移植
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57 巻, Supplement 号
選択された号の論文の557件中201~250を表示しています
  • 中西 裕美, 倉田 博基, 光成 健輔, 松尾 朋博, 大庭 康司郎, 望月 保志, 川浪 幸子, 宮田 康好, 西野 友哉
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s263_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年12月中国武漢市で初めて報告され、パンデミックを引き起こした。免疫抑制療法が必須の腎移植レシピエントでは重症化リスクが高く、COVID-19発症時は留意が必要である。

    当院では腎移植後にCOVID-19感染に罹患した症例を4例経験した。いずれも移植維持期の症例で、ワクチン2回接種後、濃厚接触のスクリーニングの結果、陽性となった。4例のうち2例は無症状・無治療で経過、1例は抗体カクテル療法ののちに軽快、1例は軽症であったがハイリスク症例としてソトロビマブ使用後、汎発性帯状疱疹を併発し、免疫抑制剤の減量、長期入院加療が必要となったが、最終的には軽快し、外来通院が可能となった。長期入院となった1例は、経過中に慢性移植腎機能障害の進行を認めた。

    免疫抑制療法下にある移植患者の COVID-19 ワクチンに対する抗体反応は健常人と比較して低く、罹患した場合、死亡率は一般健康人よりやや高く、急性腎障害からグラフトロスに至る症例も報告されている。 今回我々が経験した4症例のCOVID-19の感染状況や治療状況、軽快までの腎機能を含めた臨床経過をまとめるとともに、当院外来フォ

    ローアップ症例のワクチン接種状況および副反応調査結果を追加して報告する。

  • 田代 裕己, 兵頭 洋二, 藤本 卓也, 遠藤 貴人, 西岡 遵, 横山 直己, 倉石 真理, 原 麻由美, 石村 武志, 西 愼一, 藤澤 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s263_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【緒言】

    2020年初頭より新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が国内外で蔓延している.免疫抑制下である腎移植後患者における当院でのCOVID-19症例の経験を報告する.

    【対象•方法】

    2022年4月現在当院でフォロー中の腎移植後患者363例のうちCOVID-19感染症を発症した26例を対象とした.それらの患者背景,COVID-19罹患状況,予後,重症化のリスク因子について検討を行った.

    【結果】

    年齢は46歳(24-84)で,男性15例,女性11例であった.発症時ワクチン2回接種完了した症例は9例であった.軽症が16例,中等症Iが3例,中等症IIが2例,重症は5例であり,3例が死亡した.6例でDexamethasoneを投与し,Favipiravir/Molnupiravir/Remdesivir/Tocilizumabはそれぞれ2例で投与され,7例でSotrovimabを投与した.重症の2例は人工呼吸器及びCHDFにて管理されたが,循環呼吸動態改善乏しく死亡した.また軽症の1例は自宅療養期間解除後に急変し他院に搬送された後に死亡した.また糖尿病が有意な重症化リスク因子であり(p=0.032),ワクチン2回接種と重症化との関連は有意差を認めた(p=0.009).死亡症例は2020年11月から2021年3月及び2021年7月から11月の時期に集中していた.

    【結語】

    当院フォロー中の腎移植後患者の7.16%にCOVID-19を発症した.糖尿病と発症時期は死亡リスクとの関連を認め,ワクチン接種は重症化を抑制した.死亡に至る重症例も経験し,腎移植後患者へのワクチン接種の推奨及び感染予防の指導が必要であると考えられた.

  • 三宮 彰仁, 春口 和樹, 近藤 晃, 蜂須賀 健, 川瀬 友則, 小山 一郎, 中島 一朗
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s263_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    板橋中央総合病院に通院中の腎移植者750例中52例(6.9%)がCOVID-19感染症となった。第5波までが17例、オミクロン株を主とする第6波は35例であった。都の基準の重症は52例中6例(11.5%)、死亡は52例中3例(5.8%)であった。死亡は第5波まで1例、第6波2例。死亡の3例はいずれも70歳代であった。第6波に限ると、重症3例、中等症6例、軽症26例で、中等症ではレムデシビルやソトロビマブが使用された。軽症では、9例にモルヌピラビルが投与されたが、14例は安静のみで軽快している。COVID-19感染者は当院以外の施設で治療にあたる場合は、担当の医師と連携して治療を行なっている。免疫抑制剤の調整は、日本移植学会の基本指針に基づき行なっており、治療は日本感染症学会の指針や、日本医学会連合COVID-19 expert opinionなどに基づいて行なっている。ワクチン接種が進み、軽症例や安静のみで軽快する症例が増えているものの、感染の動向には注意していく必要がある。

  • 西川 健太, 村松 真樹, 河村 毅, 櫻林 啓, 前田 真保, 米倉 尚志, 小口 英世, 橋本 淳也, 青木 裕次郎, 三井 要造, 板 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s264_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    背景と目的 COVID-19はAKI(急性腎障害)のリスクであるが、感染後の移植腎機能に与える影響については明らかにされていない。腎移植患者におけるCOVID-19後の臨床経過及び移植腎機能について検討した。対象と方法 COVID-19の腎移植患者36例を対象として、治療内容および罹患前後のeGFR、尿蛋白について検討した。結果 年齢は44.4±16.6歳、男27例/女9例、BMI 22.0±3.8kg/m²、糖尿病を9例(25.0%)で認めた。ABO不適合9例(25.0%)、複数回の移植は4例(11.1%)であり、移植後の経過年数は8.3年(IQR 4.7-18.4)であった。罹患時の重症度は、軽症17例(47.2%)、中等症Ⅰ10例(27.8%)、中等症Ⅱ 2 7例(19.4%)、重症 2例(5.6%)であった。入院による加療は22例(61.1%)に対して行われており、入院期間は14日(IQR 5.8-18)であった。免疫抑制薬の調整を27例(75.0%)に行い、調整期間は21日(IQR 13-39.5)であった。デキサメタゾンは25例(69.4%)、トシリズマブは2例(5.6%)で使用されていた。罹患前・後(2-4カ月以内)のeGFR は 51.4±22.2 ml/min/1.73m²・53.9 ±24.4ml/min/1.73m²であり、有意な変化を認めなかった(p=0.127)。また、罹患前後のeGFR変化率を重症度(軽症群:中等症1以下、重症群:中等症2以上)で比較した。軽症群2.1%(IQR-5.0-6.9)、重症群5.3%(-2.6-18)であり、両群に有意差を認めなかった(p=0.197)。結語 腎移植患者においてもCOVID-19のAKIに留意する必要があるが、COVID-19が短期的な移植腎機能に与える影響は少ないと考えられた。

  • 松原 圭輔, 篠田 和伸, 白井 大介, 佐々木 秀郎, 丸井 祐二, 櫻井 裕子, 大迫 希代美, 寺下 真帆, 谷澤 雅彦, 柴垣 有吾 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s265_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【目的】当院で腎移植を施行された後にCOVID-19を発症した患者における重症化リスク要因を調査することを目的とした。

    【方法】当院で腎移植を行い生着フォロー中の188人のうち、20人がCOVID-19を発症した。それらの患者の調査を、診療録を用いて後方視的に行った。重症化リスク因子として60歳以上、BMI > 30 kg/m2、 Cr > 2 mg/dL、高血圧、インスリン使用、腎移植もしくはリツキサン投与後1年以内、慢性閉塞性肺疾患、重症心疾患をそれぞれ1点としてリスクポイントを算出した。

    【結果】4名が呼吸器症状で入院を要し、1名で高流量式鼻カニュラ酸素療法、1名で人工呼吸器管理を行ったが、全例自宅退院となり酸素療法の継続も不要であった。入院患者のリスクポイント中央値は2 (2 - 4)、外来治療患者の中央値1(0 - 4)に比べ有意に高かった(p = 0.047, Wilcoxon検定)。また外来治療を行った患者の有熱期間(37度以上)中央値は4日 (0 – 19日)で、解熱まで5日以上要した症例を発熱遷延者と定義した。抗ウイルス療法を受けた症例は、早期解熱者では6/7例 (85%)で、発熱遷延者における2/6例 (33%)に比べ有意に多かった(p = 0.047, カイ2乗検定)。

    【まとめ】免疫抑制療法下においてCOVID19を発症した際に、重症化リスク因子を複数有する症例では入院加療を要する可能性があることが示唆された。外来治療において早期に解熱を得るには、抗ウイルス療法が重要であると考えられた。

  • 菊池 尭, 齋藤 允孝, 森 康範, 藤田 和利, 能勢 和宏, 吉村 一宏, 植村 天受, 林 泰司, 西岡 伯, 玉井 健太郎, 今西 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s265_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は2019年に発生が初めて確認され、その後世界的な流行を引き起こしており、徐々にその流行は落ち着きつつあるもののいまだ完全な収束の兆しは見えていない。臓器移植後患者において、新型コロナウイルス感染症に伴う死亡リスクは一般集団と比較して約4.6倍とされており、予後不良である。2020年4月から2022年5月にかけて、当院および関連病院において腎移植後に新型コロナウイルス感染症をきたした17症例(男性11例、女性6例)について、文献を交えて報告する。平均年齢は53.8歳(37-73)、平均移植後年数は11.6年(0.6-27)、生体腎移植後が14例、献腎移植術後が3例、平均入院日数は18.3日(7-55)、転帰として2例が死亡、15例は治癒した。死亡の2例についてはいずれも細菌性肺炎の合併が死因となっていた。免疫抑制剤はTAC使用が12例、CYA使用が5例、MMF使用が6例、MIZ使用が6例、全症例でPLSが使用されていた。治療としては気管挿管が4例に施行され、経過観察が3例、中和抗体薬使用が7例、抗ウイルス薬使用が7例であった。免疫抑制剤の減量・中止が10例で行われ、7例については免疫抑制剤の減量・中止は要しなかった。新型コロナウイルス流行から2年が経過し、臓器移植患者における新型コロナウイルス感染症に対する治療方法は確立されつつある。しかし今後新たな変異株の出現の可能性もあり、集積される報告を元にアップデートされるエビデンスに則り治療にあたっていく必要がある。

