近年開発援助としての途上国へのスポーツ普及という新たなかたちでスポーツの拡大が起こっている。先進国からの援助の一環として実施されたスポーツの普及活動は,ある意味では途上国の人々に富へのツールとしてのスポーツの技能を身につけさせることになる。
その一方で,近年,周辺各国のリーグが先進国のトッププロリーグへの人材供給地としての役割を担うようになり,トップリーグによる選手獲得網が地球規模で拡大していくという流れにより,グローバル化したスポーツにとって,アフリカは新たな労働力貯水池となりつつある。
本稿においては,一人のアフリカ人プロ野球選手の例を提示し,スポーツ労働移民の形態がグローバル化の加速度的な進展のなかで変容を遂げ,既存の枠組みでは収まらなくなってきていることを分析する。そこでは,競技レベルの決して高くない選手がスポーツ労働移民として日本へやってきた要因として,スポーツによる開発援助とプロスポーツにおける選手獲得網のグローバルな拡大を指摘する。こうして,現在において人の移動が単一の要因だけには求められなくなってきていることを論証する。
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