南極の昭和基地で, 著著は, 風速の垂直分布については, 1970年3月より9月までと, 気温の垂直分布については, 1970年3月より1971年2月まで観測を行なつた。
観測結果を要約すると次のようになる。
(1) 気温傾度の頻度分布は, 年間では約75%, 冬期間だけでは約88%が安定状態であり, 冬季7・8月の分布範囲は広く, 夏季のそれは狭くなつている。春季 (10・11月), 秋季 (3・4月) では左右対称に近い変化を示しており, 冬季 (5~9月) では, 不安定側に夏季 (12・1・2月) では, 安定側に急減している。
(2) 逆転層発生時のみの平均気温であるT
x, T
20, T
1の変化にも Kernlose type 現象がみられる。ここでT
xは対流圏最高気温, T
20とT
1は20mと1m高度の気温である。冬季には, T
x, T
20, T
1の較差が顕著に大きくなつている。
(3) 南極では, 夏季を除けば, 逆転層の厚さが大になると逆転層の発生率は低くなり, 逆転層の厚さが小になると発生率は高くなる。
(4) T
x-T
1, T
20-T
1, T
10-T
1の順に気温較差は小さくなり, その値は冬季7月が最大で, 夏季1・2月頃が最小になつている。
(5) (T
10-T
1)/(T
20-T
1) の変化は, 秋季に高く, 夏季に低く, 冬季と春季ではほぼ同じ値を示している。この理由は, 冬季と春季では, 気温の垂直分布が直線的に変化するためであり, 秋季では, 接地下層部の気温傾度が急激に増加するためであり, 夏季では, 下層部の気温傾度が急激に減少するためである。
(6) 風速と気温傾度の最大臨界値の関係は, 直角双曲線に近い変化を示していて, 5m/sec以下では急激に気温傾度が増加しており, 8m/sec以上では, 地吹雪発生のため減少している。
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