  • 中澤 成晃, 今村 亮一, 園田 実香, 深江 彰太, 田中 亮, 谷口 歩, 山中 和明, 難波 倫子, 高原 史郎, 野々村 祝夫
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s266_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    症例は62歳、男性。2型糖尿病による末期腎不全に対して2020年妻をドナーとする生体腎移植を施行し、腎移植後はCre 1.4mg/dLで安定していた。COVID19ワクチンは2021年7月と8月の2回接種を終えていた。2022年5月上旬より39度を超える発熱と水様性下痢が4日間持続したため、前医受診。CTにて右肺下葉に限局性浸潤影を認め、炎症反応の著明高値を認めた。COVID19検査は抗原、PCRともに陰性であり、感染性腸炎、細菌性肺炎疑いで抗生剤加療を開始した。しかし、症状の改善を認めず、腎機能もCre 6.36mg/dLまで上昇してきたため、第10病日に当院に転院搬送となった。入院時のCOVID19 PCR検査にて陽性を確認し、COVID19感染と診断した。入院時Creは6.93mg/dLまで上昇し、移植腎超音波検査では拡張期血流の途絶を認めた。胸部CTではすりガラス状浸潤影の増悪を認めたが、酸素吸入は必要としなかった。入院当日にソトロマブ投与、翌日よりレムデシビル投与を行った。第11病日に移植腎生検を施行し、明らかな拒絶反応を示す所見はなく、COVID19によるAKIと診断した。mPSL pulseを3日間、IVIG(100mg/kg)投与を5日間施行し、腎機能は緩徐に改善し、第28病日に退院となった。生体腎移植患者に発症したCOVID19によるAKIの1例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。

  • 佐々木 拓馬, 丸山 通広, 大平 学, 今西 俊介, 遠藤 悟史, 栃木 透, 丸山 哲郎, 木下 和也, 貝沼 駿介, 森下 弘基, 松 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s266_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    症例は51歳 男性。38歳で高血糖を指摘され、45歳でインスリン導入となるも、徐々に腎機能の増悪を認め、49歳で血液透析導入となった。透析歴1年9か月、妻をドナーとする生体腎移植術を施行した。

    術前1週間前より入院し、血液透析を施行していた。入院時のCOVID-19のPCR検査は陰性であった。しかし、生体腎移植術中に院内でクラスター感染が報告され、術後に再度COVID-19 PCR検査を施行したところ陽性となり、ICUへ入室。術後も呼吸器症状を認めなかったため、ソトロビマブ500mgを投与し、免疫抑制療法はプロトコール通りに導入にバシリキシマブ、維持にタクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、プレドニゾロンの3剤で行った。以降もCOVID-19関連の症状は認めず、術4日目にはICUを退室し、術11日目には一般病棟管理となった。移植片腎機能も良好に経過し、術24日退院。移植後3か月の現在まで良好に経過している。

    「新型コロナウイルス感染症の移植医療における基本指針」や「新型コロナウイルス感染症の治療 Q&A」ではCOVID-19陽性移植患者への免疫抑制薬の調整方法や治療法について言及されている。しかし、周術期にCOVID-19感染が発覚した生体腎移植症例は本症例が最初の報告であり、免疫抑制薬の調整方法に一定の見解は示されていない。術直後にCOVID-19感染が発覚し、通常の免疫抑制薬投与にて良好に経過した生体腎移植症例を経験したため、若干の文献的考察を含めて報告する。

  • 佐々木 ひと美, 日下 守, 河合 昭浩, 竹中 政史, 市野 学, 高原 健, 住友 誠, 伊藤 泰平, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s266_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    COVID-19感染流行期間での腎移植患者のサルコペニアの状況につき調査した。当院通院中の腎移植患者のうち、2020年から2年連続でSARC-Calfスクリーニングを行い、サルコペニア診断が可能であった91名(男性55名、女性36名)に対し、SARC-F各スコア、下腿周囲長と計測基準値との差、サルコペニア診断数、性差による影響につき調査した。結果:91名の開始時平均年齢は56.5歳で移植後経過期間は平均13.9年であった。SARC-Fの各項目での有意差は認めなかったが、下腿周囲長は2020年平均値33.4cm、2021年平均値32.9cmと低下していた(p=0.01、student’s t検定)。また日本人の計測基準値(JARD2001)での年齢別下腿周囲長中央値との差でも2020年平均-1.10cm、2021年-1.49cmと2021年での基準値との差が大きい傾向であった(p=0.04、student’s t検定)。SARC-Calf(SARC-Fおよび下腿周囲長計測による評価)でサルコペニアを疑う症例は両年共に19例であり、それぞれの診断数も12例で差を認めなかった。性差別検討ではいずれも男性でSARC-Calf平均値の上昇、下腿周囲長の基準値との開大を認めたが、女性では変化はなかった。

  • 松本 大, 大田 守仁, 西平 守邦, 関 浩道, 永山 聖光, 平良 翔吾, 屋嘉部 生子, 大湾 香理
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s267_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    (はじめに)2020年初頭に日本を襲った新型コロナウイルスは2022年5月現在も猛威を振るっており、特に沖縄県は全国トップの感染状況が続いている。当院の移植患者の感染状況を報告する。(方法)当院通院中の移植後患者226名中、2022年5月までにCOVID19に罹患した38名について検討した。(結果)2020-2021年のいわゆる第5波までの感染症例9名に対し2022年以降の第6波での感染は29名に上った。男女比は27:11で平均53.7歳(22-80)。全例軽快し死亡症例はなかった。酸素投与が必要な中等症Ⅱは6例(16%)であったが、特に2021年までの9例では4例(44%)が中等症Ⅱを占めた。また9例中5例(56%)に糖尿病を合併していた。2022年以降の症例では29例中、中等症Iが6例(21%)、中等症Ⅱが2例(7%)と症状の軽い症例が多かった。糖尿病症例も2例(7%)のみであった。ワクチンに関しては感染時1回以下が14例(37%)で、24例は2回以上接種し3回接種で感染したものも9例(24%)あった。免疫抑制剤は34例(89%)でMMFを内服しており、EVR内服も16例(42%)であった。前半の9例では全例でMMFを内服しておりEVR内服は1例のみであった。(結語)第5波まではある程度感染リスクの傾向があったが第6波以降は無関係に感染している。幸い死亡例はでていなが今後も感染予防を患者に周知していきたい。

  • 福原 宗太朗, 田原 裕之, 築山 尚史, 今岡 祐輝, 中野 亮介, 坂井 寛, 谷峰 直樹, 黒田 慎太郎, 大平 真裕, 井手 健太郎 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s267_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    COVID-19の移植医療における基本指針は随時改訂を経ているが、免疫抑制剤の調整に関しては、本邦からの明確な指針はない。我々は、臓器移植後にCOVID-19を発症した11例を経験し、その報告をする。症例は、腎移植後が6例、肝移植後が3例、肺・腎移植後は1例、膵・腎移植後が1例であった。重症度は軽症が9例、中等症と重症が1例ずつあり、治療は自宅待機の軽症1例を除き、全例で抗ウイルス薬もしくは中和抗体を使用した。全例でワクチン接種は行われていた。軽症例は感染前のCFSE色素染色法リンパ球混合試験(CFSE-MLR)の結果をもとに、中等症、重症例は、感染直後にもCFSE-MLRを行い、免疫抑制剤の調整を行った。

    中等症は男性で、腎移植後の症例であった。CFSE-MLRで抗ドナー応答亢進していたため、免疫抑制剤は減量せず、発症後24日目に軽快退院となった。重症例は男性で、肝移植後の症例であった。PCR陽性時は中等症で、発症後11日目までは経過は安定していた。CFSE-MLRでドナー特異的低応答であったため、免疫抑制剤は減量した。しかし、多数の重症化リスク因子を持っており、発症後12日目に呼吸状態の悪化、敗血症の併発などを認め、発症後142日目に永眠された。

    CFSE-MLRを使用し、患者それぞれの免疫抑制状態に合わせた免疫抑制剤の調整が可能であった。重症化リスクを多く持つ症例に関しては、発症後から時間が経った後に重症化することもあり注意が必要と思われた。

  • 塚本 泰正, 渡邉 琢也, 望月 宏樹, 米山 将太郎, 福嶌 五月, 藤田 知之, 瀨口 理
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s267_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    2020年1月に日本でも確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は依然収束の見通しがたっていない。移植患者は免疫抑制療法のためCOVID-19が重症化しやすいとされているが、我が国における心臓移植患者のCOVID-19の実態については明確なエビデンスに乏しい。今回我々は、当院で心臓移植を施行した症例におけるCOVID-19の実態を後方視的に解析したので、報告する。

    【対象と方法】1999年5月から2021年12月までに国立循環器病研究センター(NCVC)で心臓移植を受け、外来通院中の142症例(術後経過期間 7.6±5.0年、男性 74%、小児4例を含む)のうち、2022年5月までにCOVID-19を発症した13例(男性11例、小児1例)を対象とし、発症時期、感染経路、重症度、治療内容について検討した。

