口腔・咽頭科
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14 巻, 3 号
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  • 川名 尚
    2002 年 14 巻 3 号 p. 237-242
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペスウイルス (Herpes Simplex Virus, HSV) の感染部位は皮膚粘膜であり口腔咽頭もその主なものの一つである.特にHSVの1型は口腔内の感染が自然感染部位であり, 口腔咽頭のHSV感染は耳鼻咽喉科の日常診療でしばしば見られると思われ改めて産婦人科医の私が論述するまでもないと思う.しかし, 最近はgenital-oralという性行動様式が頻繁に行なわれるようになり, 性器に感染しているHSVが口腔咽頭にも感染することがあり本シンポジウムに単純ヘルペスウイルス感染という課題がとりあげられたものと思う.筆者は性器ヘルペスの臨床研究を行なってきたが, 口腔咽頭についての検討を行なってこなかったので直接本学会の会員の方にお役に立てることは出来ない.そこで性器ヘルペスの臨床を述べてgenital-oral transmissionの背景をご紹介することで責めて果たしたいと思う.
  • 小島 弘敬
    2002 年 14 巻 3 号 p. 243-253
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    現在の日本では淋病, クラミジアは, 生殖器にそれらの感染のある患者の約1/3の咽頭にも同時に感染があり, また感染源となるが, 咽頭感染は自覚症状を欠き, 咽頭の淋菌は化療によっても生殖器と同時に陰性化するとは限らず, 陰性化の確認など化療前後に多数回の検出を要する.日本の皆保険制度は高度の医療を均等に普及させたが, STD診療は保険診療では赤字部門となる.尿道炎の診断に淋病, クラミジアの検出が不可欠であるように, STDの抑制には「起因菌の検出に基づくパートナーの治療」が必須である.1種類のSTDの罹患は, 他種のSTDの危険因子である.淋菌は同一個体の多部位に感染し, 化療効果は部位により異なるため多部位からの検出を要し, また無症状であってもパートナーからの検出を要する.これらの実施は現在の保険医療では困難である.本稿がSTD医療の特質の理解に役立てば幸いである.
  • 余田 敬子
    2002 年 14 巻 3 号 p. 255-265
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔咽頭梅毒のほとんどは性感染症としての第1・2期の顕症梅毒である.日本でも今後口腔咽頭梅毒の増加が危惧されている.
    当科で経験した23例からみた口腔咽頭梅毒の特徴は, 第1期病変で受診する症例は少なく第2期の粘膜斑“butterfly appearance”や乳白斑を呈して受診する症例が多いこと, 性器病変を伴わない例が多いこと, '98年以降HIV感染を合併している同性愛男性例が増えてきたことが挙げられる.
    口腔咽頭梅毒を的確に診断するため, 10代から高齢者までの患者の口腔咽頭病変に対し常に梅毒の可能性を念頭に置きながら対処し, 顔面・手掌.頭髪などの皮膚病変の有無にも着目することが有用である.
  • 鈴木 賢二, 西村 忠郎, 宮本 直哉
    2002 年 14 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ヒトの口蓋扁桃は胎生4ヵ月頃に萌芽し, 生後6ヵ月を過ぎると免疫グロブリン産生が活発化して陰窩上皮の発育と共に二次小節を認めるようになり, 7-8歳で最大に達する.その後思春期には免疫機能の減退が始まり, 加齢と共に扁桃実質は萎縮し結合織は増加する.50歳以降には扁桃リンパ組織の退化と間質の肥厚, 脂肪置換, 軟骨化や骨様化がみられる.
    加齢により扁桃感染症は減少するが, その原因として, 1つには加齢による解剖学的, 組織学的変化が挙げられ, その他には扁桃局所粘膜表面の細菌に対するレセプターの変化も考えられる.基礎的検討の結果, 加齢により口蓋扁桃上皮細胞に対するS.pyogenesの付着性も, フィブロネクチン量も減少していた.
  • 児玉 悟, 鈴木 正志, 茂木 五郎
    2002 年 14 巻 3 号 p. 273-279
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    樹状細胞は種々の機能的分子を介してT細胞を制御している.今回, 扁桃CD4+T細胞のインフルエンザ菌外膜蛋白P6特異的サイトカイン産生における樹状細胞の4-1BBLの関与について検討した.扁桃樹状細胞, CD4+T細胞をP6の存在下で培養し, 培養上清中のサイトカイン濃度をELISAにて測定した.その結果, IFN-γ 産生が強く誘導された.この培養系に抗4-1BBL抗体を加えた場合, IFN-γ 産生が著明に抑制された.以上のことから, 扁桃樹状細胞はP6に対してTh1型免疫応答を誘導し, その細胞間相互作用において樹状細胞の4-1BBLが重要な役割を果たしていることが示唆された.
  • 藤井 恵美, 深澤 啓二郎, 梅本 匡則, 根来 篤, 阪上 雅史
    2002 年 14 巻 3 号 p. 281-286
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    風味障害に関する臨床的研究はほとんどない.当科外来にて経験した風味障害患者について検討を行った.嗅覚障害症例297例を, 嗅覚・風味障害例, 嗅覚・味覚合併障害例および味覚障害のない嗅覚障害例の3群に分類して検討した.感冒罹患後の嗅覚障害に風味障害の合併が多く, 感冒罹患後症例と同様に突然嗅覚障害を発症する頭部外傷後の症例にも多く合併した.これに対し, 徐々に嗅覚障害がおこる鼻副鼻腔炎症例では風味障害の合併率は低かった.また, 嗅覚障害の重症度と風味障害の合併には明らかな相関は認めなかった.風味障害の合併には, 嗅覚障害の程度より発症の仕方が関係する可能性が示唆された.
