口腔・咽頭科
Online ISSN : 1884-4316
Print ISSN : 0917-5105
ISSN-L : 0917-5105
28 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
特別講演 がんの免疫治療・予防:がん幹細胞の免疫制御を介して
総 説
  • 佐藤 昇志, 廣橋 良彦, 塚原 智英, 金関 貴之, コーチン ビタリー, 田村 保明, 鳥越 俊彦
    2015 年 28 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     免疫による治療の哲学は, 癌に対する繊細な特異性である. ここ数年, PD-1 等の immune check points の免疫制御性分子の抗体治療は素晴らしい成果を上げつつも, がん特異性という観点からは全く厳密ではない. がんの特異性の原則はがん細胞にのみ発現する分子に対する免疫応答である. これら分子の大部分は蛋白分子であるが細胞内プロテアソーム等により分断され, ペプチド断片になり, そして HLA A24 や A2 などの HLA クラス I分子と複合体形成し細胞表面に発現する. これら複合体が cytotoxic T lymphocyte (CTL, 細胞障害性Tリンパ球) により認識され, 癌細胞の特異的排除に至るわけである. 従って, がん抗原ペプチドはこのようにがん特異性という意味では理論的にも理想といえる. このことは, がん免疫の哲学, すなわち考えられうる最も僅少な, あるいはゼロ副作用の基盤となるのである. ヒトがん免疫の研究基盤, 治療基盤はまさにここにあるのである.
教育講演 日常診療における IgG4 関連疾患
総 説
  • 山本 元久, 高橋 裕樹, 篠村 恭久, 関 伸彦, 高野 賢一, 氷見 徹夫
    2015 年 28 巻 1 号 p. 7-14
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     IgG4 関連疾患は, 高 IgG4 血症と腫大した罹患臓器への著明な IgG4 陽性形質細胞浸潤と線維化を特徴とする, 新しい全身性, 慢性炎症の疾患概念である. ミクリッツ病は, 自己免疫性膵炎とともに, IgG4 関連疾患の2大病態である. 現在, ミクリッツ病は, IgG4 関連疾患の涙腺・唾液腺病変と位置づけられ, IgG4 関連涙腺・唾液腺炎とも呼称されている. 私たちは多施設で IgG4 関連涙腺・唾液腺炎の症例データベース (SMART) を構築し, 日常診療に不可欠な情報の抽出に取り組んでいる. IgG4 関連疾患の涙腺・唾液腺炎では, 膵, 腎などに多彩な臓器障害が約6割で認められる. また悪性腫瘍の合併のリスクがあるため, 診断時には, 全身検索とともに組織学的診断を行うことが重要である. 治療は, 現時点ではステロイド治療が第一選択であるが, 漸減とともに再燃することが多い. 初回病変とは異なる臓器に再燃を認めることがあるため, 全身的なフォローアップが必要である. このため, ステロイド維持療法が行われている症例が多い. 長期的な予後は不明であるが, SMARTからは, 診断後7年で約半数の症例が再燃を認める.
シンポジウム 睡眠時無呼吸症候群の外科治療―周術期のマネージメント
総 説
  • 守本 倫子
    2015 年 28 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     小児の睡眠時無呼吸症例では多くの症例はアデノイドや扁桃摘出術を行うことにより術後トラブルもなく退院するが, 筋緊張低下や下顎低形成などに伴う中咽頭の狭窄, 低体重児など気道が未熟である症例では, 全身麻酔をかけたことにより上気道狭窄が増悪し抜管困難となることがあるため注意が必要である. 術前にアデノイドなどによる上気道の閉塞のみが閉塞性無呼吸の原因になっているのか, 舌根沈下や声帯の動きなどは特に問題が無いのか, 中枢性無呼吸は隠れていないのか, を内視鏡検査やポリソムノグラフィーにて充分に見極める必要がある. また, 麻酔科, 小児科と連携をとり, 情報共有しながら周術期の管理を行うことが重要である.
