口腔・咽頭科
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19 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 長尾 俊孝
    2007 年 19 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    唾液腺腫瘍は組織像が多彩で, 30種類を越える腫瘍型や種々の亜型が存在しており, その病理診断に難渋することが少なくない. しかしながら, 唾液腺腫瘍では, 病理学的な組織型によって多くの場合, その生物学的態度が規定されるため, 腫瘍の組織分類を理解することが治療方針の決定や予後の判定には必要不可欠となっている. 国際的に広く認知されている唾液腺腫瘍の組織分類にWHO分類があるが, 2005年にはこの第3版目となる改訂版がPathology and Genetics of Head and Neck Tumoursとして刊行された. この新WHO分類では, 第2版の内容を踏襲しつつも, 発生頻度の低い腫瘍型 (リンパ腺腫, 明細胞癌NOS, 唾液腺芽腫など) がリストの中に新たに加わったこと, 第2版以降に報告された亜型や非常にまれな腫瘍型が記載されたこと, さらにいくつかの腫瘍型では名称の変更が行われたこと, などの改訂がなされている. 本稿では, 唾液腺腫瘍の病理組織学的分類の解説に加えて, 実際に唾液腺腫瘍病理診断を行う際のアプローチの仕方と注意点について述べる.
  • 山本 祐三
    2007 年 19 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔咽頭に潰瘍が生じる疾患は数多く存在し, しかも非特異的な肉眼所見を呈することが多いため, 鑑別が困難なこともしばしばである. 病因別には化学的および物理的障害, 細菌やウイルスによる感染症, アフタ性疾患, 皮膚科的, 内科的全身疾患の部分症として口腔に発症する疾患等に分類されるが, 未だ原因の不明な難治性口腔咽頭潰瘍についての認識も重要である.
    本論文では, ベーチェット病, 難治性口腔咽頭潰瘍, 天疱瘡, 類天疱瘡, 扁平苔癬, 腫瘍性疾患として白斑症, 上皮性腫瘍, 悪性リンパ腫を取り上げ, 各疾患の臨床病理学的特徴について概説した.
  • 片橋 立秋
    2007 年 19 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    診療所レベルでの口腔咽頭異物への対応はその診療所の立地条件により異なる. 救急対応の可能な病院が周囲に多く存在する都市部の診療所では口腔および中咽頭の異物, 特に口蓋扁桃周囲の異物への対応で充分であるが, 近隣病院より距離のある郊外に位置する診療所や夜間・休日の紹介先に苦慮する診療所では, 喉頭・食道異物への対応も必要となることがある.
    口腔咽頭異物の診断の基本は舌圧子・間接喉頭鏡. ファイバースコープなどを用いての視診・観察である. 同定不能の場合には画像診断を行う. 診断の確定ができない場合でも, 疼痛などの臨床症状があれば, 異物が存在すると考え, 積極的に高次医療機関への精査加疼療を依頼すべきである.
    診療所での異物摘出は時間的にも設備的にも制約をうけることが多く, 簡便な器具での迅速な異物摘出に習熟することが重要である. 摘出不能の場合には, 受け入れ体勢の整った施設への転送をためらわない.
    以上より診療所レベルでの異物症例への対応には日頃より自院の規模・設備を考慮して, 異物症例への対応の基準を検討しておく事が不可欠である.
  • 深瀬 滋
    2007 年 19 巻 2 号 p. 167-170
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    OK-432嚢胞内注入療法の原法は, 嚢胞内容液を吸引して, 吸引した内容と同量のOK-432希釈液で置換する方法である. この方法でガマ腫を治療する場合, 顎下型ガマ腫の治療成績は極めて良好だが, 口腔底型ガマ腫の治療成績が劣ることが問題であった. この理由として, 「針穴から薬剤が漏れてしまう」ことが考えられた.
    これを解決するために, 現在は口腔底側からOK-432を注入する場合は, 内容液の吸引を行わず, 非常に濃い濃度に調整したOK-432を皮内針を用いて嚢胞内に注入するだけの方法 (高濃度OK-432注入法) に変えている. この方法でも原法と遜色の無い効果が得られ, 口腔底型ガマ腫の治療成績は向上している.
