口腔・咽頭科
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24 巻, 1 号
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特別講演 霊長類の脳内味覚伝導路と大脳皮質味覚野
総 説
臨床セミナー 口腔咽頭疾患と嚥下機能
総 説
  • 佐藤 公則, 中島 格
    2011 年24 巻1 号 p. 7-16
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) 患者の睡眠中の嚥下では, 88%の嚥下は閉塞性無呼吸・低呼吸に続く呼吸再開時に, 呼吸イベントを伴う脳波覚醒 (Respiratory Electroencephalographic Arousal) とともにおこっていた. 閉塞性無呼吸・低呼吸の間に嚥下がおこることはなかった. OSAS患者では睡眠中は嚥下の頻度が低くなっており, 実睡眠時間では1時間に平均5.4±3.1回の嚥下が行われていた. 嚥下の頻度は睡眠Stageに関係しており, 睡眠が深くなるに従い嚥下の頻度が低くなっていた. 睡眠中に嚥下が行なわれない最長の時間は平均43.5分であった.
    OSAS患者の睡眠中の嚥下と呼吸の関係は, 嚥下に続く呼吸のパターンに限ってみると, 71%の嚥下は嚥下後に呼吸は吸気で再開していた. 覚醒時, あるいは正常の睡眠時には, 嚥下後の呼吸は吸気で再開することが少ないことを考えると, OSAS患者の嚥下に関連した呼吸のパターンは特異的であった.
    CPAP療法により, OSAS患者の睡眠中の嚥下の頻度と嚥下に伴う脳波覚醒, 嚥下に関連した呼吸動態は正常化していた. CPAP療法は睡眠時の無呼吸・低呼吸と睡眠構築を改善させるだけではなく, 睡眠中の嚥下と嚥下に関連した呼吸動態も改善させていた.
  • 肥後 隆三郎
    2011 年24 巻1 号 p. 17-20
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    日常診療において耳鼻咽喉科へ摂食・嚥下機能の評価を依頼されるなかで, 神経・筋疾患については疾患の難しさを背景に対応に困っている先生方も多いと思われる. 神経・筋疾患にみられる摂食・嚥下障害では, 疾患に特異的な病態および病期による嚥下障害の程度に異なりがあり, 病状に則した適切なアプローチが必要である. 今回のセミナーでは日常診療で出会う頻度の高い神経・筋疾患を中心にその嚥下障害の特徴について, 我々のデータと文献的考察をあわせ解説を加えた. 具体的には 1. パーキンソン病と類縁疾患, 2. 筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic lateral sclerosis: ALS), 3. 重症筋無力症 (Myastyenia gravis: MG) の3疾患である. パーキンソン病と類縁疾患の項ではパーキンソン病と我々が豊富にデータを持っている多系統萎縮症をとりあげた. ALSの項ではVFの所見と嚥下圧の経時的変化, ならびにHillelらのALS重症度スケールに基づいた検討を加えている. MGの項ではVFの所見と不顕性誤嚥との相関を述べた. 以上を日常診療の参考として頂ければ幸いである.
モーニングセミナー オフィスにおける診療:睡眠時呼吸障害の取り扱い
総 説
  • 久松 建一
    2011 年24 巻1 号 p. 21-28
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    いびき, 過眠症を含めた睡眠時呼吸障害SRBDの診療における耳鼻咽喉科医の役割が極めて重要であることを述べた. 閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群OSAHSを中心にSRBDの総論, 検査, 保存的治療法に加えて新しい手術 (鼻腔整形術, コブレーションcoblationを用いる口蓋垂軟口蓋咽頭形成術cobUPPP) について述べた. 大きな鼻腔抵抗は上気道の陰圧を増強しSRBDを増悪させる. また経鼻的陽圧呼吸療法nCPAPを困難にする. 鼻科手術によってnCPAPを可能に出来る. 従来の鼻科手術はSRBDに効果がないと言われていたが, 鼻腔整形術はSRBDに対してより効果的でいびき, 過眠, 睡眠時無呼吸, 低呼吸, 動脈血酸素飽和度低下, 健康関連QOLを有意に改善する. cobUPPPは局所麻酔下で可能な外来手術で, 習熟すれば開業医も可能でありSRBDの診療に参加できる. cobUPPPと鼻腔整形術を段階的手術戦略として活用すればnCPAPからの脱出の可能性が増加する. 耳鼻咽喉科の診療領域にSRBDを取り込み, 治療への参加がこの病態解決の進歩に必要である.
