口腔・咽頭科
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36 巻, 2 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
総説
特別企画 新時代の口腔咽頭科学を切り開く!新任教授陣による抱負と学会への提言
  • 小森 学
    2023 年 36 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    口腔・咽頭科学会が現在抱えている問題,そしてその解決法に関して提言をした.本学会は炎症性疾患,腫瘍性疾患の他にも非常に多くの領域を取り扱っているが,境界領域である歯科・口腔外科などとも診療領域が重複する部分がある.耳鼻咽喉科医の数は歯科医の1/10程度である.そのため,慢性的な会員不足が生じている.他科との共存や学会開催方法などを提言した.
    次に社会的な問題として超高齢社会が挙げられる.すでに人口は減少の一途をたどっているが,さらにCOVID-19パンデミックによる出生数の減少などで加速度的に進んでいる.診療形態を従来の外来と入院に頼っている時代ではないのかもしれない.幸いオンライン診療が拡がりつつあるため積極的なオンライン診療の活用などを提言した.
手技
パネルディスカッション2 耳下腺手術のスキル向上~今を見つめ未来を目指す
  • 関水 真理子
    2023 年 36 巻 2 号 p. 126-129
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    良性耳下腺腫瘍に対する手術を前提とした,耳下腺手術の基本手技を解説した.皮弁挙上,大耳介神経温存・術野展開,顔面神経本幹同定,合併症予防についてそれぞれポイントを説明している.【皮弁挙上】最初のカウンタートラクションは自身の攝子でかける【大耳介神経温存】大耳介神経は尾側で太い本幹を探して頭側で追跡する【術野展開】耳下腺後縁の剥離は,外耳道軟骨周囲と胸鎖乳突筋後縁からそれぞれ剥離を行い,最後に乳様突起周囲の癒着部分を切離する【顔面神経本幹同定】腺組織を1点のみ掘り下げるのではなく,全体的に少しずつ剥離を進める【合併症予防】腫瘍の位置を把握して,できるだけ耳下腺正常組織を温存しフライ症候群予防に努める.
原著
ミレニアルセッション U-40 新時代の口腔咽頭科学を担う!
  • 田中 瑛久, 上村 裕和, 北原 糺
    2023 年 36 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    目的:頭頸部癌に対する咽喉頭全摘術(TPL)後の遠隔転移予測因子を検討した.
    対象と方法:2010年から2019年にTPLを行った43例(中咽頭癌4例,下咽頭癌34例,喉頭癌5例)を対象にpT分類,pN分類,節外浸潤の有無,組織分化度,喫煙(Brinkman Index)を評価項目として無遠隔転移生存期間(DMFS)を比較検討した.術後補助療法を行った症例では全治療期間による差についても検討した.
    結果:43例中11例に遠隔転移を認め,その内10例は初回治療としてTPLを行った症例であった.両側頸部リンパ節転移群,節外浸潤ありにおいてDMFSは有意に短かった.その他の項目では有意差を認めなかった.
    結論:両側頸部リンパ節転移と節外浸潤がDMFS不良の予測因子と考えられた.
総説
  • 佐藤 公則
    2023 年 36 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科診療所である当院は,日本睡眠学会専門医療機関として睡眠障害の診療を行っている.診療の現状と工夫を,1)睡眠医療の一環として行う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診療,2)OSASの診断における病態把握(終夜睡眠ポリグラフ検査による睡眠・呼吸動態の解析と上気道形態の評価による閉塞部位の診断)の重要性,3)小児のOSAS診療の特殊性,4) OSASの集学的治療(重症度,閉塞部位,患者の希望に応じて行うCPAP療法,手術,口腔内装置治療など),5)鼻閉と睡眠障害,すなわち上気道管理の重要性,6)他の睡眠障害の診断と治療,7)他科との連携,について解説した.
    上気道の専門医である耳鼻咽喉科医は,OSASを含めた睡眠医療にさらに貢献できる.