  • 前谷 俊樹, 兵頭 政光, 山形 和彦
    2002 年 14 巻 3 号 p. 287-292
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    過去10年間に愛媛大学耳鼻咽喉科にて入院加療したベーチェット病の3症例の臨床的検討を報告する.
    3症例の内訳は64歳男性, 36歳女性, 36歳男性である.症例1, 2において回盲部潰瘍が合併し, 穿孔をきたした.2症例とも開腹し回盲部切除術を施行された.症例3では広範な咽頭潰瘍, 瘢痕形成のための嚥下障害, 呼吸困難を訴えた.ステロイド投与にもかかわらず, 全例において口腔咽頭潰瘍が再発した.症例1は消化管の合併症で, 症例3は食物の誤嚥で死亡した.
    ベーチェット病において, 腸管病変や口腔・咽頭病変が高度の例では予後不良な例があることを念頭に置くべきである.
  • 河野 聖美, 斎藤 慶子, 吉原 俊雄
    2002 年 14 巻 3 号 p. 293-298
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    血管腫は頭頸部領域でしばしば認められる疾患であるが, 筋肉内に発生するのは稀である.今回私たちは, 咬筋内に発生した血管腫を3例経験したので報告する.
    症例は, 33歳男性, 32歳女性, 10歳男性の3例である.術前に行ったCT, MRIが診断に有効であった.手術は全例ともに口外法による摘出術を施行した.病理検査では海綿状血管腫であり, 症例3は腫瘍内に静脈石を伴っていた.術後, 顔面神経麻痺や再発を認めた症例はない.
  • 高原 幹, 岸部 幹, 野沢 はやぶさ, 石田 芳也, 柳内 充, 片山 昭公, 今田 正信, 林 達哉, Satoshi Nonaka, ...
    2002 年 14 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症の口蓋扁桃組織の特徴として, T細胞領域の拡大とB細胞領域の縮小が報告されている.この特徴は掌蹠膿疱症の免疫異常を反映している可能性があり, その病理学的特徴の成因を検討することは, 本疾患の発症機序の解明に繋がると考えられる.
    その検討の一つとして, 今回我々はSLC, ELC, BLCのホーミングケモカインに注目し, RT-PCRにて習慣性扁桃炎3例, 睡眠時無呼吸症候群3例, 掌蹠膿疱症4例におけるそれぞれのケモカインmRNAを検討した.
  • 中村 一博, 伊藤 博之, 吉田 知之, 井上 斉, 渡嘉敷 亮二, 横内 順一, 平林 省二, 鈴木 衞
    2002 年 14 巻 3 号 p. 305-311
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    早期舌癌に対して, high dose rate (HDR)-192Irを用いた小線源放射線治療を施行し, その初期治療経験について文献的考察を含め報告する.
    対象は, 早期舌癌16例 (T1: 12例, T2: 4例) で, 頸部リンパ節転移を認めないものを適応とした.総線量は60Gy/10Fr/6Daysを基本とした.
    16例全例で腫瘍は消失した.
    局所再発は16例中, 3例あり, そのうち2例は死亡した.粗生存率は87.5%であった.
    後発頸部リンパ節転移を16例中2例に認め, 後発頸部リンパ節転移の扱いが本治療後の課題であった.局所制御の面から考えると早期舌癌において本治療は有用と思われた.
  • 橋本 大門, 平山 方俊, 井口 芳明, 山本 一博, 佐藤 賢太郎, 木原 圭一
    2002 年 14 巻 3 号 p. 313-319
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    薬剤内服後に粘膜皮膚眼に病変を起こした2症例を経験した.臨床所見, 検査結果からStevens-Johnson症候群と診断した.症例1は症状が高度で, 滲出性紅斑の所見を認めたためプレドニゾロンによる加療を行った.症例2は症状が軽度であったこと, ベーチェット病や単純ヘルペス感染症との鑑別が十分でなかったことから, 対症療法のみを行った.症例1, 症例2ともにリンパ球幼若化試験, 貼布試験を施行し起因薬剤の同定を行った.症例1, 2ともに加療により軽快した.
  • 南 豊彦, 中川 のぶ子, 多田 直樹, 浜野 巨志, 井野 千代徳, 岩井 大, 山下 敏夫
    2002 年 14 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 2002/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    局所麻酔下で耳下腺腫瘍を摘出する方法と症例, そしてその展望につき報告した.筆者らが耳下腺腫瘍を局所麻酔下での摘出術を導入する決意に至った理由は, 顔面神経下顎縁枝よりの末梢法の容易さに加え放置しても悪性化することがないWarthin腫瘍の取り扱いに議論があってのことである.今日まで18症例に施行し, Warthin腫瘍が8例, 混合性腫瘍が6例であった.下口唇の運動障害を継続的に認めた症例は1例で神経鞘腫例であった.手術時間は, 平均90分, 術中の痛みは局麻下の鼓室形成術より軽い例が多かった.本手術法の特徴は, Warthin腫瘍の手術法として患者に理解されやすく, 日帰り手術が可能であり術中に顔面神経の状態を把握できることにある.現在はWarthin腫瘍であればその大きさに関わらず可能と破断すれば局所麻酔下で行い, 混合腫瘍では大きさと位置に条件を定め施行している.
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