  • 渡邊 統星, 千葉 伸太郎
    2015 年 28 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     sleep surgery はその対象疾患の形態学的・生理的特徴から, 米国麻酔科学会のガイドラインにおいても高リスク群に分類され, 周術期管理に注意が必要である. NHFT (Nasal High Flow Therapy) は CPAP 効果が期待でき患者に与える圧迫感も少ないため症例を選択すれば有効な術後管理の一つになりうると考える.
  • 鈴木 雅明, 小谷 亮祐
    2015 年 28 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     全身麻酔手術は閉塞性睡眠無呼吸症 (OSA) 患者, 特にその気道手術においてその周術期管理におけるリスクが増す. 肥満・心肺合併症を伴えばさらに術後のリスクは高まる. ハイリスク症例を術前に選択し, 術後は内視鏡による咽頭喉頭観察を適時行うなどの気道閉塞リスクの慎重な管理を行うことが必要である. 術後モニタリングは全症例に対して, アコースティック呼吸数モニタや脈波センサによる胸腔内圧測定などにより, 非侵襲的に行うことが望ましい. OSA 手術を午前中の手術とする配慮も必要である. 常勤麻酔科医がいる病院において周術期管理について十分注意しながら, 積極的に OSA 手術に取り組むことが国民の利益に繋がると思われる.
シンポジウム 咽頭癌に対する経口的アプローチによる手術の適応と限界
総 説
唾液腺内視鏡セミナー
総 説
  • 崎谷 恵理, 吉原 俊雄
    2015 年 28 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     2014年4月より唾液腺内視鏡が保険適用となり, 手術数の増加が期待される. 唾液腺内視鏡手術によりこれまでと比較して, より侵襲を軽減した唾石症の唾石摘出術や, 狭窄症の診断, 拡張術が可能となってきている. また, 従来の術式と唾液腺内視鏡を併用する combined approach によって, 手術時間の短縮や小さな創部による唾石の摘出が可能となってきている. 当科では2009年より唾液腺内視鏡を取り入れ, 現在まで試行錯誤しながら行ってきた. 本稿では当科での症例や治療, 工夫について述べる.
原 著
  • 小林 泰輔, 弘瀬 かほり, 兵頭 政光
    2015 年 28 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     2012年4月から2014年8月の間に唾液腺内視鏡を用いて手術を行った13例をまとめ, 内視鏡手術の適応について考察した. 12例が顎下腺唾石症, 1例が耳下腺管拡張症であった. 全例全麻下に手術を行い, レーザーは使用していない. 唾石症12例において, 顎下腺の温存率は67%であった. 一過性の顎下腺腫脹を認めた例はあったが, その他合併症はなかった. 唾石16個において摘出方法別に CT 上の唾石の大きさを調べると「内視鏡」群の中央値は 3.3mm, 「併用または腺摘」群では 8.1mm で, 両群間には有意差があった. レーザーを用いない場合, 顎下腺では最大径 6mm 程度までの唾石であれば内視鏡下摘出術の適応になると考えられる.
手 技
原 著
  • 小柏 靖直, 尾川 昌孝, 甲能 直幸
    2015 年 28 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     成人発症の軟口蓋穿孔の原因は, 結核や梅毒などの感染, Wegener 肉芽腫症に代表される血管炎, NK/T 細胞悪性リンパ腫といった悪性腫瘍など多彩であるが, 発症原因が不明なものは過去に報告がない. 今回我々は発症原因が不明な軟口蓋穿孔を経験したので文献的考察を加えて報告する. 症例は68歳女性で, 鼻咽腔逆流と開鼻声を主訴に当科を紹介受診した. 穿孔の原因検索を約4ヵ月にわたって行ったが原因の同定に至らず, 本人の症状を改善させることを目的として push back 法による穿孔閉鎖を行った. 術後1年間の経過で再穿孔はなく機能も良好に保たれているが, 今後も当面の間慎重な経過観察を行う方針である.