    【結果】移植から発症までの経過期間は3.8±2.8年であり、2021年8月をピークとするいわゆる第5波で3例、2022年2月がピークの第6波で10例が感染した。感染経路は7例が家族からで最多であった。中等症Ⅱの1例を除く全例が軽症であった。重症化のリスクを考慮し、定期検査入院前精査で偶然陽性が判明しその時点で症状軽快していた1例を除く全例で入院加療を行った。入院加療を行った成人11症例に抗体製剤を、8症例に経口抗ウイルス薬を投与した。中等症Ⅱとなった1例には酸素投与、デキサメタゾン、ヘパリンおよび抗菌薬投与を追加した。MMFが投与されていた5例を含め、全例で免疫抑制薬の大幅な変更を必要としなかった。全例で軽快し、死亡例は認めなかった。

  • 谷峰 直樹, 田中 友加, Seidakhmetov Akhmet, 荒田 了輔, 築山 尚之, 井出 隆太, 今岡 佑輝, 中野 亮介, ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s268_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルスによるCOVID-19感染症の医療体制に与えた影響は甚大であり、しばらくはその終焉を期待することは見込めない。一方で、様々な知見が検証されることで、移植医療においても、対策をたてながら実臨床を遂行し、発展させることが求められている。

    当講座では感染爆発の当初、研究室でのPCR検査技術の確立による患者スクリーニングの実施やCOVID-19陽性者入院時の対応計画の立案を行い、独自の対策を開始した。それに引き続き、病院のCOVID-19診断・診療体制の確立や専用病床、専任感染症対策チームによる臨床対応など、病院規模の取り組みがなされ、大学の検査体制の一部として機能を担った。また、日本移植学会の対策チームの努力による種々の提言を参考に、感染規模に応じた診療体制の調整を行ってきた。適切な提言により緊急度の高い患者の移植を遂行しながら、最も死亡リスクの高い移植後早期の院内発症例を経験せずに診療を継続できている。また、研究機関として移植免疫で培った知見を活かして、感染重症化リスクやワクチン接種効果に関わる遺伝子多型因子の同定を行い、移植医療へ還元の取り組みを行っている。

    今後、我々が医療者個人として、医療機関として、移植医療関係者として、必要とする患者に移植医療をさらに発展性をもって届けていくためには、継続的な知識ならびに対策を更新していくことが重要であると考える。

  • 松波 昌寿, 鈴木 智, 髙梨 弥生, 越智 敦彦, 矢嶋 淳, 久慈 弘士, 末永 孝生
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s269_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】

    免疫抑制剤を使用している腎移植患者は、ワクチンによる抗体陽性率および抗体価が低いと報告されている。本研究は、①腎移植患者において新型コロナウイルス (COVID-19) ワクチン2回目接種後の抗体価と、②抗体価が上昇しないリスク因子の可能性を評価した。

    【方法】

    当院の腎移植患者29名を対象とした。COVID-19ワクチン2回目接種後2~8週間以内に採血を実施し、抗体陽性率および抗体価を調べ、2回目接種後にanti-SARS-CoV-2 IgG levels ≥0.8 U/mLをresponder群、anti-SARS-CoV-2 IgG levels <0.8 U/mLをnon-responder群と定義して比較検討した。

    【結果】

    Responder群16人、non-responder群13人で、responder群の抗体価は78.6 [IQR, 3.8–226] U/mLであった。患者情報を表1に示す。Non-responder群は、高年齢 (65 [IQR, 55–71.5] 歳vs. 54 [IQR, 46.5–61] 歳; p=0.01)、短い移植後の期間 (1,034 [IQR, 548.5–1,833] 日 vs. 1,588 [IQR, 1,382–4,751] 日; p=0.02)、高容量の代謝拮抗薬 (ミコフェノール酸モフェチル) の使用 (1,077±76.9 mg vs. 765.6±119.6 mg; p=0.04)であった。

    【考察】

    これまでの報告と同様、①腎移植患者のCOVID-19ワクチン接種後の抗体価の上昇が低い可能性と、②non-responderのリスク因子として、高年齢、短い移植後の期間、代謝拮抗薬の使用が示唆された。一方、最近の研究ではCOVID-19ワクチンの3回目追加接種により2回の接種では反応しなかった腎移植患者の49%で抗体反応が検出されたことが示されている。non-responderに対する3回目のワクチン追加接種は十分検討に値すると考えられる。

  • 海上 耕平, 大木 里花子, 古澤 美由紀, 石井 晃太, 八木澤 隆史, 神澤 太一, 平井 敏仁, 尾本 和也, 田邉 一成, 高木 敏 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s269_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    [背景]SARS-CoV2による新型コロナウイルス感染症は全国的に流行しており重篤な転帰をたどる。特に移植患者は免疫抑制下のため感染の重症化が懸念されており、感染制御のためワクチン接種が行われているが、抗体獲得性の低下が判明してきている。一方で、移植患者が感染した場合抗体獲得性は不明な点が多く、特に抗体価の推移は今後の加療の面で非常に重要であると考えられる。今回、東京女子医科大学病院に通院する腎移植後のSARS-CoV2感染者について、抗体価を測定を経時的に測定したので報告する。

    [対象]腎移植後のSARS-CoV2感染患者18名。SARS-CoV2感染後、経時的にSARS-CoV-2抗体価の測定(LABScreenTM COVID Plus, One Lambda Inc)を行った。また、4名の腎移植患者および10名の一般成人に対しても、ワクチン接種前後における抗体価測定を行った。[結果]感染者に関して、SARS-CoV-2 ECDおよびSpike S2抗体はいずれも陽性化し、6カ月から1年持続していた。ワクチン接種後の抗体価に関しては、腎移植患者において低下していた。[考察]感染罹患後は、高い確率で抗体の獲得が行われており、その持続性も永い可能性が示唆された。この特性は今後のワクチン接種戦略と併せて検討していく必要があると考えられる。

  • 古澤 美由紀, 石田 英樹, 神澤 太一, 海上 耕平, 北島 久視子, 尾本 和也, 清水 朋一, 乾 政志, 八木澤 隆史, 飯塚 淳平 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s269_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に対する打開策として、日本でもワクチン接種が進められ、2022年4月時点で全人口の79%が2回のワクチン接種を完了している。われわれは今までの研究で、ワクチン接種1か月後の腎移植レシピエントの抗体陽性率は低く、抗体価は一般集団よりも低いと報告している。今回われわれは、コロナワクチンを3回目接種した症例を対象に抗体反応について検討を行った。

    【対象および方法】腎臓移植後に3回のコロナワクチン接種後1か月経過をした118症例(男性:67、女性:51)である。試薬は、LABScreen COVID Plusを用いて、ECD , S1 , RBD, S2,NCの5つのフラグメントのIgG抗体の推移について測定を行った。

    【結果】各採血時期のnMFIはECDが26470と一番高いnMFIを示し、RBDが21700、S1が16720、S2が12908の順であった。ワクチン接種から1カ月後では49/119(41%)、3カ月後では63/119(53%)、6カ月後では57/119(47%)、三回目接種後1カ月では、87/119(73%)でいずれかのフラグメントで抗体獲得が認められた。接種後約3か月をピークに各フラグメントともに減弱した。3回目接種後のnMFIは再上昇し、3カ月の値を上回っていた。

    【結語】

    腎臓レシピエントにおける3回目の投与は、IgG抗体の増加を効果的にもたらしていた。抗体のモニタリングは、個人にあったワクチンの接種間隔や接種量、接種回数などを決めるたに役立つ可能性がある。

  • 升谷 耕介, 出口 英孝, 坂本 篤彦, 中村 信之, 岡部 安博, 三浦 敬史, 羽賀 宣博, 廣松 賢治, 鍋島 茂樹
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s270_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【目的】腎移植患者におけるSARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体獲得状況を検討する。

    【対象と方法】対象は維持期の腎移植患者107例、女性40例(37%)、年齢49±12歳、生体腎移植93例(87%)移植後期間9±6年。接種前と2回目接種から1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、3回目接種を受けた患者については接種1ヶ月後に血液を採取し、SARS-CoV-2 S-protein receptor binding domain のリコンビナント蛋白を抗原としたELISA法を用いて抗体測定を行った。性・年齢をマッチさせた健常人57例を対照群とした。

    【結果】対照群における2回目接種後の抗体陽性率は100%で、1ヶ月後の抗体値(中央値)は129.0 A.U.であったが、腎移植群における1ヶ月後の抗体陽性率は34.5%、陽性者の抗体値は4.6 A.U.と著しく低値であった(P<0.001)。3ヶ月後、6ヶ月後に腎移植群の抗体陽性率は31.9%、25.2%と緩徐に低下したが、3回目接種後に抗体陽性率は54.0%となり、陽性者における抗体値も72.5 A.U.と大きく上昇した。健常者では観察期間を通じて抗体陽性率は100%を維持し、抗体値は3ヶ月後35.3 A.U.、6ヶ月後17.7 A.U.と低下したが、3回目接種から1ヶ月後には284.5 A.U.と著明に上昇した。