原著
  • 大塚 雄一郎, 根本 俊光, 花澤 豊行
    2023 年 36 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス(HSV)は口腔や咽喉頭以外にも性器,角膜,脳脊髄などに感染する.一般的に血清抗HSV抗体が診断に用いられるが,抗HSV-IgM/IgG抗体は発症7日以前には検出できない点に注意が必要である.我々は発症早期に抗HSV-IgM/IgG抗体が陰性であった症例でも発症7日後以降に再検して24例のHSV初感染症を診断した.男性9例,女性15例,年齢は4歳から41歳で平均23.58歳であった.多くの症例で口腔咽喉頭のアフタや潰瘍と頸部リンパ節腫脹を認め,強い咽頭痛と高熱で経口摂取が困難であった.アシクロビル,バラシクロビル,抗菌薬,ステロイドなどで加療し全例が後遺症を残すことなく完治した.
  • 芝埜 彰, 蓮川 昭仁, 北原 糺
    2023 年 36 巻 2 号 p. 153-165
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の重症度とQuality of Life(QOL)の悪化は必ずしも連動しておらず,治療によってOSAが改善してもQOLが改善するとは限らない.本研究では,OSAに対して咽頭への手術あるいは経鼻持続陽圧呼吸(nasal Continuous Positive Airway Pressure:nCPAP)装置による治療を行った症例について,3ヵ月後にそれぞれの治療群におけるQOLの変化を年齢層別にSF-36 version2問診票を用いて調べた.その結果,年齢層によってQOL向上が期待できる治療法が異なっていた.QOL改善という視点でみれば,治療法としてCPAPが常に望ましいとは限らず,QOLを考慮した治療法の選択が必要であると考えた.
  • —内視鏡検査による上気道評価と治療効果—
    佐藤 公宣, 千年 俊一, 梅野 博仁
    2023 年 36 巻 2 号 p. 166-171
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    口腔内装置治療(OA治療)を行った閉塞性睡眠時無呼吸症候群症例16例を対象に,内視鏡検査での上気道評価に基づく適応の決定と治療効果について検討した.全症例において,OA治療後には無呼吸低呼吸指数は有意に改善していた.一方で,内視鏡検査による下顎前突テストで舌根部の気道断面積が増大しても,いびき音テストにより軟口蓋部が全周性に閉塞する症例では,OA治療の効果が得られにくい傾向があった.口腔内装置治療の適応を検討する際には,上気道形態,脆弱性を観察することが大切であった.また,OA治療では,内視鏡検査による上気道形態の評価に基づいた適応の決定と終夜睡眠ポリグラフ検査による治療効果の判定を行うべきであると考えられた.
  • 林 慶和, 鈴木 健介, 阪上 智史, 八木 正夫, 藤澤 琢郎, 清水 皆貴, 野田 百合, 岩井 大
    2023 年 36 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    紡錘細胞癌は扁平上皮癌成分と紡錘形細胞の肉腫様増殖が混在する悪性腫瘍であり,扁平上皮癌の一亜型に分類される.紡錘細胞癌は頭頸部扁平上皮癌の0.4~4%とされており,口腔または喉頭に好発する.今回,我々は頭頸部領域に発生した紡錘細胞癌の6例を経験したので文献的考察を加えて報告する.年齢は59歳から86歳,性別は男性3例,女性3例であった.原発部位は舌が3例,上顎1例,下顎が2例であった.6例全例で手術が施行され,うち2例は早期に局所再発を認め不幸な転帰をとった.口腔に発生した紡錘細胞癌は扁平上皮癌と比べ一般に予後不良とされており,早期の診断と外科的切除が重要である.
  • 大舘 たかえ, 任 智美, 伏見 勝哉, 都築 建三
    2023 年 36 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)罹患後に嗅覚味覚異常を訴えた77例を対象に症状,感染時期から予想される株,罹病期間,初診時の嗅覚味覚検査結果,嗅覚と味覚の関連性,初診後6ヵ月の転帰について検討した.嗅覚味覚の両方の異常を訴えた例が最も多く,デルタ株流行期の受診者が最も多かった.罹病期間の中央値は4ヵ月であった.嗅覚味覚異常をともに訴えた38例では自覚症状の性質・重症度および検査上の重症度に相関関係を認めた.また63%は味覚機能が正常であり,風味障害と診断された.初診後6ヵ月の経過を追えた例では嗅覚異常,味覚異常ともに6割以上が改善及び治癒を認めた.嗅覚味覚検査による病態の見極めが重要と考えられた.
