キャベツ, キュウリ, レタスの3作物について, 分光特性の異なる光 (青緑色光, 黄赤色光, 赤色光) を葉の表, 裏の各方向から照射した下で, 葉の表, 裏面における気孔抵抗値とCO
2吸収速度を測定し, 異なる光質下における気孔抵抗とCO
2吸収速度との関係, および作物の光合成作用スペクトルについて考察した。大略, つぎのような結果をえた。
(1) レタスの気孔抵抗値は, いずれの照射光下においても受光面での値が小さくなったが, キャベツ, キュウリは, 照射方向に関係なく, つねに裏面での値が小さくなった。受光面では, いずれの作物においても青緑色光下での気孔抵抗値が最も小さくなった。受光側の反対面では, 光質のちがいによる差は, レタスにおいてのみ認められ, キャベツ, キュウリでは認められなかった。
(2) CO
2吸収速度は, いずれの作物も気孔抵抗値の小さい面において大きかった。しかし各面でのCO
2吸収速度は, 気孔抵抗値が小さくなる照射光下において必ずしも大きくならなかった。裏面でのCO
2吸収速度は, 気孔抵抗の影響が小さいと考えられた。表面においては, レタスは気孔抵抗の影響が小さかったが, キャベツ, キュウリは, 気孔抵抗がCO
2吸収の制限因子となった。
(3) CO
2吸収速度の表/裏比は, いずれの作物においても, 光, 照射方向によって変化した。しかし表側から照射した場合のその比は, いずれの照射光においても, レタスにおいて最も大きく, ついでキュウリ, キャベツの順に小さくなった。この作物間の差異は, 気孔の分布反応のちがい, そして葉の解剖学的特性のちがいによると考えられた。
(4) 葉の表側から照射した場合のCO
2吸収速度の表/裏比が高いものほど, 光合成作用スペクトルにおける青色部の光合成の相対値が高くなることがわかった。これは, 青色部において, 葉内吸光係数が大きく, 葉の表層部でほとんど吸収されるので, 表面からのCO
2吸収速度が大きいほど, 光合成効率が高くなるためであると考えられた。
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