マイコトキシン
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61 巻, 1 号
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原 著
  • 佐々木 麻子, 小西 彩可, 宮川 浩美, 後藤 哲久
    2011 年 61 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
     エルゴステロール(ERG)は真菌の細胞膜の構成成分の一種であり,多くの植物や動物はERGを産生しないことから,ERGは穀物中のかび加害のバイオマーカーとして考えられている.以前,私達はメタノールとアルカリ溶液を用いたけん化方法による穀物中のERGの分析法を開発し,その妥当性を確認した.しかし,けん化による分析法は時間やコスト,手間がかかるため,迅速さが求められるスクリーニングには適していない.そのため,私達は穀物中のERGの分析法の簡易化を試みた.ERGはメタノールで一時間振とう抽出し,ろ過後,ERGは液―液分配にてヘキサンに転溶し,逆相HPLCで分析した.振とう法によるERGの回収率をけん化法によるERGの回収率で比較した.3mg/kgのERGのトウモロコシサンプルにおける振とう法による回収率はけん化法による回収率の84%で,振とう法による相対標準偏差(RSD)は1.5 %であった.また,12mg/kgのERGの小麦サンプルにおける振とう法の回収率はけん化法に対して108%で,振とう法のRSD値は2.8%であった.今回開発した振とう法による穀物中のERGの分析法は,スクリーニング目的として用いるには十分適用可能であると考えられる.
第68回学術講演会要約
  • 宮崎 茂
    2011 年 61 巻 1 号 p. 11-12
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
  • 竹本 大吾, 田中 愛子, Barry SCOTT
    2011 年 61 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
     Epichloë/Neotyphodium 属エンドファイト(以下 Epichloë エンドファイト)は牧草,芝草の細胞間隙で伸長し,共生関係を保っている糸状菌エンドファイトである.Epichloë エンドファイトは,宿主植物内で様々な生理活性物質を生成し,植物に有益な効果をもたらすことが知られている.Epichloë エンドファイトが植物内で生成する生理活性物質として,動物に毒性を示すロリトレムBやエルゴバリン,昆虫に毒性や忌避作用を示すロリン,ペラミンなどが知られている.近年,これら物質の生合成遺伝子群が相次いで単離され,生合成遺伝子破壊株の解析から生合成系の全容がほぼ明らかとなった.また,生合成遺伝子群の発現が植物感染時に特異的に誘導されることより,Epichloë エンドファイトがこれら生合成遺伝子を共生時に植物を守る目的で保持していることが示唆されている.本稿では,Epichloë エンドファイトが生成する生理活性物質生成遺伝子群のうち,筆者らが直接携わったロリトレムBおよびペラミンの生合成遺伝子群とその発現制御についての知見を概説する.
  • 田中 愛子, 竹本 大吾, Barry SCOTT
    2011 年 61 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
     Epichloëエンドファイトは,宿主植物ペレニアルライグラスの細胞間隙を伸長して共生を確立する.本研究では,共生維持に関わる遺伝的背景を明らかにすることを目的とし,遺伝子タギング法を用いて,E. festucaeの共生能欠損変異株FR2を分離した.FR2株は,宿主内での菌糸生育が野生株に比べ著しく促進され,接種植物に生育阻害や枯死を引き起こした. FR2株におけるプラスミド挿入領域を解析し,その領域から活性酸素生成に関わるNADPHオキシダーゼをコードする遺伝子noxAを見出した.noxA破壊株は,宿主植物中での活性酸素生成能を失っていたことから,本菌の宿主との共生確立には,活性酸素の生産が不可欠であることが示された.本研究ではさらに,NoxAの活性化に関わる制御因子NoxRおよびRacAを同定し,これらがNoxAによる活性酸素生産に不可欠であること,また,Epichloëエンドファイトの宿主との共生確立に必要であることを明らかにした.
  • 菅原 幸哉
    2011 年 61 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2011/01/31
    公開日: 2011/02/01
    ジャーナル フリー
     近年,植物中に共生する微生物「エンドファイト」として,各種の植物から様々な微生物が報告されており,共生の効果による植物の耐虫性の向上や生育促進などが注目されている.中でもイネ科植物に共生するNeotyphodium属の糸状菌(Epichloë属菌の無性世代:エピクロエ・エンドファイト) は,種子伝染で世代を超えて植物中に維持され,宿主植物の耐虫性や耐乾性などを向上させることから,農業への利用が進められている.家畜毒性を持つ菌株も多いことから利用は当初,芝草などの緑化植物に限られていたが,近年,家畜毒性のない菌株を選抜しての牧草での利用が成功し,利用範囲が大きく拡大した.食用作物への利用も視野に入りつつあり,今後の関連研究が注目される.
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