  • 佐藤 公則
    2007 年 19 巻 2 号 p. 171-180
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科診療所の視点からOSAHSの集学的治療を述べた. 1) 当院におけるOSAHSの集学的治療の現状を述べた. 診断と治療に関しては睡眠呼吸障害の病態を把握し, 個々の病態に応じた治療法を患者に提示し, インフォームド・コンセントの後に患者が希望する治療法を選択している. 診断に関してはOSAHSの閉塞部位の診断, PSG検査による睡眠呼吸動態の解析を行っている. 治療に関してはOSAHSの重症度, 閉塞部位, 患者の希望など個々の病態に応じてCPAP療法・手術・口腔内装置・減量などを組み合わせた治療法を選択している. またOSAHS以外の睡眠障害の診断と治療にも力を入れている. 2) 耳鼻咽喉科診療所におけるOSAHS診療のminimum requirementを述べた. 診断に関しては睡眠呼吸障害の問診を適切に行い, 上気道と顎顔面形態を評価する. OSAHSが疑われればPSG検査が可能な医療機関と連携し確定診断を行う. 治療に関してはCPAP療法, 手術, 口腔内装置治療などの治療法の適応と選択, 治療の順序を決める. 自院での治療が不可能であれば可能な医療機関と連携する. 集学的治療の一環として上気道疾患の管理を保存的, 手術的に行う. 循環器疾患などの合併疾患の治療は専門医療機関と連携する.
  • 原渕 保明, 吉崎 智貴, 後藤 孝, 高原 幹, 坂東 伸幸
    2007 年 19 巻 2 号 p. 181-187
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    扁桃病巣疾患は症状の発現部位が必ずしも耳鼻咽喉科領域ではないため, その治療においては関係する他科との連携が必要不可欠である. 一般に扁桃病巣疾患としてIgA腎症, 掌蹠膿疱症, 胸肋鎖骨過形成症の3疾患が広く知られており, 扁摘により高い治療効果が認められている. 今日ではその3疾患の他に乾癬やアレルギー性紫斑病などの皮膚疾患, ベーチェット病やリウマチ性関節炎, アキレス腱炎などの自己免疫疾患においても扁桃との関連性が報告されているが, 扁桃病巣疾患としての認識は未だ十分とは言えないのが現状である. 現在当科ではこれら多くの扁桃病巣疾患に対して関係他科との連携のもと積極的に扁摘を行い, 非常に高い効果を認めている. 一般に扁桃病巣疾患はその多くが難治性であり, 内科的治療のみではコントロールが難しい. それらの疾患全例に扁摘の効果があるわけではないが, 扁桃との関連性を疑わせる所見がある場合には積極的に扁摘を考慮すべきである. 今後さらなる病態の解明と関係他科への啓蒙が必要であろう.
  • 上田 峻弘
    2007 年 19 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回, 市立札幌病院耳鼻咽喉科で2000~2005年に扁摘が施行され6ヶ月以上経過観察し得たIgA腎症62例に対して, 扁摘・ステロイドパルス治療の有効性について検討した. 対象患者の平均年齢32.4歳, 男/女比28/34で, 厚労省分類のグループ1, 2は64.5%, グループ3, 4は27.4%であった. C cr≧70ml/minが88.7%, 血清Cr<1.3mg/dlが95.2%と比較的軽症例が多かった. 治療は扁摘後にステロイドパルス治療を実施, プレドニゾロンを投与して尿蛋白と血尿の推移を3年間経過観察した. 尿蛋白は扁摘前0.93g/g・cr, 3年後0.30g/g・cr (p<0.01), 血尿は扁摘前3.61, 3年0.72 (p<0.01) と有意に減少した. 今後, 診療科相互の連携をとり本治療の適応基準を確立していかなければならない.
  • 伊丹 儀友, 武越 靖郎
    2007 年 19 巻 2 号 p. 197-202
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本邦における重症な小児期IgA腎症の治療には, プレドニン, アザチオプリン, ヘパリン-ワーファリン, ジピヂダモールの4者併用療法が主流となっている. 一方, 成人領域ではHottaらの報告を嚆矢として, 扁桃摘出とステロイドパルス療法が注目されつつある. 病因の基礎研究ではIgAの質的および粘膜免疫の異常の関与が次第に明らかとなってきた. 小児期IgA腎症の有効でより副作用の少ない治療方法について, 扁桃摘出を含めて新たな検討段階に入ったと考えられる現況について概説した.
