口腔・咽頭科
Online ISSN : 1884-4316
Print ISSN : 0917-5105
ISSN-L : 0917-5105
36 巻, 1 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
訃報
手技
会長特別講演 耳下腺手術の向上をめざして
  • 岩井 大, 鈴木 健介, 藤澤 琢郎, 阪上 智史, 友田 篤志, 田村 祐紀, 八木 正夫
    2023 年 36 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    耳下腺手術における術後顔面神経麻痺の予防に向け,耳下腺腫瘍の2症例を用いて手術手技の検討を行った.手術では外視鏡による拡大画面で術野を観察しつつ,顔面神経機能を間欠的・持続的神経モニタリングシステムで計測しながら行った.その結果,神経分枝を周囲の結合識から露出してからの,神経に対する直接的な操作や,腫瘍を動かすこと(ガーゼでの血液除去操作など)による神経への間接的な外力が神経傷害に結びつくことが考えられた.また,下行枝操作により,直接処置していない上行枝領域の機能障害が生じたことにより,一部の神経への外力が顔面神経の分枝網を通じ本幹や他の分枝を傷害する機序を推定した.
総説
パネルディスカッション1 明日から私も嚥下診療
  • 宮田 恵里, 兵頭 政光, 岩井 大
    2023 年 36 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    超高齢社会を迎えた我が国では医療や介護の現場において嚥下障害への介入は不可欠である.嚥下障害の診療では様々な職種がチームとしてケアに当たる必要があり,多職種での介入を円滑に進めるためにはスタッフ間の情報共有などが必要となる.現在,嚥下機能評価では嚥下内視鏡検査が広く使用されているが,検査の際は機能評価や誤嚥の有無を評価するにとどまらず,リハビリテーションの手がかりを得ることが重要である.また,嚥下内視鏡検査スコアを用いて経口摂取の可否を判断する際には,嚥下機能以外の様々な条件も考慮する必要がある.さらに,嚥下内視鏡スコアの各評価項目は訓練プログラム立案の一助と成り得るため有用に活用することが望ましい.
パネルディスカッション2 深頸部膿瘍―予後診断と治療法の検討
  • ―予後診断の検討 解剖学的観点から―
    渡辺 哲生
    2023 年 36 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    深頸部の解剖学的観点から当科で加療した症例における重症化の要因について検討した.
    予後不良(重症例)と予後良好(非重症例)を目的変数,膿瘍の主間隙と病変の存在する患側間隙数,各間隙の病変の有無を説明変数として数量化Ⅱ類による分析を行った.
    舌骨上下に及ぶ間隙,縦隔と連続する間隙,病変が広範囲になると予後不良となること,扁桃周囲間隙を超えて病変が広がった場合は重症化の危険性が高くなることが示唆された.また,深頸部感染症の解剖学的観点からのみの予後診断は十分ではないが,関連はあるという結果であった.
  • ~深頸部膿瘍の生命予後因子と経口摂取遅延因子の解析を通して~
    阪上 智史, 日高 浩史, 八木 正夫, 岩井 大
    2023 年 36 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,様々な業界で大規模データを利活用した取り組みが行われるようになってきている.このデータによる検討は,これまで確認が難しかった医療行為や知識の正確性の検証を可能とし,さらなる新知見を得る可能性がある.
    こうした中で,これまで降下性縦隔炎を含めた深頸部膿瘍は,症例数が限られ単施設では十分な検討が困難であった.これに対し我々は医療の領域において利用可能な大規模データであるDiagnosis Procedure Combination(DPC)データを用いて日本全国の深頸部膿瘍4,949症例に関する解析を行った6
    死亡退院と経口摂取遅延に関する因子を検討したところ,①年齢(75歳以上),②人工呼吸器使用,③抗菌薬長期間使用が統計学的に有意なリスク因子であると判明した.一方,同様に重症化因子として報告されてきた縦隔炎合併,複数回の排膿術は経口摂取遅延に対してのみ有意な因子であることが判明した6
    以上のごとく,医療大規模データによる臨床解析は従来の報告を修正する可能性があり,こうした大規模データの利活用は今後の医療界の発展に重要ではないかと考えられる.