    【結論】わが国の腎移植患者における抗体獲得率および抗体価は海外の報告と同様、著しく低値であるが、3回目接種により抗体陽性率、抗体値ともに改善する。

  • 佐々木 元, 長谷川 香織, 高田 祐輔, 田邉 起, 田中 博, 原田 浩, 三浦 正義
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s270_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    [緒言]腎移植レシピエントにおけるSARS-CoV2ワクチン(以下ワクチン)接種後の抗体獲得状況を報告する。[対象と方法]COVID-19罹患歴がなく、ワクチン接種前にSARS-CoV2抗体(以下抗体)陰性が確認され、2回のワクチン接種後に抗体価を測定した成人腎移植症例378例(R群)を対象とした。健常者(HV群: n=990)、腎移植ドナー(D群: n=102)を比較対象とした。2回のワクチン接種後にN抗体陰性(0.4U/ml以下)かつS抗体陽性(0.8U/ml以上)を抗体獲得と判定した。[結果]ワクチン2回接種後のS抗体獲得率は、HV群とD群では100%であったがR群で56.8%であった。レシピエントの抗体獲得率を検出時期別に解析すると、HV群、D群では4週以降、100%であるが、R群は4週未満で43%、4-8週で49%、8-12週で68%、12週以降で81%と、徐々に上昇した。抗体価に関しては、HV群とD群はワクチン接種後8週未満ではそれぞれ2457 U/ml、1181 U/mlであったが、20週以降では、727 U/ml、713 U/mlへと低下した。一方でR群は、8週未満では154 U/mlであったが、20週以降では293 U/mlへ上昇した。R群におけるResponder(n=215)とNon-Responder(n=163)を比較すると、Non-Responderで有意に多かった因子は60歳以上、リンパ球減少症(1000/μL以下)、rituximab投与歴、CNI/MMF/EVR/MPによる維持免疫抑制であった。[結語]腎移植レシピエントは、SARS-CoV2ワクチン接種後の抗体価上昇に時間を要した。60歳以上、リンパ球減少症、rituximab投与歴、4剤の維持免疫抑制療法は、抗体獲得に負の影響を与えた可能性がある。

  • 安田 宜成, 田中 章仁, 菊地 良介, 高井 奈美, 齋藤 尚二, 藤田 高史, 加藤 真史, 古橋 和拡, 丸山 彰一
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s270_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】腎移植レシピエントでは免疫抑制療法のためSARS-CoV-2 mRNA vaccinat

    ionによる抗体獲得率が低いと報告されている。本邦では諸外国と比較し、生体腎移植が多く、免疫抑制薬の治療レジメなどが異なる。日本人腎移植レシピエントのワクチン接種後の交代獲得率を調査した。

    【方法】対象は名古屋大学医学部付属病院へ通院中の日本人腎移植レシピエントのうち、SARS-CoV-2 mRNAワクチンを受けて、抗体価を測定した106名。抗体価は2回のワクチン接種後3週間から3か月の間にSARS-CoV-2 IgG II Quant Reagent Kit(R)により測定し、50 AU/mL以上を陽性とした。

    【結果】対象者106名中で陽性は41名(38.6%)であった。抗体獲得率に関連する因子として、BMI(OR 1.24, 95% CI 1.08-1.41, P<0.05)、移植からの期間(OR 1.01, 95% CI 1.00-1.02, P<0.05)、eGFR(OR 1.07, 95% CI 1.02-1.11, P<0.05)が関連した。

    【結論】腎移植レシピエントはSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種後の抗体獲得率が低く、ワクチン接種後も厳重な感染対策を継続しなければならない。加えて免疫抑制治療中の患者において抗体獲得率を高めるSARS-CoV-2 mRNAワクチン接種方法の検討が必要である。

  • 宮島 由佳, 纐纈 一枝, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s271_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    当院は、高度救命救急センターであり2022年4月まで263件の臓器提供を行った。これまで脳血管患者の臓器提供が主であったが、今回CCUにおいて循環器患者の臓器提供事例を経験したため報告する。

    【事例】

    ①20歳代男性、蘇生後脳症。脳死とされうる状態となり、臓器提供選択肢提示を行い、眼球提供となった。CCUでの臓器提供は初めてであったため、臓器提供のプロセスを明確にするフローを作成し対応できるようにした。

    ②60歳代男性、心筋梗塞。補助循環装置管理中に脳死とされうる状態となり、臓器提供選択肢提示を行い、眼球提供となった。家族からの提供希望が強く、家族の意向に添えるよう看護師間で情報を共有した。

    【考察】

    これまで、CCUを含めた普及啓発活動の1つとして移植医療・臓器提供についてシミュレーションを含めた勉強会を継続的に実施してきた。2020年度より心臓移植を見据えたVAD装着患者の入院が増えた。これらにより移植医療に対する関心が高まってきたことが考えられる。また、臓器提供のプロセスを明確にしたことで、初めての提供事例でもフロー通りに対応でき、有効な家族支援に繋がったと思われる。

    【まとめ】

    今回、これまでの継続的な勉強会等の教育を行ってきたことで、初めての提供事例でもフロー通りに対応することができた。今後は、CCUで脳死下臓器提供にも対応できる体制作りを目指して取り組んでいきたい。

  • 岩村 貴美, 関 一馬, 高橋 恵, 白井 教子
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s271_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】臓器提供施設では、臓器・組織提供を希望する家族や院内の相談窓口、ドナー発生時の連絡調整、そして移植医療の普及啓発を行う院内ドナーコーディネーター(以下:院内ドナーCo)の役割が重要となっている。院内ドナーCoの教育はさまざまな形で行われているが、院内ドナーCoは移植関連部署から選出されているため、人事異動によって入れ替わりがあり、新任の院内ドナーCoがほぼ毎年存在している。また、臓器提供は頻繁に行われない事から、院内ドナーCoがどのように成長しているのかを明らかにすることは、院内ドナーCoの教育を考える手がかりになると考えられた。

    【目的】院内ドナーCoの成長に影響する要因を明らかにする。

    【方法】院内ドナーCo現任者及び経験者11人に対して、半構成的グループインタビューを実施し、質的帰納的に分析した。

    【結果】院内ドナーCoは本人の希望の有無にかかわらず任命されていた。院内ドナーCoはさまざまな困難を感じながらも、命やグリーフケアについて考えるようになり、移植医療に対する意識の変化を感じ、看護観へも影響を受けていた。更に、院内ドナーCoの役割の認識や意欲的な活動に繋がっていた。これらの院内ドナーCoの成長に影響する要因として、県、移植ネットワークや院内の研修による学習、実際の活動からの学び、移植医療支援室、前任者やスタッフのサポート、そして、一般入院時や三次救急来院時の臓器提供に関する情報収集のための院内システムが挙げられた。

  • 岩崎 有杜, 纐纈 一枝, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s271_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】脳死下臓器提供での患者管理において主治医の負担は大きい。早期より主治医のみでなく、各臓器専門の医師(以下、専門医師)が介入し患者管理を行うという、当院の取り組みについて報告する。

    【症例】当院ではこれまで13件の脳死下臓器提供を経験してきた。第2回法的脳死判定終了後、患者は臓器移植科へ転科し、ICU病棟へ転棟となる。前症例までは、転科・転棟するまでの患者管理は原則、主治医が行い、その負担が大きくなっていた。しかし本症例からはシステムが変更され、患者・家族に臓器提供の希望があると判明した段階から、専門医師が介入できるようにした。これにより、転科転棟前までの主治医の負担を軽減することができた。これまでは転科転棟後に提供臓器の評価、必要な介入がなされていたため、特に肺については、合併症の改善ができず提供が断念されることがあった。しかし今回、早期から専門医師が介入することにより、患者の提供臓器の状態の改善を図ることができた。

    【まとめ】早期から専門医師が介入することで、主治医の負担の軽減のみでなく、提供臓器の機能の維持・改善を図ることができる。このことは、多くの臓器を提供したいという患者・家族の希望を叶えることにつながる。また、提供を受けたレシピエントの移植成績の向上にもつながる。ドナー・レシピエント双方のメリットを考慮すれば、早期より各臓器の専門医師が介入することは有効であると考える。

  • 長谷川 綾子, 朝居 朋子, 田﨑 あゆみ, 中村 小百合
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s272_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦では脳死下臓器提供件数が少ないため、看護師の事例対応経験も稀である。事例対応経験のある看護師の看護実践における負担感は報告されているが、事例対応経験の有無による負担感の違いは明らかにされていない。本研究の目的は、事例対応経験が看護師の負担感に与える影響を明らかにすることである。【方法】2015年~2020年に複数回脳死下臓器提供を実施した67施設のうち、協力の得られた34施設の脳死下臓器提供事例発生病棟の看護師873名に対し、無記名自記式質問紙調査を2021年に実施した。【結果】293名から回答を得た(回収率34%、有効回答率100%)。脳死下臓器提供事例対応経験あり61%、なし38%であった。脳死下臓器提供の一連のプロセスにおいて過半数が負担感を抱き、家族の意思決定支援を最も負担に感じていた。事例対応経験のない看護師は、経験がある看護師よりも負担感を抱いていた。①脳死下臓器提供に対する知識・経験不足、②脳死下臓器提供による時間的制約、③日常的に接触の少ないスタッフとの多職種連携が理由として挙げられた。【考察】事例対応経験がない場合、事例発生時の一連の流れをイメージすることができないため負担感が強くなると推測された。実際の事例対応をイメージできる学びの機会の提供と、院内コーディネーターによる専門性の高い知識・スキルの提供で、看護師の負担感が軽減できると考える。

  • 赤川 美穂, 横山 亜希, 志太 奏理, 長澤 聡子, 高橋 絹代, 山田 恵子
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s273_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

     A病院での臓器提供件数は年間1~3例程度が行われているが、臓器提供患者を受け持つ症例数など看護師の経験値は個々に異なる。A病院看護師へのアンケートでは、脳死下臓器提供患者を受け持つことで通常とは異なる緊張感や疲労感などの心理的負担を感じていた。先行研究においても経験不足による混乱と不全感、ドナー家族への言葉かけの迷い、知識不足の反省、経験豊富なスタッフが当たるように勤務調整されている等、困難感が報告されている。

     こうした背景より、看護師の経験値にかかわらず、臓器提供の各段階に応じた適切なケアを理解し実践できることが必要であると考えた。そこで臓器提供が行われ、家族から研究使用の承諾が得られた2例を、①臓器提供のオプション提示、➁家族の意思決定、③2回目の脳死判定と死亡宣告、④臓器摘出、⑤退院の5つの段階ごとに質的に分析を行った結果、「家族のアセスメント」「家族への配慮」「連絡・調整」「ニーズに即した情報提供」が主なカテゴリーとして臓器提供の各段階における必要な看護実践として明らかとなった。これにより、看護師が経験の有無にかかわらず臓器提供の看護ケアを理解し、患者家族に一貫した看護が提供できると考える。