  • 小林 茂人
    2007 年 19 巻 2 号 p. 203-214
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    レンサ球菌などの微生物感染による扁桃炎・上気道炎が起こり, この感染に起因して反応性関節炎 (感染症関連関節炎) が起こる. この反応性関節炎では関節内に生菌は存在せず (無菌性関節炎), 抗生物質の投与または扁桃摘出術によって完治する. この病態は, いわゆる「病巣感染」である. 関節炎を起こす疾患や病態は数多く存在し, 多くの疾患・病態を鑑別しなければならない. 本疾患では, 多くの場合, 患者血清中のリウマトイド因子 (RF) は陰性であり, RF陰性の関節炎の診断の際には本疾患を念頭に入れて診断・治療する必要がある. 臨床の現場では, 扁桃炎を合併した関節リウマチの発症初期には鑑別が困難である. 我々が経験した扁桃摘出術を行った関節リウマチの4症例では, 臨床経過が比較的軽微である傾向があった. 一般的に完治する関節炎は少ないことを考え, 反応性関節炎, 掌蹠膿疱症に伴う関節炎などが考えられる症例については, リウマチ・膠原病科医は, 病巣感染に精通した耳鼻咽喉科医との綿密な医療連携が重要であると考える.
  • 保富 宗城, 山中 昇
    2007 年 19 巻 2 号 p. 215-223
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    上咽頭は, 病原微生物の侵入門戸であり, 様々な感染症における起炎菌の感染源 (Carrier focus) である. 健常児においては, 生後3カ月頃より上気道感染症の主な起炎菌である肺炎球菌, インフルエンザ菌, モラクセラ・カタラーリスよりなる上咽頭細菌叢が形成される. これらの細菌は, 鼻咽腔粘膜への定着, 増殖, 消失を繰り返し変化するとともに, 急性中耳炎の発症時には, 健康時と比較して高頻度にコロニーを形成する. 上咽頭において肺炎球菌は, コロニーの形態 (phase) を変化させ, 粘膜表面へ付着し, さらには粘膜内に侵入するとともに, 上咽頭粘膜から嗅神経を介して直接的に脳に侵入する. インフルエンザ菌もまた, 上皮細胞に侵入しアデノイド組織内に生存する. そのため, 上咽頭における細菌の増殖を制御することは, 急性中耳炎をはじめとする上気道感染症の予防に重要となる. しかし, 上咽頭に存在する病原菌が直ちに感染症を引き起こすわけではなく, ウイルスなどの先行感染などにより, 生体の感染防御機能では排除できないほどに細菌が増殖した場合に感染症が引き起こされる. 上咽頭における細菌感染の制御においては, 除菌を目的にするのではなく, 静注抗菌薬により上咽頭細菌叢を宿主の持つ感染防御機能により, 病原菌を排除できるレベルまで菌量を減少させること, すなわち上咽頭細菌叢のリセットが重要となる. また, 上咽頭細菌叢の形成には, 母乳中に含まれる細菌特異的抗体が重要な役割をしており, 母親への免疫により効果的な胎盤移行性抗体および母乳中抗体を誘導する母体免疫による上咽頭細菌叢の制御が期待される.
    上咽頭における感染症は, 細菌叢のダイナミズムと局所生体防御による制御のバランスにより成立すると考えられる.
  • 余田 敬子
    2007 年 19 巻 2 号 p. 225-234
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    頻度が少なく診断に難渋しがちな「特殊な上咽頭炎」として, 結核, 放線菌症, マイコプラズマ, クラミジア, サイトメガロウイルス感染症を呈示した. 臨床的特徴として, 結核は20-40歳代の女性に白苔を伴う腫瘤または潰瘍性病変を, 放線菌症は男性に悪性腫瘍を疑う腫瘤性病変を, マイコプラズマは年長の小児から20代前半の若年者にイチゴ状に腫脹したアデノイドを, クラミジアは成人型封入体結膜炎に併発して発赤・腫脹を呈することが多い. サイトメガロウイルスの1例は33歳男性で, 上咽頭に肉芽腫性病変を認めた. これらの上咽頭炎は, 耳閉感, 咽頭痛, または鼻閉を訴え, 上咽頭の詳細な観察と組織生検を契機に診断に至る場合が多い.