パネルディスカッション1 新時代の嚥下診療「いつまでも美味しく食べたい!」
  • 上羽 瑠美
    2023 年 36 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    「摂食を楽しみたい」という希望の背景には,生理的欲求である食欲を満たすだけでなく,①見た目を楽しむ,②味を楽しむ,③においを楽しむ,④嗜好品を楽しむ,⑤家族や友人との食事環境を楽しむといった要素が含まれている.食事における楽しさを増やすためには,五感で感じることがキーポイントではないだろうか.食物を見て(視覚),においを嗅いで(嗅覚),味を感じて(味覚),食感を感じて(触覚),会話や音楽を聴きながら(聴覚),食事全体を楽しむことができれば理想的だ.
    本稿では,嚥下障害患者や高齢者が「摂食を楽しむ」ために,どのような取り組みや工夫を行うことができるのかについて,五感と摂食への影響を中心に解説し,摂食を楽しむための摂食嚥下支援について述べる.
原著
症例
  • 平野 美聡, 新井 智之, 根本 俊光, 宮永 一真, 佐永田 健太, 三田 恭義, 山﨑 一樹, 花澤 豊行
    2023 年 36 巻 1 号 p. 42-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    大唾液腺MALTリンパ腫の報告は散見されるが,小唾液腺MALTリンパ腫の報告は稀である.我々は口蓋腺に発症したMALTリンパ腫の1症例を経験したので報告する.症例は55歳女性で,右口蓋の腫脹を主訴に当科受診となった.MRIではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を呈する長径13mmの粘膜下腫瘍を認めた.経口腔的切除を行い,病理組織検査でMALTリンパ腫の診断となった.FDG-PET検査や他病変のFNAの結果からAnn Arbor分類ⅠE期と判断し,追加治療は行わず経過観察の方針とした.術後1年時点で再発は認めていない.これまでの報告と同様,既往にあるSjögren症候群との関連が示唆された.
  • 駿河 有莉, 牧野 琢丸, 假谷 伸, 安藤 瑞生
    2023 年 36 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    形質細胞肉芽腫(plasma cell granuloma)は形質細胞の増殖を伴う非腫瘍性,反応性の病変である.今回,我々は上咽頭形質細胞肉芽腫の1症例を経験したので報告する.症例は68歳女性であり主訴は鼻閉であった.PET検査で上咽頭に集積が認められ,精査加療を目的に当科を紹介され受診となった.生検で診断は確定できなかったが悪性腫瘍は否定されたため,数年間経過観察をされた後に終診となった.その後5年の経過で上咽頭腫瘤の増大による鼻閉が出現した.鼻閉症状の改善および診断を目的として手術の方針となり,形質細胞肉芽腫の診断となった.確定診断がついていない場合は悪性所見がなくても定期的なフォローアップが必要と考えられる.
  • 宮永 一真, 山﨑 一樹, 濱田 美聡, 佐永田 健太, 三田 恭義, 新井 智之, 花澤 豊行
    2023 年 36 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    扁桃周囲膿瘍に続発した感染性仮性動脈瘤により,致死的出血をきたした1例を経験した.症例は70歳台男性.咽頭痛と咽頭腫脹を主訴に前医を受診し,扁桃周囲膿瘍の診断で入院となった.穿刺排膿・抗菌薬治療を開始後は経過良好であり一度は退院したが,直後に吐血があり再度入院となった.翌日にも吐血があり,止血困難であったため当院に救急搬送された.血管造影で顔面動脈扁桃枝に形成された仮性動脈瘤からの造影剤漏出を確認した.感染性仮性動脈瘤の破裂と診断し,Seldinger法による緊急動脈塞栓術を行った.術後は新規出血なく経過し退院となった.感染性仮性動脈瘤の診断や治療に関して,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 峠 早紀子, 井内 寛之, 川畠 雅樹, 宮下 圭一, 山下 勝
    2023 年 36 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    OK-432(ピシバニール)はA群溶連菌Su株をペニシリンで不活化したもので,癌の免疫療法薬として開発された.ガマ腫に対するOK-432を用いた硬化療法は低侵襲で安全な方法であることから,近年行われるようになっている.今回,当科にてOK-432による硬化療法を行ったガマ腫4例について報告する.3例に希釈置換法,1例に高濃度注入法を行った.全例注入回数は1回であった.1例で注入後に再増大を認めたが,その4ヵ月後には自然消退し,最終的には全例ガマ腫の消失に至った.副作用は,発熱,腫脹,疼痛を認めたが,重大なものはみられなかった.OK-432による硬化療法はガマ腫に対して有効性と安全性が高い治療法であると考えられ,治療の第一選択肢となり得ると思われる.
