季刊地理学
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66 巻, 3 号
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論文
  • ──1991年雲仙普賢岳噴火による被災状況との比較 ──
    遠藤 匡俊
    原稿種別: 論文
    2015 年 66 巻 3 号 p. 155-175
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    1822(文政5)年の有珠山噴火によって火砕流・火砕サージが発生し,多数の人々が死亡した。しかし,具体的な死因や被災地点の噴火口からの距離と熱傷程度との関係は必ずしも明らかではなかった。本研究では,史料に記された被災者の熱傷に関する記述を用いて熱傷の深度,重症度,救命率などを推定した。推定にあたっては1991(平成3)年の雲仙普賢岳の噴火による被災例を参考にした。その結果,火砕流・火砕サージに遭遇して死亡した人々の熱傷の深度は,主にIII度熱傷(皮下熱傷)であった。熱傷の重症度は主に重症熱傷であり,現代であれば熱傷専門施設での入院加療を必要とされるほどであり,それでも救命率は30%以下のレベルに相当していた。死亡者の多くは顔面に強いIII度熱傷を負っており,高度の気道熱傷も生じていた可能性が高い。一方,火砕流・火砕サージに襲われてもすぐに海に逃れて生存した2名は,頭から首にかけてII度熱傷(真皮熱傷)を負った。これは軽症熱傷に相当し,現代の基準によれば外来通院でよい程度であった。被災地点が噴火口から遠くなるほど被災者の熱傷の程度はより弱くなる距離減衰性が見いだされた。
研究ノート
  • ──2000年代以降の新たな動向 ──
    荒木 一視
    原稿種別: 研究ノート
    2015 年 66 巻 3 号 p. 176-192
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    2000年代以降のインドの園芸作物輸出に注目して,その変化をIndian Horticultre Databaseを典拠として検討した。その結果,① 輸出量,輸出額ともにおよそこの10年間で2〜3倍を超える大幅な輸出の増加を見たこと,② 輸出の伸びの大部分はタマネギをはじめとする生鮮青果物の出荷によっており,1990年代までに重要な位置を占めていた乾燥・貯蔵野菜は大きく後退したこと,③ 輸出先では従来からのヨーロッパや中東諸国向けの高単価の品目が堅調に推移するのに対して,近隣の南アジア諸国向けの低単価の生鮮青果物がそれらをはるかにしのぐ増加をしていることが明らかになった。それらは単に量的な拡大だけではなく,輸出構造の変化という質的な変化を伴うものである。こうした変化は近年論じられているアフリカとヨーロッパを結ぶチェーンと,それがもたらすインパクトという文脈とは性格が異なる。すなわち,GNI水準の高いヨーロッパ向け輸出ではなく,同水準の低いアジア諸国向けの輸出が大きな枠割りを果たしている点においてである。その意義とともに,それが環インド洋地域の経済にもたらす影響の把握が期待される。
短報
  • 小山 拓志
    原稿種別: 短報
    2015 年 66 巻 3 号 p. 193-201
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/01
    ジャーナル フリー
    This study reports on the liquefaction damages caused by the earthquake that occurred near Awaji Island, Hyogo Prefecture, on April 13, 2013;it also investigates the damage factors in Awaji City on the basis of an intensive field survey and a detailed ground data report on reclamation.  
    According to a detailed map of liquefaction obtained through the field survey, all liquefaction sites were located on reclaimed land and not on natural ground. At Ikuho-niijima, which has acquired the outline of reclamation, detailed ground data revealed that liquefaction occurred in the areas with loose sand deposit and high groundwater level in wells, a characteristic of reclaimed land, which in Awaji City tends to be young ground. On the basis of the field survey and detailed ground data report on reclamation, these findings strongly suggest that loose sand deposit and high groundwater level in wells are important factors for liquefaction, combined with earthquake motion. Ground improvement of these lands benefited the prevention of liquefaction, and it is conjectured that this improvement is a regulation factor of liquefaction damage distribution.
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