  • 高橋 美香, 杉山 佳代, 三上 淳子, 瀧澤 克己, 牧野 憲一, 嶋村 剛, 原田 浩
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s273_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    [はじめに]臓器提供の意思表示はドナーとその家族の権利であり、移植へつなげることがコーディネーター(以下、Co)の責務である。承諾にあたっては「家族の状況に鑑み、心情に配慮しつつ説明を行うこと」とされている。今回、承諾手続きに負担感を表出した家族の対応を振り返り、課題を検討した。

    [事例]60歳代、頭部外傷。家族は道外居住の兄と同居の実母2名、母は高齢かつ要介護であった。搬入後、緊急開頭手術を施行したが脳死状態に陥り、2病日目には家族が自然なお看取りを希望し、治療縮小後は小康状態が続いた。7病日目に兄から臓器提供の申し出があり、8病日目にCoへ連絡が入り説明を行った。説明翌日、母は施設入所を予定していたため自宅訪問によって意向を確認し、承諾は兄に委ねられた。しかし兄は居住地へ戻られたため異なるCoが兄の居住地へ出向き、承諾書作成に対応した。10病日目に脳死下臓器提供の承諾を得たが、兄は対面での承諾書作成などに負担感を表出した。

    尚、本学会発表については家族と提供施設の承諾を得た。

    [考察]臓器提供の承諾書作成は対面を必至とし、「接触不可能な場合は承諾不可」とされている。しかし、Coが事前に接触できている家族からの承諾書の取得については、リモートでの対応を許容するなど、コロナ感染症による環境の変化、多様な家族構造や機能への配慮が必要である。承諾書作成時の家族の負担軽減は権利の尊重でもあると考える。

  • 髙橋 恵, 梶山 和美, 上村 由似, 田村 智, 関 一馬, 片岡 祐一, 川谷 弘子
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s273_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】救急搬送される患者家族は、時間的猶予のない経過の中で心理的・社会的に「患者の病状」を認識し、「患者の最期」の過ごし方を代理意思決定することなり、特に終末期の情報提供は、家族の心情に留意しながら丁寧な対応が求められる。2022年4月より入院重症患者対応メディエーターを導入し、救急・集中治療領域での終末期家族支援を実施している。

    【目的】入院重症患者対応メディエーター導入前後の終末期家族支援の実際とチームによるケアプロセスを振り返る。

    【方法】救命救急センターに搬送され、脳死前提条件を満たした患者の家族支援を対象とした後方的観察研究。入院重症患者対応メディエーター導入前後での、治療方針決定までの経過や終末期の過ごし方に関する移植医療の情報提供のタイミングや確認までの支援、終末期の過ごし方へのチーム連携を比較する。

    【結果】入院重症患者対応メディエーター導入前後で治療方針決定までの日数に変化はないものの、終末期の情報提供のタイミングおよび確認はチーム連携により早期化した。また、臓器提供の有無に関わらず多職種カンファレンスの実施や継続的な家族支援が強化された。

    【考察】終末期において家族が主体的に過ごし方を考える時間を持つことは、患者・家族の意思決定において非常に重要であると考えられ、入院重症患者対応メディエーターの導入は、救急・集中治療領域において有効な家族支援強化の方策である。

  • 土屋 美代子, 大西 秀樹, 石田 真弓, 堀野 いずみ, 中埜 信太郎
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s274_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    臓器提供者の多くは突然の発症であり、家族は危機的な心理状態にある。そのような中、回復不可能であることを診断、告知され、家族は残された時間に限りがあることを認識する中で様々な意思決定を行わなければならない。今回、心臓移植後患者が脳死となり、脳死下臓器提供の意思決定に至るまで、レシピエントの家族として、ドナーの家族としてのケア・支援を経験した。医師、看護師、県臓器移植コーディネーターと連携し、それぞれの立場で寄り添うことは重要だが、今回の特殊な状況において精神腫瘍科のリエゾンチームの支援は大変有用であった。臓器提供後のケアも含め、レシピエント移植コーディネーターとして、臓器提供に関わった経験を報告する。

  • 池田 千絵, 福山 賀代, 中島 健吾, 沖原 正章, 赤司 勲, 木原 優, 今野 理, 中村 有紀, 岩本 整, 河地 茂行
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s275_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景・目的】本邦は、諸外国に比べ移植医療への理解が低く、内閣府の調査でも臓器提供に係る意思表示率は約1割である。当院では、移植医療に携わる病院として移植医療の普及・啓発活動を行ってきたが、意思表示率が低い事実すらも十分に市民に届けきれていないという課題を感じた。そこで市民に対する新たなアプローチを見出すため、2018年に在京のプロスポーツチームへ1通のメールを送ることにした。その後、プロスポーツチームや病院等の協力を得ていき活動の幅を広げることが出来た。今年度は、コロナ禍に合わせた取り組みとしてグリーンリボンマスクキャンペーンも始めた。今回、メールから膨らんだ移植医療の普及・啓発活動おける当院の取り組みを報告する【参加者】職員・職員の家族・移植者・プロスポーツチーム・市民【活動内容】①試合会場における移植医療普及・啓発活動②グリーンリボンマスクキャンペーンの立ち上げ【結果・考察】一つのきっかけでも、大きな活動の輪が出来る事が示唆され、移植に直接関わらない人を巻き込むことで、市民の目線に立ち戻れ、より伝わりやすい方法を模索する糧となった。活動を通じて、より多くの市民に意思表示の大切さを理解してもらい、意思表示が増えることで提供数の増加に繋がると考える。今後の課題は、活動を継続し更に普及啓発活動の輪を広げることである。

  • 吉開 俊一
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s275_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    移植医療には一般国民の理解と協力が必要であるが、日本では移植の話題は冷え切っている。救急医療側には、提供者と共に移植待機者を救う職務の認識が未だ薄く、学会は移植医療を支援はするが推進する立場にはないと明言している。筆者は脳神経外科医師の立場で臓器提供の啓発活動を16年間展開する中、移植医療の機運を温め直す根本的手段に思い至った。それは、日本赤十字社が「献血にご協力お願いします」と求めるのと同様に、移植関連学会やネットワークが社会に「臓器提供にご協力お願いします」と臆せず願い求めることである。現行の啓発手法は、人の心中を過剰に忖度し、選択肢提示は提供への誘導になるなどの負の同調圧力に屈し、ドナー不足は説明しても臓器を提供して欲しいとは口に出せず、社会に忖度を求めている。しかし被災募金や献血のような明確な願いや求めは、迂遠な唆しや誘導ではない。そして国民は求められて初めて提供を前向きに考える。諸外国のオプトアウト制度などは国や学会の積極性を示し、国民もそれに反応する。日本でも、移植医療側が勇気を持って「臓器提供を前向きに考えてほしい」の熱意を発して世間を温め、救急医療側にはプロ意識に基づいた提供推進へと態度を変えさせたい。 参考論文:吉開俊一. 日本の医学界に内在する臓器提供の発展への問題点. 移植 2022; 56: 425-428

  • 村上 穣, 山崎 大, 鈴木 都美雄, 副島 雄二, 石塚 修, 上條 祐司
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s275_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】教育や啓発により臓器提供の意思表示が増加することが報告されているが,誰が最も市民にアピールできるかはほとんど検討されていない。

    【方法】長野県臓器移植推進委員会は新聞広告を用いた臓器提供啓発キャンペーンを実施した。2021年1月9日に発行部数439,733部の信濃毎日新聞に啓発広告が掲載された。広告には、臓器提供の意思表示を呼びかけるメッセージに加え、泌尿器科医、移植外科医、腎臓内科医、透析医、眼科医、自身が腎臓内科医である腎移植患者(患者兼腎臓内科医)の6名が顔写真とQRコード付きで掲載された。新聞読者は、それぞれのQRコードを読み取って臓器提供に関する各動画を視聴できた。評価項目は、新聞掲載後30日間の動画再生回数とし、YouTubeアナリティクスで評価した。掲載された6名において各動画を視聴した人の割合と95%信頼区間を比較した。

    【結果】動画はのべ262回視聴された。患者兼腎臓内科医の動画が最も視聴回数が多く(視聴割合0.019% [95%信頼区間 0.015-0.023])、次いで透析医(0.011% [0.008-0.014])、腎臓内科医(0.010% [0.007-0.014])、泌尿器科医(0.008% [0.006-0.012])、移植外科医(0.006% [0.004-0.009])、眼科医(0.005% [0.004-0.008])と続いた。

    【結語】臓器提供の啓発動画を視聴した回数は,患者兼腎臓内科医によるアピールが最も多かった。臓器提供の意思表示を啓発するためには、医療者は患者の参画を考慮する必要があると考えられた。

  • 齋藤 裕, 島田 光生, 寺奥 大貴, 山田 眞一郎, 池本 哲也, 森根 裕二
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s276_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】脳死ドナー不足解消のため、移植医療の普及啓発活動を紹介するとともに、医療系学生に対するドナーアクション(命の授業)の必要性について言及する。

    【対象と方法】2010年~2018年(2019年以降はCOVID19感染拡大のため中止中)に、徳島大学医療系学生の1年生を対象として命の授業を実施し、授業前後のアンケート調査からみえる医療系学生の現状を解析した。

    【結果】参加人数は2010年が63名であったが、2018年には264名に達した。臓器提供意思表示率は、10-15%前後を推移しており、ドナーアクション後では、ほぼ100%の学生が意思表示すると回答した。本邦でのドネーションの現状、Opt in/outのシステムに関してなど、ほとんどの学生が知らない状況である。移植医療を通じて、普及啓発のみならず、医療従事者を志す上での命の大切さについても実感してもらう機会にしている。