  • 町井 衣保, 佐藤 宏樹, 清水 顕, 塚原 清彰
    2023 年 36 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌の二次重複癌として悪性リンパ腫の発生は稀である.症例は67歳男性で,表在型下咽頭癌で3回内視鏡的咽喉頭手術を施行した.病理診断はそれぞれSquamous cell carcinoma, pT2,pT2,pT1であった.初回内視鏡的咽喉頭手術後11ヵ月に施行した頸部超音波検査で左顎下リンパ節にリンパ門の消失を伴うリンパ節腫脹を認め,FDG/PET-CTでFDGの高集積を認めた.18ヵ月目にリンパ節摘出術を施行し,濾胞性リンパ腫の診断となった.後発頸部リンパ節転移が非典型部位であった場合,悪性リンパ腫の合併のような稀な病態も考慮すべきである.細胞診で確定診断が得られない場合,リンパ節生検が有用である.
  • 菅谷 泰樹, 山本 圭佑, 角木 拓也, 大國 毅, 黒瀬 誠, 高野 賢一
    2023 年 36 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    下咽頭梨状陥凹瘻とは,先天性の瘻管であり反復性の頸部感染症の原因となることが知られている.治療は頸部外切開による瘻管摘出術が一般的であるが,近年は経口的に瘻管を焼灼する報告が散見される.当院で経験した3症例のうち,1例では電気的焼灼後に化学的焼灼を追加し,2例で電気的焼灼とフィブリン糊の塗布を施行した.当院のすべての症例で頸部感染症の再発を認めなかった.経口的瘻管焼灼術は皮膚切開を伴わず,手術時間・入院期間も短かったため,頸部外切開と比較して低侵襲であった.下咽頭梨状陥凹瘻の治療の第一選択肢として経口的瘻管焼灼術を検討する余地があると考えられる.
  • 片桐 克則, 志賀 清人
    2023 年 36 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    血管肉腫は稀だが悪性度が高く極めて予後不良な腫瘍である.我々は2例の頭頸部領域血管肉腫症例を経験した.1例目は耳下腺腫瘍で,細胞診では悪性の診断を得たが組織型確定に難渋した.臨床経過から高悪性度の腫瘍と考え拡大耳下腺全摘術を施行したが,早期に肺転移,気胸を来し,術後4ヵ月で原病死した.2例目は下歯肉に発生し,急速に増大,生検で血管肉腫を疑われたため,準緊急で下顎骨区域切除を含む腫瘍切除手術を施行し,術後パクリタキセルによる補助化学療法を行うことで,3年以上再発なく生存している.血管肉腫は進行が極めて早いため,血管肉腫の可能性も疑う場合,早急な診断と,迅速な治療対応が重要である.
  • 斉藤 あゆみ, 吉田 崇正, 山元 英崇, 安松 隆治
    2023 年 36 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性.3ヵ月前に左耳下部腫瘤に気づき当科を受診した.左耳下腺浅葉に2cm大の充実性腫瘤を認め,MRIや穿刺吸引細胞診では多形腺腫やワルチン腫瘍などの良性腫瘍が疑われた.初診から2ヵ月後に左耳下腺浅葉切除術を行った.組織学的には,辺縁部が脂肪に富む腫瘤で,中心部では豊富な線維成分の中にアポクリン化生を伴う上皮が管状・篩状に増生し,腺房細胞内に好酸性の顆粒を認めた.硬化性多嚢胞腺症(SPA)と診断し,術後1年間再発なく経過している.SPAはまれな唾液腺疾患で耳下腺に好発する.良性疾患だが再発や悪性化の報告もあり,慎重な経過観察を要すると考えられた.
