日本看護科学会誌
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33 巻, 2 号
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巻頭言
原著
  • —古典的テスト理論と項目反応理論を用いて—
    亀井 智子, 西川 浩昭, 柳井 晴夫
    原稿種別: 原著
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_3-2_11
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    【目的】看護系大学共用試験(CBT)用に作成した老年看護学の出題90項目を古典的テスト理論(CTT),および項目反応理論(IRT)を用い正答率,および項目識別度,項目困難度などの特性によりメタ評価した.
    【対象と方法】便宜的標本抽出により国公私立看護系23大学の臨地実習前の3年次生730名を対象として,紙筆試験を実施した.分析は正答率,IT双列相関,項目困難度(2PL model),項目識別度,因子負荷量を求め,項目特性曲線等を描いてすべての項目特性を評価した.
    【結果】老年看護学の平均正答率は65.8~69.3%で,他科目との相関は薬理学r=0.30~0.41, 解剖学・病理学r=0.28~0.38であった(p<0.01).項目困難度(-5.851~4.068),および項目識別度(0.292~2.218)とも幅が広かった.情報量曲線により各項目の特性が示された.90項目中3 項目の項目識別度が低かった.
    【結論】90項目の問題中87項目はCBTでの利用が可能と考えられた.しかし,このうち71.1%は項目困難度が負の易しい問題であったため,能力水準の高いレベルの受検者の識別に課題が残った.
研究報告
  • 松岡 純子, 玉木 敦子, 初田 真人, 西池 絵衣子
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_12-2_20
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は,広汎性発達障害児をもつ母親が体験している困難と心理的支援について明らかにすることである.
    方法:広汎性発達障害児の母親10名に半構成的面接を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した.
    結果:母親が体験している困難は,【適切な医療・療育環境の不整備ゆえに増大する苦悩】【家事,療育,教育支援のために余裕のない日常】【手探りの子育て】【長期にわたって続く心理的揺れと子どもの将来への心配】【学校生活に関する心配とストレス】として表された.母親が得ている心理的支援,および必要としている心理的支援は,【家族・友人・地域の協力者の理解と助言による支え】【家族や友人に相談できない状況】【気兼ねなく利用できる心理的支援への希求】【ゆとりの時間による気分転換】【子どもの長所や成長を確認することによる希望】【子どもの長所や成長に焦点を当てた支援への希求】として表された.
    結論:広汎性発達障害の特性と心理的支援に関する知識と技術をもつ専門家による母親への心理的支援や,母親への支援とともに子どもの長所や成長に焦点を当てた子どもへの支援の必要性が示唆された.
  • 小粥 宏美
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_21-2_28
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:看護学生の対人関係場面における認知のゆがみのパターンとストレス反応との関係性について検討した.
    方法:看護学生307名を対象として,対人関係場面の認知のゆがみとストレス反応を調べるための調査を実施し,両者の関連性について分析した.
    結果:認知のゆがみ得点に基づくクラスター分析の結果,認知のゆがみのタイプは,ゆがみ低群,ゆがみ高群,仲間拒否群,謙遜群の4群に分類された.各群のストレス反応は,ゆがみ低群は他群と比較して低く,ゆがみ高群は他群と比較して高かった.また,仲間拒否群は,謙遜群と比較して情動的ストレス反応が高かった.
    結論:対人関係場面での認知のゆがみが全般的に強い学生や回避的な認知傾向がある学生では,心理的ストレス反応が高くなることが示唆された.この結果は,看護学生のストレスマネジメントにおいて,認知再構成法のような認知行動的な技法を取り入れることの重要性を示している.
  • —ライフ・ライン・メソッドを用いた心理的状態のたどる過程と関連要因—
    平野 優子, 山崎 喜比古
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_29-2_39
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:侵襲的人工呼吸器を装着した筋委縮性側索硬化症患者の病い経験について,ライフ・ライン・メソッドを用いて心理的状態のたどる過程と関連要因を明らかにすること.
    方法:50名の患者を対象に質問票調査と半構造化面接調査を行った.
    結果:心理的状態は発症後共通して悪化するが,その後は回復に転ずる者と悪化・低迷し続ける者とに分かれ,回復に転じた者の中には一部再び悪化する者も見られた.心理的状態を悪化させる要因と回復させる要因は,【身体症状・身体障害】を主軸とし,【侵襲的人工呼吸器装着・決断】【病気・診療】【先行き】【対人関係】【役割遂行】【経済面】【生活面】の8領域からなる一部対照的内容のそれぞれ計17個のカテゴリーが抽出された.悪化要因が除去・軽減され回復要因が新たに創出・増強されながら心理的状態は回復に向かっていた.新たに回復要因が創出されても悪化要因の増強が大きい場合は回復が阻害された.