    【結語】医療系学生の移植医療に対する知識理解、また、医療従事者として、命に向かい合う自覚や覚悟は乏しく、低学年からのドナーアクションが必要である。

  • 佐々木 千秋, 平山 雅敏, 青木 大, 西迫 宗大, 島﨑 潤
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s276_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【目的】当院では、全死亡例臓器提供意思確認システムRoutine Referral System(RRS)を通じて、院内死亡例における献眼の意思確認をしている。今回、COVID-19流行期間での当院における献眼の変化を検討する。

    【方法】COVID-19流行前(2019年度)と流行時(2020年度、2021年度)において、当院の記録をレトロスペクティブに解析し、院内死亡例数、連絡率、出動率、献眼者数、提供率を比較した。

    【結果】院内死亡例数は、2019年度562例、2020年度472例、2021年度448例であった。連絡率はCOVID-19流行に関わらず、95%以上を維持できていた。病棟内死亡例(病棟例)と救急外来死亡例(救急外来例)における出動率は、病棟例では2019年度49.8%、2020年度43.7%、2021年度41.1%であった一方、救急外来例ではそれぞれ96.3%、37.0%、71.6%と変化がみられており、COVID-19が否定できない症例への対応の変化が要因と考えられた。献眼者数は流行前に比べ半数以下となったが、提供率でみると病棟例では2019年度8.6%、2020年度6.7%、2021年度8.0%、救急外来例ではそれぞれ8.4%、0%、4.1%と改善傾向となった。

    【結論】COVID-19流行期間においても、感染状況に応じた適切なスクリーニングのもとRRSを通じて献眼意思確認を継続することは重要である。

  • 瀬田川 美香, 齋藤 満, 藤山 信弘, 山本 竜平, 羽渕 友則, 伊藤 歩, 相庭 結花, 桂田 歩, 夏井 遼
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s277_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】秋田大学医学部附属病院泌尿器科で、1998年~2021年10月までで生体腎移植を希望して術前検査を開始したドナー・レシピエントのペアは計555組であった。今回、当院での生体腎移植希望者が腎移植に至らなかった理由および詳細を明らかにすることを目的に本調査を行った。

    【方法】当院での生体腎移植希望者の中で、移植に至らなかった腎移植ドナー・レシピエント148組の外来カルテから腎移植に至らなかった理由を抽出し、それぞれカテゴリ化して分析した。

    【結果】腎移植に至らなかった理由としてドナー要因が82件(55.8%)、レシピエント要因が53件(36.1%)とドナー要因の方が多かった。ドナー要因としては「採血・採尿検査結果」、レシピエント要因としては「全身状態不良」「抗体陽性で拒絶リスクが高い」が最多であった。腎移植に至らなかったペアにおけるドナー候補とレシピエント候補との関係性によって腎移植不施行の理由は異なっていた。【考察】腎移植に至らなかった理由はペアの属性により腎移植不施行の理由により異なるため、対象に合わせた検査の順番が必要になる可能性がある。また、腎提供の意思がないドナー候補がいた場合に外来で対応できる体制構築が必要と考える。

    【結論】当院での生体腎移植希望者のうち腎移植に至らなかった理由として、ドナー要因の方がレシピエント要因よりも多かった。各ペアの特徴にあわせた検査順序の検討が必要かもしれない。

  • 吉田 幸世, 関谷 菜津美, 眞田 幸弘, 大西 康晴, 岡田 憲樹, 平田 雄大, 堀内 俊男, 大豆生田 尚彦, 大友 慎也, 大柿 景 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s277_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    背景:COVID-19国内初感染から2年が経過し、国内感染者数は840万人を超え、移植後患者の感染報告も増えてきている。当科におけるコロナ禍の現状とレシピエント移植コーディネーター(RTC)の役割を報告する。

    方法:2022年4月までに当院に通院中の肝移植後患者426名に対し行った外来支援よりコロナ禍におけるRTCの役割を検討した。流行初期は電話診療の導入に向けた院内調整、新種のウイルスに対する患者への生活指導を行った。その後は、ワクチン接種に関する相談、緊急事態宣言発令時の電話診療対象者のトリアージ、COVID-19陽性患者への対応を行った。

    結果:当院のCOVID-19感染状況は、感染者数28名、発症時年齢中央値17.5歳(1-70歳)、移植後経過年数中央値13.5年(0-26年)。感染経路特定15名、免疫抑制療法は26名で施行、重症度分類は中等症Ⅰ4名、軽症24名であり、治療は全例酸素不要、他院で1名に抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体が投与された。転帰は全例治癒、合併症はコロナ関連深部静脈血栓症1名であった。当院への報告は発症時22名、事後報告6名(内アドヒアランス不良4名)であり、事後報告の4名に免疫抑制薬の減量指導ができなかった。

    考察:COVID-19は居住地の行政によって治療方針が決定されるが、移植施設も並行して患者の感染状況を把握し、重症化の早期発見に努めることが重要である。収束が見えない状況下において今後も情報発信や継続支援が必要である。

  • 杉元 弥生, 朝居 朋子, 明石 優美, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s277_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    目的:レシピエント移植コーディネーター(RTC)がどのようなことに困難を感じ、その困難にRTCの属性が影響するのかを明らかにすること。方法:全国168移植施設のうち、協力の得られた67施設122名のRTCに対し、2019年無記名自記式質問紙調査を実施した。結果:回収数68(回収率55.7%)。RTCのキャリア形成(経験年数6年目以上、認定取得、専従・専任)により困難を感じる者が少ない項目は、生体移植の意思決定の援助におけるレシピエント候補者の援助、臓器移植前の脳死下/心停止下移植を受けるレシピエントの精神的援助、臓器移植直後から退院でのレシピエントの退院指導であった。キャリア形成に関係なく困難を感じる項目は、脳死下/心停止下移植及び生体移植の意思決定の援助におけるレシピエントのキーパーソンの援助、生体移植の意思決定の援助におけるレシピエントの家族間や生体ドナーの援助、脳死下/心停止下移植でのRTC自身の勤務調整、退院後のレシピエントの社会復帰の援助、レシピエントやレシピエントのキーパーソンの教育、脳死下/心停止下移植を受けたレシピエントの精神的援助であった。考察:生体ドナーの意思決定や脳死下/心停止下移植でのレシピエントの精神的援助など倫理面や精神面での困難が多く見られた。RTCは、移植のチーム医療の中心となり、他職種連携につなげることで、様々な困難の解決につながると考える。

  • 板羽 紗折, 杉元 弥生, 松田 安史, 纐纈 一枝, 星川 康, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s278_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】藤田医科大学病院は、臓器提供263件、移植680件(腎498、膵98、肝84)の実績を有する(2022年5月時点)。さらに2020年12月本邦11番目の肺移植実施施設となった。ICU看護師2名が肺移植レシピエントコーディネーター(RTC)を兼務し医師とともに肺移植の立ち上げを行った。

    【目的】新規施設におけるRTC業務の立ち上げ、確立のための取り組みをまとめたため、共有したい。

    【結果】①本学大学院保健学研究科「臓器移植コーディネート分野」で臓器移植とRTCの役割を学習。②既存施設で肺移植診療およびRTC業務の研修を受けた。③既存施設のRTCから適応検討・登録〜移植実施〜術後経過観察におけるRTCの役割について指導を受けた。④移植術後退院のしおりを作成。⑤院内各部署に肺移植RTC業務を周知、業務時間を確保。⑥適応検討〜待機登録までの作業を移植医と共に行い業務フローを確立。⑦既存施設で肺移植を受けた患者の外来診療に同席し自己管理を支援。⑧ドナー発生時机上シミュレーション、カダバートレーニングを通して肺移植手術全体を理解した。

    【考察】肺移植診療の円滑な実施、患者の合併症予防や予後改善にはRTCが重要な役割を担う。登録から術後経過観察までを理解し、新規施設においてRTC業務を確立するためには、知識の習得、症例の経験、環境の整備、コーディネーションスキルの獲得など多くの取り組みが必要である。

  • 平野 加奈子, 中里 弥生, 上遠野 雅美
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s278_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    はじめに

    COVID-19感染蔓延に伴い、日本移植学会よりCOVID-19の移植治療における基本指針が決定された。当院では対策開始の2020年3月6日から2022年3月31日までに112例の肝移植が実施された。日々更新される対策下の中で患者・家族への負担は大きく通常とは異なる状況で移植医療を遂行せざるをえない状況だった。

     目的 

    本研究は、COVID-19対策開始前後を比較した上で、 RTCが対策下で行った支援を考察し、患者・家族が安心して移植医療を受けるための具体的施策を考え、より良い支援に繋ぐことを目的とする。 

     方法 

    対象はCOVID-19対策中の2020年3月6日から2022年3月31日までに、当院で移植手術をされた症例と対策前を比較、COVID-19対策によりいかなる制限があったか、その制限に対してどのような支援の工夫を行ったか後方的研究により明らかにする。

    結果 

    日々更新されるCOVID-19対策の中で、ドナー、非ドナー、兄弟支援等を対面の面談ができない状況下でのサポート調整として事前の資料郵送、オンライン電話面談を行った。特に同居家族体調不良時の相談対応を複数回行ったことが明らかになった。

    考察 

    面会制限下での移植手術調整は患者・家族への心理社会的負担は大きく、体調不良時の相談対応は緊急の調整を要する。COVID-19対策下において、限られた時間の中で患者・家族が移植医療を納得して行うために事前の情報提供、体調不良時の調整を早期対応することは、より良い支援に繋がると示唆された。

