マイコトキシン
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58 巻, 2 号
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Review
  • John GILBERT, Hamide SENYUVA
    原稿種別: Review
    2008 年 58 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    The production of dried figs involves some unique agricultural practices, which present significant risk of fungal infection of the fruit and subsequent mycotoxin contamination. The figs are allowed to ripen and shrivel on the tree, and after falling to the ground are collected daily, before being laid out for sun-drying for 5 days or more. During the stage of optimum water activity (around 0.8) for fungal growth and at temperatures from 25-30 °C, fungal infection can easily take place either through spore-contaminated dust or insect transmission to the fruit on the tree, or directly from the soil or during the course of subsequent sun-drying. A variety of different fungal species can infect dried figs and as a consequence, contamination can occur with a large number of secondary metabolites including aflatoxins B1, B2, G1 and G2, ochratoxin A, patulin, fumonisin B2 and kojic acid. This review describes the agricultural production of dried figs and summarises the available data on occurrence of fungi and mycotoxins in figs providing insights into possible infection routes.
原著
  • 岩下 恵子, 長嶋  等
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    肝毒性を示すマイコトキシンのルブラトキシンB は脂肪肝を引き起こす.そこで脂肪蓄積メカニズムを解明するために,ルブラトキシンB で24 時間処理したマウス肝臓において蓄積した脂肪滴のタイプや,脂質合成系酵素であるグルコース- 6 -リン酸脱水素酵素(G6PD)と脂肪酸合成酵素の活性を調べた.オイルレッドO 染色では,ルブラトキシンB 処理したマウスから多数の小滴性の脂肪滴が観察された.脂肪酸合成のためのNADPH を供給するペントースリン酸回路において極めて重要な働きをするG6PD の活性は,ルブラトキシンB 処理によって顕著に上昇した.予想に反して,ルブラトキシンB は脂肪鎖を伸長させる脂肪酸合成酵素の活性を下げた.脂肪酸合成酵素は脂肪酸合成における律速酵素ではないので,ルブラトキシンB で処理されたマウスの活性でも脂肪蓄積には十分なのかもしれない.
  • 川崎  靖, 山崎 富生, 轟 里紗, 坂村 宣之, 後藤 良隆, 古宮 裕子, 倉部 誠也, 安達 尚美, 三浦 成敏, 田代 文夫
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 89-96
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    最近の幹細胞生物学の知見から,腫瘍は不均一な細胞集団が階層性を形成しており,その頂点に位置する癌幹細胞が腫瘍形成能を維持していると考えられている.本研究ではアフラトキシンB1 誘発ラット肝癌K2細胞とヒト肝癌Huh7 細胞における,幹細胞特異的な細胞表面マーカーCD133 の発現をRT-PCR と免疫染色により解析した.その結果,両肝癌細胞においてCD133 mRNA の高発現が認められると共にCD133 陽性細胞が高頻度に検出された.また,RNA 干渉によりHuh7 細胞のCD133 の発現を減少させると,幹細胞で特異的に発現し癌細胞の増殖や多剤耐性に関与するABC トランスポーターであるABCG2 遺伝子の発現が減少した.これらの結果は,少なくとも肝癌細胞における癌幹細胞の発生に,異常なCD133 の発現が関与しいていることを示唆している.
  • 五十嵐 奈津子, 中村 宗知, 渡井 正俊
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 97-105
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    AOAC のオフィシャルメソッドである大麦中のオクラトキシンA の分析法が玄米に適用が可能であるか否かを判定するために試験室間共同試験を実施した.試料として,ブランクの玄米(2 反復),オクラトキシンA 産生菌(Aspergillus ochraceus)を培養した玄米を希釈して調製した試料(2 濃度,2 反復),分析の直前に標準溶液を添加した試料(3 濃度,2 反復)の計12 試料を用い,12 機関で実施した.その結果,オクラトキシンA 濃度0.5 ~ 40 μg/kg の範囲におけるRSDr は3.4 から8.9 %,RSDR は9.6 から21.3 %,HorRatは0.4 から1.0 であった.また,オクラトキシンA 標準溶液を添加して実施した試験室間共同試験における回収率の平均は,0.5 μg/kg 相当の添加で88.0 %,20 μg/kg 相当の添加で87.2 %,40 μg/kg 相当の添加で82.6 %と良好であった.この結果から,玄米中のオクラトキシンA を分析するために,0.5 ~ 40 μg/kg の濃度範囲においてAOACの大麦中の分析法(2000.03)を適用することは可能であると判断された.
