教育メディア研究
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24 巻, 1 号
変わりゆく教育状況とメディア・リテラシー
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 中橋 雄, 山口 眞希, 佐藤 和紀
    2017 年 24 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,ソーシャルメディア時代のメディア・リテラシーを育成する単元を開発し,その教育効果について検討した結果を報告するものである。本単元は,「ソーシャルメディア時代のメディア・リテラシーの構成要素」に基づき学習目標と学習活動を構成した。本単元の特徴は,「学級内に限定された教育用SNSを活用したクラスメイトとの交流」と「SNSの特性やあり方について考える授業」を並行して行うことにある。SNSを活用した自分たちの交流で生じた現象を題材とした議論を行うことで実感を伴う学習が可能になると考えた。本単元に基づく実証実践を行い,学習活動の成果を評価するためにSNS活用のログ分析,質問紙調査,ワークシートの分析を行った。その結果,本単元で設定したほとんどの学習目標において能力の向上を確認することができた。
  • 高橋 敦志, 和田 正人
    2017 年 24 巻 1 号 p. 13-26
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,高等学校共通教科情報科におけるメディア・リテラシー教育の一環として,18歳選挙権に関する新聞の分析と制作を行い,どのような活動の時にどのような学びがなされるのか検討する。埼玉県にある大学附属高等学校で,高校生7名が編集長・取材班・調査班・論説班に分かれて新聞を制作し,Web上で公開した。生徒が学期末に作成した振り返りシートを,SCATを用いて質的分析した。その結果,中橋(2015)のメディア・リテラシーの構成要素のうち,メディアの特性を理解する能力やメディアを批判的に捉える能力,考えをメディアで表現する力などに相当する力の獲得・意識の変容が新聞分析を通して培われ,また,メディアを批判的に捉える能力やメディアによる対話とコミュニケーション能力に相当する力の獲得・意識の変容が新聞制作を通して培われたことが明らかになった。
  • 村井 明日香, 堀田 龍也
    2017 年 24 巻 1 号 p. 27-41
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    10代の若者の間ではソーシャルメディア経由で情報を得ることが日常的になっている一方で,ソーシャルメディア経由の情報の特性に着目をしたメディア・リテラシーの学習方法は確立されていない。ソーシャルメディア経由の情報は一次情報が多い一方で,情報が多数の媒介者を経由して届き,受け手にとって一次情報を持っている人が誰かがわかりにくくなっている場合も多い。このようなソーシャルメディア経由の情報の信頼性を判断するためには,まず情報の伝達経路を想像し,その上で伝達経路上の媒介者の信頼性を判断する思考が必要であると考えられる。そこで,「伝達経路を基に情報の信頼性を判断する思考」を育成する学習プログラムを開発し,都内の大学で検証授業を行った。「伝達経路を基に情報の信頼性を判断する思考」を〈技能〉と〈傾向性〉に分けて効果を検証した結果,それぞれ一定の効果が確認できた。一方で,〈技能〉と〈傾向性〉の学習効果が出るのは時間差がある,または異なる育成方法が求められることも示唆された。
  • 相互行為の視点から組織化に着目して
    三宅 貴久子, 岸 磨貴子, 久保田 賢一, 李 克東
    2017 年 24 巻 1 号 p. 43-56
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究の目的は,シンキングツールの活用を進める中国の小学校において,児童が主体的に考える授業場面を,教師はどのように組織しているのかを明らかにすることである。筆者らは4年間にわたり,思考力育成のための授業研究を日中間で継続して行ってきた。本研究では,共同研究に参加している協力校の中から,一名の中国人教師が実施した国語科の1コマの授業を対象とし,授業を撮影したビデオ映像・教師と児童の会話を記録した音声・フィールドノート・インタビューを通してデータを収集し,どのように児童が主体的に考える授業場面を組織しているかを,相互行為の視点で分析した。分析の結果,中国人教師は,1)児童と共同的に授業進行のルール作りと意思決定をしていたこと,2)児童が思考活動から逸脱しないように,掲示物やシンキングツールなどの教材を用いて学習活動を展開していたこと,3)児童の情意への働きかけを行なっていたこと,4)授業後半では,時間内に活動を完了するように教師主導で進めていたことによって,授業場面を組織していたことが確認できた。