  • 松本 和大, 濱本 隆夫, 樽谷 貴之, 上田 勉, 竹野 幸夫
    2023 年 36 巻 1 号 p. 89-95
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    実物大臓器立体モデルは耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域においては頭蓋骨,側頭骨,下顎骨などの手術支援模型として広く活用されている.今回顔面皮膚,下顎骨に広範浸潤した顎下腺癌の手術において,下顎骨チタンプレートと遊離腹直筋皮弁再建術を施行した.腫瘍は下顎骨表層に隆起し,筋突起近傍まで浸潤し骨折を生じていたため,健側下顎骨の鏡像模型を作成することで左右の対照性を保持した硬性再建が可能であった.術前に作成した3Dモデルの詳細と治療経過について,文献考察を加え報告する.
  • 石川 健一朗, 白倉 真之, 小川 武則, 飯沼 亮太, 石川 智彦, 石井 亮, 香取 幸夫
    2023 年 36 巻 1 号 p. 96-101
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    濾胞樹状細胞肉腫(follicular dendritic cell sarcoma:FDCS) は,リンパ濾胞内の抗原提示細胞である濾胞樹状細胞から発生する稀な肉腫である.今回,口蓋扁桃原発濾胞樹状細胞肉腫の一例を報告する.症例は49歳女性.咽頭違和感,右口蓋扁桃腫大を訴えて近医を受診後,生検にて濾胞樹状細胞肉腫の診断となり当科紹介となった.拡大扁桃摘出術および術後放射線治療を行い,6年間再発なく外来経過観察中である.
  • 大湊 久貴, 熊井 琢美, 高原 幹, 片田 彰博, 林 達哉
    2023 年 36 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    PFAPA症候群は自己炎症性疾患の一つであり,周期性発熱,アフタ性口内炎,頸部リンパ節炎,咽頭炎を主症状とし5歳以下の乳幼児に発症する.初期治療として薬物投与などが行われるが,効果が不十分な場合は口蓋扁桃摘出術の適応となる.今回我々は,口蓋扁桃摘出術を行なったPFAPA症候群の5例を経験したので考察を加え報告する.
    対象は当科で口蓋扁桃摘出術を行ったPFAPA症候群5例である. 男児4例,女児1例であり,発症年齢は0-5歳(中央値3歳),口蓋扁桃摘出術時の年齢は2-7歳(中央値5歳)であった. 症状としては周期性発熱5例,アフタ性口内炎1例,頸部リンパ節炎2例,咽頭炎5例を認めた. 術後は全例に周期性発熱の消失または発熱周期の延長を認めた. 口蓋扁桃摘出術はPFAPA症候群における症状改善に効果が高く,薬物療法に抵抗する症例において,小児科担当医師や患児,両親の意見も踏まえ,扁桃摘出術を勧めるべきである.
  • 辺土名 貢, 和佐野 浩一郎, 都築 伸佳, 北村 充
    2023 年 36 巻 1 号 p. 108-115
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    Cribriform adenocarcinoma of minor salivary glands(CASG)は,小唾液腺に好発する悪性腫瘍の一つの疾患概念であり,本邦での報告は稀である.今回,同疾患に特徴的な舌根部原発腫瘍と頸部へのリンパ節転移を伴う患者に対して手術治療を行った.現在,WHOの唾液腺腫瘍分類では,CASGは多型腺癌の亜型として定義されているが,臨床的特徴や遺伝子型などに相違点を認めることから分類上別疾患として取り扱うべきかどうか議論の分かれる所となっている.本症例においては,それぞれの疾患における特徴的な所見の混在を認め,分類に関しては今後の更なる検討が必要と考える.
  • 河江 千尋, 中村 一博, 田中 真琴, 大島 猛史
    2023 年 36 巻 1 号 p. 116-122
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー
    東京都島嶼部にある11の有人離島には約24,000人が暮らしている.これらの島々には無医村はなく医師が常駐する医療機関があるが,医療施設・体制が十分でない場合もあり,都内医療機関への紹介・連携が必要である.今回,島嶼医によって発見された多発性内分泌腫瘍1型(multiple endocrine neoplasia type 1:MEN1)の1例を報告する.MEN1は複数の内分泌臓器に腫瘍性病変を生じるため,複数の専門科に渡り横断的に診療する必要があり,島嶼医療機関と本土医療機関の良好な連携体制の構築が望まれる.
feedback
Top