  • 岡野 清志, 富田 常義, 久米田 裕子, 松丸 恵子, 一戸 正勝
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    わが国に輸入される生落花生のうち,主要輸入国の試料について,年間,約2,300-3,000 検体について2002 年から2006 年までのアフラトキシン(AF)検査の結果をとりまとめた.5年間の調査期間において,中国,南アフリカ,米国およびパラグアイ産の落花生についてAFB1,B2 が検出されるものとAFB1,B2,G1,G2 が検出されるものと比較するとともに,わが国のAFB1 単独10 μg/kg 規制した場合と,国際的に採用されているB 群,G 群AF を総量15 μg/kg で規制した場合を想定して検査試料数に対する規制値を超える試料の比率を集計した.結果として,試料数の多かった中国産落花生ではAFB1 単独規制では0.4-0.8 %が規制値を超え,AFBG 総量規制では0.4-1.1 %が規制値を超えていて,ほとんど同様であった.南アフリカ産落花生でも同様で,AFB1 単独規制では0.3-1.0 %,AFBG 総量規制で0.3-1.2 %が規制値を超えていた.輸入落花生由来菌につき,AF汚染の原因となるAspergillus section Flavi に所属する菌について形態的,AF およびシクロピアゾン酸の産生性,heteroduplex panel analysis(HPA)による識別を検討したところ,中国産AFBG 検出試料の汚染原因はA. parasiticus であったのに対し,南アフリカ産AFBG 検出試料から分離した菌株にはA. prasiticus のほかに小型の菌核を多数形成し,AFBG 群を産生する非典型的なA. flavus が存在した.この菌種はsection Flavi に関するHPA においてAfF4 に属する菌株であった.
技術報告
第63回学術講演会要約
特別講演
  • 福島 昭治, 魏 民, アンナ 梯, 鰐渕 英機
    原稿種別: 第63回学術講演会要約
    専門分野: 特別講演
    2008 年 58 巻 2 号 p. 119-128
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    魚や肉などの焼けこげに含まれている2-amino-3,8-dimethylimidazo[4,5-f ] quinoxaline(MeIQx)のラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した.その結果,MeIQx?DNA 付加体形成は微量からみられ,より高い用量で8-hydroxy-2′-deoxyquanosine 形成,lacI 遺伝子変異,イニシエーション活性等が誘発された.また,肝臓の前腫瘍性病変であるglutahione S-transferase placental(GST-P)陽性細胞巣は,さらにより高い用量で誘発された.N- ニトロソ化合物であるN-nitrosodiethylamine やN-nitrosodimethylamine でもGST-P 陽性細胞巣の発生は微量では発生しなかった.次に大腸発がん物質である2-amino-1-methyl-6-phenylimidazo [4,5-b] pyridine(PhIP)のラット発がん性を検討すると,大腸粘膜におけるPhIP-DNA 付加体形成は微量から認められたが,前腫瘍性病変の代替マーカーである変異クリプト巣は,かなりの高用量でのみ誘発された.非遺伝毒性肝発がん物質であるphenobarbital は,GST-P 陽性細胞巣の発生を高用量では増加,逆に低用量ではその発生を抑制した(ホルミシス現象).これらの結果から,遺伝毒性発がん物質には閾値,少なくとも実際的な閾値が,また,非遺伝毒性発がん物質には真の閾値が存在すると結論する.
シンポジウム
  • 田端 節子
    原稿種別: 第63回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2008 年 58 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    一般に,国内では,一部の地域を除きアフラトキシン汚染が起きる可能性は低いと考えられているが,ペニシリウム属のカビが産生するパツリンやフザリウム属のカビが産生するデオキシニバレノール等は,我が国の気候条件でも産生される.近年,これらのカビ毒の国内での汚染が注目され,詳細な汚染実態の把握と,防御対策の開発が急務となっている.今回は,国内で起きているカビ毒汚染の状況と,リンゴ等のパツリン汚染について,その汚染の傾向から防御の対策について述べる.国内での自然汚染が確実に普遍的に起きているカビ毒は,麦中のデオキシニバレノールとニバレノールとリンゴ中のパツリンである.国内で汚染が起きている可能性が高いものに,麦中のゼアラレノン,ブドウ中のパツリン,黒糖中のアフラトキシンがある.また,穀類等のオクラトキシン汚染も国内で起きている可能性がある.国産リンゴを原料として使用するジュース製造工場から腐敗・傷害のため廃棄されたリンゴについてパツリン汚染調査を行った結果,一部に高濃度のパツリンの自然汚染が起きていることが判明し,低温保存でも保存期間が長くなるとパツリン汚染が進む傾向が認められた.リンゴのパツリン汚染を防止するには,汚染が起きている場所を特定し,菌の排除を行うこと,傷の付いたリンゴは長期間保存せず,早く加工してしまうことも効果的であると考えられる.