ランチョンセミナー 放射線治療に伴う粘膜障害は軽減できるか?
総 説
ランチョンセミナー 喉頭・下咽頭癌の化学放射線療法と救済手術
総 説
  • 丹生 健一
    2011 年24 巻1 号 p. 35-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    標準的な放射線治療では早期声門癌においてもII期となると局所制御率は70%前後であり, 約3割に何らかの救済手術が必要となる. III・IV期の成績は更に振るわず, 多くの症例で喉頭全摘出がこれまで行われてきた. 下咽頭癌に至っては, 従来は放射線治療の対象となるような早期癌は極めて稀で, ほとんどの症例では喉頭全摘出を与儀なくされていた. しかしながら, 時代とともに患者のQOLへの意識が高まり, シスプラチン (CDDP) という優れた抗がん剤の登場も相まって, 1990年代に入り進行癌に対しても化学療法を組み合わせることにより放射線治療で喉頭を温存しようという試みが次第にみられるようになってきた. 特にCDDPを同時併用した化学放射線療法の有効性は本邦においても広く認識され, 今や頭頸部癌治療の主役の座を手術に取って代わる勢いである.
ランチョンセミナー Dry Eye & Dry Mouth
総 説
  • 山村 幸江
    2011 年24 巻1 号 p. 39-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    ドライマウスの主要な患者層は高齢者であるが, 加齢そのものよりも合併症と服薬の関与が大きい. 原因薬は600種以上といわれ, 薬効に関わらず服薬の種類が増えるほどドライマウスを生じる率が高くなる. 生活指導では, う蝕に注意を払うと共に, ガムなどで唾液分泌促進を促す. M3ムスカリン作働薬の副作用軽減法として, 内服回数を1日1錠から開始し, 症状に応じて段階的に増やす (ステップアップ法), 内服用の錠剤・カプセルを水で溶解しうがいに用いる (リンス法) がある. リンス法は薬剤を口腔粘膜から吸収させるため口腔に近接する顎下腺, 小唾液腺からの唾液分泌を刺激し, かつ全身作用の軽減が期待できる.
ランチョンセミナー 胃食道逆流症と咽喉頭症状:胃食道逆流症診療ガイドライン発刊を受けて
総 説
  • 折舘 伸彦
    2011 年24 巻1 号 p. 45-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    日本消化器病学会の統一ガイドラインとして「消化性潰瘍」, 「炎症性腸疾患」, 「慢性膵炎」, 「胆石症」, 「肝硬変」のガイドラインとともに「胃食道逆流症 (GERD) 診療ガイドライン」が2009年11月発刊された. 日常診療において, 耳鼻咽喉科医は好むと好まざるとに関わらず, 咽喉頭症状を伴う胃食道逆流症患者の診療の一部を受け持たなければならないので, 本ガイドラインの概略を理解しておくことは有用であると考え, 胃食道逆流症の疫学, 病態, 診断, 内科的治療を紹介した. 食道外症状の一つである咽喉頭症状に関するCQ「GERDにより慢性咽喉頭炎 (自覚症状のみも含む) が生じることがあるか? 」へのステートメントは「GERDは咽喉頭炎, 咽喉頭症状の原因となることがあるが, 咽喉頭炎や自覚症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果は確定していない」である. さらに, 今回のガイドライン作成の文献検索期間後に論文発表された胃食道逆流による咽喉頭症状に対するプロトンポンプ阻害剤の効果を検討した無作為化臨床試験の成績を併せて紹介した.
シンポジウム 味覚障害の臨床:新たな進展
総 説
  • 任 智美, 阪上 雅史
    2011 年24 巻1 号 p. 53-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    亜鉛欠乏により生じた味覚受容器の機能低下に対して, 亜鉛を補充することで可逆的な回復が期待される.
