【目的】本研究の目的は,contrast-detailファントムであるCDMAM 3.4ファントムの画像をCDMAM Analyser ver. 1(旧解析ソフトウェア)によって解析した画質指数(IQFinv)を人の視覚評価に近い値になるように改良された新解析ソフトウェアCDMAM Analyser ver. 2およびCDMAM Analysis ver. 2.3によるIQFinv値に変換することである.【方法】4機種の乳房撮影装置を使用し,それぞれ3種類の解析ソフトウェアを用いてIQFinv値を算出し,旧解析ソフトウェアのIQFinv値に対する新解析ソフトウェアのIQFinv値を比較検討した.【結果】装置間や線質によるIQFinv値に差はなく,旧解析ソフトウェアから新解析ソフトウェアCDMAM Analyser ver. 2への変換式を導くことができた.更に,新解析ソフトウェアCDMAM Analysis ver. 2.3への変換式も同様に導出できた.【結語】それぞれの変換式を使用すれば,IQFinv値は旧解析ソフトから新解析ソフトの値に変換することが可能である.新解析ソフトウェア間のIQFinv値に大きな違いは認められなかった.
【目的】モンテカルロシミュレーションにより,二つのタイプのモデルファントムを使用して,CsI-FP胸部X線撮影で五つのX線ビーム(フィルタなし70 kV,0.15 mm Cuフィルタ90 kV,0.2 mm Cuフィルタ90 kV,フィルタなし120 kV,0.2 mm Cuフィルタ120 kV)について肺組織の被写体コントラストについて検討した.【方法】7億2千万個の光子を肺モデルファントム(幅:300 mm,長さ:300 mm,厚さ:200 mm,空間:120 mm),および縦隔モデルファントム(幅:300 mm,長さ:300 mm,厚さ:200 mm,空間:40 mm)に入射した.ファントムおよびCsI検出器における個々の一次および二次光子のプロセス(吸収,散乱,および射出)は,モンテカルロシミュレーションによって記録した.被写体のコントラストは,CsI検出器に入射および吸収された光子数によって計算した.【結果】肺組織の被写体コントラストは,低エネルギー線質のX線に対してより高かった.しかし,軟部組織および骨に重なる軟部組織の被写体コントラストは,フィルタなしの70 kVを除いて,線質の違いによる差はほとんどなかった.更にCsIで吸収される光子から得た被写体コントラストはCsIに入射する光子による被写体コントラストより高くなった.【結語】モンテカルロシミュレーションによる被写体コントラストの研究は,物理的な胸部ファントムの方法に置き換えることができることを示し,CsIで吸収される光子による被写体コントラストとCsIに入射する光子による被写体コントラストは異なることを示した.更に,軟部組織と骨に重なる軟部組織の被写体コントラストはほとんど変わらないことを検証した.
【目的】表計算ソフトを用いてCT(computed tomography)検査における照射線量管理ツールを作成し,実用化への可能性を検証する.【方法】2020年4月から2022年4月までの期間において,当院で実施したCT検査2,128人のうち,体重が50–70 kgの患者1,212人を対象にデータを解析した.データは,CT装置から出力される操作卓画面情報を利用した.データの入力は手動で行った.照射線量の評価は,Japan DRLs 2020(National Diagnostic Reference Levels in Japan 2020)を参考に,箱ひげ図や散布図を用いて行った.【結果】Japan DRLs 2020と比較して,当院における照射線量が高すぎたり低すぎたりすることはなかった.また,外れ値として照射線量の検証を行った件数が7例存在したが,そのうち,データの入力ミスが3例であった.したがって,その他4例について外れ値となった原因を追求した.【結語】本ツールを利用することで,CTDIvolとDLPの分析をすることができたと考える.更に,外れ値として原因追求を行った4例については,放射線診療の正当性と最適化の概念を逸脱するものではなかった.
【目的】IC PROFILER(ICP)で得られるプロファイルからエネルギー不変性を評価する手法を考案し,AAPM TG142のプロファイル不変性をエネルギーと対称性の成分に分離する方法を提案する.【方法】プロファイルから傾きを排除し,エネルギー不変性を評価する方法として反転平均プロファイルを考案し,種々の条件により妥当性を検証する.また,プロファイル不変性を分離する計算式を提案し,その妥当性を検証するとともに,ICPによる品質管理結果を示す.【結果】同一エネルギーの反転平均プロファイルは,PDD(10)の変化量にして0.1%以内で一致し,エネルギー不変性を評価できた.また,プロファイル不変性の分離評価式は,期待値に対して0.2%以内で一致した.これらの理論に基づき,プロファイル不変性の品質管理を実施できた.【結語】ICPから得られるプロファイルからエネルギー不変性を評価することができた.また,プロファイル不変性を分離評価する手法の妥当性を確認できたとともに品質管理に活用できた.
DRLs 2020では,IVRにおいては,基準透視線量率とともに手技別の装置表示の積算基準空気カーマKa,r(mGy)と面積空気カーマ積算値PKA(Gy·cm2)が設定された.IVRの被ばく線量は透視と撮影線量を合わせた総被ばく線量が用いられるが,実臨床では手技(診断/治療目的および手技内容)によってその割合は大きく異なり,その割合に関する詳細な報告はほとんどない.そこで手技別の被ばく線量および総被ばく線量に対する透視と撮影線量の割合を調査しプロトコルの見直しを行うことで,被ばく防護の最適化を行った以前の取り組みについて評価を行った.手技別に透視と撮影線量の割合が異なるため,各手技の被ばく線量を医師と共有し,手技別に画質を考慮しながらプロトコルを構築することで,被ばく防護の最適化を行えることが示唆された.
放射線治療用線量計に用いられる電位計のガイドラインでは,直線加速器の出力のばらつきを補正するために,2台以上電離箱線量計と電位計を用いて電位計を点検する方法が推奨されている.また,点検には電離箱線量計ではなく電流源を用いる方法もあるが,電流源は高価である.これに対応するため,われわれはユーザが自施設で精度の高い電位計点検を実施できる電流源を開発した.本研究の目的はこの新しい開発電流源を用いて,国内のユーザが自施設において高い精度を担保した電位計点検を実施可能であることを示すことである.開発電流源により電位計に通電し電荷量を測定した.電荷量のばらつき,電流源による電位計へのリーク,およびJCSS校正を受けた電位計を基準にした相互校正により電位計校正定数を求めた.電流源を用いた電荷量測定結果のばらつきは変動係数が0.05%未満で,電流源による電位計へのリークは無視できる程度であった.本研究は,新たに開発した電流源を事前に校正された電位計を基準にして,ユーザが電位計の点検を可能であることを示した.