  • 竹林 慎治, 林 泰之, 康本 明吉, 籔内 咲, 暁 久美子, 大野 覚, 池田 浩己, 三浦 誠
    2015 年 28 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     魚骨異物は日常臨床でしばしば遭遇し, 診断・治療が容易な場合が多いが, 稀に困難な症例も存在する. 我々は, 3例の非典型的な魚骨異物症例を経験したので, 当院での頸部魚骨異物症例の検討を加えて報告する. 症例1は70歳の女性で, 舌筋層内に魚骨迷入し, 発症から受診まで半年を要し, 放線菌感染を伴う膿瘍形成を生じた. 症例2は68歳の女性で, 発症時近医喉頭ファイバースコープ検査で発見できず, 5日後右頸部膿瘍を生じ, 甲状腺右葉背側に迷入した魚骨を外切開により摘出した. 症例3は59歳の男性で, 舌扁桃内に埋没していたが, 経口腔的に摘出できた. 当院で4年半の間に60例頸部魚骨異物摘出術を施行し, CT 検査が有用であった.
  • 江川 峻哉, 北田 良裕, 石橋 淳, 櫛橋 幸民, 寺崎 雅子, 嶋根 俊和
    2015 年 28 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     症例は44歳女性. 主訴は咽頭痛と左頸部腫脹. 左扁桃周囲膿瘍の診断で近医で口腔内から切開排膿術を受けていた. 排膿後一時的に症状は軽快したが, 頸部腫脹と咽頭痛が継続したため当院を紹介され受診した. 血液検査では炎症所見は軽度で頸部 CT, MRI 上, 左副咽頭間隙に嚢胞性病変を認めたため神経鞘腫などを疑い手術加療の方針とした. 嚢胞は内頸・外頸動脈より背側に位置し, 迷走・副・舌下・交感神経線維との連続性は認めなかった. 病理組織学的に嚢胞壁は扁平上皮で覆われ, リンパ濾胞の形成が認められたため Bailey IV 型の鰓原性嚢胞と診断した.
  • 立川 麻也子, 吉原 俊雄
    2015 年 28 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     我々は小唾液腺に発生した多形腺腫由来癌で癌腫部分が上皮筋上皮癌の一例を経験したので報告する. 患者は66歳の女性で, 約40年前より右頬部の腫瘍を自覚していたが, 医療機関は受診していなかった. 腫瘍は緩徐に進行していたが, 当院初診1年前より野球ボール大に増大した. 患者は積極的な治療を望んでいなかったが, 腫瘍により日常生活に不快を感じ始めたため, 最終的に当院での腫瘍摘出術及び気管切開術を行うこととなった. 腫瘍は直径約 10cm 大の巨大な腫瘍であり, 病理組織学的診断で多形腺腫由来癌で癌種部分は上皮筋上皮癌という結果が得られた. 組織の一部で未分化転化している部分を認めた. 腫瘍は術後6ヵ月で急速に再発増大したため, 術後1年経過したところで不幸な転帰をとった.
  • 小野 麻友, 大脇 成広, 清水 猛史
    2015 年 28 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     嚥下困難感を主訴に受診した破傷風例を経験した. 症例は84歳男性, 2日前からの咽頭痛と嚥下困難感を主訴に前医から救急搬送された. 受診時に開口障害と嚥下障害を認めたが, 抗菌薬加療にても症状は改善しなかった. その後, 痙笑と下肢の痙直が出現し, 土との接触歴があったことから, 明らかな外傷はなかったが, 破傷風を疑い治療を行ない, 合併症なく改善した. 破傷風は疑わないと診断が困難な疾患であるが, 初期症状である開口障害や嚥下障害を主訴に耳鼻咽喉科を受診することがあり, 早期診断により重症化するまでに対処することが重要である. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 清水 啓成, 篠原 宏
    2015 年 28 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     頸椎カリエスに伴った咽後膿瘍の1例を経験したので報告する.
    症例は27歳ネパール人女性. ネパールより1年半前に日本に移住. 左後頸部痛を主訴に当院整形外科を受診し, 頸部筋膜炎にて経過観察していた. その後 CT にて頸椎椎体前面の膿瘍形成および C3 椎体の骨破壊像を認め, 咽後膿瘍および頸椎カリエスが強く疑われた. 経咽頭にて穿刺し抗酸菌検査 Tb-PCR 陽性だった. 以上の所見より頸椎カリエスに伴った結核性咽後膿瘍と診断した. 近年, 在日外国人特にアジアからの若年移住者の結核罹患率の高いことが報告されている. 今後アジアからの移民を診察する際にも, 結核の存在を意識すべきであり注意を喚起したい.