以上のことから,児童が主体的に思考できるように,教師は児童との相互行為を通して,授業場面という社会的文脈を組織していたことがわかった。一方で,学校やカリキュラムといった制度的制限を受けるため,一部を教師主導で進めており,授業に児童主体と教師主導の2つの異なるアプローチが混在していたことがわかった。本研究では,中国人教師が自ら置かれている制度的な制限の中で,新しいツールを活用した授業の進め方を,児童との相互行為を通して社会的に意味づけ,組織していたことを明らかにすることができた。
  • 市内全校児童生徒へ1人1台のタブレット端末を一斉整備したB市を事例として
    今野 貴之, 堀田 博史, 中川 一史
    2017 年 24 巻 1 号 p. 57-70
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本稿では,教員研修を受けた教師のタブレット端末の活用プロセスとその要因を明らかにすることを目的とした。事例として取り上げるのは,市内のすべての児童生徒へ1人1台のタブレット端末を一斉整備したB市である。各校でタブレット端末の活用を促す担当教師15名の1年間の振り返りと,その振り返りをもとに選定した4名のインタビューを定性的に分析した。 分析の結果,教師がタブレット端末をどのように授業で用いるようになったのか,そのプロセスと要因として,(1)教師は,タブレット端末が自身の手元にあったことや,情報教育担当や同僚教師に聞くことができる環境が切っ掛けとなり,(2)授業におけるタブレット端末の活用を継続させていった。一方で,(3)アプリの購入の手間や,情報教育の指針が不明確なことが活用を阻害していたこともわかった。以上から,教育実践への示唆として,教育の情報化に関わる指針策定,自治体と学校が協力して取り組む環境整備,タブレット端末活用のための中心人物の設置の3つが示された。
  • 山川 拓, 浅井 和行
    2017 年 24 巻 1 号 p. 71-87
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究は,2020年度から実施される新学習指導要領の理念を踏まえ,外国語科を例に,小学校において情報活用能力の育成を目指す授業について提案するものである。新学習指導要領では,小学校において情報活用能力を育成することが明記され,全ての教科等の中で育成を目指すことが示された。各教科等の目標及び内容を整理すると,情報活用能力に関わる要素が全ての教科等に含まれていることが分かった。教科等における固有の資質・能力の育成を図りながら,教科横断的な情報活用能力の育成を効果的に行うためには,①情報活用能力の要素を学年や教科を超え,学校教育全体のカリキュラム・マネジメントの視点で系統的に捉え直し,②取り扱う単元で教科固有の目標と教科横断的な情報活用能力を同時に達成できる学習目標を設定するとともに,③目標達成のための主体的・対話的で深い学びを実現していくための具体的な活動を含めた学習計画を立てることが重要であると考えられる。
  • テレプレゼンスロボットの活用を事例として
    山本 良太, 久保田 賢一, 岸 磨貴子, 植田 詩織
    2017 年 24 巻 1 号 p. 89-104
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/12/26
    ジャーナル オープンアクセス
    近年の技術進歩により,特別支援学校の教師は新しいテクノロジーを用いたAssistive Technology(AT)やICTの活用が求められている。これらの新しいテクノロジーを教師が主体的に活用する際,他の教師をはじめとした活用主体の教師を取り巻く他者の存在が影響することから,本研究では,学校外の人材とのどのような関わりが支援学校教師のテクノロジー活用における主体的な行動を促すのかを明らかにすることを目的とした。具体的な事例として,テレプレゼンスロボットOriHimeを導入した教師の詳細な実践の展開プロセスに関するインタビューを分析した。その結果,教師には主体的に行動できる範囲があり,それは他の教師や外部人材との連携によって拡大していくこと,外部人材はその範囲を拡大するために関わりを持つことが重要であることが分かった。本研究で取り上げた事例では,外部人材である研究者や学生が,積極的に教師と関わり連携実践を構築することで,教師の主体的な行動が可能な範囲を拡大していた。
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