  • 渡嘉敷 亮二
    2007 年 19 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    咽喉頭逆流症 (laryngopharyngeal reflux disease: LPRD) と胃食道逆流症 (Gastroesophageal reflux disease: GERD) は一部その病態がオーバーラップしているが同一のものではない. GERD症状を有さず客観的にもGERDと診断されないLPRDがあり, これは強酸の少数回の暴露あるいは弱酸の持続的暴露といういずれかの機序による. また反射説が関与する場合は, 下部食道の酸刺激と圧刺激の両方が引き金となっている可能性があるとされる. 治療に際しても, GERDよりも強い酸分泌抑制が必要であったり, GERDよりも逆流現象自体の改善に目を向ける必要性がある.
  • 氷見 徹夫, 金泉 悦子, 小笠原 徳子, 山本 元久, 高橋 裕樹
    2007 年 19 巻 2 号 p. 241-248
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    この総説では口腔乾燥を呈する唾液腺疾患について2つの点について焦点を当てる. ひとつは頭頚部腫瘍に対する放射線治療後に起こる口腔乾燥の病態と治療についてである. 放射線治療後に唾液腺障害や粘膜炎の障害の程度は, 照射野と照射量に依存することは知られている. さらに, 口腔咽頭の防御システムのバランスも照射後に変化する. この変化は安定した免疫機構の維持をも変化させてしまう. 2つ目に述べる点は, 新たに確立されたミクリッツ病の概念についてである. 最近, ミクリッツ病では血清IgG4の上昇と唾液腺組織中に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤が特徴的であることがわかってきた. ミクリッツ病はシェーグレン症候群と異なった疾患であり, IgG4の関連する全身性疾患 (IgG4-related plasmacytic disease) である可能性がある.
  • 安部 次男
    2007 年 19 巻 2 号 p. 249-255
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    アポトーシスは口蓋扁桃の胚中心でB細胞の選択に重要な役割をしている. 睡眠時無呼吸症と診断され, 口蓋扁桃摘出術を受けた8例が対象で, 4例が3~4歳の幼児, 4例が52~61歳の高齢者であった. アポトーシス細胞の分布, 胚中心の面積を計測した. 幼児, 高齢者ともにアポトーシス細胞は胚中心に多く認めたが, mantle zoneやリンパ濾胞間では余り認めなかった. アポトーシス細胞数や胚中心の面積は幼児に比べ, 高齢者では減少していたが, 高齢者の胚中心にもアポトーシス細胞を認め, 50歳以上の高齢者の口蓋扁桃も十分な免疫機能をもっていることがわかった. マクロファージがアポトーシス細胞を貪食したのを免疫電子顕微鏡法でとらえることができた.
  • 西窪 加緒里, 兵頭 政光
    2007 年 19 巻 2 号 p. 257-263
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    嚥下障害を主症状とした高齢発症の重症筋無力症例を報告した. 症例は, 72歳女性. 徐々に進行する嚥下障害を主訴とした. 嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査では咽頭収縮不良および咽頭クリアランスの低下が著明であった. 嚥下圧検査では, 著明な嚥下圧の低下を認めた. 血清学的に抗アセチルコリンレセプター抗体が陽性で, テンシロン投与により嚥下機能の改善を認めたことから, 重症筋無力症との確定診断にいたった. 高齢者では, 症状が非典型的なことがあり, また, 薬剤の副作用や手術侵襲の面から治療においても制約を受けることがあり, 対応に苦慮することがある.
  • 成尾 一彦, 宮原 裕, 笹井 久徳, 高田 綾
    2007 年 19 巻 2 号 p. 265-271
    発行日: 2007/03/31
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口内痛を主訴とした尋常性天疱瘡の2症例を経験した. 2症例とも耳鼻咽喉科で精査されるも診断がつかず, 結局当院での確定診断までに数ヶ月を要した. 口唇と口腔内全体にびらんを認めた. 皮膚科を紹介し, 生検ならびに血中デスモグレイン抗体価より尋常性天疱瘡と診断された. 治療はステロイドを投与され症状は寛解した. 難治性の口腔内病変をみた場合, 局所所見のみにとらわれず, 感染症や自己免疫疾患などの可能性も考慮し, 必要であれば他科とも連携し, 精査加療に取り組むことが必要と思われた.
  • 2007 年 19 巻 2 号 p. e1-e2
    発行日: 2007年
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
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