    亜鉛含有の胃潰瘍治療剤であるポラプレジンクは, 味覚障害の治療薬として有用であることが報告されている. 今回, ポラプレジンク75mg, 150mg, 300mgまたはプラセボを12週間投与した際の有効性と安全性について検討したので報告する.
    濾紙ディスク法検査の有効率は, プラセボ群63.0%, ポラプレジンク75mg群51.9%, 150mg群80.0%及び300mg群89.3%であり, 300mg群はプラセボ群に対して統計学的な有意差を認めた. また, 血清亜鉛値の変化量は150mg群と300mg群ではプラセボ群に対して統計学的に有意であった.
原 著
  • 小林 正佳, 西田 幸平, 荻原 仁美, 竹尾 哲, 北野 雅子, 竹内 万彦
    2011 年24 巻1 号 p. 57-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    味覚障害の診療において舌の観察は重要である. 本研究では, 最近実用化された光学的画像強調テクノロジーであるNarrow band imaging(NBI) を用いて舌乳頭を観察し, その所見が味覚障害の診療に有用であるかを検証した.
    NBIを備えた耳鼻咽喉科用ファイバースコープを用いて, 味覚正常者と味覚障害患者の舌乳頭を撮影記録し, NBI像と通常の白色光下像を比較検討した.
    NBI像では白色光下像よりも舌乳頭内の毛細血管が明瞭なコントラストを呈し, 舌乳頭数の計測が容易であった. また味覚障害患者では舌乳頭内の血流低下を認めた.
    今後期待されるNBIの普及とその簡便な操作性から, NBIを用いた舌乳頭の観察は味覚障害の診療に有用と考えられる.
ノート
総 説
  • 田中 貴男
    2011 年24 巻1 号 p. 67-74
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    味覚障害の発症には, 一部亜鉛欠乏が関与すると考えられており, 亜鉛製剤であるポラプレジンクが味覚障害患者に対して有効であることも報告されている. しかし, 味覚障害に対する亜鉛補充の重要性を示した基礎研究の報告は少ない. ポラプレジンク (プロマック®) は亜鉛とL-カルノシンの錯体であり, 胃潰瘍治療剤として我が国で広く使用されている. 本稿では, 亜鉛欠乏ラットに対するポラプレジンクの味覚障害改善作用を示すと共に, その作用機序として, ポラプレジンクに由来する亜鉛の舌への分布, 舌上皮の亜鉛含量, 味蕾細胞の増殖能及び舌の病理組織学的変化に対するポラプレジンクの作用について言及する.
シンポジウム 口腔癌の超選択的動注化学放射線療法の実際
原 著
ノート
  • 吉田 知之, 伊藤 博之, 中村 一博, 清水 顕, 塚原 清彰, 稲垣 太郎, 高田 大輔, 岡本 伊作, 近藤 貴仁
    2011 年24 巻1 号 p. 81-86
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    【目的】1998年から2008年にSeldinger法による大量超選択的動注同時併用放射線療法を施行した口腔扁平上皮癌30例に対して一次治療効果, 有害事象について検討を行った.
    【方法】対象は40歳~72歳, 男性23例, 女性7例であった. CS IIが2例, IIIが6例, IVaが17例, IVbが5例であった. 治療終了1カ月後に肉眼所見, 画像所見, 病理組織検査所見を参考に効果判定を行った.
    【成績】有害事象はGrade 3以上の骨髄抑制が13.3%, 粘膜炎が57% (Grade 4: 16.7%) にみられた. 一次治療効果はCRが80%, PRが20%, SD, NC例はなく奏功率は100%であった. 動注照射後に手術を施行した9例中, 2例は病理組織学的にCRであり病理学的CR率は86.7%であった
    【結論】この治療は有害事象も許容される範囲であり, 局所コントロールの面から見ても侵襲の高い手術を回避できる可能性のある治療法と考えられた.
シンポジウム 扁桃病巣感染症研究の最前線
総 説
  • 高原 幹
    2011 年24 巻1 号 p. 87-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    IgA腎症における扁桃摘出術 (+ステロイドパルス療法) の有効性は全国的に浸透しているが, 扁桃とIgA腎症の関係を証明する基礎的な背景は十分に理解されていない. これまでの検討結果から, IgA腎症扁桃がIgAを過剰産生し, 病因となる血中IgAの供給源となっていることは間違いない. 我々の研究結果から, 細菌由来DNAへの過剰応答によるIFN-γやBAFF (B cell activating factor) の産生上昇が扁桃B細胞からのIgA過剰産生の要因となっている可能性が示唆された. さらに, ケモカイン・ケモカインレセプターを介したTCR Vβ6, CXCR3陽性扁桃T細胞の腎へのホーミングが病因に関与している可能性が示唆された.