  • 山本 賢吾, 大木 幹文, 清野 由輩, 山下 拓
    2023 年 36 巻 2 号 p. 186-190
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    口腔の機能を示す指標の一つとして,舌と口蓋が接触する際に生じる舌圧があり,フレイルの予測因子のほか嚥下における指標として用いられている.一方でOSAにおいて,舌や舌根レベルの狭窄がOSAの発症・増悪に関与する場合があるが,OSAと舌圧との関係を検討した報告は限られる.そこで,CPAPを使用しているOSA症例の舌圧を測定し対照との比較を行った.OSA群のうち65歳以上の高齢者やBMI 25kg/m2未満の症例で舌圧が低下しており,舌圧を含む口腔機能の低下がOSAの発症・増悪に関与している可能性が考えられた.
  • 久場 潔実, 中平 光彦, 菅澤 正
    2023 年 36 巻 2 号 p. 191-198
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    2017年9月から2019年7月までに埼玉医科大学国際医療センターでニボルマブを導入した口腔・咽頭癌症例の臨床病理学的因子と予後との関連を検討した.症例は口腔癌が8例,咽頭癌が20例で生存期間中央値は10ヵ月であった.ECOG PSが2以上,好中球リンパ球比(NLR)が5以上,血清CRP値が0.87mg/dl以上の症例は有意に予後不良であった(p=0.0004,0.01,0.03).初期病理検体のPD-L1発現,腫瘍浸潤リンパ球(CD4,CD8,FoxP3)は予後と関連しなかったが,腫瘍関連マクロファージ(CD163)の高発現群は予後不良の傾向が見られた.今後更なる予後予測因子の開発が望まれる.
  • 平田 正敏, 中田 誠一, 稲田 紘也, 木村 文美, 伊藤 聡志, 鹿野 和樹, 金子 政道
    2023 年 36 巻 2 号 p. 199-204
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    睡眠中は体位変換を繰り返すが,体位変換と無呼吸低呼吸指数(AHI)の関係は検討がされていない.体位変換とAHI,子供の体位変換と問診による体位変換の状況について検討した.2018年11月~2019年12月の間に終夜睡眠ポリグラフ検査を行った0~86歳までの396例を対象とした.成長が進むにつれ,体位変換とAHIの間でみられた高い相関関係は徐々になくなり,9~14歳になるとなくなった.また,子供の体位変換と問診による体位変換の状況の間には有意な相関関係はみられなかった.問診のみでなく,PSGを行うことは必須である.子供の成長に体位変換と無呼吸は何らかの関係がある可能性があるが詳細は不明である.
  • 田村 祐紀, 宇都宮 敏生, 鈴木 健介, 三谷 彰俊, 岩井 大
    2023 年 36 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃摘出術は一般的な手術だが,一定の確率で術後出血をきたす.口蓋扁桃摘出術を施行した243例を対象に,術後出血のリスク因子として年齢,性別,扁摘に至った原因疾患,術前APTT,術者の耳鼻咽喉科経験年数,手術時間,術中出血量を検討した.術後出血は54例(22.2%)に認め,全身麻酔下の止血を要したものは7例(2.9%)であった.ロジスティック回帰分析の結果では男性,習慣性扁桃炎,術前APTT延長が術後出血の独立したリスク因子であった.APTTは術前検査として広く用いられるが,異常を認めても精査されることは少ない.APTT延長例では術後出血のリスクが高いため,凝固異常疾患を念頭に家族歴の聴取と精査が必要である.
症例
  • 衞藤 克幸, 家根 旦有, 北原 糺
    2023 年 36 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    下咽頭梨状陥凹瘻は先天性の内瘻であり,反復性の化膿性甲状腺炎や頸部膿瘍の原因となる.今回,トリクロール酢酸(TCA)を用いた化学焼灼術を施行したのちに再発し,外科的治療を施行した梨状陥凹瘻の2症例を経験した.