    結論:発症後,複数の苦悩により病いとともに生きる人生・生活が崩壊するが,人的・物的・社会的環境との遭遇や対処経験を経ながら人生・生活を再構築していく過程が示された.患者への具体的支援策を提示した.
  • —家族性アミロイドポリニューロパチー家系員の語りの分析—
    柊中 智恵子, 中込 さと子, 川崎 裕美, 小野 ミツ
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_40-2_50
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,発症前遺伝子診断を受け,将来ほぼ確実にFAPを発症することを知って生きる人の体験を明らかにし,看護への示唆を得ることを目的とした.
    【方法】研究協力者5名に半構造化面接法を用いてデータ収集し,質的記述的に内容分析を行った.
    【結果および考察】共通した体験は以下のとおりであった.彼らは親・親族が闘病する姿と死を体験し,親族から自分自身が将来発症する可能性がある(at risk)ことを知らされ,将来の見通しや家族への責任を果たすべく,確実な人生設計をしようと考えた.結果は陽性だったが,彼らは発症を見定めて生きる決意をした.検査に対する考えは,at riskである同胞と異なっていた.また,配偶者へは感謝と,重荷を背負わせたという負い目との葛藤があった.さらに,子どもに対しては,疾患遺伝子を引き継ぐことの苦悩を感じていた.
    【結論】以上から,at risk者が難病発症の可能性を確定させて生きる人生を選択することや陽性だと明らかになった後の葛藤の様がわかった.彼らが生き抜くためには,将来設計上のさまざまな選択肢を提示すること,さらに豊かなSocial supportを構築する心理支援を行うことが重要であることが示唆された.
  • 亀石 千園, 谷本 真理子, 正木 治恵
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_51-2_61
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:パーキンソン病患者への看護の新たな示唆を得るために,パーキンソン病患者がもつ身体像を明らかにすることである.
    方法:入院中のパーキンソン病患者6名に看護援助を通してデータ収集を行い質的統合法(KJ法)を用いて対象者ごとの個別分析および全体分析を行った.
    結果:全体分析の結果,パーキンソン病患者のもつ身体像は【対処方法が確立した身体】でありつつも,状態によっては【自分ではどうしようもない身体】であった.また,身体の状態が良いと【良くなるかもと期待をもたせる身体】でありつつ,その一方で【その時々で寿命や死を知覚する身体】である.そして,【試行錯誤を重ね探求し創造する身体】と自分だけでは生活できない【他者とつながりをもちながら生活している身体】の2つの身体像がこれら4つの身体像へ影響していた.
    結論:パーキンソン病患者は,揺れ動く身体像をもち,その揺れ動きには核となる身体像が影響している.身体像形成の核へのアプローチにつながる看護援助の必要性が示唆された.
  • 山口 未久
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_62-2_69
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:進行性筋ジストロフィーの当事者が自立に向かうプロセスと自立のありようについて,その経験を記述する.
    方法:青年期の筋ジス患者を対象に半構成面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチによる分析を行った.
    結果:対象は地域で自立生活を送る当事者18名であった.全員が小児期に発症し現在人工呼吸器を使用していた.対象者は,【進行を受け止める】ことと,【介助への依存と生活の主体性の両立をはかる】ことを経験し,病気が進行する中で少しずつ介助に頼らざるをえない状況が拡大していく中にありながらも自立を追求していこうとする患者のありようが,「主体的に生きること」すなわち【主体的生】として見出された.
    結論:【主体的生】は,青年期の筋ジスの当事者が身体面で依存していかざるをえない状況においても,主体性を得ようとあらがう中で見出される,生き方への姿勢であると考えられた.患者は,あえて地域で生活することを選び,能動的に主体性を求め依存に立ち向かう生き方を求めていた.
  • 三木 佳子, 法橋 尚宏, 前川 厚子
    原稿種別: 研究報告
    2013 年 33 巻 2 号 p. 2_70-2_79
    発行日: 2013/06/20
    公開日: 2013/07/04
    ジャーナル フリー
    目的:わが国の保健医療領域者がセクシュアリティのアセスメントに活用できるセクシュアリティの操作的定義を開発することである.
    方法:Walker & Avantの概念分析の手法を参考に,教科書・辞書に掲載されている定義,原著論文の操作的定義を検討した後,医中誌Webを用いて1995年から2010年までの期間で検索した32件の原著論文を分析した.
    結果:わが国の保健医療領域におけるセクシュアリティは,個人の性的特性と性的対象者との相互作用であり,個人の性的特性には,性の関心度,性の重要度,男性性・女性性の評価が含まれ,性的対象者との相互作用には,共に過ごすこと,言語的コミュニケーション,スキンシップ,相互の思いやり,性行為のありさまが含まれるとすることができる.
    結論:開発した操作的定義は実存性があり,保健医療者はセクシュアリティのアセスメントに活用できる.
第32回日本看護科学学会学術集会
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