  • 須崎 浩一, 伊藤 伝, 兼松 聡子
    原稿種別: 第63回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2008 年 58 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    果樹研究所内のリンゴ園から傷害を受けた果実を採集し,リンゴ青かび病菌Penicillium expansum の分離を試みた.その結果,果皮に裂開があり地面に落ちていた果実から青かび病菌を分離した.さらに国内の複数リンゴジュース工場においても,貯蔵中の原料果実から青かび病菌の分離される場合があった.次いで果実表面の傷の種類と発病との関係を調べた.その結果,果肉が露出するような大きな傷を与えた果実では全て発病した.人為的な付傷処理を行っていない果実においても接種により発病がみられ,腐敗は「つる割れ」,「果面の荒れ」および「果点」から始まっていた.また,リンゴ青かび病の防除技術について,生物農薬の利用および貯蔵法の改良を検討した.市販の複数の生物農薬においてErwinia carotovora製剤が本病に対して高い予防効果を示した.青かび病の発生抑制にはCA(controlled atmosphere)貯蔵が有効である.近年「鮮度保持フィルム」を用いてCA 貯蔵と同様な環境を再現するMA(modified atmosphere)包装が実用化されていることから,MA 包装により青かび病防除が可能かどうかを検討した.青かび病菌を接種したリンゴ果実を,鮮度保持フィルムを用いて作製した袋(以下,MA 袋)に収納し,一定期間放置後に生じた腐敗の大きさと腐敗中に蓄積したパツリン量を調べた.MA 袋に収納した果実では腐敗の進展が抑制されたとともにパツリンの蓄積も著しく抑制された.
  • 横山 耕治, 川上 裕司, 陰地 義樹, 久米田 裕子, 高橋 治男
    原稿種別: 第63回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2008 年 58 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    Aspergillus section Nigri によるオクラトキシンの産生性や産生菌の分離頻度,分布に関する日本における報告はなく,Aspergillus section Nigri の詳細な分類に基づく調査研究が必要となった.山梨で行った調査の結果,A. niger チトクロームb 遺伝子に基づくDNA タイプAN-D-5, AN-D-7 の菌は,ほとんどはオクラトキシンを産生しないが一部の株でわずかながら産生が見られた.DNA タイプAN-D-4 のA. carbonarius は,オクラトキシン産生の主要な株で,産生量が多く産生株がほとんどではあるが,一部の株では同じ培養条件で産生が認められなかった.ぶどう園土壌および空中浮遊の菌は,ほとんどが,DNA タイプAN-D-1, AN-D-2 のA. japonicusAN-D-5, AN-D-7 のA. niger であり,DNA タイプAN-D-4 のA. carbonarius は,土壌分離株129 株中1 株であり分離頻度は非常に低かった.収穫後の管理を適正に行えば,食品への汚染は極めて少ないと考えられる.
  • ~リスク管理への取組~
    伊澤 航
    原稿種別: 第63回学術講演会要約
    専門分野: シンポジウム
    2008 年 58 巻 2 号 p. 151-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/07
    ジャーナル フリー
    農林水産省は,食品の安全性に関するリスク管理の標準的な作業手順を記述した「農林水産省及び厚生労働省における食品の安全性に関するリスク管理の標準手順書」を作成し,これに基づき施策の検討を行っている.リスク管理の初期作業において作成された,かび毒を含む有害化学物質のリスクプロファイル及び優先度リストは,公表されている.かび毒について,農林水産省は,リスク管理措置の指導や国内農産物の汚染実態調査,行政ニーズを踏まえた研究の推進等に取り組んでいる.また,麦類のかび毒汚染の防止・低減対策をまとめた日本版実施規範を作成中である.
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