本稿は八束町を対象とし, 今日の特産物の生産状況を検討したのち, 特産物としての発展の背景とともに今後の存続・維持のため諸条件について考察した。研究の結果を要約すると, 次のようになる。
八束町の特産物である薬用人参およびボタンの導入は, 歴史的に古いが, 両作目が同時に農家経営に組み込まれ, しかも大量生産をみたのは, 1960年以降である。その後, 1970年半ば頃まで各農家は集約的土地利用をもとに特産地として発展させてきた。ところが, 一時的な大量生産体制の達成は, 結果的に両作目の連作障害を引ぎ起こす要因となり, 一方では出耕作に乗り出す農家も多く現れた。
特産地としての成長要因は, 歴史的背景, 栽培技術・方法の定着と確立, そして集約的土地利用の展開などがあげられる。なお, 今後特産地としての存続・維持のためには, 土地利用方式の転換, 薬用人参およびボタンの標準栽培体系の定着化, 出耕作農家に対する保護対策, さらに出荷・販売面からの組織の再編成などが考えられる。
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