マイコトキシン
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51 巻, 1 号
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総説
  • 辰野 高司
    原稿種別: 総説
    2001 年 51 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    日本のマイコトキシン研究の特色は,昭和12年に台湾で発生した黄変米の研究以来,原因となるカビの菌学と菌が生産する毒物による中毒学的特性を解明する医学と菌が生産する毒物の化学的性質を解明する化学の夫々の分野の研究者達による協同研究によっておこなわれたことである.協同研究を行うに当たって,研究者の質が高ければ高い程高度な研究結果が得られること,また協同研究を行っていく中で,夫々の研究者の質が高められることが明らかとなった.マイコトキシン研究会はそれらの研究に従事した研究者が中心となって結成され,発展してきた研究会である.これらの研究に携わった者として,研究に携わる研究者夫々が,研究自体の目的に沿った⌈水平的探索⌋を行うと同時に,研究者個々の研究分野でマイコトキシンを使っての⌈垂直的探索⌋が必要であり,それこそが協同研究の質を高めるものであることを記述した.そして,自分の研究分野での仕事を果たした上で,研究材料を作り,協力者に補給し続けて,これらの協同研究を支えられた角田廣氏を忘れてはならないことを記述した.
原著
  • 伊藤 嘉典, 前田 協一, 粟飯原 景昭
    原稿種別: 原著
    2001 年 51 巻 1 号 p. 13-24
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    1972年9月から1991年12月末までの間に、世界各国から日本へ輸入されたVirginia type(大粒種)剥き実生落花生 5,595 ロット、Spanish-Runner type(小粒種)剥き実生落花生 19,863 ロットの、輸入に先立つアフラトキシン B1(AFB1)検査を行った。その結果、大粒種剥き実生落花生 5,595 ロット中24 ロット、0.4%からAFB1を検出した。24 ロット中5 ロット、全体の0.1%から10ppb以上のAFB1が検出されたため輸入が拒否された。小粒種剥き実生落花生のAFB1汚染は、検査した31産国(未特定生産国を含む)中20ヵ国に認められた。検査した19,863 ロット中670 ロット、3.4%の試料からAFB1検出され、670 ロット中269 ロット、全体の1.4%から10ppb以上のAFB1が検出されたため輸入を拒否された。大粒種剥き実生落花生から検出されたAFB1の平均値は56ppb、その範囲は0.3ppb - 608ppbであった。小粒種剥き実生落花生から検出されたAFB1の平均値は202ppb、その範囲は0.1ppb - 8,070ppbであった。
  • 長嶋  等, 中村 久美子, 後藤 哲久
    原稿種別: 原著
    2001 年 51 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    ルブラトキシンBの毒性の血清学的マーカーを探すために、マウス血清中のトランスアミナーゼやグルコース,中性脂肪,コレステロール,インターロイキン(IL)-1β,IL-6,腫瘍壊死因子(TNF)-α量に対するルブラトキシンBの影響を調べた。ルブラトキシンBで24時間処理した後のC3H/HeNマウス血清中のトランスアミナーゼ活性は、コントロールに比べて非常に高かった。このことは、ルブラトキシンBが肝臓障害を引き起こしたためと考えられる。しかしBALB/cAnNマウスにおいては、ルブラトキシンBによる血清中のトランスアミナーゼ活性の上昇はさほどではなかった。ルブラトキシンBは両系統のマウスの血糖値を下げたが、ここでもBALB/cAnNでは影響が少なかった。血清中の中性脂肪とコレステロール量はルブラトキシンBに影響されなかった。C3H/HeNマウスにおいては、ルブラトキシンB24時間処理により、劇的な血清中のIL-6の上昇が観察された。これに対しBALB/cAnNマウス血清からは、IL-6はほとんど検出されなかった。また、IL-1βとTNF-αはどちらの系統のマウス血清からも検出されなかった。以上の結果は、ルブラトキシンBはBALB/cAnNマウスよりもC3H/HeNマウスにおいて強い毒性を示し、血清中のIL-6の発現を誘導することを示している。IL-6は、ルブラトキシンBの優れた血清学的マーカーになると思われる。われわれの結果は、ルブラトキシンBが薬剤性肝障害のよいモデルとなる可能性を示している。
第49回学術講演会発表の要約
特別講演
  • 眞鍋  勝
    原稿種別: 特別講演
    2001 年 51 巻 1 号 p. 25-29
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    我が国はカビを利用する伝統発酵食品が多いことから,マイコトキシン汚染の可能性について検討した.まず,アフラトキシン(AF)について調査した.我が国の麹菌株の大部分を網羅した238株について試験した結果,すべてにAFの産生を認めず,その後の麹菌検査でも産生株は発見されていない.また,米麹28点,みそ製品108点,自家醸造みそ33点,市販しょう油39点,国産米98点,輸入外米(6ヶ国)11点を全国より集めて試験した結果,すべての試料にAFの汚染はなくAF産生菌の着生も認められなかった.みそ及びしょう油の製造中にカビが繁殖してAFを産生する可能性について検討したが,仕込み時点に添加したカビ胞子は発芽・生育することもなく死滅した.次に,AFに汚染した原料で仕込みを行った場合を想定して,仕込み時にAFを添加した結果,みそでは発酵終了後にも一部分解せずに残存したが,しょう油では発酵中に全て解毒分解した.また,AF産生菌の地理的分布を土壌について調査した結果,沖縄等の亜熱帯地域から熱帯地域でかなりの頻度で分離された.そのほかのマイコトキシンとして,国産農産物からステリグマトシスチン(ST)を産生するAspergillus versicolorが,かなりの頻度で分離されることから農産物を分析調査した結果,保管不良の国産カビ米等にST汚染を認めた.STは注意すべきマイコトキシンの一種である. 発酵食品の安全性を向上するための研究では,A. oryzeの一部の麹菌株がサイクロピアゾン酸(CA)を産生することを発見し,しょう油製造中のCAの消長を試験した結果,約40日の発酵中に急激に分解・解毒することを認めた.この分解には酵母の関与が示唆された.さらに,鰹節の製造に利用するカビを業界等との共同研究で,製造に適しており,マイコトキシン産生のない安全な菌株Eurotium ruberE. repensを,選択・普及した.また,西ドイツ国立食肉研究センターにおける共同研究では,主にヨーロッパを中心に11ヶ国のカビを利用した肉製品64点を集め,青カビを442株分離し,マイコトキシンを産生しない発酵ソーセイジ製造に適したカビPenicillum nalgiovensisを選択した.