    症例1は4歳の女児,左梨状陥凹瘻に対してTCAを用いた化学焼灼術を施行した.術後3ヵ月で再発を認め,外科的治療を施行した.症例2は44歳の女性,左梨状陥凹瘻に対してTCAを用いた化学焼灼術を施行した.術後2ヵ月で再発を認め,外科的治療を施行した.共に外科的治療後に再発は認めなかった.
    化学焼灼術は低侵襲で安全な手技であり,有用性が高いと考えられるが,焼灼手技は確立されておらず,さらなる検討が必要である.
  • 鈴木 聡崇, 室野 重之
    2023 年 36 巻 2 号 p. 218-221
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    発熱,咽頭痛,経口摂取不良で入院した18歳の男性に対し,咽頭所見と血液検査所見から伝染性単核球症と臨床的に診断した.後日Epstein-Barr virusの抗VCA-IgM抗体の陽性により確定診断された.しかし本例では,伝染性単核球症には非典型的な咽頭の浮腫性腫脹が見られ,造影CTを施行したところ,両側扁桃周囲膿瘍が確認された.抗菌薬の投与と穿刺吸引を含む処置による保存的治療により改善した.伝染性単核球症に扁桃周囲膿瘍が合併することはまれであり,特に両側性のものは極めてまれである.伝染性単核球症を診察した時や扁桃周囲に膿瘍を診察した時には,他方の合併の可能性あることを念頭に診察にあたる必要がある.
  • 服部 杏子, 欄 真一郎, 丹羽 正樹, 鈴木 克代, 森 浩紀, 岩﨑 真一
    2023 年 36 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    咬筋内に発生した神経鞘腫の一例を経験したので報告する.症例は33歳女性.主訴は増大する右頬部腫瘤であった.咬筋内に40mm大の境界明瞭な嚢胞性腫瘤を認め,造影CTでの造影効果は乏しかった.FNAでは暗赤色の排液を8mL認め,細胞診の結果は嚢胞液で悪性所見はなかった.神経鞘腫と術前診断し被膜間摘出術を施行した.手術は耳前部からのS字切開とし,術中に神経刺激装置を用いて咬筋神経を由来神経を同定し,被膜間腫瘍摘出を行った.術後病理検査にて神経鞘腫の確定診断となった.術後の神経脱落症状を認めず,腫瘍再発もなく経過良好である.
  • 日比 裕之, 小林 斉, 竹内 美緒, 甘利 泰伸, 宇留間 周平, 小林 一女
    2023 年 36 巻 2 号 p. 228-233
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    肉芽腫性扁桃炎は扁桃組織に肉芽腫を形成する非常に稀な疾患とされており,その原因疾患は様々である.今回我々は,口蓋扁桃摘出術を契機にクローン病の診断に至った肉芽腫性扁桃炎の1例を経験しこれを報告する.症例は28歳女性で,習慣性扁桃炎に対して口蓋扁桃摘出術を実施した.口蓋扁桃の病理組織学的検査で非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の形成を認め,全身の精査を行ったが原因疾患の診断につながる所見は得られなかった.術後45日目から消化器症状が出現し下部消化管内視鏡検査を実施した.回腸粘膜に縦走潰瘍を伴う易出血性の粘膜炎を認めクローン病の診断に至った.本症例の肉芽腫性扁桃炎は,クローン病の先行した口腔病変と考えられた.
手技
  • ―種々の手術機器による工夫―
    戎本 浩史, 大上 研二
    2023 年 36 巻 2 号 p. 234-240
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/06/30
    ジャーナル フリー
    Transoral videolaryngoscopic surgery (TOVS)では,内視鏡下の限られた術野での手術操作が求められ,視野と操作性の確保のための工夫が不可欠である.近年当科では,3D内視鏡を用いた3D TOVSに取り組んでいる.2D内視鏡に比べ,立体感を得やすい一方で,内視鏡径が太いため広い開口部が必要であり,病変によっては術野の展開が不良で適応できない.下咽頭の展開困難例に対しては,開口器付口腔咽喉頭直達鏡 佐藤式彎曲型を用いることで下咽頭の展開と開口を確保し,3D TOVSを行うことができる.当科でのTOVSについてその工夫を紹介する.
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