わが国におけるダイズ収量の地域性とそれに関与する気象要因との関係を明らかにすることを目的として, 農業気候的観点からの検討を試みた。収量資料としては府県平均収量の累年値を, 気象資料としは気温・日射・日照・降水量の7~8月平均値あるいは8~9月平均値を基礎とした。えられた結果はつぎのように要約される:
(1) 平均収量は北日本とくに北海道で高く, 西南日本で低い。収量の変動係数は本州中央部で最も低く, 北へ向って増加し, 北海道で最も大きくなるが西日本でも東北地方と同程度の変動度を示す (Fig. 1)。
(2) 各地の平均収量を平均的な気象条件 (気温・日射量) の関数として表わすとつぎのようになる,
Y/Q
1=-0.51+0.0821T
1-0.00197T
12,
Y/Q
2=-1.01+0.1369T
2-0.00336T
22.
高温側での気温レベルの収量に与える影響は開花結実期にあたる8~9月の方が大きい。
(3) 北海道では夏季気温とくに8月気温の低下に伴う減収が著しく, それの1℃低下によって収量は20~30%減少する。
(4) 多収地域は土壌湿潤度指数 (
Lr/Q) の比較的に小さい地域にみられ, 収量と
Lr/Qとは弱い負の相関関係にある。わが国の気候条件下ではダイズ収量に与える土壌水分条件の影響はあまり大きくないようにみうけられる。
(5) 最近20年間におけるダイズ収量の変動度は, 同期間の7~8月平均気温の変動度と密接な関係にあり, とくに北緯36°以北の地域での両者の相関は非常に高い。これはこの時期の気温変動と収量形成の基礎となる栄養生長量の大小とが, とくに気温レベルの低い北日本で密接に関連しているためと思われる。
Y
v=-8.117+5.585T
v1. % (36°N)
終りに本研究を行なうに当り終始暖かい御指導・御援助をえた農技研気象科微細気象研究室長・阿部亥三博士, とりまとめに当り懇切な御指導を載いた同物理第1研究室長・内嶋善兵衛博士に対し厚く御礼申し上げる。
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