ラットにビタミンA (Chocola A) を投与し (1回15,000i.u.を隔日に7回筋肉内注射), 肝臓の伊東細胞 (脂肪摂取細胞) の脂質滴が増加した状態の材料を使用してフリーズ・レプリカ法を試み, 超薄切片像と比較検討した.
レプリカ像では伊東細胞の多くの脂質滴は平滑な凸面或は凹面をもって割断され, しばしば割断面上に1~2層或はそれ以上の薄膜が重層して現われる.また中心部から周辺部まで同心円状の層板で充満した滴もみられる.一方脂質滴の内部がほぼ水平に割断された場合, 不規則でわずかな凹凸のある粗な面を呈する脂質滴もある.その他, 滴の表層部に層板構造が現われ, 他の部分は粗な面を呈するものや, 1-3個の同心円状の層板構造をもった小球が1個の脂質滴の中に見出されるものなど種々の像が観察され, これらのレプリカ像にそれぞれ対応すると思われる像が超薄切片像でも確認された.脂質滴が相接して融合する際, 滴の表層部の薄膜が互に融合し, 連続する像や, 一方の滴から層板構造をもった棍棒状の突起が他方の滴の内部に嵌入するように延び出すものがレプリカ像と超薄切片像の双方で認められた.
燐脂質に関する諸学者の生化学的, 形態学的研究の成果を考え合せると, 伊東細胞の層板構造をもった脂質滴には燐脂質が含まれることが推測され, ビタミンA (レチノール) は同心円状の層板構造をつくる燐脂質分子の問に配列して貯蔵されることが示唆される.
伊東細胞の核膜孔の分布は肝細胞の核膜孔の数よりも少なく疎である.Kupffer細胞の核膜孔は更に少なく, 少数個のものが小群をつくって分散する傾向がみられる.伊東細胞の細胞膜には多くのpinocytotic vesicleの小陥凹がみられ, この周囲に膜内粒子が小さい集団として認められることがある.またP面における膜内粒子がところどころで密に凝集し, 不規則な小集塊をなして散在するのが観察された.
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