越冬中のクリ樹の水分状態と凍害の関係を明らかにするために, 導管水, 枝水分, 木部圧と凍害の関係を検討した。
2~11年生の樹で枝水分と耐凍性をみたところ, いずれも樹齢による差が大きく, 1月中旬~4月中旬の間, 若齢樹ほど明らかに枝水分が多く, 耐凍性が弱かった。
3年生樹で, 樹ごとに導管水, 枝水分, 木部圧を経時的に測定したところ, 最初に木部圧で負圧が観測され, その後, 次第に高い正圧が現れると同時に, 枝水分と導管水が増加し始めた。1月から3月の間にこのような木部圧と枝水分の変化がみられた樹は, 後に, 重症の凍害を受けた。逆に, 木部圧の変化が小さく, 枝水分の増加がなかった樹では凍害を受けなかった。木部圧, 枝水分, 導管水で変化が大きくなり始ある時期は樹ごとに早晩の差が大きく, このことは台木の遺伝的不斉一性に由来すると推定される。
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