季刊地理学
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75 巻, 2 号
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研究ノート
  • 近藤 有史, 大月 義徳
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 75 巻 2 号 p. 51-63
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
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     本研究では,宮城県富谷丘陵の新第三紀堆積岩地域を事例として,表層崩壊地の土層回復時間を見積もり,表層崩壊の発生周期を検討した。本地域内の1986年崩壊地および1947-1961年崩壊地の土層厚に基づくと,低位遷急線付近に位置する崩壊地の土層回復時間は,100-250年程度と推定された。他方,1986年豪雨の再現期間は,最大24時間降雨量にて100-1000年以上と広範な値を示した。しかし,豪雨の発生は確率的な現象と理解されることから,表層崩壊の再発生は,当該箇所の土層回復により大きく依存していると考えられる。したがって,本地域の表層崩壊の発生周期は100-250年程度と捉えるのがより妥当と考えられる。

  • 勝又 悠太朗
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 75 巻 2 号 p. 64-77
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
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     本稿では,奈良県の医薬品産業における企業の存立形態を明らかにした。当地域の医薬品産業は地場産業として成立した配置薬生産を起源とする。しかし,配置薬の生産は減少しており,それを専業で生産する企業は一部に限定されている。他方,配置薬だけでなく一般薬や医薬部外品,健康食品などを生産し,生産品目の多品目化を進める企業がみられるようになった。さらに,大手企業をはじめとする医薬品企業やドラッグストアからの受託生産を主軸とする企業も登場した。こうした企業は,当地域の医薬品産業の中では規模が大きく,医療用薬を主要生産品目とする点に特徴がある。このように,当地域の医薬品生産企業の存立形態には変化が認められる。そして,全医薬品の生産額に占める配置薬の割合が低下する一方で,生産品目の多品目化と受託生産が増加した結果,当地域の医薬品の生産額は2000年代半ば以降も増加傾向を示している。ただし,配置薬生産の減少は企業が奈良県に集積するメリットを低下させている。また,受託生産の拡大は生産額の増加に寄与するが,受託元企業による生産のグローバル化の推進や当産業をめぐる制度の変化などの影響を受けやすいものであるといえる。

  • 小元 久仁夫, 北川 浩之, 平河内 毅
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 75 巻 2 号 p. 78-85
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/06
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     海洋生物化石の14C年代をより一層正確な暦年代に較正するためには,14C年代較正プログラムにΔR(試料採取地点の14C年代の補正値)を入力しなければならない。Omoto et al.(2010)が報告した北海道オホーツク海沿岸のΔR(-158 yr)は,太平洋沿岸や日本海沿岸のΔR(34 yr~345 yr)と乖離している。この結果を踏まえて北海道オホーツク海沿岸のΔRを新たに決定するため,斜里町のオシャマップ川遺跡とトーツル沼1遺跡から木炭と貝化石をペアとする合計4組の試料を収集してAMSによる14C年代測定を行い,Marine20にもとづきΔRを計算した。その結果,オシャマップ川遺跡III層のΔR(1σ)は-94±60 yrとなり,またトーツル沼1遺跡のPit 2から55±46 yrと135±45 yr(平均95±64 yr)のΔRが得られた。新たに決定されたΔRは,かつてトコロ貝塚の試料にもとづき決定された-158 yr(Marine20にもとづき計算すれば-323±42 yr)とは大きく異なる。

2023年度 東北地理学会第1回研究集会報告
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