季刊地理学
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69 巻, 2 号
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論説
  • 佐川 正人
    原稿種別: 論説
    2017 年 69 巻 2 号 p. 73-90
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/12
    ジャーナル フリー

    立野火口瀬の局地風は,対象地域が高気圧に覆われた場合と,低気圧が近隣する場合という2つの成因により出現するが,成因の違いによる吹走範囲の差異など,特に「どこまで風が吹くのか」が明らかではなかった。本研究では既存の数年間の観測資料から気候学的解析をおこない,これで補えない小気候的解析は数ヶ月間の多地点における気象観測で補完し解析した。この際,低気圧による山越気流の一種である「まつぼり風」と,冷気流出を原因とする「阿蘇おろし」について区別し,研究をおこなった。結果として,「阿蘇おろし」の吹走する気流下流側の限界は,吹田と菊池南消防署の間にあった。加えて,立野火口瀬の最も谷地形が狭小な付近である立野と,熊本平野に近い内牧や吹田などとの風速を比較すると,「阿蘇おろし」と「まつぼり風」のいずれも,立野における風速値の方が小さく,地点間の風速差が大きくなる傾向については「まつぼり風」吹走時の方が明瞭であった。

研究ノート
  • ─ 三重県名張市周辺と長野県栄村周辺の事例 ─
    田中 健作, 井上 学
    原稿種別: 研究ノート
    2017 年 69 巻 2 号 p. 91-103
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/12
    ジャーナル フリー

    本稿では,バス路線運営における自治体間関係の特質を見出すために,中心集落規模の異なる中部地方の名張市周辺ならびに栄村周辺の2地域を事例に,山村の県際バス路線の運営枠組みを検討した。両地域ともに,周辺山村側の自治体や集落では,経済的機能や地形条件といった地理的な制約の下で受益を最大化させるために,生活圏や行政域に対応した領域横断的な交通サービスの設定を目指した。その際には県際バス路線に対する広域的な視点よりも,地域の中心周辺関係と行政域によって形成された利害関係が影響しているため,周辺性が高く財政力の弱い自治体ほど財政負担を増大させていた。自治体間のバス路線の運営枠組みは,地理的条件に基づく利害関係の差異によって,周辺性の高い山村側の負担や制約が大きくなる構造にあるといえる。

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