従来の理論的問題点を克服する。本フレームワークの提示により,地域イノベーション戦略のよりよい理解,クラスター推進活動の効率的実行,そして地域知識創造論の更なる進歩に貢献できると主張する。
  • 岡本 和彦, 出口 昌信
    原稿種別: 本文
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 322-328
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
    本報告では,宇部興産(株)とそのグループ企業におけるエンドユーザー教育について述べる。本報告におけるエンドユーザー教育とは,研究者及び技術者に対する情報検索教育であり,その教育内容には,マーケット・リサーチの初歩が含まれている。マーケット・リサーチ教育の狙いは,研究者及び技術者に,顧客を意識した製品コンセプトの必要性を理解させることである。著者らはマーケット・リサーチ教育として,毎年2種類のセミナーを実施している。1つは(株)日本能率協会総合研究所マーケティング・データ・バンク(MDB)の協力によるものである。本報告では,これらの教育の詳細を報告し,さらに今後の課題も提起する。
  • 原稿種別: 文献目録等
    2007 年 21 巻 3_4 号 p. 329-332
    発行日: 2007/08/08
    公開日: 2017/12/29
    ジャーナル フリー
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