ワークショップ
  • Manfred GAREIS, Joachim WOLFF, Horst BRESCH, Gunther ENGEL, Heino ROSN ...
    原稿種別: Work Shops
    2001 年 51 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
  • 小西 良子
    原稿種別: ワークショップ
    2001 年 51 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    食品汚染マイコトキシンは,食品とともに摂取され消化管より吸収されたのちその毒性が発現されるため,これらマイコトキシンの腸管での吸収,代謝および毒性などは,標的細胞への毒性発現に大きな影響を及ぼしていると考えられるがこの分野の研究はほとんどなされていない.フザリウムマイコトキシンは,近年免疫担当細胞に対する毒性が注目されていることから,ヒトモデル系としてヒト腸管細胞およびヒト免疫細胞とのコカルチャー法を確立し,その毒性の解析を試みた.ポリカーボネート膜上にヒト腸管細胞を培養し,その基底膜側にリンパ球を培養する装置を用い粘膜側から吸収されたマイコトキシンのリンパ球への毒性をサイトカインの産生を指標に検討を行った.その結果1)腸管細胞はフザリウムマイコトキシンの曝露によってIL-8を産生すること,2)リンパ球はフザリウムマイコトキシンの曝露によってTNF-alphaを産生すること,3)リンパ球は腸管を経由したフザリウムマイコトキシンによってIL-10の産生を昂進させることがわかった.この培養法を用いることにより,今までの単一細胞を用いるin vitro試験法では解明できなかった毒性機序において有益な知見が得られることが期待できる.
  • Christopher DANKS, Siobhan A. OSTOJA-STARZEWSKA, Riffat H. RIZVI, John ...
    原稿種別: Work Shops
    2001 年 51 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    The detection of fungi and the analysis of mycotoxins in grain and other commodities traditionally require considerable time, expertise and often, sophisticated equipment. This leads to expensive and time-consuming methods, which do not lend themselves for ‘real-time’ measurement or ‘field’ type applications. To overcome these problems, work is in progress to develop antibodies, which can be incorporated into immunoassays and other rapid formats, for the specific and general detection of fungi and some of their associated mycotoxins. This paper describes the development of a ‘general mould’ reagent set, based on several monoclonal antibodies raised towards groups of serologically related fungi, including many which are potentially toxigenic, and also the development of a single monoclonal to the fungal membrane lipid, ergosterol. Applications for assays incorporating these antibodies, as well as their suitability for use in lateral flow devices for ‘on-site’ detection of fungi and mycotoxins, are discussed
  • Chris M. MARAGOS
    原稿種別: Work Shop
    2001 年 51 巻 1 号 p. 51-58
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    In attempting to improve upon existing screening assays for mycotoxins a number of biosensors and imaging systems in a variety of instrument platforms have been developed. The biosensor platforms that have been examined range from hand-held devices to benchtop instruments and use technology as diverse as fiber optics, liposomes, small particles (beads), surface plasmon resonance, and microcapillaries. Several of these devices show substantial promise as rapid, sensitive, methods for measuring mycotoxins. The imaging systems that have been developed are presumptive tests for fungal, and by extension mycotoxin, contamination. These systems have used principles as varied as color, fluorescence, and infrared spectroscopy and have been successfully used to indicate fungal contamination. The utility of the techniques for indirectly reducing toxin levels, by removal of product contaminated with fungi, has also been demonstrated. Studies by multiple laboratories to validate the newer biosensor and imaging systems would contribute significantly to their more widespread acceptance, and will hopefully be conducted in the near future.
  • 芳澤 宅實
    原稿種別: ワークショップ
    2001 年 51 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 2001年
    公開日: 2009/03/13
    ジャーナル フリー
    Scientific activities of the Japanese Association of Mycotoxicology since its establishment in 1974 were briefly overviewed. These acitivities included 49 annual meetings with 21 symposia and 8 workshops, international symposia in 1983 (IMC 3, Tokyo), 1988 (IUPAC, Tokyo) and 1999 (ISMYCO ′99, Chiba), technical seminars, publication of the journal “Mycotoxins”, opening the home-page, and international co-operations. In addition, author′s personal opinions regarding the following issues were mentioned in expectation of the future development of the Association: dynamics of fungi/mycotoxin-contamination and its effects, challenges to the discovery of new mycotoxins, the risk assessment and management of mycotoxins in Japan, and so on.
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