1.既に当圃場に発生する春はげ症は
Rhizoctoniaによって起る病害であることを明らかにしたが, この病原菌が秋から春までの発生期間全般に渡って発病に関与しているか否かは明らかでない。
そこで, この病害の期間中の発生時期と病原菌の消長を調査し, 温度との関係について検討を行った。
なお, 実験はヒメコウライシバグリーン, および, コウライシバグリーンを用い, 抗菌力が異る数種の殺菌剤散布区と無処理区を設けて行った。
2.
Rhizoctoniaに抗菌力がある殺菌剤, トルクロホスメチル2g/2l/m
2, イプロジオン2g/2l/m
2, TPN2g/2l/m
2の各4回散布区では全期間を通して全く発病が見られなかったが,
Rhizoctoniaに抗菌力がない殺菌剤, エクロメゾール2cc/2l/m
2, ヒドロキシイソキサゾール4cc/2l/m
2散布区, および, 無処理区では明らかに発病が見られた。
発病が見られた区では, 秋は休眠直前 (12月21日) から休眠初期 (1月17日) に一部発病が始まり, その後, 春先は萌芽前後の時期 (3月7日) から萌芽期 (3月20日) に激しい発病が見られた。
病徴としては秋はやや褐色がかった不鮮明なものであったが, 春は灰褐色のものと褐色の鮮明なものが見られ, 後者が多かった。
3.休眠期間中の春はげ症の発生を芽出し実験から調査した結果,
Rhaaoctoniaに抗菌力がある殺菌剤散布区では全く発病が見られなかった。
一方,
Rhizoctoniaに抗菌力がない殺菌剤散布区と無処理区では, 休眠前に発病があった地点は発病が見られ, 発病がなかった地点でも新たな発病があり, 休眠後半で多かった。
4.病原菌と発病の関係を見ると, 全期間中
Rhizoctoniaが検出されなかった区は病害の発生が全く見られず,
Rhizoctoniaに抗菌力がある殺菌剤散布区であった。一方,
Rhizoctoniaが検出された区は発病が見られ,
Rhizoctoniaに抗菌力がない殺菌剤散布区と無処理区であった。
これに対し,
Pythium, Fusarivm, Curvularia (
Helminthosporiumを含む) の検出率は発病の有無とは直接関係がなかった。
そこで, 病原菌である
Rhizoctoniaの発生消長を見ると, 11月中旬~12月中旬 (休眠前~休眠直前) と1月中旬~3月 (休眠後期~萌芽開始前後) にそれぞれ1回ずつ発生極限値があり, 後者が大きかった。
5.発生時期, 病原菌の消長と温度との関係を見ると, 秋は最低気温が10℃以下になる芝草の休眠前後の時期に病原菌は増加し, 一部発病を見るが, 冬は一たん減少するものの, 春にかけて最高気温が9℃ぐらいから再び増加し, 12℃前後で最高に達し, 芝草の休眠後半から萌芽前後の時期に激しい発病が見られ, 萌芽後の4月下旬の最高気温が23℃, 最低気温が10℃を越す時期まで活動する。
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