【目的】半導体検出器搭載PET/CT装置の感度・計数率特性の向上により,画質を保ちつつ従来より低投与量での検査が期待される.本研究では,通常投与量による被検者の収集データのイベント数を間引いて得た仮想低投与量画像の視覚的・物理的評価により,投与量低減の可能性を検討した.【方法】当院で投与量3.5 MBq/kgでBiograph Vision(Siemens Healthineers)によりCBM法(寝台移動速度1.1 mm/s)で全身18F-FDG PET検査を行った被検者21名を対象に,リストモードデータのイベント数を100%から6.25%までの5段階に調整し,仮想低投与量画像を再構成した.仮想低投与量画像の視覚評価および100%データ画像とのSUVmaxの差の評価を行った.【結果】25%データ画像は視覚的に読影可能と評価され,100%データ画像とのSUVmaxの差は9.8±13.5%であった.【結語】Biograph Visionでは従来の25%まで投与量を低減できる可能性が示された.
【目的】病変が医用画像上にどのように抽出されるかという画像所見としての「表現型」とタンパク質の情報との関係性を調べるradioproteomicsに関する研究が進められている.本研究の目的は,乳がんのMR画像における種々の特徴量,すなわち画像所見としての表現型から免疫チェックポイント分子の活性と不活性を判別するためのradioproteomicsの手法の構築である.【方法】公開データベースTCGA-BRCAから49症例の乳がん患者のmRNAおよび脂肪抑制T1画像を選択して実験に用いた.mRNAを用いて,免疫チェックポイント分子の活性(10症例)と不活性(39症例)を定義した.病変の表現型を用いてこれらの症例を判別するために,275個のradiomics特徴量を計測した.Lassoを用いて判別に有用な三つのradiomics特徴量を選択したのち,ロジスティック回帰を用いて免疫チェックポイント分子が活性化している症例と不活性の症例を判別した.【結果】ROC解析による評価の結果,AUCは0.81であった.【結語】免疫細胞の活動が免疫チェックポイント分子によって阻害されている患者は,そのブレーキを外すと免疫チェックポイント阻害剤が奏効する可能性が高くなるため,提案手法は乳がん治療における免疫チェックポイント阻害剤の効果の予測に応用できる可能性がある.
【目的】Computed tomography (CT)画像のnoise power spectrum (NPS)は,ヘリカルスキャンの螺旋軌道におけるX線管の角度に依存して変化する可能性がある.そこで,X線管の角度ごとにNPSを算出する方法を考案する.【方法】ヘリカルスキャンにより水ファントム画像ボリュームデータを得た.各スライスから二次元(2D)のNPSを算出し,それらを加算平均したものをNPSconventionalとした.考案法では,螺旋軌道におけるX線管の1回転あたりの寝台移動距離を求め,その範囲内に存在する画像の各スライス位置に応じてX線管の角度θ (0°≤θ<360°)を仮定した.各スライス位置(X線管の角度θ)の画像から2D-NPSを算出し,それらをNPSθとした.NPSθとNPSconventionalを比較した.また,NPSθがθに依存して変化するかを調べた.【結果】NPSconventionalは等方的な形状,NPSθは非等方的な形状を示した.NPSθは,θの増加に伴い連続的に回転し,NPSθの回転角度とθには非常に強い相関( R2>0.999)がみられた.【結語】考案法により,X線管の角度に依存して変化する非等方的なノイズ特性を評価することができる.
【目的】乳房圧迫による被ばく線量低減はアナログ時代から継続して行われてきたが,アナログシステムとは画質要件が異なるディジタルマンモグラフィにおいて,乳房を圧迫して撮影することで得られる被ばく線量低減効果をあらためて評価すること.【方法】画質指標としてsignal difference to noise ratio(SDNR)を,被ばく線量指標としてaverage glandular dose(AGD)を使用し,乳房ごとにSDNRとAGDの関係を測定した.次に最適化指標としてのfigure of merit(FOM)を導入して,一定のSDNRを確保するためのAGDを計算した.それをもとに,画質を維持しつつ被ばく線量を半減させるために必要な乳房の圧迫厚を計算した.【結果】被ばく線量を半減させるのに必要な乳房圧迫厚は乳房の構成ごとに異なり,乳腺密度0%で1.49 cm,50%で1.25 cm,100%で1.06 cmであった.【結語】FOMを利用した検討により,ディジタルマンモグラフィでの乳房圧迫による被ばく線量低減効果を定量的に示した.
【目的】脳のFLAIR画像の白質病変(white matter hyperintensity: WMH)の自動解析において,ETLが変化したときの抽出体積の変動の有無を検討した.【方法】ETLを変えて健常例7名を撮像し,自動抽出ソフトウェアでWMHを抽出し体積を計算した.結果を統計解析して関係を調べた.健常例の画像4例に白色ノイズを加えてSNRの異なるシミュレーション画像を作成した.この画像のSNRは,異なるETLの実測画像のSNRを模擬した.シミュレーション画像からWMHを抽出し体積を計算した.【結果】白質信号自動解析において,ETLとWMHの体積には一部の条件を除き有意差がなかった.元画像のSNRが低下すると,WMHの体積が小さくなった.【結語】白質信号自動解析において,FLAIRシーケンスのETLが通常よりも大きい場合と画像のSNRが低い場合はWMHが小さく描出された.
【目的】MRI検査室に磁性体の持ち込みを防ぐため,多くの施設で金属探知機等を所有しているが,さまざまな種類の機器があり性能や特性が異なる.本研究の目的は,臨床現場での実運用上における各機器の評価を行うことである.【方法】複数施設にて,ゲート型磁性体検知器,ポール型磁性体検知器,ハンディ型磁性体検知器,ハンディ型金属探知機を使用し,MRI検査室に持ち込む可能性がある9種類の対象物の検出距離測定および実運用を想定した評価を行った.【結果】ゲート型は,磁性の強い対象物のみ検知が可能だった.ポール型は,測定距離がポールに近いほど多くの対象物の検知が可能であり,ポールの低い位置では検出距離が短くなった.ハンディ型では,機器と対象物を密着させた場合に検知可能な対象物が多かった.【結語】機器の検出能は対象物の大きさや種類により異なった.検査前の持ち込み確認では,各機器の特性を理解し,目的に合わせて使用することが重要である.