    おわりに

     COVID-19対策下のRTCの支援を明らかにしたが、今後その他の原因で移植医療の遂行が困難になった際にも支援を参考にできると考える。 

  • 上村 恵子, 長坂 隆治
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s278_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    2017年に献腎移植登録への年1回の通院が義務付けされた以前より、当院では献腎移植登録患者は年1回の受診時に心臓超音波検査、頸動脈超音波検査、胸腹部CT検査、骨塩定量測定を実施している。血液検査も一般検査のみならず、内分泌・腫瘍マーカーも測定している。現在、当院の献腎移植フォローアップ外来には93名(現在年齢55.5±10.1歳・透析歴136ヶ月±75.6ヶ月・登録年齢45.5±9.4歳)が通院しているが、その検査結果はすべての各透析施設へフィードアップし、献腎移植候補にリストアップされた際に躊躇なく移植手術が行えるように備えている。特に続発性副甲状腺機能亢進症についてはCa値やインタクトPTHを測定し内科的治療が困難となった際には手術を患者に勧めている。これまでに19名の献腎移植登録患者に副甲状腺全摘術を行っており、これを契機に近隣の施設から献腎移植登録患者以外の症例に対する手術依頼も増加している。また献腎移植登録外来フォロー中に腎臓癌7名、肝臓癌1名を早期に診断し外科的治療を施行している。

     以上のことから当院の献腎移植登録外来では、登録患者が登録を継続するためだけに受診するのではなく、異常を早期に発見できる機会となり生命予後に貢献しているものと考える。

  • 野畑 真由美, 西川 朋子, 今井 美登子, 後藤 憲彦, 鳴海 俊治, 渡井 至彦
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s279_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    当院では、2020年の移植時年齢が70歳以上の患者が約20%を占め、高齢者の腎移植症例は増加傾向にある。一方で、移植腎生着率の長期化により腎移植者の高齢化は進み、現時点で70歳以上の腎移植後患者は180人を超えている。

     加齢に伴い多くなる合併症として、発がん、脂質異常症、糖尿病、脳血管障害、循環器疾患、整形外科的疾患、認知症などがあるが、これらのリスクを腎移植前に予測することは難しいこともある。

     当院通院中の70歳以上の腎移植後患者を対象とし、家族構成、自己管理状況、仕事・地域活動の有無、趣味の有無、通院手段・通院費用、通院時の付き添いの有無、介護保険制度・介護認定、在宅支援のニーズ、かかりつけ医の有無、ADLなどについて面談にて聞き取り調査を実施し、生活療養の実態と在宅支援などの現状について把握をし、適切な支援とその介入時期について検討したので報告したい。

  • 佐竹 弘樹, 寺本 千恵, 澤渡 浩之, 大段 秀樹, 田邊 和照
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s280_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    背景:生体肝移植成人レシピエント(レシピエント)に携わる病棟看護師(移植看護師)の認識と看護実践(ケアリング)は明らかではない。本研究の目的は移植看護師における移植前・移植直後・退院前といったレシピエントに対するケアリングの実情について明らかにし、今後の課題に関する示唆を得ることとした。

    方法:移植看護師へレシピエントを担当した経験について2021年2~5月に半構成的面接を行った。調査内容を分析し、サブカテゴリー化、カテゴリー化した。本研究は広島大学疫学研究倫理審査委員会の承認を得た。

    結果:7名(女性5名)の調査協力があった。移植看護師の認識では7のカテゴリーと26のサブカテゴリーが生成され、看護実践に関しては11のカテゴリーと32のサブカテゴリーが生成された。移植看護師はレシピエントに関わる際に【生体肝移植前における他の外科系手術と異なる術前看護】【レシピエントと共にあるドナーに対する体調や心境の配慮と困難さ】等を認識しながら、【術前から術後の実際を説明し,レシピエントの望む生活を確認しながら関係性を構築する】【入院時からセルフマネジメントの支援者および在宅環境を確認し、必要時は調整しながら退院指導を行う】等の看護実践をしていた。

    結語移植看護師のケアリングおよびその特性が明らかになった。 本結果に示された卓越した看護を集約し、体系化された教育プログラムの開発が期待されると考える。

  • 佐々木 康之輔, 豊田 吉哉, 小野 稔, 千葉 由美
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s280_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】本邦での心臓移植は、改正臓器移植法施行以来、年間50例以上実施されるようになったが、心臓移植患者への看護実践の体系化は十分とはいえない。そこで、心臓移植看護に関する学術的報告について文献調査を行った。

    【方法】MEDLINE/PubMedを用い、「Nurse」、「Advanced practice registered nurse」、「Certified nurse specialist」、「Nurse practitioner」に「Heart transplant」を組み合わせて文献検索を行い 2022年5月までの英語文献を対象とした。本検討では小児心臓移植看護は除外した。

    【結果】502件の抽出文献の内、15文献を選出した。ケースレポートが3件、プロトコル報告が1件、レビューが9件、後方視的研究が2件であった。レビューでは、心臓移植患者特有の合併症(除神経心、不整脈、心不全、腎不全、血糖管理、免疫抑制、感染症、拒絶反応)への管理および退院後生活に関わる患者教育が重要であることが述べられていた。後方視的研究では、どちらも退院後患者教育の重要性を示唆しており、外来での継続的な教育支援が予定外再入院率の低下に繋がることを報告していた。

    【結論】心臓移植看護の学術的報告は十分でないことが明らかとなった。また、心臓移植看護において退院後の継続的な看護支援が必要であることが示唆された。

  • 山本 洋子, 菊本 さやか, 原 麻由美
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s280_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    臓器長期生着に伴い、肝移植後患者の高齢化が進み、家族の介護負担は増加している。そのため、生活環境の変化に合わせた支援が必要である。今回、後期高齢者となり療養支援が必要となった症例を報告する。

    【症例・経過】

    Y氏70歳代女性、PSCに対して生体肝移植術を施行した。夫と長女の3人暮らしで、生活の大半は夫婦で過ごし、外来受診は夫の運転で通院していた。20XX年(移植後14年)胆管炎による敗血症で入院し、退院後も胆管炎による入退院を繰り返すようになった。この頃より徐々にADLおよび認知力の低下を認めた。また同時期に夫が脳梗塞を発症し、徘徊を繰り返すなど自宅療養が困難となった。Y氏の自宅退院も検討したが、長女が一人で両親の介護をすることは難しいため、夫と同じ療養施設への入所をMSWと調整し、長女の休日には自宅で過ごすことができるようになった。

    【考察】

    本人の病状に加え夫が突如として要介護状態となり、ライフスタイルが変化し、家庭内役割の変更が必要であった。支援調整のため、RTCが面談毎に本人や家族の意向と生活状況を確認したことで、円滑に必要な支援を導入することができたと考える。RTCが家族を含め、継続的に生活環境を確認し、多職種で情報を共有することの重要性が示唆された。

    【結語】

    肝移植後患者の高齢化に伴い、療養支援を必要とする症例が増加する。支援の導入や再考に備え、RTCは患者の生活環境を把握しておくことが重要である。

  • 河野 恵, 野口 文乃, 仲宮 優子, 湯沢 賢治
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s281_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】腎領域の認定レシピエント移植コーディネーター(RTC)の人数は多いが、ようやく移植実施施設基準の配置が義務付けられるなど業界での認知度は低い。移植後管理は重要なRTCの役割であるが、感染予防、水分管理だけでなく、栄養管理、運動療法、生活習慣病予防など多岐に渡り、その体制や業務内容・指導内容は施設差がある。特に感染予防への指導内容の差は大きくRTC間では関心と疑問の一つであった。またチーム医療の要としての存在も求められており、業務負担も大きく働き方や後進育成の課題もあげられる。しかし実際、RTCの在籍の有無ですら把握するすべがなく、本邦での腎移植後管理における体制整備、教育ツールの作成や指導スキルの底上げには、現状を把握することが必須と考え、今回調査を行った。

    【目的】本邦での腎移植後管理指導・RTC活動の現状を把握し、RTCの役割の明確化および今後の腎移植・CKD医療の向上の一助とする。

    【方法】第54回日本臨床腎移植学会参加および不参加の移植実施施設計157施設のRTCもしくは看護師に1施設1回答のwebアンケートを実施。

    【結果】指導管理体制やRTCの介入状況、チーム医療、共有ツール、感染予防などの指導内容の差について現状を把握することはできた。今年度、腎移植ケアガイドも発刊され、エビデンスに基づくケアやケアの均霑化が問われる中、今後RTC介入でもたらす効果やケア評価などからRTCの存在意義を明らかにすることが求められる。

  • 原田 絵美, 成田 尚子, 渡邊 美佳, 高原 武志, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s281_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    当A院院は2022年5月末時点で,臓器提供263件,臓器移植666件(これまでに膵移植9791件,腎移植438485件,肝移植84件)の移植医療を実施している.肝移植に関しては,生体肝移植実施施設となっており,2021年度より臓器移植センターへレシピエント管理病棟の移行を行ったため報告する.

    【目的】

      肝移植レシピエント管理病棟移行後の肝移植看護への課題を明らかにする.

    【方法】

      レシピエント管理病棟移行プロセスの振り返りを行い,肝移植1症例実施後の課題を抽出する. なお本演題で発表する内容は倫理審査委員会での承認を得て実施した.

    【結果】

      肝移植は,2020年度まで消化器センターにて管理を行っていたが,2021年度より移植前検査入院時より臓器移植センター管理となった.術後急性期はICU・HCUとなるが,各部署で患者情報を共有しシームレスな看護を提供するため,レシピエント移植コーディネーター(RTC)を中心に症例カンファレンスを定期開催した.また,肝移植に関する基本知識獲得のため,一般的な肝移植医療についての講義を医師が執り行い,多臓器移植に対応できる看護スタッフの育成に努めた.肝移植は術前の患者重症度が症例ごとに大きく異なるため,疾病への理解と対応を深める事,また術後生活指導の内容の充実が今後の課題として挙げられた.