  • 立川 麻也子, 吉原 俊雄
    2015 年 28 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     悪性リンパ腫は耳鼻咽喉科の日常診療において遭遇する疾患として珍しくない疾患である. MALT (mucosa-associated lymphoid tissue) とは, リンパ節外の粘膜を介して外界と接する消化管, 耳下腺等の唾液腺に多く存在するリンパ組織のことである. この部位から発生するリンパ腫は MALT リンパ腫と呼ばれるが, 中間型から中型のB細胞性腫瘍細胞からなり, 反応性リンパ球, 形質細胞が混在する組織が特徴的でシェーグレン症候群で合併することが多いと知られている. MALT リンパ腫の術前診断で決定的な画像検査所見や血液所見には乏しく, 治療方法も確立されていないのが現状であるとの報告が多い. 今回当科で経験した症例の特徴および治療方針についてまとめた.
  • 大塚 雄一郎, 根本 俊光, 花澤 豊行, 岡本 美孝
    2015 年 28 巻 1 号 p. 103-107
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     胸痛と胸部異常感は虚血性心疾患の典型的な症状であるが, 胸部以外の症状を訴えることも多く, 耳鼻咽喉科領域の症状で発症することがある. 労作時の咽喉頭異常感を訴えた狭心症の症例を経験した. 症例は64歳男性, 心電図は正常だったが心筋シンチで虚血を示唆され, 冠動脈造影で左前下行枝 (LAD) の90%狭窄, 左回旋枝 (LCX) の99%狭窄, 右冠動脈 (RCA) の100% 閉塞を認めた. PCI を行い狭窄は解除され, 労作時の咽喉頭異常感も消失した. 胸痛を伴わない虚血性心疾患は見落とされやすいため, 不幸な転帰をとることもある. 咽喉頭症状で発症した虚血性心疾患を適切に診断するために何が重要であるか過去の文献を検討した. 11報告12例と本症例の合わせて13例を検討した結果, 焼灼感, 絞扼感・圧迫感, 急激な発症, 労作時の発症, 過去の胸部症状の有無, 吐気, 呼吸苦, 冷汗などの随伴症状の有無が虚血性心疾患を疑うサインと考えられた.
  • 大塚 雄一郎, 根本 俊光, 花澤 豊行, 岡本 美孝
    2015 年 28 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2015/03/31
    公開日: 2015/05/21
    ジャーナル フリー
     リウマチ熱は, 溶血性連鎖球菌 (以下溶連菌) 感染症に続発して心炎, 多関節炎, 舞踏病, 輪状紅斑, 皮下結節などの諸症状を呈する非化膿性炎症性疾患である. 心炎はリウマチ熱の予後を左右し, 弁膜症の後遺症を残したり心不全を起こして生命にかかわる可能性がある. リウマチ熱は, 心筋, 関節, 皮膚, 脳に対する自己抗体による交差免疫反応が原因である. 衛生環境と医療環境の改善により先進国ではリウマチ熱の発生は激減し, 本邦でも急性期の心不全で死亡することはなくなった. しかし, 米国で流行が相次いだこともあり注意が必要である. 扁桃周囲膿瘍と心筋炎の存在からリウマチ熱の診断に至った1例を経験した. 症例は20歳男性, 当初は胸痛を訴え心筋炎の診断で ICU に入院となった. 2日目に開口障害と咽頭痛を訴え, 扁桃周囲膿瘍と診断し切開排膿を行った. 膿汁から G 群溶連菌が検出され, 血清 ASO 値が高値を示した. CLDM (clindamycin phosphate) と CTRX (ceftriaxone sodium hydrate) を9日間投与し, 後遺症を残すことなく完治した. 溶連菌感染症の診療においてはリウマチ熱の合併に注意することが重要である.
feedback
Top