EUでは1992年から幾つかの作物に対し, 制度的な価格の引き下げと直接補償制度の導入により, 初めて根本的なCAP改革が行われた. 本稿では, イタリア, マルケ州を事例にして, CAP改革が, 様々な地理的条件で営んでいる農家においてどのような収入の変化をもたらしたかを検証した. 方法としては, 従来の統計モデルより効果的に, 農家から直接集めたデータに適用し得る多層ニューラルネットワーク (MFNN) モデルを採用することを試みた. このモデルを使うことによって, EUの農業会計情報網 (FADN) の膨大なデータベースが処理可能となり, EUにおける様々な地域間の比較分析ができるようになった. このMFNNモデルを適用したことにより, 制度的な価格の引き下げと直接補償制度の導入の影響が個別に計算できるようになった. その結果, 肥沃な地域では過剰に補償されていることが明らかになった. なぜならば, 各農家に対する従来の補償金の試算方法では農地条件の差による歪みが生じていたからである. 事実, EUでは, 現在の試算方法は面積当たりの作物生産量のみを考慮しているが, 分配の平等性を改善するためには, 複数の試算方法を適用してより妥当な補償方式を検証すべきであることが示される.
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