    【結語】

      肝移植看護の充実に向け,疾病の理解や他部門との連携および肝移植後生活指導向上が課題として明らかになった.

  • 山口 友美, 伊藤 美樹, 成田 尚子, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s281_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【はじめに】

    当院は膵移植97件と本邦有数の施設であり、膵島移植実施施設となったことから、糖尿病移植医療拠点として果たす役割は大きい。新たに始まる膵島移植看護の構築と共に、膵移植看護の質向上も必要となる。そこで膵移植看護と腎移植看護を比較し、膵移植特有の看護援助について考察を行った。

    【目的】

    膵移植看護の特徴を明らかにし、膵移植看護の質を向上する。

    【方法】

    術前後の看護援助内容について膵移植と腎移植とを比較し、膵移植に必要な看護を明確化する。

    【結果】

    膵移植における代表的な移植後合併症は、術式や移植血管の特徴などから再手術が必要な血栓症や出血、イレウスなど重篤な合併症の割合が高くなっていた。移植後のサイトメガロウイルス抗原陽性率に関しては、腎移植45.9%、膵移植78.8%と有意な差が出ていた。移植術全体の拒絶反応発生率は約7%であり、臓器別に比較しても発生率に有意差はなかった。しかし、拒絶反応発症後のグラフト生着率に注目すると、腎移植の廃絶の割合は10%であるのに対し、膵移植の場合は60%と格段に廃絶に至る確率が高くなっていた。よって、感染症・拒絶反応に対する早期発見や対処の重要性は膵移植の方が高く、患者指導の際には腎移植の場合よりも強調して指導する必要がある。

    【結語】

    膵移植看護では、術後経過を予測した上での看護実践の提供、その中で予測不可能な合併症に対し、いかに迅速に気づくことができるかが鍵となる。

  • 伊藤 美樹, Joyce Trompeta, Maria Molina, 伊藤 泰平, 眞野 惠好, 剣持 敬
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s282_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

     移植医療の現状は,世界的に見ると地域差があるといえる.それに伴い,移植看護に関しても学問のみならず臨床レベルにおいても地域差があることが想定される.世界規模の移植看護組織として国際移植看護学会(International Transplant Nurses Society: ITNS)が存在し,前述の現状を踏まえて,世界における移植看護の実態調査や,質の確保のための移植看護教育システム開発などを行っている.

    ITNSによる移植看護発展に対する具体的取り組みとして,

    ①年次総会における最新の研究提示

    ②継続教育に関連したプログラム開発

    ③多言語によるスタッフおよび患者教育ツールの確立

    ④移植看護ならびにコーディネーターの教育ラダーの提供

    ⑤移植看護書籍発行

    ⑥独自のSNSを介したライブ感覚での情報交換による質疑応答の推進

    ⑦移植看護研究関連ツールの紹介や研究支援

    などがあげられる.これらの取り組みに対し,世界中の会員の意見がダイレクトに学会運営に反映されやすい開かれた体制をとっている.

     移植看護のグローバル化とエビデンスに基づく質の向上を大きな目標に掲げるITNSの取り組みについて紹介する.

  • 小野原 聡, 白川 浩希, 奥村 光一郎, 別府 寛子, 石渡 亜由美, 川西 智子, 小川 俊江, 阿部 恭知, 遠藤 真理子, 若井 幸 ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【症例】23歳男性。既往歴に特記事項なし。

    【現病歴】X年春(22歳時)、学校検診で蛋白尿指摘。X+1年1月に倦怠感、顔面浮腫にて近医受診。血圧200 mmHg以上、Cr 21.87 mg/dLの状態で緊急入院後、血液透析導入となった。腎生検にて糸球体硬化像を認め、悪性腎硬化症と診断。X+1年2月に左前腕内シャント造設し、維持透析開始。X+1年4月、生体腎移植を希望し当院紹介受診。

    【経過】ドナー候補の母は精査にてループス腎炎と診断されたため、父へ変更することになった。父の術前検査でHCV抗体(+)、HCV-RNA(+)が判明。レシピエントはHCV未感染であり、父のHCV治療後に腎移植を施行することになった。父のHCV治療終了後3か月間のHCV-RNA(-)を確認し、X+2年5月、父をドナーとした血液型適合生体腎移植術を施行。術前免疫抑制剤はTAC、MMF、MP、Basiliximabの4剤。術後経過は問題なく退院。

    X+3年2月、定期外来検査にてHCV抗体の陽性転化を認めたが、HCV-RNA(-)であり、また、ドナーである父もHCV-RNA(-)が継続されている。現在、肝機能は正常で、移植腎機能もCr 1.2mg/dlと安定している。

    【考察】HCV治療後のドナーからHCV未感染のレシピエントへ腎提供を行った場合、

    腎移植後、約4割のレシピエントにおいてHCV抗体陽性転化することが報告されている。

    今回、同様の症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

  • 阿部 哲也, 石井 大輔, 井村 夕姫, 野口 文乃, 北島 和樹, 和田 達彦, 竹内 康雄, 吉田 一成
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    Antiviral therapy(ART)によりHIV感染症によるAIDSでの死亡率は減少した。その一方で慢性期合併症である慢性腎臓病の有病率は上昇している。ARTにより、HIV感染腎移植患者の生命予後も改善しが、日本ではHIVに対する差別や偏見が未だ根強く、腎移植数も少ない。当院で経験した3例から、HIV感染腎移植を円滑に施行するための多職種との連携の重要性について検討した。全例で移植医、腎臓内科医、感染症内科医、肝臓内科医、看護師、薬剤師、栄養士、臨床心理士が連携し、医学的問題や社会心理的背景を協議し、共有した。術後拒絶反応なく、CD4+リンパ球数も保たれており、HIVウイルスの検出もなく経過できている。外来でも多職種での情報共有が継続され、腎機能並びにHIV管理の経過は良好である。

    HIV感染慢性腎臓病患者にとって腎移植術は選ばれるべき腎代替療法のひとつである。腎移植に際して拒絶反応のリスク回避のための免疫抑制療法の調整や、薬剤相互作用の習熟、社会・心理的など専門的な支援が求められる。自施設でHIV感染患者に対して腎移植医療を安全で円滑に行うためには多職種連携が重要である。

  • 西田 翔, 須田 遼祐, 大山 雄大, 南園 京子, 佐々木 元, 石川 暢夫, 岩見 大基
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s283_3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【背景】献腎移植は、長期透析から離脱し患者のQOLを高める有効な手段である。一方で患者選定から移植手術に至るまでに与えられた時間は極めて短く、手術適応判断が難しい症例もある。今回、嚢胞感染の既往をもち、献腎移植術後に嚢胞感染を繰り返した症例を経験したため報告する。

    【症例】67歳男性。多発性嚢胞腎による慢性腎不全にて20年前に血液透析導入となった。

    血液透析期間中は年1回の頻度で嚢胞出血と嚢胞感染を発症し保存的加療で改善していた。

    20XX-3年に脳死下献腎移植術を受け血液透析を離脱したものの固有肝・腎嚢胞感染を繰り返した。3年間で合計14回の入院抗生剤治療を行い、外来通院中も間欠的な抗生剤治療を要し、経時的に全身状態の低下を認めた。以上の経過より、感染巣の可及的な摘除を目的として、20XX年に肝嚢胞が集中している肝左葉切除と両側固有腎摘出術を施行した。手術時間は10時間30分で出血量は2000mlであった。術後リハビリを経ながらADLの一時的な改善を認めたが、肝切除断端部膿瘍や尿路感染により全身状態が再度悪化し、最終的には誤嚥性肺炎を併発し術後6か月で死亡にいたった。

    【結語】嚢胞感染コントロールが献腎移植後困難となった症例を経験した。本症例のような献腎移植待機患者への腎移植術の適応の可否・判断のタイミングと外科的介入の是非について協議したい。

  • 西村 慎吾, 荒木 元朗, 奥村 美沙, 関戸 崇了, 徳永 素, 坪井 一朗, 和田里 章悟, 吉永 香澄, 丸山 雄樹, 山野井 友昭, ...
    2022 年 57 巻 Supplement 号 p. s284_1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/02/23
    ジャーナル フリー

    【緒言】増加傾向にあるABO血液型不適合や抗ドナー抗体陽性の生体腎移植において、リツキシマブとアフェレーシス併用を中心とした術前脱感作療法が主流となっている。リツキシマブの抗体産生抑制による周術期感染症の増加が懸念され、今回、後方視的検討を行った。

    【対象と方法】当科で2009年5月から2022年3月までに行った生体腎移植139例中、「泌尿器科領域における周術期感染予防ガイドライン」で推奨された、単回もしくは72時間以内の予防抗菌薬投与の111例を対象とし、術後1か月以内に抗菌薬投与を必要とした細菌感染症のリスク因子を単変量および多変量解析を用いて検討した。

    【結果】全ての細菌感染症が尿路感染症(Urinary tract infection;UTI)、21例であった。UTIのリスク因子についての単変量・多変量解析では、糖尿病やASA、維持透析、予防抗菌薬投与期間等は有意差なく、リツキシマブとアフェレーシス併用の脱感作療法は単変量で有意差を認め(p=0.048)、多変量では強い関係を示した(p=0.054)。サブ解析では、リツキシマブとアフェレーシス併用例においても予防抗菌薬投与期間はリスク因子ではなかった。

    【結語】リツキシマブとアフェレーシス併用の脱感作療法を施行する免疫学的ハイリスク腎移植ではUTIが増加する可能性がある。

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