  • 小柴 茂, 氷見 徹夫
    2011 年24 巻1 号 p. 91-96
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症 (PPP) 患者36例と反復性扁桃炎 (RT) 患者36例の扁桃組織を抗ケラチン抗体を用いて免疫染色し, リンパ上皮共生部 (lympho-epithelial symbiosis: LES) における扁桃陰窩上皮の構造を比較した. はじめにLESが拡大する際にみられる扁桃陰窩上皮が胚中心 (Germinal center) を全周性に取り囲む所見をCLG (Circular lymphoepithelial lesion with germinal center) と命名し, 両群で比較するとPPPではRTに比較してCLGの値が有意に高いことがわかった (p<0.001). 次にPPPにおける陰窩上皮細胞の機能を解析することを目的に, 手術で得られた扁桃組織を用い, 初代培養陰窩上皮細胞を作製した (PPP4例, RT3例). これらの細胞でのサイトカインの発現を網羅的に解析すると, PPPではRTに比べてIL-6, IL-23の発現が亢進していた.
    胸腺は, 胸腺上皮細胞がT細胞と密に接触しT細胞の教育を行っている. 上皮細胞がリンパ球と接触しているという構造は扁桃におけるLESと類似している. そこで胸腺上皮細胞に発現しT細胞の教育に重要と考えられているp63の扁桃陰窩上皮での発現について解析した. 上述の初代培養陰窩上皮細胞を用いて解析すると, PPPの陰窩上皮細胞では, RTに比較してp63の発現が亢進していることがわかった. また, p63はIL-6などのサイトカイン発現のみでなく, MHC class II, CD54 (ICAM-1) やCCL17 (ケモカイン) の発現も亢進させることがわかっているため, これらのことはLESという微小環境でのPPPの病態形成に関わっているものと考えられる.
原 著
  • 濱田 奈緒子, 増田 毅, 関根 大喜, 吉田 晋也
    2011 年24 巻1 号 p. 97-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    良性多形腺腫は, 組織学的に良性の所見を示しながら多臓器に転移することもある. 症例は37歳女性. 平成3年に左顎下腺摘出術を施行し病理は多形腺腫であった. その後, 平成6年と平成11年に局所再発に対し腫瘍摘出術を施行した. 結果は多形腺腫であった. 平成16年, 17年と右第9肋骨の骨折をしたため精査のため当院紹介となった. 胸部CT上, 右S8に1個, 左S3に2個の類円形の病変と右第9肋骨内に腫瘍を認め平成17年6月に右胸壁切除術と右肺部分切除術を施行した. 8月に左肺S3, S8部分切除術を施行した. 病理組織検査では多形腺腫であったが悪性を示唆する病変は認められなかった. 現在外来経過観察中であり, 再発・転移は認めていない.
  • 伊藤 伸, 横山 純吉, 大峡 慎一, 藤巻 充寿, 池田 勝久
    2011 年24 巻1 号 p. 103-109
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    Submental Island Flapは, オトガイ下動静脈を栄養血管とするaxial patternの皮弁であり1990年にMartinらによって報告された. 同皮弁の代表的な利点は, 皮弁の採取が容易, 皮弁の大きさの調整が容易, 長い栄養血管の確保が可能, 術創が一期的に閉創可能等である.
    2009年3月から5月に中・下咽頭癌4症例に対して同皮弁を用いて咽頭再建を施行したので報告する. 中咽頭癌の1例で両側のオトガイ下動脈を栄養血管として再建した. 1例で皮弁の部分壊死を認めたが, 顔面神経下顎縁枝の麻痺等の合併症は認めなかった.
    同皮弁は, 中・下咽頭癌症例の咽頭再建において確実かつ自由度が高く, 採取が容易な点から優れた皮弁の一つであると考える.
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