季刊地理学
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51 巻, 3 号
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  • 元木 靖
    1999 年51 巻3 号 p. 161-178
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1970年代以降における米過剰と流通の自由化がすすむ中で, 米に対する消費者の要求は量の確保から質の向上に変わり,「うまい米指向」の時代に移った。本論では寒冷地に成立した東北日本 (北海道, 東北) の稲作が, 新しい時代環境にいかに対応しているかを見きわめ, 今後の可能性を探る一助として, 最近4半世紀間 (1970-95年) の水稲 (ウルチ) 品種の変遷について詳細な資料整理を試みた。その結果, 良食味米生産をめざした品種再編成が東北日本の南部で先行し, その後徐々に中部から北部へ進展してきたことを確認した。1990年代前半に至って, 東北に加え北海道の道央付近にまで, 良食味品種の栽培が一般的に認められるようになった。こうした新しい傾向が東北の良食味品種であったササニシキではなく, 全国的に良食味品種の筆頭とされるコシヒカリとの交配を通して実現してきたこと, および稲作の耐冷性強化にも大きな効果を発揮しつつ展開していることが地理学的に注目される。東北日本の稲作の将来に対して, 少なくとも品種的には大きな可能性が約束されつつあるといえよう。
  • 松浦 旅人
    1999 年51 巻3 号 p. 179-187
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    琵琶湖北岸, 野坂山地の谷中分水界2例を対象に, その形成時期および過程に関して地形発達史の観点から検討した。
    国境における五位川流域のL1面構成層下部層は, 現在の流域に存在しない丹波層群起源の巨礫を含んでいる。丹波層群の分布は現在の知内川最上流部に限られている。したがって, かつて知内川最上流部は五位川へと流れ, 日本海へ向けて北流していたことを示す。
    国境の谷中分水界は, 最終氷期後半に生じた河川争奪に伴う流路変更により形成されたものである。すなわち, 知内川最上流部から現在の知内川下流へ南流する現河道が固定化したのは, 2.2~2.5万年前 (AT降下期) 前後の河床高度の上昇に伴うものであり, このことはこの時期における河川の掃流力の低下が背景にあったことが指摘できる。
    新道野の谷中分水界については, その形成時期は最終氷期以前に遡ることが明らかとなり, 国境付近の谷中分水界とは異なる結果となった。
  • 福島県あぶくま洞を例として
    漆原 和子, 加藤 美雄, 上原 浩, 吉野 徳康
    1999 年51 巻3 号 p. 188-200
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    福島県滝根町の結晶質石灰岩 (大理石) 地域に形成されたあぶくま洞において, 観光鍾乳洞の気候特性を明らかにするため小気候観測を実施した。観測は1996年夏季と1997年冬季の2回実施し, 気温・風向風速・CO2濃度の測定を移動観測と定点観測によって行った。
    その結果, 閉鎖的な構造の上部洞では, 夏季, 冬季ともにほぼ無風状態であった。夏季に下部洞と中部洞では, 洞窟入口と洞窟出口を通じて洞窟内大気の流出がみられた。冬季には下部洞の入口から外気の強い流入があり, その風の一部は中部洞の出口から流出した。その影響で下部洞と中部洞は低温となり, 夏季より乾燥した。
    洞窟内では, 気温とCO2濃度に対する入洞者の影響が年間を通じてみられた。入洞者のいる開洞時間帯には, 上部洞で高温域とCO2の高濃度域を形成した。夏季の洞窟内の気温変化は, 日入洞者数に応じた日変化があった。日入洞者数が最大となる8月中旬には, 日最低気温と日最高気温が夏季のピークに達した。冬季の気温変化は, 上部洞のみ日入洞者数に応じた日変化があった。
  • テフラ層序と断層活動期の再検討を中心として
    大月 義徳, 安藤 優子
    1999 年51 巻3 号 p. 201-208
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    仙台市南部から宮城県柴田郡村田町にかけて高舘丘陵内に存在する坪沼断層および円田断層は, NE-SWないしENE-WSW走向の北西側隆起の活逆断層とされている。筆者らは, 仙台市太白区坪沼に位置する坪沼断層の断層露頭において, 断層下盤側にみられる示標テフラを記載した。テフラの岩相や強磁性鉱物の化学組成などから, 本地点では丘陵の基盤をなす高舘層 (下部中新統) が中期更新世の示標テフラである坪沼岩片層 (Tblf)~坪沼第4軽石層 (TbP4) に衝上するのが観察され, 本地域における最上位の中期更新世テフラ, TbP4降下期以降の坪沼断層の活動が判明した。東北日本弧外帯の地殻変動傾向を解明する上でも, 両断層の実変位や活動開始期など今後詳細に明らかにされることが望まれる。
  • 1999 年51 巻3 号 p. 209-213
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
  • 1999 年51 巻3 号 p. 214-265
    発行日: 1999/09/01
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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